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名残の別

彼はホームへ向かう階段を、子どもたちと手を繋いで上った。



他人から見れば、孫に手を引かれたお爺ちゃまでしょうね。



「航一君、勉強頑張るんだよ!!」



「はい!!」



「お兄ちゃんだから‥お母さんを守らなきゃね」



「はい!」



「よし、いい返事だ。また、遊びにおいで。お母さんを頼んだよ」



元気よく挨拶をしていた兄貴が泣き出した。



その兄貴につられて娘も目頭を押さえています。



「耀ちゃんも、凜君も、お母さんの言うことをちゃんと聞くんだよ」



そう言って、彼は一人一人を抱き締めた。



もう、兄貴は大声で泣きじゃくっています。



「航一君、男は泣かないさ!また来るんだよ」



そう言う彼も泣いていたこと‥子どもたちは気づいていたでしょうか。



彼は、私の手を取り



「ゆき、ありがとう」



「帰りたくない」



「逢いに行くまで、我慢!!必ず行くからね」



「うん」



「ありがとう。孜さん」



ドアが開いた。


定刻通り、新幹線は出発した。


彼は、寂しげな顔で手を振っている。



子どもたちが居なかったら泣き叫んでいたかもしれない。


そんな心情で新幹線に乗った。



座席に着いても涙が止まらなかった。



この子たちがいなけりゃ そんなことまで考えてしまった私は、この瞬間 母に戻らなきゃならない。


バカな母親だ。



私は涙を拭い、末息子を膝の上で抱き締めた。




「お母さん、なんで兄貴は泣いてたん?」



おちびちゃんが不安そうに聞いてきた。



「さぁ、なんでだろう?

帰りたくなかったからじゃない?」



「僕も、もっと居たかったよ」



「そう、楽しかった?」



「うん!」



「じゃあ、また来ようね」



「うん!」




兄貴は決して そんな気持ちで泣いたんじゃない事は解っていた。



元々、感受性の強い子ではあるが、人の気持ちを思いやることが出来る子です。



子ども心に 彼の温かい心に感謝し、その感謝の念をどう表現してよいか分からず 涙が出てしまったのでしょう。



私は、この子たちが将来、このままの素直に育って欲しいと思うのであった。





名古屋を過ぎ、京都に差し掛かった頃、彼からメールが来た。



『ゆき、今、会社に戻ってきたよ。

この四日間、僕は幸せだった。ありがとう。

ゆき達とホームで別れてから涙が止まらなかったよ。航一君には内緒だよ。

子ども達にいい思い出になったかな?

じゃあ、気をつけてね』




私は、彼から渡された封筒に気が付き、鞄から取り出した。




思っていた以上の大金が、そこには入っていた。




『あなたから戴いたお金を見て、びっくりしました。こんな大金が入っているとは知らず、受け取ってしまったこと後悔します。

あなたからは、十分な愛を戴いていますのに申し訳なく思います。

本当にありがとうございました』



『大した金額じゃないのに、ゆきが気を遣うほどのことじゃないさ。気をつけて帰るんだよ』



大した金額じゃないって‥私の一ヶ月の給料分だ。


有り難く受けとることにした。



と、いうことで、破天荒な私の四日間は、夢のような出来事でした。



お気楽な母親に付き添ってきた三人の子どもたちに感謝し、



こんな私を温かく迎えてくれた彼に感謝し、



この旅が終わろうとしています。



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