#018 落山に舞う鶴
はてさて…
今回の亀組の日常は…
大物は揺るがない。竹中は稲妻と雷鳴の轟きの中、一人一心不乱に塗り絵をしている。常に平常心。稲妻であろうが、台風であろうが決して高ぶらず、心を乱す事無く・・・
ピカッ・・バキバキッ!ドッカァ~ン!
凄まじい雷光に照らされながらHello Kittyを塗り続ける竹中の横顔は、決して我慢しているのではなく、決して楽しんでいるのではなく、いたって穏やかなものであった。そこには凛とした空気と、大日如来の雄大さが確かに感じとられた。
ピカッバキッ!ダッギャ~ン!
「すっげ~・・」「こわ~い」「・・・・」
「おりゃ~!」
「・・・!?」
ベム小林は窓際から離れ、必死にオヘソを隠しレイチェルとタオルケット山脈から顔だけ出しながら見ていた世界遺産に更なるタオルケットを爆撃し始めたのである。
「わああっ!」
「みえないよ~みえないよ~!」
「おりゃ~!」
ピッカァ~バキッドッカ~ン!
「こら~やめなさ~い!」
ついに度を越えてしまったらしく、ヒスパニックがプチパニックになって注意を始めた。
「だめじゃな~い!みんなのたおるですよっ!」
「・・・・」
「はい、かたづけなさいっ!」
「・・はい」「はぁい・・」「はい・・」
我に返り、世界遺産とレイチェル、そしてベム小林は急いでタオルを片付け始めた。
「ちゃんとたたまなきゃだめだよっ!」
「う、うん」
レイチェルはベム小林と世界遺産にたたみ方をレクチャーしながらタオルケットを一つ一つ片付けていった。僕と北斎はもう手はつないでいなかったが、二人とも叱られた世界遺産達を見ていた。
雷は収まってきたが、今度は大粒の雨が窓を叩き始めていた。雷鳴も少し離れたところで轟いているが、窓際にはもう誰の姿も無かった。僕も自らの席に着き、二つ目の折り紙を折っていた。本来の予定は塗り絵であったが、北斎との意見交換の結果、それはキャンセルされていた。
「むねのりくん、つるおれるの~?」
「ううん、あんまりじょうずじゃないんだ~」
「ちゃんとおれてるよ~!じょうず~!」
「おかぁさんがすきなんだ~おりがみ。よくつくってくれるんだ~!」
「おしえて~おしえて~!」
「うん、いいよ~」
僕は一つ一つの工程を母の声の記憶とともに自分の中で確認しながら、北斎に伝えていった。
「ここをきっちりおるんだ~!」
「・・・ん・・・あ、おりすぎた・・・」
「もういっかい・・・そうそう」
「・・・・・」
「・・・・・・」
不恰好ではあったが、確かに二羽の鶴が完成した。初めての共同作業などとは言えない物ではあったが、確かに嬉しかった。
「ありがとう~!かっこいい~!」
鶴をカッコいいと思えたのは初めてだった。激しい雨音の中で、机の上で傾いている二羽の鶴は今にも飛び立ちそうにうずうずしていた。
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