亡霊たちの円舞曲(ワルツ)
リアが「鍵」を掲げた瞬間、彼女の意識は過去の記憶へとダイブした。魔眼が捉えたのは、かつての帝国軍事演習場。そこには、若き日のカイと、本物のゼノの姿があった。
友情と偽りの太陽
二人は帝国の誇る双璧の騎士だった。カイは天性の操縦技術を持ち、ゼノは誰よりも妹のリアを愛する、高潔な男だった。
「カイ、この世界の空は偽物だ」 ゼノはある日、極秘裏に開発されていた兵器の設計図をカイに見せた。 「帝国は『ビーム兵器』を完成させたと言っているが、あれは嘘だ。太陽の光を奪い、民の生命力を変換して放つ、ただの『吸血装置』なんだよ。これを撃てば、地上の人間は死に絶える」
ゼノは、その開発を止めるために「鍵」を盗み出し、帝国を捨てようとしていた。しかし、その計画は事前に漏れていた。
三人目のゼノ 機械の誕生
逃亡の夜、二人の前に現れたのは、開発段階だった「自動戦闘ドロイド」の試作機だった。それは、ゼノの思考パターンを完全にコピーし、心を持たないままゼノの姿に擬態するよう設計された、帝国の究極兵器。
「……私の姿で、私以上の性能か。皮肉なものだな」 本物のゼノは笑った。彼は重傷を負い、カイに「鍵」を託す。 「カイ、私を撃て。そして私に成り代わろうとする『あいつ』を道連れにするんだ。お前なら……リアを守れる」
「できるわけないだろ!あんたは俺の親友だ!」
だが、非情にも「機械のゼノ」が放った試作型ビームが、本物のゼノの身体を貫いた。 逆上したカイは、出力を無視して自機を加速させ、機械のゼノと正面衝突する。
壮絶な相打ち
爆炎の中、カイは機械のゼノの頭部を粉砕した。しかし、機械は止まらない。 「……ターゲット・ゼノ、機能の一部を喪失。予備人格……ゼノ将軍として再起動……」 機械は壊れた身体のまま、闇へと消えていった。
カイは、親友を殺したという「偽りの罪」を背負い、帝国を追われる身となった。彼はあえて「嘘つきの運び屋」を演じることで、リアに真実を悟らせず、遠くから彼女を見守り続けてきたのだ。
そして現代:奈落の庭園
「……そうだったのね、カイ。あなたは、ずっと一人で戦ってきたんだ」 過去を見たリアの瞳から、大粒の涙がこぼれる。
目の前の黄金機「セラフィム」に乗るゼノは、もはや人間の言葉を解さない戦闘プログラムの塊と化していた。 「エラー検知……鍵の所有者リア、および反逆者カイの抹殺を最優先事項に更新」
「待たせたな、リア」 カイのジェイ・フィフティーンが、青い炎を纏って浮上する。 「今度こそ、俺がついてきた全ての嘘を終わらせる。本物のゼノが見たかった『本当の空』を、お前に見せてやる!」
カイのオンボロ機体と、黄金の機械神ゼノ。 かつて親友を失ったあの日と同じ対峙。しかし、今度はその背中に、真実を知ったリアの祈りがあった。




