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#014 大目付、権田佐平治

はてさて…


今回の亀組の日常は…

 この世は正負の法則で出来ている。表面的に良い事が起きれば、その反対の事も起きるのである。大切なのは、そこから何をどう感じ学び取るのかという事である。もしも学びが不十分であれば、また同じ様な事が繰り返し起こるのである。全ては学びのためである。

 御大将の空気が薄まり、気持ちの良い穏やかな日常に戻った僕たちを、一気に現実社会に引き戻してくれたのは、用務兼大目付の権田佐平冶であった。御大将からの全面的な信頼と、絶対的な権限委譲によって大目付である権田佐平冶は確かに幼稚園全体の空気をピリッとさせていた。


 確かに、権田佐平冶からは鬼以上の恐怖と、不動明王並みの揺ぎ無さを感じることが出来る。しかし、その根底には絶対的な仏の慈悲が溢れていた。御大将の寛容さと、権田佐平冶の厳しさがどこまでも絶妙なバランスをとっていた。


「あっゴンダせんせいだっ・・・・」


 丈志もベム小林も何だかすでに泣きそうになっている。もちろん権田佐平冶はいたって平成であり、特に何をどう注意しているわけでも、まして睨んでいるわけでもないのである。


「・・・・っ・・・・っ・・・・っ」


 ついにシャックリ段階まで到達したベム小林に気がついたヒスパニックがベム小林のもとへ行って、いっしょにゆっくりと深呼吸をしている。


「大丈夫~?譲二くんっ」


「・・・うんっく・・・・うっく・・・・うっく・・・・・」


「ゆっくり息を吸って~はぃ、はいて~」


「すゥ~っく・・・・す~っく・・・・・」


「大丈夫かぃ?」


「 ・・・・・!?」


 その野太い声の主が誰であるのかは、振り返らなくともベム小林にもすぐに理解できるものであった。


「・・・はいっく・・・・だ、だいっくじょうっくでっく・・・」


 ベム小林の短かった人生も、もはやこれまでかと誰もが思ったその瞬間に権田佐平冶はベム小林を抱き上げ肩車をし始めた・・・・【あ、新しい処刑方法だというのか・・・・あ、あれはもしや、アメリカンバッドアス・アンダーテイカーのラストライドではっ・・・伝説が今ここに・・・・】


「しゃっくりは無理に止めなくてもいんだぞ!」


「う、うんっく・・・・」


 そう言うと二人はそのまま運動場の中をゆっくりと歩き始めた。時折聞こえる野太い声からは、確かに優しい言葉だけが聞こえてくる。

 

 しばらくたつとベム小林のシャックリも無事におさまり、ベム自身の身が安全であると理解しえた様子で、笑顔で大目付と話をしている。僕は何だか羨ましい気持ちでいっぱいになっていた。僕も肩車をしてもらいたい。いや、もうラストライドでもかまわない。何でも良いから権田佐平冶と話がしたい。厳しくても怖くても、暖かい人に接したい。心からそう思っていた。


 厳しさの中の大きな暖かさに、僕は打ちのめされていた。

次の


エピソードに続きます

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