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ホワイトランク

 


 翌朝、ジュオカの街へと戻った俺たちは依頼品や素材を金に替え、早速レベル上げをするために、討伐依頼(クエスト)を受注した。ギルドの周辺では先生達の調査の結果が発表され、魔王復活の予兆で少し慌ただしかった。


 レベル15になった俺たちは、ホワイトランクの冒険者となった証に白色のプレートが渡された。

 このギルドの冒険者ランクはホワイトから上はブラックまで9段階のランクが存在する。ホワイトランクはレベルが15以上という条件だけだが、次のグリーンランクになるにはレベル30以上とそのレベル帯のモンスターの知識の試験がある。

 その上のブルーランクはレベル50以上、依頼(クエスト)達成数と試験用のクエストがあり難易度は上がる。厳しいと言っても、レベルが大幅に高い場合は文字通りの力ずくで試験クリア出来てしまう事もあるみたいだ。

 そんな事よりも俺たちは、なんとも言えない空気だ。


「なんか呆気なくプレート渡されたわね」


 慌ただしくなってしまったせいか、ホワイトランク昇格は事務的にギルドの担当者から白いプレートを3人分渡されただけだった。


所詮(しょせん)、新米も新米。俺たちみたいなのは沢山見てきたからいちいち盛大になんて、祝ってくれないんだろ」

「しかたないよな」


 思ったのと違う……なんて文句を言っても仕方ない、切り替えて出かけなきゃなと考えてギルドを出た俺たちの前に


「こうき君っ」


 目の前から聴こえるこの声、忘れるもんか。


「あっ! ホワイトランクになったんだねおめでとう」


 村本だ。昨日と同じお店の用事だろうか? 書類を持ってギルドへとやって来た村本。

 最高の笑顔だ。


「あ、ありがとう」

「なによぉ、コーキだけじゃなくて私とユートもいるんですけど〜?」

「ち、違うよ、こうき君がたまたま先頭にいたから……」


 確かに、俺を先頭に百華と悠人は少し離れているし下を向いてうなだれてた。


「へぇ〜」

「も、ももちゃんもおめでとう。ゆうと君も」

「なんかついで感満載だな〜」

「ち、ちがうよ〜」


 2人が冗談冗談と言ってほっとしたように村本が言った。


「魔王……復活するんだってね」

「ああ、朝からギルドも慌ただしいよ」

「このプレートも"ほれっ"って感じに渡されたから、達成感も何もないのよ」


 ブツブツと文句を垂れる百華、すると村本が俺の左脇腹あたりの服を見て言った。


「これ……昨日の依頼(クエスト)で?」


 実は昨日のゴブリンに棍棒で脇腹を殴られた時に()れてしまったのだ。

 傷や痛みは魔法やポーションでほぼ治るが、服の擦れまで直せない。


「あ、帰りにゴブリンに出くわしてね。なんか強くって一発食らったんだ、たった1匹に苦戦した」

「ゴブリンがそんなに強かったの?」

「ああ、コウキの魔法を避けるし、棍棒で叩き落とすし……強化種って強いんだな」

「魔法を……」


 村本は冒険者ではないが、ギルドに出入りもしているし。この世界の人間は魔物の知識は基本的に持っているはずで、ゴブリンが魔法を叩き落とす、なんて聞いて少し怖いくらいな表情をしているのは他人事ではないからだろう……


「ユートなんて頭に一発頂いたんだから〜バカよねぇ〜油断しすぎ」

「ええーーっだ、大丈夫なの!?」


 そんな真剣な空気が百華によって見事に崩れたが、村本の反応も反応だ。

 小さい頃、転んで血が出ただけで大騒ぎしてた村本が懐かしい。


「大丈夫大丈夫っ、見ての通りなんともないぜ。死んだフリされてよ、マジ焦った」

「それで、そのゴブリンは倒したの?」

「いや、逃げられちまった、あのまま戦ってたら俺かコウキ危なかったな……運が良かった」

「……ならいいけど……ホントに皆んな気を付けてよ……」

「大丈夫よっ、今度出くわしたらぶっ飛ばしてやるんだからっ」

「もう、ももちゃんは……」


 そんな他愛もない会話を続け"あっいけない"と村本が去っていったのは10分後くらいだっただろうか……俺たちはクエストへと向かう為馬に乗った。



 -----



 今日、俺たちが受けた依頼(クエスト)電怪鳥(サンダーコンドル)の電気袋とトサカの採取だ。

 電怪鳥(サンダーコンドル)は文字通り電撃を放つ鳥で、倒して背中の首の付け根のあたりにある電気袋と頭のトサカを採取する。

 昨日行った森の奥に聖大樹(ビッグツリー)と呼ばれるモミの木に似ていて、大きさは通常の7倍も大きな木が自生している場所があり、そこに奴らの巣がある。ちなみに、谷口先生が調査していた魔流泉(まりゅうせん)よりも森の奥にある


「コウキ、今だっ」

「ラピッドファイアッ」


 木々を飛び回り、四方八方から飛んできて電撃を放つ鳥。電怪鳥(サンダーコンドル)を悠人は文字通りの盾となり引きつけていた。

 その間、百華はバフをかけるが、遠距離攻撃手段を持っている俺がいかに早く電怪鳥(サンダーコンドル)を仕留められるかにかかっている。


 ラピッドファイアもファイアボールも、杖から放ち直線的に飛んでいく魔法だ。

 悠人にまっすぐ飛んでいく電怪鳥(サンダーコンドル)には、悠人の背後から魔法を放てば迎撃できる……が、縦横無尽(じゅうおうむじん)に飛び回る電怪鳥(サンダーコンドル)にはなかなか当てるのが難しい。


 悠人の引き付けるスキル、ヘイトアテンションⅠも有効範囲が半径5メートルなので、上空から飛来する敵には範囲外になる事が多い。


「敵を(はば)め、(ひかり)のしょ障壁(しょうへき)


 百華の魔法、光の障壁は文字通り百華の前方に1辺3メートルの正方形の光の壁で敵の魔法や弱い物理攻撃を防ぐ為の魔法だ。巫女職の固有の魔法らしい。

 俺の背後に迫る電撃を見事に防いでくれた。


「魔力値もそろそろマズイわよっ」


 未だに9羽の電怪鳥(サンダーコンドル)が俺たちと対峙している。1羽のレベルは15、俺たちと同じだ。

 始めは6羽いた電怪鳥(サンダーコンドル)は、巣が近いせいか、仲間がどんどん集まり20羽を超える数がとなった。敵の数が多い分、直線的に飛んでいく俺の魔法も当たりやすかったのだが……まぐれはここまでだ。


「あんた魔力操作(まりょくそうさ)できないの!?」

「魔力操作?」

「嘘でしょ……バカなの?」

「なっ……」


 こいつ、バカって言いやがったぞっ! アイリスにもバカって言われたけど、それよりも1.5倍くらいムカつく


「い、いいからその魔力操作ってのはなんなんだよっ」

「魔法をコントールして、少し曲げたり威力を調整したりするのよっ」

「それはどうやるんだよ?」

「念力みたいにやるのよっ!!」

「説明になってねーよバカっ」

「あーっバカって言ったっ! 魔術師なのにそんな事も知らないあんたがバカよっ!」

「バカにバカって言って何が悪いっ、だいたい百華だって魔術師みたいなもんだろうがっ!」


 ーバチッバチッバリバリバリッ


「「うわぁっ」」


 言い争う俺と百華の間に襲う電撃を間一髪で避けた。電撃をやり過ごして体制を立て直すが、またサンダーコンドルの数が2羽増えてしまった。


「一旦引こうっ」


 体力値が半分まで減っている悠人が撤退を提案した。正直、分が悪い。俺と百華の魔力値も1/3をきっているし、アンディも息をあげている。


 ーボンッ

 と、百華が鞄から一つの黒い玉を前方に投げつけて、黒い煙が発生した。


「走ってっ」



 忍者かよ……

 ホワイトランク最初の戦闘は敗戦だ。




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