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感性

彼からは、それからも 毎日 時間が空くとメールが届いた。




『雪乃さんの父上は50歳の若さで亡くなったんだね。早いね~。

僕は雪乃さんの父親の代わりだよ。

何でも困った事があれば言ってね』




『ありがとうございます。父は早死にしましたが好きなことをして人生全うしたんですよ。

私は、父が大好きでした』




彼と私は24歳の歳の差がある。



メールを交わしていると段々と年齢差が縮んでくる不思議な気がした。


普通なら、年代が違いすぎて話が合わないと思うけど‥


私たちに限っては、そうではなかった。生まれた年代も


生まれた場所も


環境も


何もかも違った私たちが

こんなに話が合うのが不思議でならなかった。



お互いが無理やり合わしている訳ではない。





彼にも聞いてみたことがある。




すると、彼は


『雪乃さんと僕は生まれ持った感性が似ているのだと思うよ。

そして、その感性は、それぞれの環境に左右しながら育んできたんだよ。感性が似ているっていうのは稀にないと思うよ!!家内には全く感じたことのないことだよ』




そう謂えば、私が興味をそそるものには彼も興味を示す。



私が綺麗だと感動するものに彼も感動する。



全てのことに共感し合える。





彼の好きな色は、私の好きな色。



好きな音楽も‥



一番、驚いたのは 好きな野球チームまで同じだったこと。


今や、日本の最下位チームなのに。


彼は、私の知らない世界を色々教えてくれた。


政治のこと、会社組織のこと、ゴルフのこと、異業種企業のこと。


そして彼が最も詳しい花のこと。

お花屋さんも驚くほど花の名前を知っている。



そんな彼に近づこうと、こればかりは私も努力した。




ある日、新聞の13面のいつも読んでる【天声人語】の上に【花おりおり】を見つけた。



そこには、花の写真と その花に関しての説明が書かれており、時には豪華な切り花であったり野に咲く茶花だったり、高原植物であったり、実のなる花であったり

見れば見るほど楽しくなった。



そして、私は毎朝、この記事を切り抜いてファイルにした。



そうです。こればかりは覚えなくてはと必死でした。




『今日は、ゴルフ場で水引草を見かけたよ。もう少しで踏んでしまいそうになったんだ』



そのようなメールに返信は愚か、水引草が、どんな花なのか思い浮かばなかったら悲しい。





毎月、会社の玄関には、池坊のお花の先生が

花を生けてくれるそうです。



『今月のお花はキレイなカーネーションだよ!!母の日にちなんでなんだね。この黄色い花は、何て言ったかな?思い出せないな!』


よく来る内容のメールです。

画像付きです。



『その黄色いの添え花はソリダコって言うよ』



そう、答えることが出来るようになった。



『淡路の花博覧会には来られましたか?』



『勿論、行ったよ!あの時に頂いた誕生花のカレンダー知ってる?』



『いいえ、知らない』



『僕の誕生花は、ブットレアだったよ。雪乃さんの誕生花は万両だね』




『ブットレアって蝶を誘う花でしょ。蝶が舞うほど酔うんですって!私の万両!?お花じゃないのね』




『万両は縁起物だからね』



こんな会話もスムーズに流れることが嬉しかった。



また、美大卒の私に対して彼は、美術系の話もよくしてくださった。








彼の地元にある美術館へは、自ら足を運び満喫しては感想をメールして来たり、世界の巨匠たちの作品の展示を予告してきた。




実際、高校時代にはデッサンや油絵等も手掛けていたが、大学では、染織専攻だったことを話すと、


お友だちが地場産業の染織の仕事をしているらしく 沢山の資料を取り寄せて 勉強されたようだ。




お互いがお互いのことを全て知りたいという気持ちの表れでしょうか。



それにしても、忙しい身の彼のバイタリティに脱帽します。




私にしてみれば、彼とのメールのやり取りは、癒しの時間だった。






多分、日々の百通近く交わすメールのお陰で

お互いの全てを解り合っていたのだと思う。

この世の中で、私の全てを知っている人は!?


彼であると言っても過言ではない。



だって、親にも親友にも謂えないことまで彼には謂える。



あの間違いメールをしてから一月近く、



私は携帯の文字を画面を見なくても打てる程になっていた。



『レスが早くなりましたね』



『そうだよ。最近では社員とのやり取りもメールでするようになってよ。雪乃さんのお陰だよ』




彼も素早く返信をしてくるようになった。



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