間章
ある日、『彼』は深い眠りから覚めた。
人ならざる彼は、いくつもの事象が生じているこの世界を渡り歩くことができる。
(今回は『滅びの世界』か―――――)
前の世界は『生まれの世界』だったが、どうやら、今回彼が訪れた世界はどうやら、様々な大事件の後の世界、もうすぐ崩壊しそうな世界だった。
世界の崩壊。単純に聞こえるが、彼らからしてみると、はた迷惑な話だった。
様々な記憶がよみがえる。
(あの『世界』は良かったな―――――)
彼は一つの世界に思い当たった。二人の《来訪者》がこの世界を変えた『変革の世界』。
彼にとってみれば、わずかな時間でしかなかったが、その『世界』はかなり安定しており、多くの人々は《来訪者》に感謝していた。時々その意識に引き摺られてしまう。
それこそが『世界』の崩壊を速めている、というのにも気づかず。
「しかし、今回は6人も、か――――――」
彼の仲間からもたらされた情報に、彼は唸る。
同時に来た《来訪者》としては、一番多い人数なのではないかと思えた。現在、別の世界にいる仲間も確かにそうではないか、と言っていた。
「心臓に悪いな」
そうぼやくが、誰も聞く者はいない。
既に一人目とも出会い、二人目はその人物から押しかけてきた。さらに、二人目に連れられた三人目とも出会った。
「さて、どうなるか見守らせてもらおうか」
『滅びの世界』
それを食い止めることができるのか、それとも流れに身を任せるのか、それは《来訪者》の手に委ねられている。彼が手を下すことではない。
来たるその時まで、彼は目を閉じて待っている。




