ちょっとした幸せの一時。
「なぁ、暇なんだけど」
俺は放課後、教室の俺の隣の席で黙々と課題をやり続けている女の子に言った。
この女の子は、言うなれば俺の彼女である。
こいつが課題を忘れ、居残りになったために、その彼氏である俺を巻き込みやがった。
「も、もう少し」
女の子が言う。
「そうか・・・早くしてくれ・・・」
俺は彼女の隣の席で机を軽く叩く。
「暇ー」
念を押してもう一度俺は言った。
「うるさいなぁ・・・!」
彼女がペンを強く握り言う。
「そうか、うるさいか。
なら俺は帰らせてもらう」
俺は鞄を持ち、椅子から立ち上がった。
正直彼女といるのは良いが部活も無いのに学校に長居はできない。
と、すると。
「私が悪かったから、ね?
少しまってぇ・・・」
彼女が俺の鞄を掴む。
「・・・少しだけな」
俺は溜め息混じりにそう言うと、彼女はホッとした表情になり再び課題に取り組み始めた。
「終わったーっ!」
彼女は課題のノートを高々と持ち叫んだ。
「やっとかよ・・・」
1時間も人の事待たせやがって・・・
「じゃ、ちょっと提出してくる!」
彼女が走って教室から出て行った。
「・・・」
空しい時計の音だけが部屋に響く。
彼女と毎日話していると、こういう彼女がそばに居ない時に凄く寂しくなる。
「ただいまー!」
彼女が教室に入り、鞄を取る。
「お、おう」
「あれ、今泣いてた?」
「う、うるせえ!あくびだよあくび!」
「ふーん・・・まあいいや!早く帰ろ!」
彼女が手を差し伸べてくる。
「・・・おう!」
俺はその手を掴み立ち上がり、彼女と共に教室を出た。
そばに居てくれる人がいるという、小さくて、とても大きな幸せを改めて感じて。