第三話
「早速ですけれど、桜実智得里さん。貴方は亡くなってしまいました」
諸々の状況の説明を省いて、女神様は言った。
「本来、生前に善行をしたものは天国へ送り、数百年経った後人間や動物として転生させ、悪行をしたものは地獄へ送り、数百年経った後虫などに転生させることになっています」
成る程。
人は死んだら天国に行くのか生まれ変わるのかの謎が解けた。
神話に則って考えるなら、多分聖人とかが星になるんだろうな。
「しかし、それには例外もあります。生前不幸すぎる人生を送ったり、志半ばで亡くなってしまった人は、元居た世界とは別の世界で人生をやり直す権利を与えられるのです」
なんですと?
「まあ、それにも厳しい条件はありますが…。たとえば、生前がどんなに不幸でも一度でも犯罪に手を染めていたらダメですし、自殺なんてもっての他です」
自殺は成仏できないってよく言うもんな。
確か、死んだ瞬間を繰り返すとか、何年も暗闇をさ迷うとか、地縛霊になるとか…。
「桜実智得里さん。貴方はその狭き門を潜り抜けた選ばれし魂です。
なので、私の管理する世界でもう一度人生をやり直す権利が与えられました」
おおお…。
一生幸せになることなんてないと思ってたのに、一生を終えたあとに幸せになれるチャンスが来るなんて。
「それで、転生させるうえでささやかながら、私からあなたに贈り物があるのです」
贈り物?
「はい。私の世界で生き抜くために、『多言語理解』能力と、『中の上の容姿』を差し上げます」
ほう?
「今から行く世界は、もちろん日本語は通じません。なのでこの能力を贈らせていただきます」
まあ、確かに。
俺は英語の成績とか万年2だし。つい最近まで『time』を『ちめ』って読んでたレベルだし。
それに、中の上の容姿って言うのも俺にぴったりだ。
正直、『魚面ブタ』ってあだ名が俺以上に似合うやついないんじゃないだろうか。
こういう転生モノって大抵チート能力を授かるものだけど、まあ文句は言うまい。
チートとか、俺あんまり好きじゃないし、荷が重いし。
ありがとうございます、巨乳で薄着の女神様。
「……言っておきますけど、私と貴方は今、テレパシーで会話しているので、貴方の思っていることは全部筒抜けですよ」
言いながら胸の前で腕を組む女神様。
マジかよ!じゃあ『time』のくだりも聞かれてたの!?恥ずかしい!!
「恥じるべきはそこではないと思いますが…。まあとにかく、桜実智得里さん。文字通りのセカンドライフを楽しんでくださいね」
女神様が軽く微笑む。
その瞬間、視界が再びボヤけ、意識が遠のいた。