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夜明けの光を待つ  作者: 池田 ヒロ
第四章
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夢で忌々しげに呪う

 とある人物が言った。「お前は英雄だ」と。

 それは本当なのだろうかと、とても疑わしい。だからこそ、「本当に?」と質問を投げた。そしたら、その人物は「もちろんだ」と大きく頷いた。それは何も、彼だけではない。周りにいたみんなが「そうだぞ」、「もちろんだとも」、「お前が真の英雄だ」と嬉しい言葉ばかり――? 嬉しい言葉? これが?


――そんなわけあるものかっ。


 事実を知ったその日に逃げた。暗闇だからこそ、周りが見えないことを利用して走った。それでも追手が来るのは当然だった。後方に見える松明の明かり。その火の光は、逃げられると思うなよと言っているような気がした。

 自分を呼ぶ声が聞こえる。その声音は明らかに怒り心頭。いつもの声じゃない。

 自分がいかに安全にして生きるかどうかを決断するときは――己の本音に訊くよりも、反射に任せた方が時間短縮になると思えた。なので、捕まえようとしてくるやつらを皆殺しにした。いや、追い掛けてくるやつだけ殺しても、不十分だと理解している。この島にいる者全員が哀れだと思う。そのため、一度集落に戻って島人全員が死ぬように仕向けた。

 失うものは何もない。親も、家族もいないから。いや、正確にはいなくなったという方が正しいだろう。今夜限りで家族ごっこはおしまいだからだ。

 常に誰が正しいか。それは、今を通して知った。自分以外の誰かに身を委ねるなんて。信じるなんて、クソくらえだと。

 こんな島、出ていってやる。海へと飛び降りたとき、しくじりに気付いた。人の声が聞こえてきたからだ。やつらはまだまだいた。殺したと思っていたのに。すぐにでも陸に上がって、行動するべきだろうか。否、それは不可能だった。あいつら、こちらが生きているのであれば、いくらでも痛めつけてもいいという考えを持っていたから。

 だったら、逃げてやる。逃げて、逃げて、逃げまくって、見えない場所に。手の届かない場所で――。


「俺はこの島じゃないどこかで死んでやる!」


――こんな島なんて、呪われちまえばいいんだ。

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