夜行急行『利尻』、札幌駅の銭湯と北への旅
連日の夜行列車の揺れに身を任せ、疲れた身体をひとまず銭湯で癒す。
札幌駅のホームで、再び出会ったあの少女。
彼女の言葉が、北の島々の美しさを鮮やかに彩る。
列車は静かに、まだ見ぬ北の大地へと走り出す。
旅はいつだって、新しい景色と物語を連れてくるのだ。
札幌の街に降り立ったとき、僕はふと思った。
「さすがに、二日続けて夜行列車で風呂に入ってないのはまずいな……」
疲れた体を癒すため、駅近くの銭湯に足を運んだ。
熱い湯に浸かると、知らず知らずのうちに凝りがほぐれ、心も軽くなった。
さっぱりとした身体で札幌駅に戻ると、夜の冷気が肌を刺した。
ホームに向かう階段を上ると、並んで待つ人たちの列があった。
その中に、見覚えのある少女の姿を見つけた。
彼女もまた、これから乗る夜行急行『利尻』を待っているらしい。
「また会ったね」
彼女が小さく笑った。
列車が到着し、二人は隣り合わせの席に腰を下ろす。
窓の外では、札幌の街灯りが静かに過ぎていった。
「礼文島の花々は本当にきれいなんだよ」
彼女が語り始める。
「春になると、一面にエゾカンゾウやレブンアツモリソウが咲いて、まるで別世界みたい」
僕はその言葉に心が引き寄せられた。
礼文島の風景が、まるでこの旅の新しい扉を開くかのように思えた。
列車はゆっくりと北の方角へ向かって進んでいく。
窓の外の景色が徐々に暗くなり、星が一つ、また一つと瞬き始めた。
遠くの海風が窓をそっと撫でる。
まだ見ぬ北の大地、そしてその先の物語が僕らを待っている。