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100年後だけれど、まだ乙女ゲームの真っ最中!?  作者: 鶯埜 餡
アルドルノフ事変、という名の戦争

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スベルニア狂想曲

 その後、アンジェリーナとエミリオが乗った馬車は無事に検問を通り、皇宮へ着いた。



 スベルニア皇宮、玉座の間―――――――

 到着後、着替える間もなくアンジェリーナとエミリオはここへ通され、二人の人物に拝謁していた。

「よく参った」

 スベルニア皇帝、ステファン7世は言った。その脇には先日トワディアン王国から帰国した皇太子ゲオルグもいた。ステファン皇帝とゲオルグ皇太子の纏っている雰囲気は非常に似ているが、容姿はほとんど似ていない。皇太子が立太子されるときに本当に父子なのかという疑い・反発は出なかったのだろうかと、場違いながらも気になってしまったアンジェリーナだった。

「今回の拝謁、誠に聖恩に感謝いたします」

 今回の特使はアンジェリーナだ。本来ならば、自国で公爵であるエミリオが言うべき立場だったが、ここは譲ってもらった。

「全くだ。勝手にゲオルグを犯人扱いして、『友好目的の滞在延長』という名前で軟禁状態だったと聞くが」

 アンジェリーナにとって皇帝の言葉はかなり痛かった。確かに、スベルニアへ調査(・・)の協力を要請すれば、一国の皇太子を事実上の軟禁にする必要もなかったはずだ。それをエルネスト王に言わなかったのは、王族付きの秘書官としてはかなり情けない判断だ。

「しかも、結局はそちらの公爵家の子飼いが主犯で、致命的になる毒を入れたのだと。しかも、我が国の侍従をそいつが唆して自身の犯行とばれないように細工した、と聞いた」

 ステファン皇帝の怒りはもっともだ。これが逆の立場だったらアンジェリーナのみならず、エルネスト王も激怒しただろう。下手すると、それを名目に侵攻してもおかしくない。

 こうやって会ってもらえているだけでもありがたいと思っている。

「我が家の管理がなっておらず、非常にご迷惑おかけしたこと、大変恥じ入ります。つきましては、わたくしが現在我が家の代表を務めておりますゆえに、皇帝陛下のお好きなようになさっていただければ、と思います」

 今度はエミリオが言った。自分だけだったら煮ても焼いてもお好きなようにどうぞ、との言葉に、ステファン帝も顔をしかめた。さすがにそこまではできなかったようだ。まあ、犯人が分かった時点で、こちらの国に抗議文書を送ってこずに、侵攻もしてこなかったのだから、今更、この場で命投げ出されて処刑したとしても、さらに王国との間に溝ができるだけなので、『今は何もしない』が最適解なのだ。

「父上、もうそのあたりでよろしいでのはありませんか」

 タイミングを見計らったかのように、そばに立っているゲオルグ皇太子がそう言った。それに対してステファン皇帝は何も言わなかったところからすると、やはり、本気で怒っているのではなく、『対外的にそうせざるを得なかった』というところだろう。

「姫もそう思いますよね?」

 ゲオルグ皇太子はなぜか、アンジェリーナに振ってきた。しかし、アンジェリーナは加害者側の国の人間だ。どのように答えればよいのか困ったが、

「コレンス侯爵令嬢を巻き込まないでいただきたい」

 エミリオがさっとアンジェリーナを隠すように立った。ゲオルグ皇太子は挑発するように笑いながら、

「何か隠さなければならないことでもあるのですか?」

 と問いかけたが、エミリオはその質問には答えず、皇帝に微笑みかけ、反対に質問した。

「あなた様は結局、わたくしをどうするおつもりでしょうか」

 エミリオのその挑発ともとれるその質問に、皇帝はため息をついた。

「君は相変わらずだな、エミリオ・ベルッセルナ」

 エミリオは、それはどういたしまして、と表面上は笑いながら答えた。

「わしがここまで来た君たち――――いや、コレンス侯爵令嬢はそもそも事件解決してくれたのだから、するとしても君だけ、か――――を処刑することはできないじゃないか。それに気づきながら、そして、公的な場で言ってくるとは、君はなかなかやってくれるね」

 ステファン皇帝は先ほどまでとは打って変わって、からかうような口調で言った。それに口を挟んだのは、ゲオルグ皇太子だった。

「父上とエミリオ殿とは面識があるのですか」

 トワディアン王国内の対立を知っているゲオルグは二人の面識に驚いたみたいだ。アンジェリーナも二人の面識に多少は驚いたが、心当たりはあるので、ゲオルグのように口に出すことはしなかった。

「ああ。15年前、エルネスト陛下が王太子に立てられた祝賀会に招待されただろう。その時に見かけただけだ。だが、その時の印象というのはなかなか消えなくて、ね」

 父親の言葉に、ゲオルグ皇太子はああ、と納得した。

「確かに、そんなことがあったような気がしますね。僕はまだ立太子もされていない時期でしたので、同行はしていなかったような気がしますが、父上は招待されていたんでしたっけ」

「そうだ。まだ、その当時はエミリオ君もまだ、デビュタント前だったから、視界には入らないはずだったんだが、ね」

 どこか遠い目をして、皇帝がつぶやく。当の本人は何も言わずにただ、肩をすくめ、アンジェリーナは心の中で、皇帝に賛同した。

(ん、あれ―――――)

 アンジェリーナは何か引っかかりを覚えたが、口には出せず、ただ、黙ってその場にいた。

「で、今回は君たちがこのように来てくれたことだし、トワディアン王国の誠意は見せてもらった。もちろん、エルディナ川の件も含め話し合わなければならないこともあるが、しばらくはこちらに滞在していくといい。明日には蓮祭の前夜祭を兼ねた夜会もあるから、ぜひ参加してくれ」

 ステファン皇帝の言葉にアンジェリーナもエミリオも断るつもりもなく、頷いた。



 皇宮の一角に二人はそれぞれ部屋を与えられ、荷物を入れた。

 しかし、皇帝の一言で急遽参加することになった夜会のために、ドレスをどうしようかアンジェリーナは悩み、街へ買いに行こうかと悩んだが、その前にミスティア皇妃のお誘いがあり、このタイミングでお茶会ですか、と訝しみつつも彼女の部屋へ伺うと、なぜかあれよこれよという間に着せ替え人形になっていた。

「うーん、こちらがいいかしら、ね」

 左からステファン皇帝よりも二つ下の皇妃の声。

「ええ、皇妃様がリーゼベルツからお越しになる際に着られた服もいいでしょう。ですが、皇妃様。こちらの青のドレスはいかがでしょうか。こちらでしたら、お嬢様の髪色にもあうかと」

 右から女官の声。

「えーっと、スミマセン」

 アンジェリーナは一体、なぜ、こんなことが行われているのか、理解できず、声をあげた、が。

「確かに、そちらの方がいいわね。じゃあ、あとは装飾品を持ってきて」

「かしこまりました」

 ドレスや装飾品を選んでいる二人には聞こえていなかったようだった。


 しばらくして、アンジェリーナは解放されたが、そのころにはかなりぐったりしていた。しかし、さすがは一国の特使でもある侯爵令嬢、疲れたそぶりも見せずにティーカップを持ち上げていた。

再びゲオルグ君登場です。

ところで、スベルニア皇帝でステファンって、どこかで聞いたことある方もいるのでは…笑

『転生ざまぁ』で出てきましたね。そして、ミスティアっていう女性も。

ミスティア皇妃については次回話すとして、ステファンさんは『ざまぁ』で出てきた人の孫、という設定です(もちろん、若干の補正があるので、その辺についてはまた今度)。


[エミリオ・ベルッセルナ公爵子息]

王族と対立する公爵家の令息。王国での官位は不明。一見チャラそうに見えるが、アンジェリーナと同じくらい頭は切れるらしい。父親が頼りないと判断したのかもしれない。アンジェリーナとは一見王族派と公爵家、という感じで接点はないはずだが…

挿絵(By みてみん)

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