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チート品作るって大変なんですね

カーン、カーン、カーン、カーン

遠のく意識の中、おいらは身体が冷えていくのを感じていた。あーこのまま死んでいくのかなぁ。1時間前、いつも通り朝ごはんに、フレグラとコーヒー牛乳を食し、愛車のバイクに乗ってツーリングに出かけおいらは、つい1分前に交通事故に巻き込まれ、その後運悪く線路内に倒れたままなのである…。もうすぐ電車が来るんだぁ、40年という人生がここで終わってしまうんだ。私は静かに目を閉じ、迫ってくる電車の警笛音を聴いていた。すると次の瞬間、キュイーンという機会音とともに、ターミ◯ーター似のロボット兵士もどきが目の前に現れ、おいらのことをいずこかに連れさったのである…。

いやー危ないところでしたねぇ

そのサングラスをかけた兵士は甲高い声でおいらに話しかけてきた。おいらの身体は…あれあれ、なんだかぶくぶくしてる…、なぜか目の前に鏡があるからのぞいてみると、ぎょえー、タコみたいに8本足か?しかもスライムみたいな身体になってるんですけどー!色はなぜか白いし。まあ、強いて言うならドラゴン◯エストのホ◯ミンの巨大バージョンである…。

ここはいったいどこなんだろうか、おいらは朝起きてからのことを必死になって思い出してみたがよくわからない。あっもしかして夢なのか?と思った瞬間、そのサングラス兵士はおいらに向かって、『あっもしかして夢なのか?』って考えましたね。おめでとうございます、これは夢ではなく、あなたは今異世界に移住されました。


あの日からちょうど1週間が過ぎようとしている…。おいらは未だ自分の身体の使い方すらよくわかっていない。体調は約2メートル、体重は100キロぐらいはあり、身体の大部分はスライムみたいに水分たっぷり含んだコラーゲン体で、手足は8本かと思っていたが、よく数えると9本あった。ジンいわく、あ、ジンっていうのはあのサングラス兵士の名前ですが、たまに7本足を見かけることはあるが、9本足は見たことがないそうだ。しかもおいらは前の世界での名前がどうしても思い出せないため、ジンから、『お前はこの世界はでは珍しく白い生き物だからユキだ。』などと勝手に名前もつけられてしまったのである。この珍獣おいらには性別がない。まあ前の世界での性別も今となっては全くわからないことにはなるのですが…。

ここで一旦整理してみよう。おいらがいるこの世界は、いわゆるファンタジーの世界で、人間や動物やモンスターや妖精が入り乱れているなんでもありありの世界である。魔法はもちろん剣術、体術、スキル技などなんでもありありなのだ。そしておいらのいる村は、ジンの村という名前で西ウッド王国にあるらしい。あのジンことサングラス兵士が村長をしているのは、どうも腑に落ちないけれど…。そして、おいらはそこでなぜか鍛冶屋にさせられてしまったのだ。前の世界では図工でベニヤ板の本箱ぐらいしか作ったことがなく、図工は常に3の成績だった。(そこはなぜか記憶があるのです。)特に何も作ったことがない不器用なおいらが…。

またおいらこと珍獣は、この世界に移住した者がよくなるらしく、こちらでは『ターコイズ』と呼ばれており、主に鍛冶職人として働いているそうだ。なので一応おいらも今は、ターコイズの一員として鍛冶職人になったのである。ジンの村にはおいら以外に3匹のターコイズが移住してきており 、2匹は鍛冶職人として、もう1匹は遊び人?として働いているのだ。遊び人についてはまたの機会に触れることとして、まずは先輩ターコイズである鍛治職人のカイさんとタマゴんさんについて、解説していこう。

カイさんはもうこちらの世界に来て数年が経っているらしく、ベテラン鍛冶職人で、村人からの信頼も厚く、兄貴分もしくは姉御肌(ターコイズには性別はないため)のような存在であり、おいら達鍛冶職人のリーダー的存在である、色は赤と黒の水玉模様で以外に可愛い感じであるが、性格はおいらとは違って自分に厳しく真面目タイプである。しかも足は7本であり、ユニークターコイズ(足が8本以外は特別な能力があるためそう呼ばれている)である。

また、タマゴんさんは半年前くらいにこちらに来たため、まだまだ見習いの鍛冶職人さんであるが、性格は底なしの明るさで、おいらは達のムードメーカー的な存在である。足は8本であり、色は黒一色である。なぜタマゴんさんなのかというと、こちらの世界の卵は黒色が一般的であるからなのである…。


カーン、カーン、カーン、カーン

なんとなくおいらはハンマーを叩いて、銅とおぼしき鉱石をカイさんの動きを真似て打ってみた。

すると、

    ズキューン

激しい光のイフェクトが発動したと同時に、

    パンパカパーン

宝くじが当たったようなおぼしき音がなり響き、

    スペシャル銅の剣➕12が出来ました!

とどこからともなく天の声が聞こえてきた。

なんなんですかね?

おいらはリーダーであるカイさんにきいてみた。

すごいよユキ、やったね。チート品が完成した合図だよ。いやー、初めて作った銅の剣がチート品になるなんて、ビックリだねー。

じゃあ、まだ材料あるからもういっちょいっとく?

軽いノリで言われたら引くにひけなくなり、おいらは調子に乗って

やっときますか!

なんて言っちゃいました。

カーン、カーン、カーン、カーン

ズキューン

パンパカパーン

スペシャル銅の剣➕18が完成しました!

あー、そうなるんですね。おいらが作る全てのものはチート品になってしまう運命なのである…

カイさんの方をハニカミながら振り返って見ると、驚きのあまりカイさんの体にあった水玉模様は消えており、口は半開きになっていた…


いやーとんでもない新人が現れたもんだねー。

カイさんは隣村から来た人型商人であるパイさんに向かって自慢げにおいらのことを話している。

あの一件以来おいらは鍛冶屋として有名になり過ぎてしまい村人たちからは一目置かれる存在になった。

おいらが作った銅の剣は二本、一本目は

    スペシャル銅の剣➕12

これは、一般的な銅の剣が

    攻撃力20 クリティカル率0.02%

に対して

    攻撃力100

なのに対し、クリティカル率はなんと0.02×2の12乗

2の12乗は4096倍であるから約80%の確率でクリティカル攻撃が発生するのだ。ちなみにクリティカルな攻撃は通常攻撃の約10倍である…。しかも、スペシャルというのは他にユニークスキルがついているということで、なんとこれには

    相手の攻撃を3回まで避けることができる

    機能つき

であり、絶対に相手に勝てる代物なのである。まさにチート品と言っても過言ではないというか、まさにチート品そのものである。ちなみに銅の剣はレベル5から装備可能であり、この村にいる者はおいら以外は装備可能な品物なのである…。

あー、言っときますがおいらはレベル4なんでもう少し頑張れば装備できるんですよ。また、一般的な銅の剣は、100Uウッド(この国の通貨である)が、おいらの作ったチート品は値段がつけられないということだった…。


実はチート品が出来たときのことについてまだ誰にも話してないことがある。あのチート品が出来たときの数秒間においらは違う世界に行っていたのだ。その世界ではおいらは実態がなく魂だけの存在となり、雲の上のようなところにいたのだ。そこには白髭と白髪で雲に乗った小さな神様らしきじい様がいた。おいらはその人に話しかけられた。

お主がチート品を作ったのじゃな、わしはチート品の神様、名をチト神という。わしが渡すアンケート用紙記入せよ。しからばそのアンケートに記載したチート品を作ってしんぜよう。

するとおいらの手元にアンケート用紙が現れた。紙には、


    ――――チート品アンケート用紙―――

1 攻撃力

 □30

 □50

 □100

2 クリティカル率

 □+10

 □+11

 □+12

3 特殊能力

 □相手をはげにする

 □相手の足をタコ足にする

 □相手の攻撃を3回まで避けることができる

4 その他ご要望があれば記載してください



    -ー-------ー------

と書かれていた。おいらは当然最高のチート品にすべく全ての項目を最強にした。4はちょっと恥ずかしくて記載はしなかったんですけどね。

これでいいのじゃな

と、チト神がいうので、大きく頷いておいた。

ではこれで作るぞよ、さらばじゃー、もう二度会うことはないじゃろうから、元気でなぁ〜。

そして、すぐにおいらは我に返り、チート品が出来たのだった。また、数分後にはチト神様にお会いし、呆れ顔の神様を見ることになろうとは…。


あのチート品は国王に献上すべきではないかと、村の村長以外長老達が村長宅の大広間にて会議中である。村長ジンは静かに目を閉じ、あの甲高い声で言った。

    あのチート品は火の山の奥深くに封印する

    そして、ユキもこの村から旅立たせる…

それもそのはずである。なぜなら、こんなチート品が大量生産され世に出れば国のバランスが崩れ、世界大戦に発展するに違いないからである。


    ユキはおるか?

その夜遅く村長でありおいらを移住されたジンがおいらの家を訪ねてきた。

おいらの家は鍛冶屋工房の隣にある三匹の子豚が作ったようなレンガの建物である。平屋建てワンルームであり、部屋には椅子とテーブルとベッド以外には何も無いシンプルな作りであるが、ターコイズとなったおいらには居心地が良いのである。こんな夜遅くに訪ねて来るなんて、ただ事ではないなとおいらは感じとっていた。

    やっぱり出て行かなくてはいけないのですね

    ここは居心地が良かったのになぁ〜

おいらは寂しげに、独り言を言うかのようにつぶやいた。

    すまない。

    ユキには出来るだけのことはするから、明日

    の朝早くに出発願いたい。

村長ジンはいつになく真面目な顔で、深々と頭を下げてそう言った。

    仕方ないよ。これも運命だし。今まであり

    がとう。

おいらは、ここでの短い生活に別れを告げて旅立つことをあっけなく決めた。あっ、でも旅立つ前に仲間のターコイズたちに挨拶をしないと。おいらはすぐに隣の家で同居しているカイさんとタマゴんさんの元を訪れた。

    今までどうもありがとうございました。

ドアを開けると同時においらはそう別れの挨拶を切り出す予定だった。しかし、あれれ、誰もいないよ。あ、机の上に何か置いてある。おいらは、そっとその紙を見て唖然とした。

   「二人は預かった。命が惜しければ、チート品

    を作るユニークターコイズだけを西の丘まで

    来させよ。森の魔王より」

誰〜、森の魔王ってさー。西の丘ってどこなんですかー。おいらは頭を足で抱えて悩んでいた…。

するとそこに、

    やーやー、こんな夜ふけになんだい?僕に隠

    れて合コンかい?

遊び人であるターコイズのイッシーさんが現れた。

遊び人とは、定職に就かずその日暮らしを楽しむ職業である。イッシーさんも元々は鍛冶職人であったが、だんだんと仕事に飽きてしまい、今では正真正銘の遊び人として、ギルドに登録されている冒険者である。ちなみおいらも二日前にギルドとやらに鍛冶職人として登録済みである。まあ、ギルドとはクエストを受注するなどの町の職業安定所ハローワーク的な場所である。

そんなことはさておき、拐われた先輩達を置き去りにして旅立っても良いのだろうか…。

おいらは深く考えこみ夜はふけていった。




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