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クイナの冒険はこれからも続く!


 七つ目の秘宝の番人にして、神聖なる十番〝クラーケン・ゴールド〟。彼が示した最後の秘宝の在処。そこはクイナの家だった。


「フガァ……、遅かったじゃねェか」


 豚舎の塀にもたれ掛かって、葉巻をモクモク。〝ししょー〟は動きもせず、ただ円らな瞳だけをクイナに向けた。


「じゃんっ!何で最後の相手しょくざいが、ししょーなのっ!?」


「フガァ!!いつまでそんな脂の甘いことを言っている!?このチクショォォォォォォォオ界は〝弱肉強食〟が絶対の掟ェエ!!貴様も料理人を名乗るならァ、俺のミートで〝命〟を学べェィコン!!!」


 〝ししょー〟が突然柵を圧し折り、目の前のクイナとネロへ猪突猛進!

 二人を弾き飛ばしてしまう。


「じゃっ!?」

「何すんだこの豚ッ!?……てッゴハッ!」


 ズシンと地響き。〝ししょー〟の半径五メートルの土がめり込んだ。

 その中でネロは、見えぬ黒き力に圧し込められて、地面に伏した状態からどうしても動き出せない。それどころか、徐々にジワジワ、体の中身がすり潰されていくようである。


「フガァ!!ミートプレス〝三元頓サンゲントン〟!!貴様が俺を喰わぬと言うなら仕方あるまい。代わりに俺がオマエラをミンチにして喰ってやろうぞォ!!」


「じゃじゃんっ!!ししょー止めてっ!ネロが死んじゃうっ!!」


 異常な重力場の中で、クイナは立って〝ししょー〟の方へと一歩ずつ向かっている。彼女の膂力の秘密は、幼少期からこの過酷な環境に触れ合ってきた事に因る。


「フガァ!何をしている!?ヤツを見殺しにしたくなければ、早く俺のハツを止めて見せろォオ!!!」


 豚足が再び大地を揺るがす。

 すると圧力の黒さはうっそうと密度を増し、地面は更に深く沈んだ。圧倒的な力の前に、全てが等しくハンバーグ!と思われたが、クイナの伸ばした手がネロに届いた。


 二人で共に一つの鍋柄を握り、立ち上がる。

 その周りを、世界すら燃焼させる黒竜が渦巻いた。


 〝廬紗那滅却式ルシャナめっきゃくしき


 光であるクラーケン・ゴールドを倒すため覚醒した中華鍋〝火麟罩カリントウ〟の真の力だ。

 黒炎が過剰な重力を喰らい、クイナとネロは何事も無いかの様に、〝ししょー〟の元に辿り着く。


 〝ししょー〟は力の拡散を止め、広範囲に散らばっていたそれらを一つの型へと集約させた。〝地を星へと別つ魔剣〟だった。


「フガァ!!終末包丁〝魔歌錄マカロン〟ッ!貴様の〝火麟罩〟と同じく、太古の昔〝人間〟が、望むままに宇宙すら調理せんとした〝業〟の極致よォ」


「じゃァァア!そんな設定どォーでもイィィ!!クイナを見やがれェ!!!」


 真っすぐ向けられたクイナの目と同様に、暗黒の炎の中にも爛々と散り光るものがある。


「フガァッ!!これは失礼したラストプリンセスッ!そう、そんな宿業なぞ関係無くッ!我々は出逢って喰らい合うッ!!」



「喰らわねェェェェエ!」



 クイナはこの八日間。



「テメェなんか、クイナの血肉にしてやんねェ!」



 楽しい事も、変な事も、辛い事も、具だくさーんっ!あった。



「〝ししょー〟なんかァ、これからもクイナの〝思い出〟としてっ!」



 そんな日々の重なりが、これからの自分になってゆく。



「一生ォ一緒に生きやがれェェェェエ!!!」



 だから今日のケンカも、燃え盛る炎のように、クイナは全力で鍋を振るうのであった。




 じゃーん、おしまいっ!




ありがとうございました!

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