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オッサンの異世界記  作者: 焼きうどん
第三章
34/35

おっさん、遊ぶ


ルタオの町を出てからいくつかの町や村を経由し、目的地であるタファンの森まであと少しというところまで来たところで、休息をとることになった。

おっさんらの旅は大人ばかりの旅ではなく、リリーという子供も随伴してるためどうしても移動だけで長い時間を過ごすということは出来ない。

正確に言えば、リリーはそれでも文句や不満をあらわにすることはないのだが、そこら辺は大人の気配りって奴だ。

まあ、いつどこで休みをいれるかは魔動式浮遊絨毯(アラジン)を操作してるジーナの意志ひとつで決定するので休息の回数はわりと多めだ。

時々はザラも魔力を注ぎ込んで魔動式浮遊絨毯(アラジン)を操作してるのだが、内包する魔力量の問題からジーナに比べると時間は短い。

その点おっさんはそういう細かいことが出来ないので一回も魔動式浮遊絨毯(アラジン)を操作したことはない。

お荷物?

ああ、そうさ。

おっさんは一行のお荷物に過ぎないさ。

これまで立ち寄った町でも、その都度宿はジーナの好意に甘え、その度に小遣いという名の借金をする。

単なるダメ男なのさ。

だが、ヒモではない。

だってお金は借金だから!


ルタオの町で行った商売は面倒に巻き込まれる臭いがするってジーナに禁止されちゃったから返すアテなどないのだが、いずれ返すつもりはある。

それが今際の際にならないことを祈るばかりだ。

この世界にも保険金の制度があれば死んでも安心だけど残念ながらないので仕事して稼ぐしかないんだよなー。

旅の道中で王都には学校があるってことを知った。

出来ることならそこにリリーを通わせてやるだけの稼ぎが得られる仕事に就きたいもんだ。


「おとーさん、あそぼー」

「はいはい、キャッチボールでもしよっかね」


リリーに遊びをせがまれ、おっさんのイメージする子供とやる遊びを挙げる。

こんなこともあろうかとボールは町で購入済みだ。

仕事のことは後で考えることにしよう。


「旦那〜、もう少し女の子らしい遊びしてやったらいいじゃないですか〜」


ザラからケチが入る。

女の子らしい遊びか……

確かにキャッチボールは男の子がやるイメージだ。

だけど女の子のやる遊びっておっさんよく知らねーぞ?

でも代表的なのは分かる。


「おままごととか?」

「お、それいっすね〜」

「やるやる〜。おかーさんも」

「ええ」


全員のってきたな。

んじゃまずは配役を決めるとするか。


「リリーは何役がやりたい?」

「リリーはね〜、おかーさんやりたい」

「んじゃ、リリーはお母さん役ね。んで、ジーナが娘役」

「私が? お前はお父さん役か……」


ノンノン間違ってる。

おっさんはそんなつまらない配役なんて御免だ。

もう少しドロドロした感じのおままごとがやりたい。


「おっさんは娘の彼氏で結婚の挨拶に初めて彼女の家に訪れた時に、若い母親に彼女と会った時以来のトキメキを感じた男の役やるから。あと、ザラはペットのちくわ」

「ちくわをペットにするってどんな家庭ですか!?」

「そんなことよりお前の配役の設定が気持ち悪い。お父さん役がいないだろ」

「そこは未亡人の設定。おっさんもその方が演技に熱が入る」

「旦那、普通おれか旦那がお父さんでしょ」

「やだよ、お前だと夫婦設定を活かしてリリーに襲い掛かりそうだし、おっさんがお父さん役ってまんまじゃん。大丈夫、脚本的にはちゃんと娘の方とくっつくから」

「リリーはそれでもいーよ?」

「絶対ダメっ!」


ジーナとザラの声が重なった。

結局、スタンダードにリリーが母親、おっさんが父親、ジーナが娘としてままごとをした。

ザラは大分妥協した結果、ペットの犬になった。

関係ない話ではあるが、動物をペットにすると獣人に嫌われる。むしろ過激な奴は殺しにくるから要注意だ。

似たようなことで魚人の前で魚を食すと嫌われます。

そのため魚人が多く住む海辺の港町には逆に魚を出す店は少なく、むしろ隣町の方に多いとの情報を得た。

タファンの森で用事を済ませたあとは是非ともそこに行こう。



「ふぅ、ままごとって大変だな」

「お前が真面目にやれば大した労力など必要ない」


そんなことないんだよ。

ままごとって簡単に言えば即興のアドリブ芝居だから結構考えさせられる。


「おじちゃんだいじょーぶ?」

「…………」


おっさんとジーナが会話している後ろでザラが地面を相手に犬神家状態になっている。

ままごと中にペットの立場を悪用してリリーを文字通り舐めようとした末にジーナにバックドロップを喰らわされた結末だ。

ある意味当然の処置。

リリーに心配してもらってるだけ幸せなことだろう。

べ、別にうらやましいなんて思ってないんだからねっ!?


「とにかく、スポーツとか体動かす方が気楽でいいや」

「ふーん、例えばお前の得意なスポーツってなんだ?」

「え、そりゃあ……棒を使って白いものを穴の中へとぶち込むスポーツかな?」

「なっ……」

「まあ、リリーも出来なくはないけど、まだ早いたっ!?」


話の途中で殴られた。

打撃耐性のスキルを得たというのに相変わらずジーナの攻撃は効くなー。

おっさん的にはオッケーですけど、人の話は最後まで聞くべきって教わらなかったのだろうか。


「お前はリリーに何を教えるつもりだっ!?」

「何って、おっさんの得意なスポーツをジーナが聞いてきたから答えただけじゃん。リリーにはまだ早いって思ってるよ」

「まだってことはいずれ教えるつもりなのか……?」

「機会があれば教えてもいいかな?」

「そんな破廉恥なことをリリーに教えるつもりなのかっ! 例え親であってもそんなこと……」


どうやらジーナは勘違いをしているらしい。

なぜならばおっさんの言ってるスポーツとはゴルフのことだからだ。

おっさん、接待とかでやったりしてたからそこそこイケる。

ベストスコアは81。アベレージでは90に近い。

ゴルフがわからないなら、素人としてはうまい方って覚えておいてくれたまえ。


まあ、ジーナの勘違いはおっさんの思惑通りなんだがな!!!


「え〜? おっさんの言ってるスポーツってゴルフっていう小さな白い球をクラブって棒で打って遠くにある穴に入れるっていうれっきとしたスポーツのことなんだけどな〜?」

「は……」

「ジーナはいったいな〜にを想像したのかな〜?」

「う……」


自分の想像したものを思い出したのか、ジーナの顔が羞恥に赤く染まる。

これなんだよな。

ジーナって時々こうゆううぶな反応するからたまらん。

ついついからかいたくなっちゃう。


「お、お前が変な言い方するから……」

「でも間違ったことは言ってないよ? そこから恥ずかしい想像したのはジーナなんだけど?」

「くぅっ……」

「何ならジーナの想像したことをリリーの前で実践する? 性教育は子供のためにも重要だと思うんだ」

「し、死ねっ!」

「はぶっ!」


口は攻撃しちゃダメでしょ……

やばい、そうこうしてるうちにジーナがアイアンクローの体勢に入った。


「このまま頭蓋を砕いてやる」


ア、アカン!

からかいすぎた!

調子に乗った末路がこれか……


「なにしてるのー?」


脳裏に響く頭蓋骨の軋む音の狭間に我が天使の声が聞こえる。


「何でもないのよ」


その声によっておっさんの頭はジーナの手から解放される。

さすがにヤバかった。

いったいジーナの握力はいくつくらいあるんだろう?

少なくとも林檎ならば簡単に潰せるはずだ。

まあ、確かに痛かったけどその痛みは全然嫌いじゃない。

多分また懲りずにジーナをからかうことだろう。

そして再びお仕置きという名の桃源郷を味わうことになるはずだ。

なんか考えとかねーと……


「馬鹿の相手してたら疲れたわ」

「それじゃあ、ジーナは少し休んでなよ。リリーはお父さんとキャッチボールしよう。あ、ボールは市販のボールを使います。決しておっさんの股間のボールを使うわけではないからね」

「余計なこと言わんでいいからやるならさっさとやれ」

「おとーさんはやくー!」


リュックからボールを取り出してリリーに投げてやる。

それをリリーはいとも簡単にキャッチしてみせた。

この子は才能の塊じゃ。


「いくよー」


リリーがボールを投げ返す。

ってはやっ!

子供が投げる球速じゃねえよ。


「ナイスボール。その調子」


ギリギリ捕れたけどあのスピードはなんなの?

ぶっちゃけ百キロ近くは出てたんじゃね?


「こんどはもうちょっとつよくなげるー」


え、嘘……さっきの本気じゃないの?


「うっ!」


リリーが再度投げたボールは気付けばおっさんの胸に直撃していた。

痛みはそこそこ。

だが、ボールが高速で自分に迫る恐怖は例え一瞬の出来事であろうと鮮明に残る。

忘れそうになるが、リリーはジーナと同じくドラゴンだ。

その身体スペックは異常ともいえるほどに高い。


「も、もうちょっと力抜いて投げよっか。リリーが怪我しちゃいけないからさ」

「わかった」


必死に体面を繕う。

今はまだ幼いリリーにおっさんが自分よりも惰弱な存在だと悟らせないようにしよう。

やっぱり父親ってのは偉大な存在であるべきだからな。


だけど、若干手遅れになりかけてる気もするんだよな〜。





自分が愛するべき存在であるリリーとなし崩し的にその父親となった男が仲良く戯れているのをクラベジーナは微笑ましげに見つめていた。

元々クラベジーナにとっては男は邪魔で目障りな存在であったのだが、それも共に過ごすうちに段々と薄れ、今では一緒にいるのも悪くないと思っていた。

何より男と一緒にいることでリリーが幸せそうにしている。ただそれだけで男と共にいる理由としては十分だ。

見ればリリーがドラゴンとしての高い身体能力を活かして男に球を投げている。

それに男は全く反応出来ずにぶつかり、なんだかんだ言いながらリリーの力を制限しようと口を回らせている。

大方、リリーには情けないところを見せたくないのだろうと当たりをつける。


「バーカ」


そんなことしてもリリーもいずれは男がどうしようもない奴だと気付くだろう。

でも、それでもリリーが男を見放すことはない。

なぜならそれがドラゴンという存在。

固体数が少ないためなのか、ドラゴンは家族というものを大事にする。それは恐らく本能のレベルで。

だからリリーは父親と認識した男にあれだけ懐く。

本当はそうなる前に引き離さなければならなかったのだが、家族であるリリーを悲しませることはクラベジーナのドラゴンとしての本能が許さなかった。


「本当にこれで良かったのかな?」


クラベジーナは人知れず呟く。

それが誰に対する問い掛けなのかはクラベジーナしか知らない。



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