第1話 来訪者編 夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよーー
この小説は『女子高生は大統領』の別冊版とお考えください。
『かぐや姫は帰らない』の登場人物がタイムスリップして未来の神聖学園に現れます。
かぐや姫と呼ばれた三日月姫は未来から帰らないのか。
9月29日20時に公開予約しています。
第2話 天女の静女が見守るでござるよ!真夏ちゃん!
神聖学園生徒会役員門田菫恋が大講堂の壇上に上がった。
開会の挨拶を終えると、舞台の袖を向いて徳田康代女子高生大統領の母、徳田理事長を紹介した。
「神聖学園理事長の徳田でございます」
理事長は黒髪をピクシーカットにワインレッドのスカートスーツ姿で壇上に現れた。
シャツは爽やかなライトグリーンに神聖学園のロゴ入りの赤いネクタイを締めている。
スーツの左胸のエンブレムには、黒猫のイラストが描かれていた。
神様見習いのセリエが神使だった頃の姿のイラストはセリエ自身の提案だった。
「先日、生徒会総会で学園の新しい制服が決定しました」
理事長は、自身が着用しているジャケットを脱ぎ、広げて見せた。
「このジャケットが神聖学園の新しい制服ですーー 詳細は後日、担当役員よりみなさんに知らされるでしょう」
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理事長の手短な挨拶のあとで徳田康代生徒会会長が登壇した。
『みなさん、おはようございます。
ーー 今期もみなさんとご一緒に神聖女学園の学園ライフを充実させたいと思います。
ーー 今月は宝田劇団の柿落としのあと、恒例となりました校内かるた大会がございます。
ーー 是非、ご参加下さい』
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徳田康代大統領の生徒会会長としての挨拶のあと、宝田劇団の五大スターが続いて登壇した。
和装で袴姿の朝川夏夜、夜神紫依、赤城麗華、大河原百合、朝霧雫が、“神聖女学園かるた会”の立場で女子生徒たちに挨拶を始めた。
劇団責任者の朝川が生徒たちに柿落としの招待を伝え、会場は大きな拍手に包まれた。
最後に明里光夏大統領補佐官が事務連絡を全生徒に伝えた。
門田が閉会を宣言し舞台の幕が降りた。
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「康代さん、どうもこう言うの慣れなくて光夏のお陰で助かります」
『そうね、秀美と光夏は長所が違うわ。
ーー 秀美が苦手なことをする必要など無いのだからね。
ーー 秀美はあるがままが最高よ』
「康代さんに、言われると照れるわね。
ーー ところで康代さん、かるた大会だけど」
『あれねーー 宝田劇団の柿落としのあとよ』
「次こそーー 挑戦してみたいと思っています」
『そうね、秀美って体育会系よね』
「康代さん、じゃあ、光夏は? 」
『文化会系じゃないかしら。
ーー それで、思い出したのですが今期から新しい先生が赴任します。
ーー 昔、この学園にいた先生の末裔とか。
ーー 母がお世話になった財閥の令嬢とか聞いているわ』
「康代さん、それって三大財閥じゃないですか? 」
『あら、光夏、さっきはありがとうございます』
「徳田、昼間、日野でした? 」
『昔の話ね。今はそう言う形態はなくなったのよ。
ーー でも、そう、その先生、昼間とか言っていたわね。
ーー 専門科目は古典とか言っていたわ。
ーー モデルもしている美人教師よ』
「その先生、よほど神聖女学園にご縁があるのね」
『私が聞いている情報では、その先生、サイキッカーとか』
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神使セリウスと天女天宮静女が康代の言葉に反応した時、神様見習いのセリエの声が聞こえた。
「康代にゃあ、面白い話かにゃあ」
『ええ、セリエさま、新しい先生のお話です』
「誰かにゃあ」
『確か昼間夕子と朝子とか言っていました』
「康代にゃあ、その二人、生きていないにゃあ」
『セリエさま、脅かし無しですわ』
「脅しないにゃあ。稀にあることにゃあーー 時間的には死んでおるにゃあ」
『どう言うことでしょうか。セリエさま』
「女神の悪戯かにゃあーー 時空に飛ばされているようにゃあ」
『セリエさま、それってよく耳にするアレでしょうか』
「そうかもしれにゃあいーー 陰陽師が見ればハッキリしそうにゃあ」
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その日の夕刻、徳田康代は側近の天宮静女と神使セリウスを伴って安甲神社の赤い鳥居をくぐった。
巫女の話によると、神主は接客中と伝えられた。
徳田たちは社務所の入り口で、短い時間を潰すことになった。
神社の巫女が徳田たちを奥座敷へ案内する仕草を見せた。
そこには見たことのない同じくらいの歳の美しい女性が二名いた。
神社と不釣り合いな印象を徳田は感じ胸騒ぎを覚える。
「康代さん、紹介するわねーー こちらが昼間夕子先生。隣がお嬢さんの昼間朝子先生」
徳田は、安甲神主の言葉の意味を理解出来ないでいた。
どう見ても同じ女子高生くらいの年齢だ。
『先生、たちの悪い冗談ですか』
「いいえ、冗談じゃないわーー セリウスさんと静女さんなら分かるでしょう」
「ええ、死んでおるはずなのに生きています」
『セリウスさま、どう言うこと』
「時の女神の悪戯かと」
『わからないわ』
「康代殿、神隠し覚えておるでござるか」
『ええ、覚えておりますが』
「あれは次元間の並行世界でござったーー これは、時空間でござるよ 」
『静女、じゃ、これは』
安甲晴美がぽつりと呟く。
「徳田さん、タイムスリップよ」
セリウスが陰陽師に言った。
「これは、更に不老不死の秘術の光を全身に浴びております」
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昼間夕子がセリウスを見て言う。
「目の前に黄金の光が現れ、光の中から時の女神さまが現れました」
「いつですか」
セリウスが尋ねる。
「あれは大政奉還からーー 二百年が過ぎたころです」
「今は東和暦二年で大政奉還からーー 三百一年になります」
「私たちの中で時間が止まってしまっています」
『分かりましたーー できる限り先生たちの協力を生徒会が率先して致しますわ』
「夕子殿、朝子殿、大船に乗ったつもりでござるよーー 」
天女の天宮静女は、無邪気な声を上げ神社の境内を見つめていた。
安甲神社の境内に寒桜の蕾みが目立ち始めている。
少しずつ日没が遅くなって光が強くなっていた。
静女の紫色の髪と瞳が宝石のように夕陽の反射で輝いている。
『明日もお天気良さそうね。静女ーー 』
「康代殿、お天気のことはわからぬでござるよーー 」
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三日月未来