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出会い

季節は、21世紀も目前の梅雨。



蛙の大合奏も揉み消される程のどしゃ降りの夜でした。




独りぼっちの夜長が寂しくて人恋しくて


堪らなく 枕元の明かりを灯した。



ベッドの隣では 三才になった末息子が僅かな寝息を立てている。



ふとっ、昼間 若い社員に寝付きが悪いと言うと‥


「僕も遅くまで起きてますから、メールぐらいしてくださいよ!」


そう言って、メモ帳にアドレスを走り書きしてくれたことを思い出した。



まだ、携帯に不慣れな私は、四苦八苦してアドレスを登録し、やっとの思いでメールを送信した。



『まだ、起きていますか?』



すると、間も無くメールが来た。

しかし、その子からではなく親友からである。



『雪乃、眠れないんでしょ?今、お茶してるから出て来ない?』



私はどしゃ降りの中、高速を飛ばした。



途中、携帯のメール着信が鳴った。



『ごめん、風呂に入っていたよ』



若い社員からだ!!



今頃、遅いよ!!


そう思ったが、


『こちらこそ、ごめんね。今から友達とお茶するから。また、メールするね。おやすみ』



そんなメールを送り、


携帯を鞄に入れ 先を急いだ。



元気のない私を親友の倫子は、気遣ってくれる。



離婚経験ありの私のアドバイザーであり、姉御肌の倫子は頼もしい存在なのだ。

倫子との会話は弾むが、私は明日の子どもたちのことも考えると早々に退散しょうと携帯を開いた。



こんな真夜中に2通のメールが入っていた。



『送られた相手方を間違って届いていると思います。僕もメールを待っていたので、てっきりその方だと勘違いして返信してしまいました。すみません』



そして、続けて‥



『これから、友人に会われるのですか、気をつけて出掛けてください』



私は、ビックリして


直ぐに謝罪のメールを丁重に返信した。




『今、アドレスを確認しました。こんな時間に間違いメールをして申し訳ありませんでした』


すると、


『不思議な縁ですね。こんな奇跡的なことがあるのですね。

あなたと出会った縁を大切にしたいと思うのですが、あなたさえ宜しかったらメル友になってくださいませんか?』




このメールを見た時、知らない人という恐怖感より、何故か相談相手になってくれれば有り難いなぁ~そう思ったのでした。



私自身、人恋しかったのかもしれない。



『本当に不思議ですね!私で宜しければ、こちらこそお友達になってください』



私は、そんな破天荒なメールを送ってしまっていた。



あれほど降っていた雨も止み、濡れた路面を家路を急いだ。



帰宅した私は、息子の布団に潜り込んだものの、眠れそうもなく携帯を取り出した。



先ほどの間違いメールの相手からメールが届いていた。


『お友達になって頂けるなんて光栄です。貴女からのメールを待っていましたが…明日の朝、接待ゴルフで早いもので、これで失礼します』



えっ、私からのメールを待ってたんだぁ~!



もう、時計の針は1時を指している。



そして、私もいつの間にかそのまま寝てしまっていた。



明くる朝 何故か早く目が覚めたので、夕べの見知らぬ方にメールを送った。


『朝、早く目が覚めました。お早うございます。とても良いお天気ですね。絶好のゴルフ日和ではないでしょうか?ゴルフ頑張ってくださいね』



すると、直ぐに返信が来ました。


『おはようございます。あなたにメールをするためにゴルフ場に早目に来ました。今日のゴルフは接待ゴルフなので少々気が乗りません』




私は、朝の準備に慌ただしく走り回り 朝食を用意し子どもたちを学校へと送り出した。



実は、生活の為、仕事は私にとって必要不可欠なもの。



にも拘わらず、余暇のバレーボールで指を骨折し休暇しざる得ない状態である。





仕事を替わろうかどうか悩んでいる。

離婚して間も無く就職した工場は、県内でも有数の印刷会社。

一般的な凸版ではなくシルクスクリン印刷といって特殊な印刷加工をしている。

美大を出ている私は、特殊加工に興味津々で デザインに携わってみたくて入社したが、作り上げる工程を見学し 断然、工場を希望したのだ。


ところが、今、こうして 指を骨折した以上、周りの皆に迷惑を掛けてしまっている。



辞めるべきかもしれない。


そんなことをぼんやり考えていると お昼前、メールの着信が鳴った。



ゴルフをしている筈の方より、『私の正体』こんな題名のメールが届いた。



内容は!!?



『お友達になって貰うには、僕は嘘や隠し事を望まないので、僕の正体を証します‥』


このような書き出しのメールでした。




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