#020 DM~ツレステッサ~ン
はてさて…
今回の亀組の日常は…
ジュワァ~ン
三回目にしてほぼ完璧にキラキラ星も超新星爆発を成し遂げていた。問題が解決できた四男坊も誇らしげにシンバルを奏でていた。
「はぁい!みなさんすばらしかったですよ~!では、がっきをかたづけましょう!」
僕は宮川麻耶とカスタネットを袋に入れて多恵先生のところに持って行った。
「ありがとう。むねのりくん、まやちゃん!じょうずにできていたよ。」
「うん、ありがとう!せんせい!」
「はぁい、きょうはこれでおかえりになりますので、おかえりのしたくをはじめましょう~!」
ヒスパニックの号令によって亀組は亀組の教室へ戻り、鶴組は鶴組の教室へ戻って行った。ベム小林が走っていくのをヒスパニックに注意されている脇を、助教授と竹中が真剣な顔で話しながら歩いていく。
「・・・しかし、あのフレーズではあの音が一番良いだろう・・・・」
「音階としてはもちろん正しいけど、でも僕は次の和音を考えて七度を入れるべきだと思うんだ!」
「・・・ドミナントモーションか・・・・」
「うん、強調したほうが聴く方にもいいんじゃないかな。」
「・・・確かにクリシエを含んだ上で四度へのドミナントモーションは常套手段だろう・・・しかし、我々全体の技術的基盤を考慮しなければならない・・・・このような発表の場合、全体の統一性が最優先だ・・・」
「そうかもしれないね。これから練習するのも難しいもんね!」
互いの意見の妥協点を見つけ出すという事がコミュニケーションである。片方が自分の事を勝手に言うだけのものは、高度文明社会ではあってはならないものである。
「ねえしんちゃ~ん!うちかえったら、きょうはなにしてあそぶの~?」
「うんとね~ツレステ~」
「?なにそれ~?」
「うんとね~ツレスレ~ション~」
「なんなん~?」
「ゲ~ム~!テレビでやるの~」
「プレステ~?」
「うん、ツレステ~ツレステ~」
「もってたんだ~プレステ~!」
「う~ん、じいちゃんにかってもらったの~」
「いいな~」
「ぼくももってるよ~」
「たなっちももってるの~」
「うん、しんちゃんのはプレステツ~?」
「あたらしいの~」
「えっ!?プレステ3~?」
「ほんとう!?」
「うん、たぶん。じいちゃんがかってくれたの~」
「すっげ~すっげ~」
「いいな~いいな~」
「ツレステサ~ン」
「・・・プレステ3~」
「ツレステサ~ン!ツレステサ~ン!」
「・・ツ、ツ・・」
「ツレステサ~ン!ツレステサ~ン!」
「ツレステサ~ン!」「ツレステサ~ン!」
世界遺産がプレイステーション3を持っているという事実よりも、笑顔でまわりの人々を自分のワールドに連れ込んでしまう妖力に、驚きと恐怖すら感じてしまう。しかしそれは決して邪悪なものではなく、いたって平和であり、人々を和に導くものであった。まさに世界遺産こそ憲法十七条の体現者である。
「ツレステッサン!ツレステッサン!」
「ツレステッサン~ツレステッサン~」
「ツレスッテサン!ツレスッテサン!」
「ツレスッテサン~ツレスッテサン~」
言葉は乱れるのではなく、常に変化するものである。年長者が若者の言葉の使い方に落胆してしまうのは、悠久の歴史の中で常に繰り返されてきたものである。しかし、その背景に敬語や文語、つまり常の話し言葉以外の表現手段も身についているというものがなければならない。言葉に限らず、自分ができる事ならば否定もできるが、出来もしない事を否定は出来ない。全ての言動や行動には、意識しようがしまいが全て責任というものが付随してくる。どれだけ適当に発言したものでも、どれだけ勝手に行動したものでも、必ず自分で蒔いた種は自分で刈る事になるのである。
「ツレスッテ~」「サ~ン」
「ツレスッテ~」「サ~ン」
世界遺産の蒔く種は、蒔いたそばから綺麗な花をつけていく。
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