思ってたんとちがう
先日友人から
「昭和感満載の小説を読んでみたいわ!」
と言われました。
「それって、スポ根的な感じで陰で男性が助けるやつ?」
「ちがうちがう!もっとこう、ね?」
「じゃあドジっ子とイケイケなバンドマンの話?」
「そうよ!それよ!70年代のスポ根系より80年代よね」
とアラサーちゃんに言われた。
アラサーが求めるもの。
それは80年代のバブリーな感じ。
「じゃあ、定番の『女の子を巡って喧嘩』とかするやつだよね?昭和の漫画ってそんなイメージだよね」
と言うと、すごく頷いていた。
「今のおしゃれ漫画では、女の子を巡って男の子は喧嘩しないもの。いいよねー『取り合いされる女子』。なんか昭和だけのものよね」
と言うので、バンドマンとドジっ子の話をゆるりと構想しようかどうしようかなと考えた。
そうだ!
相方の知り合いに、現役大学生のバンドマンがいる!
しかも、ちゃんとインディーズデビューして音楽もアップルミュー◯ックとかで聴ける!
早速、相方に相談してみた。
「ねえ、バンドマンの生態が知りたいから、あの大学生達に合わせてよ」
「え?バンドマンの生態?休学して、ルームシェアして、ゆるゆると好きなことしているよ」
いやそうじゃない。ファンとの交流とか、胸熱な体験とかが知りたいのさ。
むっとしながら、尚も相方に食い下がってみる。
これは私を会わせたくないんだね?
その手には乗らないぜ。
「嫌。そうじゃなくて、こう……ね。ファンを美味しくいただいて、彼女と喧嘩したとかさ。まだ22歳やそこらだからあるんじゃない?」
私の言葉に相方はゲラゲラ笑った。
「ないない!あいつらは元々、陰キャの集まりだから、本当に暗いのよ。バンド仲間は皆、元上場企業でかなり稼いでいた奴らだし。お金に困ってないし、人付き合い苦手だから大人しく生きてるよ」
「でも、下北沢とかのライブハウスでやってるんでしょ?なんかこう、あるはずよ!」
「あいつらがファンをお持ち帰りできるくらい、人付き合いできれば、もっと売れてるんじゃない?バンド仲間でルームシェアして、酒盛りして。それが幸せらしいよ」
と相方は言っていた。
ちょっと、それって若手芸人のイメージなんですけど。
昭和のバンドマンの、酒とタバコに、出待ちのファンってイメージは実際ないのかぁ。
思ってたんとちがう。
テーマ変えんとあかんな。
昭和のイケイケなイメージのお話ってどんな感じなのかな。
ホテルマン?
ネイサン。事件は起きません。
飛行機物とかはちがうんだよね。
なんか、このご時世、旅行業界は、華々しく描く自信がない。
あーあ。
やっぱりスポ根か。
熱血じゃないと、女の子を巡って殴り合いなんてしない。
……主人公が動物か?
メスを巡ってオスが戦う。
それってドキュメンタリーじゃん。
なんか昭和っぽいなって感じるのはやっぱりバンドマンだよね。
そう思いながら、本棚を漁ったけど、私の手元にある漫画は皆、平和な話ばかりだった。
ギリシャ人のお風呂の話とか。
うーん。
昭和っぽいって難しい。
短編で書こうと思ったけど、とりあえず棚上げだ。
おっ?
棚上げって昭和っぽいぞ?
「ねえ、昭和のロボットアニメっぽいのとかいいよね」
と、友人達に提案してみた。
「エヴァン◯リオンとか?それかなりみた」
ここで会話は盛り上がる。
「あっ!見てた見てた。私はパト◯レイバーとかも好きだよ。配信で最近見たけど懐かしかったわー」
でもみんなスルーしてエ◯ァの話をしている……。
知らないアニメなのかも。
そうか……。
ロボットを私の文才で表現できない。
これも棚上げですな。
昭和感。やっぱりバンドマンだよね。
そういえば最近、昭和感満載のとあるアーティストの新曲を聴いた。
相方が、車でかけたのだ。
あの長いギターソロのイントロ。
昭和の曲かと思いきや、歌が始まると今時のオシャレソングだった。
ギターソロ!
こういう昭和のバンドマンの話を聞いてみたい。
でも、周りには一人もいなく、陰キャのバンドマン達の知り合いにもいないそうだ。……元々陰キャなのだから、イケイケな友人がいないのかもしれないけど。
思ってたんとちがう