015-挨拶の効用 3 <意思の疎通 芝コン>
いつもいつも誤字のご指摘ありがとうございます。
迂闊な人間でスミマセン。
これからもよろしくお願いします。
「大井君、ちょっと。」
グダグダで終わった机上避難訓練のあと、いつも朗らかで調子の良い、だからボス教授の受けが良い学生を安野は呼び止めた。『薬学部の女の子と仲良くしたい』と発言していた彼である。
「何か御用ですか? 安野先生。」
「御用だ!御用だ!」
「何とか捕物帳ですか?」
大井君はあきれ顔で安野を見る。
「いやね。お願いごとが会ってね。」
「イヤな予感がするなあ。面倒ごとですかぁ?」
「うん面倒ごとだ。アハハハハ。 中山先生との交渉ごとだ。」
「え〜っ! ボスとの交渉って…ヤダナ。」
大井君は露骨に顔をしかめる。
「まあ、そんなこと言わずに。 お願い!」
「なあ良いですけど。何を交渉するんですか?」
安野は安全勉強会で明らかになった《大学院棟の学部間の連携が無いこと》、その連携をとるために6階のメンバー全員で『芝コン(建物前の芝生で行うバーベキュー・コンパ)』を行いたいこと。そのために、『①同じ階の理学部、農学部、薬学部の研究室のボスへの連絡と承認を得てほしい。②その費用のカンパのお願い。』を指示した。
「はい。これ僕からのカンパ。8千円だ。 封筒に『安野先生 8000円』ってちゃんと大きく書いておくんだよ。」
「8千円? ちょっと中途半端ですね。」
「うるさいなあ。お父ちゃんの小遣いは少ないんだよ。それに…」
「それに?」
「安野先生が8千円出した、と言えばボスは1万円以上出すだろ?」
「…! 先生、ずるいですね。」
「ずるいんじゃない。策士と言え。」
「へい。先生策士ですね。…この方法は使えますね。」
「じゃあ、芝コンの幹事はよろしくね。 あ! 僕はお酒は飲まないから、ビールだけではなくて、ジュースとかお茶もお願いね♡」
結局、ボスは1万5千円をカンパしてくれたそうだ。
1週間後、第1回の『大学院棟学部横断芝コン』が開催された。他学部の研究室ごとの幹事により、それぞれの研究室のボスからカンパが集まり、豪華な飲み会になった。余ったお金で新規にバーベキューセットも購入された。焼肉の良いにおいに誘われて、他の階の学生や先生方もわらわらと途中参加してきた。…途中参加の先生方も幹事らからカンパを『強要(強くお願い)』されていた。でも、ビールを一杯飲ませてから、『お願いする』のはずるいなあ。
でも、この芝コンで、大学院棟の学部を越えた連携が構築された。
♫ ♫ ♫ ♫ ♫
その後、定期的芝コンは開催されている。カンパの要請がしばしばある。
廊下ですれ違う他学部の学生が挨拶をしてくれるようになった。少なくとも、声を掛けても不審がられることはなくなった。うちの学生も、他学部の先生へ挨拶するようになった。 建物内に侵入した不審者の情報も迅速に共有されるようになった。
安野は《挨拶は人間関係の潤滑油だなあ》としみじみ思った。
なお、うちの学生の大野が、薬学部の女の子と仲良くなれたかどうかは不明である。




