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オリジナル作品短編集  作者: ヨジョウハン=ニンジャ
とあるダンジョンの話
1/5

精神強化の指輪①

 蒙々たる煙吹き上げて野営地は今日もにぎわっている。生真面目な聖職者にはサバトに見えるだろう。

 まずは野営地に並ぶ数々の露店商達の甲高い商売文句が空を駆ける。野営地では様々なモンスターの財宝・素材・肉が売買され、それを彼らが売り買いし、調理して食っている。そしてその喧噪に酒場の騒ぎが加わる。笛の軽快で素早い音色に合わせ、歌い踊る美しくも妖艶なる踊り子、または娼婦達。粗悪なエールを嬉しそうに乾杯でまき散らして呑んでいる鍛冶屋ギルドのドワーフ。そして、今日の稼ぎを明日への英気を養うためと、せっせと食い物に換える冒険者たちの、ディナーであり作戦会議の声。


「今日もお疲れ様」

「「おつかれ~」」


 もう何度目の乾杯か等知る人はいない。俗にこの野営地から外へ稼ぎに出て、10の夜を越える事が出来た者は冒険者としての素質があるのだという。そしてこのパーティの面々は、既に100の夜を越えて来た、総勢4人の中堅パーティーである。

 中心に立って音頭を取っていた青年、タケルは、今日の最大の戦利品をテーブルの上にぶちまける。


「今日最後にして最高の戦利品は、あのボストロールからドロップした希少鉱石だ」

「おお、これはずいぶんと希少なモノではないですか」

「ロンメルならわかるのか?」

「タケル氏の言うとおり、これは5000ゴールド以上の価値がある鉱石ですね。特に魔法的な効果はないですが、このとおり見惚れる様な美しさから、貴族の方々に大人気なのです」

「ふーん、高価でも効果がないなら売りましょう。賛成の人は挙手してください」

「「ピピに賛成!!」」


 狩人のピピはエルフ特有の耳を小さく動かして、パーティーに賛同を求める。

 このように、パーティーの人間は挙手してそれを売却するかどうか決める。売却反対ならば、市場お8割の値段でメンバーが買い取るという手筈である。

 売却が決定したため、パーティーの副隊長でもあるロンメルは、鉱石に向けて杖を振る。すると彼の魔法によって、鉱石は柔らかな白い綿に詰めこまれ、売却用の袋に入れた。


「よし。じゃあ今夜は飲もうか。あの鉱石が売れるのなら、少しは贅沢をしてもいいでしょう」

「タケルの言うとおりですね。おや?タケル、その指輪はなんですか?」


 早速注文を取ろうとしていたタケルは、ロンメルにテーブルの上に転がるフルそうな指輪の存在を指摘された。彼自身その指輪に覚えはないが、戦利品袋の中に入っていた以上、それは仕事場で見つけた物に違いはない。


「なんだこれ?どこから出てきたんだ?」


 メンバー最後の一人、寡黙な鉄鋼鎧の騎士、沈黙のガナードは、無言で指輪を拾い上げる。


「……?」

「ガナードの?見たことのない形状ね。それになんだか趣味が悪いわ」

「……違う」

「ならばこれも戦利品でしょう。私が鑑定魔法をかけてもよろしいでしょうか?」

「「賛成!!」」


 パーティーが賛成すると、ロンメルが鑑定魔法を指輪に放つ。緑色の閃光は小さく火花を散らして指輪を包み、鑑定が終わると、ロンメルの持つ羊皮紙に電光でもってその正体と効果を書き連ねた。


~精神強化の指輪~

ランク:D

所有者の精神力を増大させる指輪。装備した者は冷静さが上昇し、痛みへの耐性が強くなる。


 ロンメルが羊皮紙をテーブルに置くと、各自はその効果を見て渋い顔をする。通常魔法が込められたアイテムは高価だが、それはランクB以上の話で、ランクDともなると、彼ら中堅パーティーでは、ゴールドに換えるよりも、パーティー内の者が装備したほうが都合よい。

 

「これは騎士のガナード向けの指輪だな。お前が前衛防御で敵の攻撃を防御してくれるだろ?」

「……しかし、俺の指では入らない」

「じゃあタケルが装備すべきね。あなたも前衛だし。私達後衛が装備するより、体長のあなたが装備すべきよ。それに、あなた指輪系のマジックアイテムしていなかったでしょ?」

「そう言えば指輪はしていないけど、俺はいいけど、幾らで買おうか?」


 武がそう言うと、ロンメルが笑って指輪をタケルに渡す。


「ランクB以上なら兎も角、この指輪はランクDですし、今日のボストロールに トドメの一撃を突き刺したタケルさんへの、言わば特別報酬とするのはどうでしょうか?」

「「賛成!!」」


 パーティの承認を得て、タケルは指輪を恥ずかしそうに装備した。


「嬉しいよみんな!じゃあ今日の報酬分配は終了という事で、大いに飲んで食おう!!」

「「おー!!」」


 お姉さん、俺オークの兜焼きね。私は小マッドドックの骨付き肉。……俺はシーホスの刺身。

 各自料理を頼んでどんちゃんと。その日は夜遅くまで宴が続き、酔いつぶれるまで。










 これで済めばどんなによかったかと。この未来ある危険と冒険に満ちた日常が続けばどんなによかったのかと、タケルはそう思うのだった。

とあるtwitterでダンジョンとは何かというお話を聞いて考えました。

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