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感動の嵐

朝、目が覚めたと同時に 彼に感謝しました。

彼の私たちに対する温かい心が窓いっぱいに広がっていたのです。



そう言えば、こちらにくる四、五日前、


『ゆき、今 隆正君と宿泊ホテルで部屋探しをしてるよ!』


私は、そのメールに御礼を述べただけで 彼がここまで吟味し選んでくれたのだと思うと胸がいっぱいになった。



裾野から空へと聳え立つ美しい曲線 私たちの目の前に見事にその全容を見せてくれた。


見事な霊峰富士が姿を惜しみ無く見せてくれています。

もう、圧巻です。



子どもたちがはしゃぐのは無理もないことでした。



私たちは早々に身支度をし 彼が何かの時に使いなさいと借りてくださっていたレンターカーに乗り、昨夜散歩した湖畔へと車を走らせた。




まだ肌寒い朝の緊迫した空気の美味しいこと。



閑散とした公園を走り廻る子どもたちを見て幸せな時を噛み締める私でした。



朝食を済ませ、ロビーへ下りると、専務さんと相川さんが出向いておられ、一日目が始まった。



「お早うございます。今朝、社長は社用があり、私と相沢さんがお供致します」



「ありがとうございます!!宜しくお願いいたします」



「夕べは、ゆっくり休めましたか?」


「はい、お陰さまで、ぐっすりと。今朝、子どもたちは窓から見える富士山に感動して‥」



「それは、良かった!社長が聞かれたら喜びになると思いますよ。窓から見える富士山に拘っておられましたので」


専務さんと話してると相沢さんが



「今日の予定は五合目になってるけど‥この分じゃ晴れそうにないなぁ~」


そう言われて 皆で見上げた富士山は、姿形も隠れてしまっていた。



今朝は、あんなに見えていたというのに。


兄貴は、この旅行で夏休みの宿題の一つ、手作り工作を企んでいた。



「社長から聞いていたんだけど、手作り工房に行ってみましょうか?」


相沢さんが そう言われた時、兄貴は私を見てピースをして見せた。



車で15分程で到着した手作り工房は、湖を橋で横断し向こう岸に佇んでいた。



車が駐車場に入った時、先に到着していた専務さんが、私が乗ってる方のドアを開けて



「管野さん、こちらで少し待っていて貰えますか?」



「はい!」


すると、専務さんは、子どもたちと一緒に工房の中へと入ってしまった。



「心配いりませんよ。もうすぐ社長がいらっしゃいますから。なんだか御二人で行きたい処があるようですよ」



「そうなんですね」



「僕は、専務と一緒に同行しますから子どもたちのことも、ご心配なく楽しんできてください」



「はい、ありがとうございます」



そうこう言っている間に彼の車が駐車場に入ってきた。



彼が下りてきて


「子どもたち、もう行ったの?」



「はい!!」



「少し、覗いて来るよ。ゆきは車に乗ってなさい」



「はい!!」



彼は、子どもたちの事を専務さんと相沢さんにお願いに行ってくれたのだろう。



私が顔を見せると、おちびちゃんが親恋しくなることを避けたように思われた。



戻ってきた彼は、直ぐに車を走らせた。



「どうでしたか?」



「あぁ、もう、すっかり慣れちゃって楽しんでたよ。今からゆきに、是非見せたいものがあるんだ!子どもたちが一緒だと、ゆっくり出来ない処だから、この機会を狙ってたんだよ」



「そうでしたか。一体、どこに連れて行かれるのかと‥」



「きっと、喜んでくれると思うよ」



彼が旅行の雑誌やパンフを送ってくれた時、私も一通り目を通した。



その中で 此処へ行ってみたいなぁ~と思った処があった。



でも、この旅行は あくまでも子どもたちの思い出作り。



私まで我が儘は言えないと彼には言っていなかった。



手作り工房から湖岸を迂回し 小高い丘に車は停まった。



彼が目指す建物は、この丘から下り奥まった所に位置しているようで丘の上からは何も見えない。



私たちは、一歩一歩階段を下りていった。


これは!?




山を切り開いただけの丘陵に現れたのは‥




いつか見たスペインバルセロナの公園を再現したアプローチだった。



まさに、ガウディワールドではありませんか?




「もしかして‥これは、一竹ですか?」



「さすがだね!!」



「‥‥観たかった美術館です」




「それは良かった。子どもたちがいると、ゆきが満足出来ないと思ってね。ゆっくり観るといいよ」



この中に一竹の世界が繰り広げられているのかと思うと、私の足が自然に足早になった。




そして 想像を絶する素晴らしい作品いやっ、ここでは芸術と言った方が相応しいだろう。


富士の四季を見事に表現していた様は、言葉では表現できないほどの衝撃を受けた。



彼は、遠くから、包見込むかのような優しい眼差しで私を眺めていた。



きっと これは、彼のサプライズなのだと思った。



学生時代、染織工芸を専攻していた私に 彼は、この一竹ワールドを見せてくれたのだ。



一竹ワールドは去ることながら、彼の粋な計らいに感動し感謝した私でした。



久保田一竹は建築家でもある染色画家である。


私は、一竹美術館に魅了され まだ冷め遣らぬ余韻で車に乗った。



「あのね、パパは私の全てをお見通しなんですね!何故?私が此処に一番来たかったこと、分かったの」


「そうなの!?ゆきは、此処へ。

ただ、ゆきは美術が好きそうだから、それに染織を勉強していたと言っていたじゃないか?

一竹美術館のオープニングには僕も招待があってね。素晴らしいと思ったんだ」




「へぇ~、では久保田一竹とお会いになったの?」



「あぁ、会ったよ」



この湖畔には数多くの美術館やパビリオンが近年オープンした様である。



彼は、ある役職のため オープニングのほとんどに招かれているらしい。



この旅で 彼は私の為に 数ヶ所の美術館巡りを計画してくれている様である。



でも、どこよりも此処だけは特別に案内してくれたのは思い入れが深かったのだと思った。


彼自身も一竹に魅了され

私に是非に観て欲しいと願う気持ちだったのだ。




私たちは湖岸を回り 手作り工房へと向かった。



手作り工房では、子どもたちがそれぞれの作品を作りあげていた。



兄貴の作った二つのトンボ玉は、私と彼へのプレゼントでした。



太陽に照らすと琥珀色に耀く方は私に‥

彼にはエメラルドグリーンの蒼海をイメージしたものでした。



残念ながら夏休みの工作には少々難儀なことになりそうな予感。



何れにしても、3人供、初めての体験で楽しそうでした。



手作り工房をあとに私たちが向かったのはオルゴールパビリオン。



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