表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンの異世界記  作者: 焼きうどん
第一章:人→クワガタ→人へ
6/35

おっさん、修業する


その後、大樹によってプロデュースされたおっさん進化計画が実行に移された。

人になるために必要な物は、知恵・魔力・魔力を扱う技術の三つ。

その内、おっさんは知恵の面はクリアーしている。

しかし、魔力に関してはさっぱりなのでそこを一から習得していくことになった。

以下はおっさんの魔力を感じられるようになるための修業のメモリアルです。


『まずは体の内に眠る魔力の波動を感じるんじゃ』

「……具体的な説明を求めます」

『カーっとやって、グーっとする感じじゃ』

「カー……? グー……? 擬音って本人以外にあんまり伝わんねーよ。おっさん感覚派じゃなくてわりと論理派なとこあるし」

『ほむ、そうじゃのぅ……己の中にあるドロドロしたものを吐き出すかんじかの?』

「わかった。部長のハゲーッ! ヅラの癖に偉そうにしてんじゃねーよ!」

『言葉の意味はよくわからんが多分違うぞ?』

「あんたの言った通りにやったんだけど?」

『違う。魔力はもっと熱いもんじゃ。こう……人で言う情熱的なパトスって奴なんじゃ!』

「それならおっさん得意だわ。すぅ……イメクラで赤ちゃんプレイとか女教師プレイがしてー!!」

『それも違う』


などという、客観的に見ればなにやってんのこいつら的な押し問答を三日ほど繰り広げた結果、


おっさんは




魔力を




感じられなかった。


つーか当然だよ。

おっさん今まで魔力とか言うのと無縁だったし、なにより教師役の大樹がクソの役にも立たない無能だ。

おっさんは悪くありません。


『ほむ、おぬし才能ないのぅ』


ぐおっ、面と向かって言われるとは……

はいはい、正直「魔力を感じるくらいなら一日で出来るようになるじゃろ」とか言われていい気になってましたよ。

薄々、おっさんには才能ないなって思ってました。

しかし、あれだな。へこむわ。俯くほどじゃねーけど、暗い気持ちにさせられる。


『落ち込むでない。内的魔力はダメじゃったが、まだ外的魔力があるわい』


大樹の言葉によっておっさんの暗かった視界に一筋の光が差し込むような幻が見えた。


「その話を詳しく」

『今までの修業は己のうちにある魔力、つまりは内的魔力を感じるためのものじゃった。しかし、他者から放出される外的魔力を吸収し、己の物とする。利点は魔力の波動がわかりやすく、扱いやすい事じゃ』


だったらなんでもっと早く教えてくれないのかと思うが、教えなかった理由ってのもあるのだろう。

利点があるってことは欠点もあるだろうし。


「よし、教えてくれ」


だがおっさんに迷いはない。

なぜなら早く人になりたいからだ。

いやー、声に出してからイメクラ行きたくてたまんねーのよ。もうおっさんの体内時間で四ヶ月は行ってねーもん。

でも、クワガタとお医者さんごっこがしたい女性がいるだろうか? クワガタなおっさんを鞭でシバき倒しながら罵倒してくれる女王様がいらっしゃるだろうか?

もしかしたら世界のどこかにいるのかもしれない。だけど探すのはめんどくさい。

だからおっさんは人にならなければならない。


『ほむ、覚悟を決めた良い目じゃ。しかし、難しいぞい?』

「望むところだ」


きっと大樹には今のおっさんの姿がイケメンに見えてるに違いない。気持ち真面目な顔してっし。


『外的魔力を扱う上で、まずは魔力の色について説明しようかの』


そう言って大樹が説明してくれたことをおっさんなりにまとめてみると


魔力には五色の色がある。

それは赤・青・黄・緑・無色の五つ。


赤は火を司り


青は水を司り


黄は地を司り


緑は風を司る


無色はそのいずれにも属さないものであるが、何物にも染まっていないために応用性の高い代物である。しかし、その力は他の四色に比べれば圧倒的に小さい。

あとは赤は青に弱く、青は黄に弱く、黄は緑に弱く、緑は赤に弱いというジャンケン的な相性もあると教えられたが、そいつは今あまり関係ない話しなのでどうでもいい。

外的魔力を扱う上で最も大事なのが無色の魔力だ。

これは太陽から降り注いでいるらしい。ちなみに月からも魔力が降り注いでいて、こちらはかなり純度が高いそうだが太陽と比べると千分の一くらいの量らしい。

つまり、おっさんが外的魔力を扱うためには――


『イメージじゃ。己の葉緑体に光を取り込むかのように魔力を取り込むイメージじゃ』


無茶を言いなさる。

おっさんはひなたぼっこはしても光合成はしたことありません。


『こう……太陽よ、わしに力を分けてくれなスタンスで挑むのじゃ』


どこの野菜人だよ。

いや、あれはダジャレ好きの人が元祖の技だったっけ?


「太陽よ、おっさんに力を分けてくれ」


とりあえずやってみた。

物は試しって昔の人も言ってたしね。


……しかし何も起こらない。


「うおぉぉ! 猛ろ! おっさんの葉緑体!」


当然、何も起こらない。


「太陽様、なにとぞこの矮小なるおっさんに力を分け与えてください」


下手に出てみた。

だが、何も起こらない。


「いいぜ。いつまでも付き合ってやる」


こりゃ長期戦だなとおっさんは覚悟を決めました。




◇◇◇




あれから半年ほどの時間が経った。

その間のおっさんの視線はほとんど空にあった。

晴れの日は太陽を睨み、曇りの日は邪魔だとばかりに雲を睨みつけ、雨の日は天然のシャワーを楽しんだ。

いや、全然冷たく感じねーの。しかもおっさん、洗車して撥水コートしたての車のごとく水と汚れを弾きまくり。湖に浸かるのもいいけど、シャワーは痛快だ。毛穴までしっかりクル。大粒の雨の打撃が心地いいです。


閑話休題


この半年間、何度となく外的魔力の吸収を諦めようかと嘆いた。

その度に明日とともに現れる太陽さんが「小僧、貴様はやはりそれっぽっちの存在か」とやたら渋い声で話しかけてくる(完全なる幻聴、妄想の類)

そんなとこがおっさんの負けん気をくすぐる。

いつしかおっさんは日の出から太陽さんを出迎え、お願いしますの声と共に日の光を浴びながら魔力を吸収するイメージを持ち続け、日の入りでありがとうございますと言いながら太陽さんを送り出すようになった。


まあ、結局何が言いたいのかというと努力は人を裏切らないってことだね。


【エメラルドスタッグビートルは無色の魔力吸収のスキルを得た】


これだよ。ある日ピーンと久しぶりのこの声だよ。

もうおっさんしばらくは太陽見なくていーや。

何がお願いしますだよ。そして何がありがとうございますだよ。所詮、おっさんと太陽の関係は勝手に魔力を排出してる側とそれを有効利用させてもらってる側ってだけでしかない。

太陽が地上の一生物でしかないおっさんをピンポイントで見てるわけもねーわけだし。


なにより、おっさんはオッサンであってまだジイさんじゃないわけよ。早寝早起きは柄じゃねーわ。

んじゃ、寝よっと。


『よし、弟子よ。修業を次の段階に進めるぞい』


最近、すっかり師匠気取りな大樹が話しかけてくる。

スキルを得たことでテンション上がって報告したのは失敗だった。


「いや、おっさんは寝る」


もぞもぞと巣に入る。

築一万年強の木造。たまに話しかけてくるけど住み心地は悪くない。そんな物件。


「大樹。休息のために十日ばかり時間をくれ」


そんなことを言いながらおっさんは意識を睡眠モードへと移した。

まどろみの中に聞こえた『いや、明日から始めるぞい』という声は寝てて聞こえなかったということにしとこう……



要約するとオッサンが変なこと考えながら半年間ひなたぼっこに熱中した話でした。


次話で進化かな……


ある意味オッサンの進化までが序章です。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ