表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

人生山あり谷あり

僕の覚悟も虚しく、学園生活は散々だった。陰口、物がなくなる、教科書を破かれる、足を引っ掛けられる、あ、池にも落とされたなぁ。火魔法ですぐに乾かしたけど。


さすがに階段から突き落とされた時は、ヤバいかも? と思ったけど、サイラス君の風魔法を感じたと思ったら、ふんわり包まれて、ゆっくりと安全なところに降ろしてくれた。僕の友達って凄いや!


階段から落ちた日は、どこから聞いたのかエリザベス様が、僕を訪ねてきて、会うや否や痛いくらいに抱きしめて、怪我がないかしつこいぐらい全身を確認していった。


全身を触ったり、服を捲ったりするから、僕はくすぐったいし、色々頑張らなきゃいけないから、安心してもらうために、エリザベス様の両手を優しく握って、その手にキスをしたんだ。僕は大丈夫だから、落ち着いて欲しかったんだ。


エリザベス様はようやく落ち着いてくれて、顔を赤くしながらも僕を見つめる。今までは僕が見上げてきたけど、やっとエリザベス様に身長が追いついたから、目線は一緒。


綺麗な七色の瞳。僕のこと見つめる時はピンク色が多い。僕は知ってるんだ。僕のことを想ってくれている時、ピンク色になるって。


エリザベス様は僕が握っていた手を解いたと思ったら、僕の両頬を強く掴んだ。ちょっと痛いな、と思ったら、唇に柔らかいものが当たった。あ、これはキスだ。姉様とするような頬や額にするものではない。恋しい者同士がするキス。


ようやく気づいた。僕、エリザベス様が好きだ。アーノルド様やサイラス君の方が王配に相応しいかもしれないけど、二人とエリザベス様が並んでいることが嫌だ。嫌だったんだ。


キスされて、ぼーっとしていると、唇が離れそうな気配を感じた。嫌だ。僕は慌てて、エリザベス様の腰を引き寄せ、右手で頭を支える。離れたくないと思って唇を押し付ける。歯が当たっちゃったけど、そんなこと気にしない。


ふふっとエリザベス様が笑った気がした。僕の息が続かなくて、惜しくも唇を離したら、エリザベス様は頬を赤らめながらも、微笑んでくれた。


「僕! エリザベス様が好きです!!」


そう言うと、大きな瞳をより大きくして


「ようやくか。鈍い奴め。妾もヴィクターが好きだ」


と言って、またキスしてくれた。嬉しくて泣きそう。


「まだまだヴィクターを愛でていたいが、妾にはやらねばならないことがある。階段から突き落とされたこと、それ以前に池に落とされたことなど、余すことなく詳しく話を聞かせろ」


そう言って美しく微笑んだエリザベス様に寒気がした。



階段から突き落とされた後、クラスメートの入れ替えがあって、ちょうど僕に嫌がらせをしていた子達がいなくなったから、僕は安全に学園生活を送れるようになった。


ただ、クラスメートの入れ替えは時期的におかしかったから、なんでだろうと思ってサイラス君に聞いたら、僕は知らなくていいんいいんだよって言われた。うーん。


そして半年が経ち、迎えたアーノルド様の卒業式。これでアーノルド様が直接手を下してくることもなくなるはず。卒業式後の夜会では、エリザベス様はアーノルド様にエスコートされる。思いが通じたとは言え、僕は候補に過ぎないし、今日の主役はアーノルド様だから、胸の痛みを抑えて僕も王配候補として参加する。


僕は婚約者のいない姉様をエスコート。サイラス君は一人で入場だ。ただ今回の夜会は、いつもと違うんだ。エリザベス様がメガネを外して来るようにとおっしゃった。いいのかな?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ