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キャンパスでは「ご安全に!」  作者: リオン/片桐リシン
014-燃えるゴミ燃えないゴミ 全4話+1話
63/69

閑話-009 リプリント請求

誤字のご指摘ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。


 「先生、この文献が読みたいんですが…」

 「どれどれ? う〜ん? 聞いたことの無いジャーナル名だな。」

 「Webcat(国立情報学研究所 全国図書館雑誌検索システム。2024年サービス終了)で検索しても、国内には無いみたいです。」

 「あちゃー。じゃあ図書館経由の文献複写依頼もできないな。」

 「どうしましょう?」

 「リプリント請求してみようか?」 


 「リプリント? なんですか? それ?」

 「リプリントというのはね、論文を雑誌に乗っけた時にその著者に50部とか100部送られてくるその論文のコピーだよ。一般的には論文は投稿した時にその著作権を著者から雑誌社や学会に委譲するから、自分の論文でも勝手にコピーできなくなる(まあしているけどね)。だから、他人にそのコピーを渡すための印刷体だな。」

 「そのリプリントは誰に請求するんですか?」

 「著者だな、責任著者コレスポンディング・オーサーだな。ほら、この論文の氏名に*(アストラック)がついている人だ。この人に『あなたの論文を読みたいのですが、当方では現入手して読むことができません。そこで、1部送ってください。送り先は~~』という形で請求するんだ。」

 「著者のメールアドレスがあるから、そこにお願いすれば良いんですか?」

 「そうだな。もちろん英語で書けよ。」

 「うへ〜っ」


 「昔、といっても1990年代まで。まだ電子ジャーナルの進歩する前は、原始メールを使ったリプリント請求という研究者の相互の互助システムがあったんだ。今でも、このシステムは、かろうじて生きている。」

 「原始メールって…駄洒落ですか。」

 「まあね。」

 「でも、返信用の封筒を入れるためには、請求も原始メールで行わなきゃならないんですか?」

 「いや? 返信用の切手を日本では入手できないだろ? これは研究者の互助システムだから、昔ははがき一枚で請求して来たし、切手代はこちら持ちでリプリントを送ったものだよ。」

 「お願いされたのに、切手代こっち持ちって、何か理不尽なような…」

 「リプリントを請求されるのは名誉なことだから、『喜んで』おくったもんだ。でも、国内で図書館経由で手に入る論文のリプリントは請求しちゃダメだよ。手に入れる努力をしたけど無理だった場合だけだよ。だから今の日本では請求されることはたまにあっても、請求することはほとんどないな。」

 「そうするとボクはとってもレアなケースに出会った。 運がいいんですね。」

 「いや、運が悪いんだろうな。もしその著者が2000年以前から研究者をしている方なら、リプリントを送ってくれるかもしれないけど、もちろん完全な善意の行動なので、必ず手に入ると思っちゃだめだよ。」

 「はーい。」


 「ボクの場合、1980年代の後半のポスドクをやっていた頃は、毎週1〜2マイはリプリントの請求が来たな。これはね、掲載誌がChemistry LettersとかJ. Phy. Org. Chem。というような日本化学会の雑誌や創刊間もない雑誌に多く投稿していたからなんだ。」

 「何でそんな雑誌に投稿してたんですか?」

 「当時の指導教員ボスがその雑誌の編集委員や編集長をしていたから、インパクトの期待できる自信作はメジャーな雑誌ではなくそれらの雑誌に投稿させられていたなぁ。」

 「あらまあ。」

 「で、ボスのところへ来たリプリント請求の処理は全部ボクがやっていたんだよ。東欧からよく請求されたな。ルーマニアとかチェコとか東ドイツとか…」

 「東ドイツ?」

 「当時はドイツは東西に分裂していたんだよ。自由圏の西ドイツと、共産圏の東ドイツに分裂していたんだ。ほら、『ベルリンの壁』は高校でならったろ?」


 学生にこの話しをしながらボクは遠い目をした。

 「1989年12月にルーマニアのティミショアラ大学の学生さんから1988年に公表した 論文のリプリント請求が来たことがあったよ。すぐに発送の準備をしたんだけど…、その日の夕方のNHKのニュースで、文字通り炎上するティミショアラ大学が報道されていた...。チャウセスク政権に反対した大学生の粛正が起きたんだ….多くの学生と教員が秘密警察に虐殺されたそうだ。 翌日朝、郵便局で「この郵便届きますかねえ?」と郵便局員に質問したら、「難しいでしょうねえ」と 言われたことを思い出すょ。」

 「…激動の時代だったんですね。」

 「そうだね。ボクの論文のリプリントが請求者さんに届いたかどうかは、不明のままだよ。」


 科学者のソサィエティでは,国やその主義はあまり関係ない。でも、あの時代、多くの争乱で、特に東ヨーロッパ、共産圏の研究者は否応も無くその波に翻弄された。

 「争いは…イヤだねえ。」

ボクはぼそっとつぶやいた。


12/23日のN大学のテトラクロロシランの『破裂事故』煮関して、中京テレビ(日テレ系列)のニュースでコメントしました。ほんとうに数秒でしたが、「あれは爆発ではなくて、破裂ではないか」との私のコメントが顔の画像付きで流れました。爆発と破裂については「キャンパスではご安全に」の『011-破裂 3<爆発と破裂の狭間>』をお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n0990kd/45/


中京テレビで放映されたものがYouTubeに上がってました

https://www.youtube.com/watch?v=ED2A43EdMtg


コメントいただければ幸甚です。

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