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第一話
つるり、と、足が滑り、身体が宙に浮く。
もとい、投げ出される。
冷たいものが背筋に走るより先に、額が地面にぶつかる。
痛い、と思うより先に、今度は右肘をぶつける。
視界が赤くにじんでいく。
そのまま、ゴロゴロと階段を転げ落ちる。
なんとか体制を整えようとするがもはやどうにもできない。
そう思ったとき、落下が止まった。
遠くの方でたくさんの声が聞こえる。
顔面から落ちたせいか、鼻が潰れたんじゃないかと言うくらい痛い。
いや、鼻だけじゃない。身体中だ。
多分腕も足も折れてる。雨が当たるたびにジリジリ痛む。
俺、死ぬのかな?
ぼんやりとそんなことを考える。
思えばいいことなんてない人生だったな。
走馬灯が頭に流れ出す。
唐突に父親が逮捕された保育園時代。
初恋の相手である同じクラスの女子に裏で『魚面ブタ』と呼ばれていた小学生時代。
一つ下の妹に学校で二年間他人扱いを受けてきた中学………ダメだ、いい思い出一つもない。
段々と体温が下がっていく。
……もしも来世があるのなら。
少しだけでも良いから、幸せになりたいな。
そう思いながら、俺は意識を手放した。