優秀な刑事
殺人犯を追い詰め、逮捕した。
これで今年になり、逃走犯を捕獲したのは3人である。年内にはもう2~3人は堀にぶち込めるだろう。
俺は、昔ながらの足を使った地道な聞き取り調査はもちろん、最新の機器も全て利用し、犯人逮捕に情熱を燃やしていた。
成績もよいため、内勤勤めを上司から進めら得ていたが、俺には泥臭い現場仕事が天性のものだと考えてていて、誘いは断り続けていた。
俺が追いかける星は、皆がやりたがらない案件ばかりである。
にもかかわらず、俺へ向ける周囲の目は冷たかった。
この日逮捕した殺人犯は、複数人の男に監禁され、数日に渡りレイプされた少女の父親である。
娘を嬲る男たちを、落ちていたナイフで刺したのだ。
そして、そのまま逃走---
この凶悪な殺人犯を見つけるのは容易だった。
親戚の家に匿われていただけなのである。
俺はこんな調子で、復讐して犯行に及んだ連中を執拗に追いかけ、追い詰め、牢屋に送っていた。
先のレイプされた娘は、心と体に大変な傷を負っていた。かつ妊娠までしていて、気づいたときには中絶可能月を超えており、今では懸命にレイプ犯の子供を育てている。
おまけに父親が殺人犯だ。
一家離散するのは目に見えている。もしかしたら、自ら命を絶つかもしれない。
「××さん。どうして、被害者をさらに追い詰めるような犯人ばかりを追いかけるんですか?」
生意気な新入りが、俺に意見してきた。
「被害者とは殺人犯に殺された人のことか?」
「違います。レイプされた女の子のことです」
「俺は、刑事だ。犯罪者を捕まえているだけだ」
「そうですけど、それならもっと一般市民の安全を脅かす事件を解決するほうがいいんじゃないですか?」
「だから、俺はこういった事件を担当しているだよ」
「××さんは私の話を理解していませんね」
「いや、理解していないのはお前の方だ」
新入りははぁ~とワザとらしい溜息を吐きながら、俺から離れていった。
新入りはもっと凶悪な事件を解決せよと言っていた。
甘い。所詮は青二才だ。事件を未然に防ぐことこそが、最も重要なのだよ。
確かに、俺が逮捕した犯人たちの家族は、さらなる地獄に突き落とされるだろう。
泣き叫び、この世を恨みながら、自死を選択していった連中・・・
彼らの理不尽な不幸を目の当たりにすると、私の中の悪魔は満足して、しばらくはおとなしくなる。
そうだよ。新人君。俺が刑事で、この仕事をしていなければ、大量殺人犯になっていたのさ。
俺は凶悪な事件を未然に防いでいる、優秀な刑事なんだよ。




