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決定事項

姉様と入場すると、いつもはみんな姉様を見ているのに、今日は僕も見られている気がするし、みんなザワついている。僕も素顔を晒して人前に出るのは初めてだから、緊張しちゃう。


この半年で背も伸びて、姉様を見下ろせるようになったし、エリザベス様の王配候補である七色のタイを付けているから、僕だってわかってると思うんだけどな。視線が痛い。


不安で姉様を見ると、マリア様のように微笑み、小さな声で大丈夫よ、あなたはとっっっっても素敵よ! と言ってくれた。まだブツブツ言っていたけど、聞こえないや。


エリザベス様とアーノルド様のダンスから始まり、僕と姉様も踊る。一曲踊り終わると、エリザベス様は僕の元に来てくれた! もちろん一緒にダンスをする。エリザベス様より背の高くなった僕は、筋肉もついて、自分で言うのもなんだけど、ダンスのリードも上達したはず。


姉様はサイラス君と楽しそうにダンスをしているし、アーノルド様は凄い顔でこちらを見ている。


「今宵のヴィクターは特別愛いな。皆、おまえに見惚れているぞ。妾のヴィクターを皆に見せるのは癪だが、気持ち良いものもあるな。おまえが妾のだと見せつけねばな」


と耳元で囁いたと思ったら、ほっぺにキスをした。みんなには見えない角度で、そんな大胆なことをするもんだから、僕は赤くなったり青くなったり忙しかった。ステップも踏み間違っちゃった。


エリザベス様と踊り終えて、礼をして戻ろうとしたところ、グッと腕を引き寄せられ、次の曲が始まる。あわわ! 二曲続けて踊るのは婚約者の証なのに、エリザベス様ったら、なんてことをするんだ!


「エリザベス様! 二曲目ですよ!?」

「わかっている。今日のヴィクターは離し難いのだ、許せ」


と言って微笑まれたら嫌だなんて言えない。嬉しくて泣いちゃいそうだよ。視界の隅に入ったアーノルド様が怖過ぎて、僕の感情はあっちこっち忙しいよ。


踊っている最中なのに、アーノルド様が凄い形相で近づいてきて、異変を感じ取った楽団が音楽を止める。同時に僕の肩を強く掴む。でも微動だにしない。


僕、エリザベス様を少しでも守れるように、頑張って鍛えているし、エリザベス様が瞬時に結界を張ってくれたから、痛くはなかった。むしろ、アーノルド様が弾かれる。姉様も今にも雷を飛ばしそう。


「くっ!!! 貴様! どこのどいつだ!!! 我がエリザベスに近づき、あろうことか二曲も続けて踊るなど!! この不届者がっ!!!」


音楽も止んだから、アーノルド様の声が会場中に響く。凄い剣幕だから、ざわついていた周囲もシーンとしちゃった。


僕はエリザベス様と身体を離して、ご挨拶する。


「ご挨拶が遅れました。ヴィクター・ダーンリーです。アーノルド様、本日はご卒業おめでとうございます」


教育の甲斐あって、綺麗な礼ができたと思う。エリザベス様も満足そうに頷いている。


「は? ヴィクター? そ、そんなはずは……」


と、公爵令息にも関わらずポカンと口を開けている。王配候補たる者、その表情はいかがなものかな?


「ふむ、正真正銘、我が王配候補のヴィクター・ダーンリーだ。丁度いい。皆にも伝えよう。妾の王配は今宵をもって、ヴィクター・ダーンリーに決まった。皆には長らく待たせてしまったな。安心しろ、妾の愛しいヴィクターが王配に決まったからには、未来永劫、安寧の世にすることをここに誓うぞ」


と言って、僕の腰を引き寄せるエリザベス様の、なんっと! なんと男らしく美しいことか!! 素敵過ぎて思わず見惚れちゃった。でも! 僕が王配に決まったの!!?



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