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オッサンの異世界記  作者: 焼きうどん
第一章:人→クワガタ→人へ
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おっさん、初めて会話する


いやー驚いた。

起きたら緑のおじさん(クワガタ)になってたとか何の冗談よ。

つーかまた変態言われた。

おっさんはダンディなロマンスグレーなのに……

いや、今は緑だからロマンスグレーじゃねーや。ロマンスグリーン?

とゆーか緑になって何か変わったわけ?

あ、保護色か。

森の中でうんたらかんたら言ってたのはそうゆうこと?

それよりもまた適当に食い物探しますかね。

お、赤い果実はっけーん!


『それ、毒あるわよ』

「いや、おっさんには効きませんから」


毒完全耐性とかゆーの持ってるからね。

この三ヶ月の間に色んな毒性植物を食った結果だよ。

今では一口食べれば「あ、毒ある」ってわかるんだよね。

その他の耐性のおかげでおっさん何食っても大丈夫。


『そうなんだ』

「そうなんです」

『じゃあ、もっと毒が強力な実を作った方がいいのかな?』

「いや、あらゆる毒植物を食った毒マイスターなおっさんの意見を言わせてもらえば、この実はそこそこなレベルの毒を持ちながらも毒っぽい臭いがしないんだよね。その点は摂取する側としては嵌められた感がある」

『そっか。ならこのままでも生き物を毒殺するのは訳無いのね』

「そうそう。ま、おっさん以外はね……って誰っ?」


おっさんと今まで会話してたのは誰ですか?

しかし、周りを見回してもそこには誰もいない。


『クスクス』


なんかおっさんを笑ってるみたいな音が聞こえるがそこにはやはり誰もいない。


「……幻聴?」


寂しいおっさんの心が作り出した。エアなボイスだったのか。

おっさん的には幻聴よりもきわどい水着のおねえちゃんの幻影が見える方が良かった。

ここで全裸のおねえちゃんじゃないのは、逆にエロさが消え失せてしまうからだ。

森で水着はエロいが森で全裸ではエロさが足りない。

これが分からん奴は性欲に真っすぐな青い小僧だ。

そして「その水着って葉っぱ製ですか?」と考えた奴は誇っていいぞ。お前は立派な戦士だ。履歴書の職歴に戦士と書きなさい。

おっさん?

おっさんはただのオッサンです。それ以上でもそれ以下でもありません。


『幻聴じゃないよ。とゆーか聞こえてたことに私がビックリ』


また声が聞こえる。

どこだ……どこにいるんだ。

声が優しげなおねーさんっぽいからきっと美人に違いない。


「頼むからおっさんに姿を見せなさい」

『こっちよ』


声のした方向に目を向ければそこには先ほど食べた果実のなる木しかない。


『そう、あなたが今見てるのが私』


おっさんが見てる方向には先ほど食べた果実のなる木しかない。


「所詮は幻聴か……」

『いやいやいや! 私だってば! その見つめてくれてる木が私』


木が私って……

幻聴さんはとんだファンタジー思考によって作られたものみたいだな。

やれやれ仕方ない……


「これか? これがええのんか?」


おっさんはとりあえず木を舐め回した。

さて、脳内の妖精さんよ。どう反応するんだい?


『や、やめて……まだ樹液は外に出てないの。私、まだ傷がついた経験がないから……』


なんかやたら艶っぽい感じで返してきたな。ここは良いではないかとか言いながら続けるべきか……


一度整理してみよう。

脳内でエアな相手を作り、それを木に見立てて会話し、その木を舐めるおっさん……

うん、気持ち悪いね。

絶対に友達になれないし、友達もいない(変態仲間はいるかも)


「おっさんは馬鹿だっ!」

『え、そんなことないよ。気持ち良かったし』

「植物を満足させて何が楽しいんだっ!」

『なんか……ごめんね?』

「いや、君は悪くない。悪いのは全部おっさんだ」

『元気を出して』

「慰めるなよ馬鹿野郎。優しくされるとおっさん付け上がっちゃうからね」

『あのーちょっといいっすか?』

『あ、はい。何ですか?』

『こっちちょっと光合成に集中してるんで、もう少し静かにしてもらっていいっすか?』

『ご、ごめんなさい』

『いやいや、君はまだ若いから仕方ないっすよ。おーい、誰が一番酸素作れるかの競争再開しよっす』

『うーい』

『おけ』

『任せんしゃい』

「なんか脳内音声が増えた……」


しかも酸素を作る競争とかしてるし。

正直ありがとう。あなたたちのおかげでおっさんらは生きていけます。

そしてごめんなさい。おっさんは二酸化炭素を吐き出すためのダメ生物です。


『なんかますますへこんでるね。大丈夫、ちょっと注意されただけで杉690452さんも怒ってないから』


なんかまた慰められた。

とゆーかおっさんに対して「お母さんもう怒ってないから大丈夫だよ」って近所のお姉さんが言う感じなのはいかがなものか。

ま、そういうの大好物ですけど。


「さすが脳内音声。おっさんの好みを熟知してやがる」

『さっきから脳内音声って言ってるけど違うよ?』

「はいはい。わかってるわかってる」


嘘ついた子供に「お前嘘ついたろ?」って言っても「嘘なんかついてないよ」って返してくるようなもんだな。

おっさんの脳内は生まれ変わったせいか思考が若々しいらしい。


『いや、私と会話できるってことはあなたそうゆうスキル手に入れたでしょ? 心当たりある?』


む? 何やら必死だな。


「はいはい。例えば何があるのかな?」

『えっと、木々の声ってゆーのが代表的なものだけど……』


木々の声ね。うん、確かそんな感じの起きたら手に入れてたかもね……って


「え、うそ、やだ、まじ?」

『あ、やっぱり?』


こいつぁおでれーた。

木の言うことが本当ならまじでおっさんは木と会話してたわけ?

なら、あの変態行為も……


「色々すまんかった。許してちょんまげ」

『……うん、許すよ。あと、くそ寒い』


なにはともあれおっさんは初めて誰かと会話が出来ました。



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