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結 計画破壊

「第一王子……いや、元第一王子アルバートは、間女の男爵令嬢と共に強制出家。それぞれ修道院送り。繰り上げで次期王位継承者になった第二王子パピヨンは、翌日には乳姉妹であり、側近である侯爵令嬢ネペンテス・アイアンメイデンと婚約を発表……。本当、上手い事やったわね」


「これも、全て公爵令嬢様のお陰ですわ」


「私は、媚薬と睡眠効果のあるお薬を分け与えただけよ」


 ここは辺境、ブリッチングスタンド領の領主の館の中の一部屋である。


 この部屋の中央にある机を挟む形で、2人の女性が向かい合って、話をしていた。


 1人は公爵令嬢にして、現在は辺境伯家次男、ドミニク・ブリッチングスタンドの婚約者、キャロル・アングリッシュドペア。


 もう1人は、侯爵令嬢にして、現在の王太子パピヨン・マーヴェリックフォークの婚約者、ネペンテス・アイアンメイデンその人だった。


 あの夜会から、早いもので既に1ヵ月程経っていた。


「あの馬鹿王子2人の婚約破棄騒動にかこつけて、一番美味しい所をさらってしまったんだもの。あなた、大した頭脳と肝を持っているわ。この国の将来は安泰ね」


「買いかぶり過ぎですよ」


 そう言いつつも、ネペンテスは悪い気はしていなかった。


 今回の婚約破棄騒動で、キャロルの元に情報を漏らしたのは、何を隠そう、ネペンテスであった。それも、事故的に漏らしたのではなく、明確に自身の利益の為にわざわざ自分からキャロルの元に駆け込んだのである。


「私は、今回の騒動、失敗した時のリスクが大きすぎると判断したまでです。もしパピヨン様の計画が表ざたになっていたら、確実に彼も責任を取らされていたでしょう。最悪、胴と首が離ればなれになっていたかもしれません」


「まぁ、そうでしょうね。今回の件の黒幕な訳だし」


「私はパピヨン様が大大大好きなので、そういう展開は勘弁したかったというのが、貴女の元に情報を売った最大の理由です。それ以降の展開は正直、博打でしたが。何とか勝ちました」


「情報提供の代わりに、あの子の責任は問わないというのが約束だったからね。正直、あの子、私の事をしょっちゅう気持ち悪い視線で見てきていたし、破滅させたかったという気持ちもあったけど」


「キャロル様が約束を守る方で良かったです」


 そう言って、ネペンテスは頭を下げた。


 今回の婚約破棄事件は、パピヨン視点で見るなら、兄の婚約破棄を煽り、王弟も出席する夜会という最悪の場で婚約破棄をさせ、それに介入し、王太子の座とキャロルの両方を手にするという、一種のマッチポンプ作戦であった。


 これを、ネペンテスは利用して、自身に利益が発生する様にした。


 まず、彼ら、というより、パピヨンの作戦をキャロルに密告。アルバートに内緒で婚約を解消し、新たにドミニクを婚約者にして、彼を連れて夜会に出る事で、作戦をひっくり返す。


 その後、阿呆第一王子には生贄の男爵令嬢と共に退場してもらい、同時にパピヨンの屈辱をキャロルが煽る事で、彼女への思いを完全に諦めさせる。その後、やけ酒に付き合って彼を慰めつつ、睡眠薬と媚薬効果のある薬を混ぜた酒を飲ませて眠らせ、その後は、寝ている彼と関係を持つ。最後に自分の服を破いて、朝パピヨンが起きて、その光景に混乱している内に、詫びとして嫁にしてもらう事を了承させる。


 見事に作戦通りに事が運んだ。あの夜は、パピヨンがネペンテスを泣かせたのではなく、実体としてはむしろ逆だったのだ。


 幸い、パピヨンはキャロルに未練を示す事無く、ネペンテス一筋になっている。事あるごとにあの夜の罪悪感を思い出させ、かつ、毎日の様に愛し合い、身も心も依存させているのである。その状況で片思いの相手への未練など残る訳がない。


「教育の方はどう? かなり厳しいと思うけど」


「自分で言うのもなんですが、パピヨン様のただ一人の同年代の側近として、色々無茶ぶりには慣れているので、あまり苦ではありませんね。むしろ、新しい事を色々知れて大変興味深いです」


「大したタマね。あの子には勿体ないくらい」


「ああ見えて、根は真面目だし善人よりなんですよ? ただ、時々策士を気取りたくなるだけで。それに顔も私のタイプだし。何より私の乳兄弟ですし、彼の事は赤ん坊のころから良く知っています。昔はそれはもう可愛らしい子で、私が彼に惚れたのは自我が芽生えてすぐの3歳ごろ。3歳ですよ? それ以来ずぅぅぅぅぅぅっと間近で見てきたんです。語ろうと思えばそれこそ1時間でも2時間でも語れます」


 光の灯っていない目で、パピヨンを礼賛するネペンテスに、キャロルは内心、あー、この子、こういう愛が重い系の子かぁと、ここまでやり遂げた根性が、何処から湧いてくるか分かった。


「あーはいはいストップストップ。貴女があの子をどれだけ慕っているかは分かったわ。あの子はある意味幸せ者ね。……それにしても、女の子一人に手玉に取られる策士様かぁ……」


「昔から、策士策に溺れると申します……。名前通り、美しい(パピヨン)ウツボカズラ(ネペンテス)にハマって出れなくなっただけですよ」


 そう言って、ネペンテスは笑った。

読了、お疲れさまでした。これにて、本作は完結です。


よろしければ、ページ下から評価していただけると嬉しいです。作者が喜びます。


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