ハジマリとオワリ
あの時、僕が手を伸ばしていたら何が違ったのだろうか。
東京某所
何もない、背の高いビルと、数え切れないほどの人、人、人。その一角に、僕はいる。
「なぁ、オニーサン。アンタの親父さん逃げたのよ、解る?」
柄の悪いお兄さんが二、三人、俺を囲む。
「だからさぁ、息子のアンタに払って貰わなきゃならねぇの。一千万」
バンッ、と顔すれすれの壁を勢いよく、殴る。怖くはないが、もしあたったらと考えると困る。
「おーい?聞いてる?まぁいいや、いつまでに払える?」
茶髪で、チャラチャラとした一番若い、でも一番強そうな雰囲気を出す男が近くによってくる。
「でも、まだ学生さんだよね?払える?まあ、無理でも払って貰わなきゃだけどねぇ」
ケタケタと笑う笑顔に虫酸が走った。
「あぁ、ねぇ、いい仕事紹介してあげようか?君顔きれいだからさぁ、そういう趣味のあるおっさんとかに犯されてみない?意外と気持ちいいらしいしねぇ。紹介して欲しかったら何時でも言ってねぇ?あ、俺らと一発ヤってみる?顔も其処らの女より綺麗だしさぁ」
気持ちよくしてあげるよ
耳元で囁かれるコトバ。
「なぁ、何回で借金ゼロになんの?」
思わず、言葉を紡ぐ。
「きゃはは、何、ヤる気になっちゃった?」
「なぁーんて、ね。ばーか」
ゲラゲラと笑う男に拳を入れ、残りの数人の男には蹴りを喰らわす。
「な、げふっっ!」
「うらぁぁ!っぐ!」
数分後、其処に俺はもう居なかった。
ふと、時計を見ると11時。半から用事があったことを思い出し、急いで待ち合わせ場所へと向かう。