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プロローグ 思い出の約束
よろしくお願いします!
それは少女時代の淡い思い出。
本気で結ばれるなんて思っていなかった。
ただあなた以外、好きになれる人が現れなかっただけ。
もしかしたらあなたも?なんて、
少しでも期待していたわたしがバカだったという事。
あなたはもう、忘れたのでしょうね。
十三の時に交わした約束を。
口約束だったし、私たちは子どもだった。
「俺、将来必ずこの街に戻るから。その時にまだ、お互い一人だったら結婚しよう」
「うん……」
「約束だ」
そうしてあなたはこの街を去った。
それから十年。
あなたはこの街に戻って来た。
驚く事に魔法省の高官として。
かつてのあなたが言った通りに、生まれ育ったこの街に戻って来た。
だけどあなたは一人ではなかった。
あなたは隣に、静かに微笑む美しい女性を伴っていた。
「お互い一人だったら結婚しよう」
あの約束が、
果たされる事はないらしい。