ずっとキミだけを
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ブレイクが他の女性を選んだ事を決して責めるような事はしたくなかったのに、つい勢いで言ってしまった私。
でもブレイクから返って来たのはそれを否定する言葉。
「ち、違う違う!誤解だ!一緒にいたのは妻でも恋人でも婚約者でもないっ!!」
「……え?」
思いがけない言葉に、私の頭は一瞬機能停止する。
ブレイクは私の両肩を掴んだまま、真剣な眼差しを私に向けてくる。
「アイシャ、キミが見たのは俺の異母姉だ」
「えぇっ?だって……ブレイクは一人っ子でしょうっ?え…異母……?」
「そう。一年ほど前かな、その異母姉が魔力欠乏症になった事で互いに姉弟がいると分かったんだ」
「そんなつい最近に……」
「それで、異母姉の……ジェシカと言うんだが、そのジェシカの婚約者がこの街の人で、結婚する為にジェシカもここに移り住んだんだよ。俺は今、その異母姉夫婦の家に居候しているから、その関係で一緒に居るところを見たんだと思う」
「嘘……」
私は明かされた内容に驚き過ぎて思わずそう呟いていた。
「嘘じゃない。信じて、アイシャ。俺は、昔も今もずっとキミだけを想ってきた。キミと再び一緒にいられるように、それだけの為に生きてきたんだ」
「ブレイクっ……」
強い、澱みのない眼差しが一心に私を見つめる。
心を全部明け渡されているような、
そんな事をブレイクを見て感じた。
それでも私はこれまでの数年間分の、心の底に澱となって溜まった蟠りの所為でその言葉を素直に受け止める事が出来なかった。
「っ……だったら何故、急に手紙をくれなくなったの?魔術学園に通い出して世界が広がって、私の事なんてどうでも良くなったんでしょう?私よりも大切な人が出来たんでしょうっ?」
「アイシャより大切な人間なんてこの世にいる筈がない!……ちょっと待ってくれ、…手紙?何の事だ?俺は卒業するまでずっと手紙を出し続けていたぞ?むしろアイシャの方から手紙が届かなくなって心配していたんだ」
「え……?そりゃ…いくら手紙を出してもブレイクから返事が届かなくなって……私からの手紙が迷惑なのだろうと、出すのをやめたから……」
「それでも俺は、ずっとキミに手紙を出し続けたよ」
「嘘……どういう事……?」
訳が分からない。
何故ブレイクからの手紙が届かなくなってしまったの?
郵便事故?そんな何通も?
誰かが故意に隠した……?
薄寒さを感じ、顔色を悪くする私の肩を両手で掴んだままのブレイクが落ち着いた声で言った。
「……ちょっと裏がありそうだな。この件は俺が調べるからアイシャは心配しなくていい。大丈夫だ。何か問題があっても、俺が必ず守るから」
ずるい……どうしてそんな……優しい声で言うの?
私を安心させようと、守るように、私を包み込むように。
そんなブレイクに縋りたくなる。甘えたくなる。
私は黙ったままこくんと頷いた。
ブレイクは少しホッとしたようなため息を吐き、そして言った。
「じゃあ……誤解は解けたと思ってもいい?俺が十年前の約束を果たすために戻ってきたと信じてくれるか?」
「本当に……本当なの?ブレイク……」
「本当だよ。アイシャ、俺はキミと一緒に生きていきたい。この家はアイシャと暮らすために購入したんだ。どうか俺と、俺の妻となって、この家で一緒に暮らしてくれないか?」
「それって……プロポーズ……?」
私の瞳から、いつのまにか涙が溢れていた。
私はそれを拭う事もせずに一心にブレイクを見つめる。
するとブレイクは徐に私の前に跪いた。
「そうだよ。正真正銘、本当のプロポーズだ。アイシャ、あの約束を覚えているというのなら、頼むから俺と結婚すると言ってくれ。俺を世界一幸せな男にしてくれ……」
嘘みたい。
この思い出の家で、
初恋の人に再び求婚されるなんて。
答えは一つしかなかった。
だって私もそれを心から望んでいるから。
ずっと、ずっと望んできたから!
気付けば私は、ブレイクの胸に飛び込んでいた。
「もちろんお受けするわ!!あの約束の通り、私をあなたのお嫁さんにして!」