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利他愛

『今から、会議があるから2時間はメール出来ないよ』


2時間?


私は仕事中ですから


笑ってしまいそうになるほどです。




『私は仕事中です。しっかり会議の議題を討論してください』





その頃、骨折して会社を辞めようかと悩んでいた私は、ひょんなことから事務職へと部所替えになり事務所勤務になった。



初めての仕事で戸惑いながら悪戦苦闘していた。



疲れて帰えり、子どもたちの世話にと目まぐるしい日々が流れていた。




しかし、私以上に忙殺な毎日を送っている彼でした。


どこかの社長のように社長室に踏んずり反っている人ではない。


社長自らが社員の先頭に立ち社員と共に仕事をこなす。

社用車は持たず、自らが運転して、得意先回り。




そんな仕事中でもメールは届く。



『厭なことがあって会社を飛び出し、珈琲を飲みに来た。

今、湖畔のカフェに居るよ。雪乃さんが近くに居たら話を聞いて貰いたかったな』




『ボイコット?ストライキ?会社を抜け出しちゃ行けませんぜ!!社長さん!!』




『はい!はい!解っています』




『解れば宜しい。それと返事は一回!』




『はぁ~い』



そんなおちゃら気な会話もしましたが、毎朝夕、欠かさず挨拶メールを届けた。



『お早う。今日はいい天気になりそうね!』




『お仕事、お疲れさま。



今夜は、ゆっくり休んでくださいね』



ありきたりの挨拶でしたが、彼には それが凄く嬉しかったようです。




家に帰っても会話のない夫婦は挨拶も交わさなくなっていたようです。



彼が妻に求めていたものは、何だったのだろうか?


ある新月の深夜‥彼からメールが届いた。



『雪乃さん、起きているかい?』


ベッドに入り、ウトウトしていた私は、彼からの真夜中のメールに飛び起きた。


『どうしたの?』



『ごめんね。家内とやり合って‥飛び出して来た。少し電話していいかい?』



『はい!』


のメールを送信したかと思うと携帯が直ぐ様鳴った。

喧嘩して出てきた割には 彼の声は穏やかであった。


この日の昼間は社員総出で地域のゴミ拾いをしたらしい。


この日、彼の地方では今年最高の気温となり朝からぐんぐんと温度が上がり暑さが厳しかったようだ。


社員が 暑い中 頑張っている横を車で通りすぎて行った妻に意見をしたらしい。



すると、妻が‥私はサラリーマンのあなたと結婚したんです。

社長のあなたに嫁に来たんではないと言ったそうだ。


社長の連れ合いとしてではなく、人としての行動思いやりを注意したようですが‥


いくら言っても解って貰えなかったそうだ。


「雪乃さんなら‥どうする?」


そう彼に聞かれた。



「それだけ地域に密着している会社ですから社長の妻だって、その中に参加しちゃうかな!?」



彼は、納得したように


「そうだよね」




「お茶とか冷たいものを用意するとか‥かな!?」



私は、母だったらそうするであろうと思った。

父と共に一代を築いたのだから。



「俺も言ったさ、冷たいキャンディの一つでも差し入れようと思わないのかって言ったんだよ」



彼は まだ少し興奮していた。私の前で“俺”って言ったのは初めてだった。


彼は一人 湖畔の駐車場まで来たらしい。月明かりもなく 真っ暗な夜に泣いたんだろうか。


こんな筈じゃなかったと自分の人生を振り返ったのだろうか。



何だか、彼が可哀想で堪らなかった。


ぼんやりと湖畔に佇む彼が私には見えていた。



彼のボランティア精神は、想像もつかない広域に広がっていた。



地域の青少年に対する活動には熱心に賛同。

いやっ、責任者として任務をこなしていた。




教育者でもない彼。


一企業の代表でありながら民間からの抜擢で教育現場でも活躍している。



彼の哲学は、私には図りきれない。


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