第四話
遠のく意識で少し思ったことがある。
それは、これから行く世界がどんなところなのか聞きそびれてしまった、ということ。
転生って言うからてっきり剣と魔法の世界だろうと決めつけてしまっていたが、別に彼女はそんなこと一言も言っていなかった。
ただ単に『日本語が通じない世界』と言っていただけだ。
もしかしたら、女神様みたいな格好の人たちが闊歩する古代ギリシャ的な世界かもしれないし、ゾンビサバイバルだったりスチームパンクだったり、SF的だったりするかも。
…できるだけ平和な国がいいな~。
「………………」
そっと目を開く。
森だ。
木漏れ日が顔に降り注ぐ、マイナスイオン出てそうな森だ。
ついさっきまで昼寝をしていたような感じで、上半身を起こす。
「…………太もも細っ……」
呟く声もいつもと違う。
そういえば、転生って言っても赤ちゃんからやり直すんじゃないんだね。女神様の叙述トリックに騙された。
別に騙そうとしてたわけじゃないだろうけど。
細い腕で、見慣れぬ衣装を纏った身体を触ってみる。
すごい。筋肉がある。前世では脂肪しかなかったのに。
これは顔もなかなかなんじゃない?鏡無いからわかんないけど。
「…よ……っと」
少しふらつきながら立ち上がる。
身体が軽い。なんか不思議。
…とりあえず、辺りを歩いてみよう。
この世界がどんな世界なのか全く知らないわけだし。
そうして、俺は慣れない身体で歩き始めた。
歩き始めて十分ほど経った。
と言っても、途中で青地に紫の縦線の入ったリンゴっぽい形の木の実見つけてはしゃぎまくって実をもぎまくった五分も含めた“十分ほど”だ(こんな木の実見たことない。本当に異世界なんだな)。
森が開け、リンゴっぽい木の実を腕に抱えたとても間抜けな格好の俺は道のような場所に出た。
道といっても、車輪の跡のある轍のような道。
多分道沿いに行けばどっかに出るだろう、と思って一歩踏み出した。
その時。
「おーい!そこのアンター!!」
ガラガラと車輪の回転するような音と、男の声が聞こえた。
振り替えると、馬の身体に猫の足をくっ付けたような生き物が木の車を引いていた。
馬車なのか、これは?
呆然としていると、馬車(?)は目の前で止まった。
「アンタも『冒険者の街』へ行くのかい?」
車の中から、RPGの商人のような風貌の、ちょっと太めの体格のおじさんが顔を出す。
顔は明らかに白人系で、話す言葉も聞いたことはなかったけど、聞き返さなくても理解ができた。
これが『多言語理解』か。めちゃめちゃ便利だな。
「『冒険者の街』?」
感覚としては日本語で話した感じだけど、俺の口から出たのはおじさんが話したのと似たような言葉だった。
「おや、違うのかい?異国っぽい服装をしていたから、てっきりそうなんだとばかり…」
「…おじさんは、その『冒険者の街』へ行くんですか?」
「ああ。あそこはいろんな人が集まるからねえ。こっちも商売上がったりなんだよ」
彼はそう言って笑う。
「…あの、俺も、そこへ連れていってもらっていいですか?」
勇気を出して聞いてみると、おじさんは一瞬驚いて、それから豪快に笑った。
「はっはっはっは!!俺がアンタに話しかけた理由はそれさ!」
言って、彼は俺の腕の中の木の実を指差した。
「そのフィームの実を全部買い取らせてもらう代わりに、歩けば確実に日没までにつかないであろう『冒険者の街』まで乗せてやる!どうだ、良いかい?」
おじさんの話に、俺は恐る恐る頷く。
「…商談成立、だな」
おじさんは、そういって馬車の戸を開いた。
次回からあとがきにキャラ紹介載せていきます。