夢で忌々しげに呪う
とある人物が言った。「お前は英雄だ」と。
それは本当なのだろうかと、とても疑わしい。だからこそ、「本当に?」と質問を投げた。そしたら、その人物は「もちろんだ」と大きく頷いた。それは何も、彼だけではない。周りにいたみんなが「そうだぞ」、「もちろんだとも」、「お前が真の英雄だ」と嬉しい言葉ばかり――? 嬉しい言葉? これが?
――そんなわけあるものかっ。
事実を知ったその日に逃げた。暗闇だからこそ、周りが見えないことを利用して走った。それでも追手が来るのは当然だった。後方に見える松明の明かり。その火の光は、逃げられると思うなよと言っているような気がした。
自分を呼ぶ声が聞こえる。その声音は明らかに怒り心頭。いつもの声じゃない。
自分がいかに安全にして生きるかどうかを決断するときは――己の本音に訊くよりも、反射に任せた方が時間短縮になると思えた。なので、捕まえようとしてくるやつらを皆殺しにした。いや、追い掛けてくるやつだけ殺しても、不十分だと理解している。この島にいる者全員が哀れだと思う。そのため、一度集落に戻って島人全員が死ぬように仕向けた。
失うものは何もない。親も、家族もいないから。いや、正確にはいなくなったという方が正しいだろう。今夜限りで家族ごっこはおしまいだからだ。
常に誰が正しいか。それは、今を通して知った。自分以外の誰かに身を委ねるなんて。信じるなんて、クソくらえだと。
こんな島、出ていってやる。海へと飛び降りたとき、しくじりに気付いた。人の声が聞こえてきたからだ。やつらはまだまだいた。殺したと思っていたのに。すぐにでも陸に上がって、行動するべきだろうか。否、それは不可能だった。あいつら、こちらが生きているのであれば、いくらでも痛めつけてもいいという考えを持っていたから。
だったら、逃げてやる。逃げて、逃げて、逃げまくって、見えない場所に。手の届かない場所で――。
「俺はこの島じゃないどこかで死んでやる!」
――こんな島なんて、呪われちまえばいいんだ。




