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エピローグ

 あの戦いの後、僕ともみじは一躍日本全国で有名人になった。ネット上では誰かが僕ともみじの黒川との戦いの一部始終を動画にして配信した。それが凄い再生数を稼いだらしい。また、ヒーローや超能力関係の掲示板ではあの戦いや僕についての専用スレッドが立てられたりした。


 新聞やテレビの取材陣も僕の家に押しかけてきた。その度に爺ちゃんが追い返してくれたけど家の前にはまだテレビクルーが陣取っている。


 今日は始業式だ。家を出なくちゃいけない。でも外には取材陣がいる。

 テレビ局の人間を邪険にするわけにもいかないしなぁ。まったくめんどくさい。


 家を出ると早速取材陣に囲まれた。


「おはようございます」


 挨拶をしてから瞬間移動で取材陣の包囲を抜ける。そして走った。


 追いつかれる前に学校に駆け込む。


「はぁはぁ、結構疲れた」


 なんというか精神的に。

 だけど学校に入ってからも問題は続いた。


「田中だ!」


「この前のヒーロー!!」


 学校の生徒たちに囲まれる。しまった。学校の子たちにも僕が戦っていたことは知れ渡ってしまっているのだ。


「ちょっと待って! 通れない!」


 思わず悲鳴をあげる。でも人の輪はより狭くなる一方でもはや押しつぶされそうなほどだった。


 このままじゃマズイ。

 僕は上を向いた。そして瞬間移動を発動する。上空へ飛んだ。そのままもう一度瞬間移動して校舎の屋上へ移った。


「はぁ、やっと逃げられた」


 腰を落として溜息を吐く。人気者になるのも良いことばかりじゃないな……。


「あ、というか自分のクラスが分からない」


 クラス分けが書かれた紙は校舎1階の掲示板に張り出されている。また、戻らなくちゃいけない。

 僕はうなだれた。


 その後、散々なトラブルに会いながらもなんとか自分のクラスが一組だと確認し、教室に滑り込む。


 教室に入ると流石に僕を囲む人は少なくなった。


「あっ、太郎じゃない!」


 教室には涼子がいた。


「涼子! 今年は同じクラスなんだね!」


「あたしだけじゃないわよ。もみじやミチルも同じクラスだったわ! あとついでに京極と東雲もね」


 それは朗報だ。というか京極と東雲は無事だったんだな。ずいぶんと痛めつけられていたけど。


 僕が涼子と話していると教室にもみじが入ってきた。


「うぅ、大変でしたぁ〜」


「あ、おはようボス」


 その後ろにはミチルもいる。


「おはよう。もしかしてもみじもやられた?」


「はい。皆さんに囲まれちゃって全然動けませんでした……。ミチルさんに助けてもらえなかったら教室にも辿り着けなかったと思います……」


 それはナイスだミチル。

 四人で会話をしていると誰かに背中を押された。


「田中!!」


「山田! 佐藤!」


 振り向いて見ると山田と佐藤がいた。


「ヒーローTV見たぞ。まさか田中が超能力者だったとはな」


「うっ、黙っててごめん」


 佐藤が半目で僕を見る。嫌われちゃっただろうか。


「なーんてな! 俺らも田中のことは応援してたぜ! よく頑張ったよ田中は!!」


「せやせや! 佐藤なんかヒーローTVを見ながら泣いとったで!」


「うっせえ! それは言うな!」


 良かった。いつもの二人だ。僕は二人の僕に対する態度が変わらなかったことにとても安堵した。


 そうしていると教室に先生が入ってきた。先生の合図で始業式の為に体育館に移動する。


 *


 そんなこんなで始業式も終わり放課後になった。


「今日は皆さんにビッグニュースがあるんです!!」


 放課後の教室に僕ともみじ、涼子とミチルがいた。教室の外には僕ともみじを一目見ようと野次馬が集まっている。


「なんと! 喫茶店の事件の表彰が決め手となりヒーロー部が正式に部活動として承認されました!!」


「な、なんだってー!」


「いえーい! やったわねもみじ!」


 僕と涼子が声をあげる。ミチルはパチパチと手を叩いていた。


「そしてなんと部室まであります。部室の鍵はすでに貰っているので早速行きましょう!」


 僕たちは教室を出た。放課後になって皆んな部活動やら用事やらがある為か僕らを囲む野次馬は数を減らしていた。そのためスムーズに移動することが出来た。


 そして部活棟の二階についた。


「ここです」


 もみじが鍵穴に鍵を入れ回す。


「皆さん、心の準備はいいですか? 開けますよ?」


 妙にもみじは勿体ぶっていた。もみじ自身のテンションが相当上がっているのだろう。いつものもみじらしくはないが微笑ましかった。


「それでは、開けます」


 もみじがドアノブを回してゆっくりと開ける。開けた先の部屋は物が少なく殺風景だった。


「!?」


 そしてそこには予想もしなかった人物がいた。京極と東雲だ。二人とも部屋の中央にあるテーブル横の椅子に座って寛いでいる。


「え!? なんでここに二人がいるんだ!?」


 思わず声を上げる。

 すると京極がこっちを見て欠伸をした。


「ふわぁー。やっと来たか」


「遅かったわねー。待ちくたびれちゃったわー」


 何故二人がいるのか、驚き戸惑いつつも部室の中に入る。


「ここはヒーロー部の部室ですよ?」


 もみじが顔を傾げて言った。


「分かってるよ」


 するとダルそうに京極が答える。


「じゃあなんでいるのよ!」


 涼子がキレ気味に言った。涼子は京極との相性が悪いので自然と言い方がキツくなる。


「俺たちもヒーロー部に入ることになったんだよ。面倒くせぇけどな」


「もう、エリったら面倒くさがらないの。ちゃんと説明しないと話が進まないじゃない」


 東雲が呆れたように首を振った。


「どういうことなのか説明してよ東雲さん」


「いいわよー。まずだけど、このヒーロー部はヒーロー省公認のヒーロー部ということになったわー」


「ええっ!?」


 ヒーロー省公認?


「そう、だから監督役として私とエリがヒーロー部に入ることになったのよー」


「ちょっと待ってください! 喫茶店の事件の活躍でヒーロー部が認可されたんじゃないんですか!?」


 もみじが東雲に言う。


「それは建前ねー。この前の黒川事件。あれによってあなた達の力をヒーロー省の管理下に置くことが決定されたの。でもそれは秘密裏に行うことになったから、その結果、ヒーロー省公認ヒーロー部の発足ってことになったのよー」


 驚きの連続だ。僕たちはどう反応していいか分からず立ちすくんでしまっている。


「そしてもう一つ、言うことがある」


 京極が椅子から立ち上がって僕の前にまで来た。そして懐から何かを取り出す。


「コレをくれてやる」


 渡されたのは金色のカードだった。なんだこれ。


「これはゴールドヒーローの証となるカードだ」


 なんだって?


「つまり、お前は今日からゴールドヒーローだ」


「僕が、ヒーロー?」


 金色のカードを見る。

 そこにはゴールドヒーロー≪イモータルニンジャ≫と書かれていた。


「ようこそヒーローの世界へ」


 京極が僕に手を差し出す。


「……よろしく。先輩」


 僕はその手を力強く握った。


 こうして僕たちの誘拐騒動、そして中学一年生が終わった。これからは二年生になる。だけどこれからも騒動は続いていく。そんな予感が僕の中にはあった。


「ちょっとそのカードあたしに貸してよ太郎!」


「わ、私も見たいです!!」


「先にボクだよね? ボス?」


 でも当分は穏やかな日常が続きそうだ。僕は三人の顔を見てニッコリと笑った。


「ダメ。誰にも貸さない」


「「「ケチー!!」」」



 おわり


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