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サウンドバトル(?)


「なんっ、ナンっ、何っ、南っ、難っ、なんくるないさ~♪大難あっても、くるっと廻ってモ~マンタイっ!!」


〝じゃーん!〟と道中ゴキゲンうるわしゅうなヤンバルクイナの女の子〝クイナ〟。


「ウチナーなのかッ!?チュウカなのかッ!?ハッキリしやがれェッ!!」


 さっきからクイナにナンクセ付けてくるアンちゃんは、ヒョウ柄スーツのグラサン。お耳がピコピコしてるからって騙されるな!キナ臭さマシマシだ。


「じゃーんっ!さっきからしつけーんだよォ!!スカウトなら他所でやんなっ!!」

「誰がション便クセェヒナ鳥なんかスカウトするかッ!火を消せッ!火をォ!!」


 何を隠そう、クイナの歩んだ跡は大炎上!


頭に点滅ランプを付けた象人ガネーシャ様たちが、火を消すのに大行列だ。


「じゃーんっ!!こいつはいけねェ!火麟罩かりんとうを引きづり過ぎちまったぁ!!!」


 説明しよう!クイナの中華鍋〝火麟罩〟は伝説のぱおぺい。その漆黒の鍋が、自在に火竜を操ると云われるその由縁は、中華四千年の歴史油れきしあぶらがこびり付いていったせいで、ちょっと摩擦するだけで竜如きのファイヤファイヤーなのだ。


「パオォォォン!我、火元にやっと追いついたわァ!!」


 ガネーシャ様たちの御鼻がクイナに向けられる。


「じゃーんっ!まってぇ!!」

「バカヤロッ!油火に水かけたって…」


 バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥウ!!と水が四方八方から一斉にぶっ掛けられた。大量の水でクイナの姿は見えなくなるのも一瞬。紅蓮の火竜が全ての水を呑み、勢いよく天へ逆巻いた。


「パオォォォン!?」


 ガネーシャ様たちは、大蛇のように暴れ回る炎にたじろいで大撤退。


「アチャチャチャ!?どーすんだコレッ!?」

「じゃーん!こうなったら決マッチョルッ!!えくすぽろーしょん酸素ばいばーいっ!!」


 黒合羽のぶかぶかポッケから、クイナが取り出すは手りゅう弾。八重歯でガジッとピンを抜き………。


「え?ちょ…まッ!」



 バッゴー―――――――――――――ン!!!




「じゃーん!火消にはそれイジョーの話題が要るってことヨ~」

「テメェは防護羽毛被ってから大丈夫かもしれねェが、俺はクロヒョウになっちまったじゃねェか!!」

「ベタに結果オーライっ!!」


クイナと豹人ネロは爆風でふっとんだ先は、首領鬼ドンキマウンテン頂上〝一角城〟。その天守のシャチホコの横で、瓦屋根に頭から刺さっているのだ。


「じゃーん!これぞ〝文字数節約の術〟~!!そういう訳で早速勝負じゃテメェ!!」


 屋根から突然顔が出て来て、呆気に取られていた女城主の鯨人イッカク丸。天井まで貼る工事費をケチったのが禍であった。


「な、何なんだオメェ!藪から棒にィ!!家来呼ぶぞゴラァ!」


 褐色銀髪一本角のイッカク丸は、赤目に涙を溜めて必死にそれを溢さない様に虚勢を張った。


「じゃん!るっせェー!テメェがボッチなのは知ってんだよォ!!」

「ひぃ!!」


 イッカク丸は事実、首領鬼ドンキマウンテンの領主だ。実際、この山には様々な角をお持ちの畜生が住んでいる。しかし、勘違いしてはいけない。



〝借地権〟は強いのだ。



イッカク丸は、いつも領民に頭を下げて家賃を回収しに行く。


それが現実だった。


「じゃーん!お邪魔しまーーーーーーーーすっ!!」


 狭い穴をスッポンと、黒い強盗が畳の上にズッドンと降臨した。


「うわァァァ!!許してくださいっ!ハッタリしてずみませんだしたぁ!!」


 後ろに仰け反り、後転。そのまま流麗に土下座に移行したイッカク丸。


「何だよ?噂に名高い〝鬼姫〟って、買い被りじゃねーか」


 黒焦げスーツのネロが、むき出しの梁を伝ってスルスル降りてくる。


「そうですっ!そうなんですっ買い被りです~!ここに有る物なら何でも差し上げますからっ!!どうかお命だけわ~!!」


「じゃじゃん!うっせェ!そんなんだから、いつまで経ってもボッチなんじゃテメェはよォ!!その後ろに飾ってある金棒はいつ使うんだっ!?」


「………い、いつでしょう?」

「じゃーんっ!!今だろォ!?強盗だってなァ!直ぐ入れて直ぐ盗めりゃ楽しくねェんだよっ!トラップギミック満載だったり、住人が強かったりすると燃えるんだっ!!そんで楽しかったら〝またあの家行こ~〟って思うだろ!?そんで芽生える友情ってヤツも有りなんじゃねェんかっ!!?」


「っ!!」


 イッカク丸がハッとした表情で顔を上げる。


「いや、無しだろ」


 ネロはマジかよと思う。



 イッカク丸は立ち上がり深呼吸。両のほっぺを大きく叩いて気合注入。


「これは失礼したな客人っ!百の悪鬼住まう御岳の王〝イッカク丸〟。今より正当防衛でオメェを成敗してやるぜェ!!」


 束ねた白銀の髪と共に、ぐるりと一回転。その流れる所業で後ろの金棒を掴み、今一度クイナと対峙する時には、大股で片腕を上げての歌舞かぶいた構え。


「じゃーん!上等だテメェ!!しかし文字数の都合上〝擬音バトル〟でいくぜェ!」


 中華鍋〝火麟罩かりんとう〟を振るって炎を舞うクイナ。


「いいだろォ!雅じゃねェか!!」


 背丈以上ある鍋を片手で持ち、なお軽業師の如くの身の振り。クイナが鳥なだけあって高い位置からの攻撃がくると読んだイッカク丸は、低い姿勢で迎え撃たんとする。


「KYOTOじゃねェ!キンキンキン!の方だァ!!」


 読みのとおり、クイナは高く跳んでオーバーハンド。滝のような炎をイッカク丸に撃ち付けた。


「なるほどっ!バンバンバ~ン!!」


 イッカク丸は横に転がり、炎に爆ぜ飛ぶ畳を盾にして突撃する。


「じゃ~ん!?ギュルルルル!キュイ~ン…バッシュ~!!」


 炎を真横に薙ぐクイナ。炎竜が二人の間を遮るが、構わずイッカク丸はクイナを抑え込みに掛かった。


「オラァ!シュンッ!シュンッ!グサッ!!」


 しかし、突進した先のクイナは陽炎。実像はイッカク丸の後ろに在り。


「じゃじゃじゃ~ん!ニュルニュルニュ!ドババババ~!!」


 振りかぶるクイナ。背後を捕られつつも、脇の下から金棒を突き出すイッカク丸。

 油断したクイナは紙一重。

 そのまま仰け反り回避して、三回のバク転で後退。態勢を直した。


「ちょこまかしゃらくせェ!!スン…シュバババババ!チャキン☆」


 バク転時ですら、振るわれれば発生する火竜。

 その荒ぶる尾を掻い潜り、イッカク丸が着地のクイナを強襲する。


「じゃじゃっ!?喰らうかァ~!グニャリ…ドリドリドリドリィ~!!」


 撃ち付けられる金棒を、バックハンドで体ごと回転し弾き返すクイナ。

 構わずイッカク丸は腰を低くし、金棒を浮いたクイナ目掛けて振り回し続ける。


「いい加減観念しろォ!!ゴウッ!ドゴンッ!ドガガガガ~!!」


 一方のクイナは、鍋底でそれを受けては流してクルクルクルリと、相手の力を利用し空中で回り続けた。


 名付けて〝自分フライ返し〟!


「じゃ~ん!まだまだァ!!え~と!え~とぉ………ペケペケペケペケペケペケペケペケペケ~!」


「くっ、クルリンっ!ザン……って、何だ〝ペケペケ〟って!?どういう状況だっ!!」


 クイナの自分フライ返しがタイミング合わずに、撃ち飛ばされて壁に激突した。


「ははっ、今オメェ、擬音攻撃が途絶えたなっ!私の勝ちだっ!!」



 壁の穴から出てきたクイナは口笛ピーピー。


「じゃじゃ~?気のせいでございまするよぉ~?」


「何をぬけぬけとォ~!オイっ!審判っ!!私の勝ちだなっ!?」

「じゃーんっ!クイナはビデオ判定をよーきゅーするショゾンでありますっ!!」


 二人の視線が、同時に黒い豹人へと向いた。


「…………」


 豹人ネロは考えていた。


 長い沈黙。





 末に、彼の口が開く。



「いや、どう考えても擬音要らなかったろ。リアルファイトしてたじゃん」


「…………」

「…………」


「せめて、行動と擬音合わせろよ。聴いてて混乱するわ」


「…………」

「…………」


 ダメだしを受けた二人は、互いの顔を見合わせて


 

〝そっか~やっぱり~〟


 

 と、同じことを思ったそうな。



 ここは、畜生な獣人住まう「チクショォォォォォォォオ界」。


 会話と行動で別々のバトルを繰り広げても、二倍お得にはならないらしい。



ありがとうございました。

よろしかったら、タケノコ分けてもらえると励みになります。

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