溺れる宿
月と酒と
静かな夜だ
ただ 男の声がしなければ
わずかに少し この酒がうまかったろうに
今宵 月は満ちている
愚かな者すらうつしてしまうのか
醜い花すらうつしてしまうのか
溺れる宿よ
愚かなわたしをどうか許さないで
煙を沈めては 目を瞑るから
煙を沈めては 耳を塞ぐから
溺れる宿よ
愚かなわたしをどうか許さないで
愛を 偽りと勘違いするから
嘘を 真実と勘違いするから
このまま 月夜に溶け込んで
眠りについてしまおうか
涙声すら 見て見ぬふりをして
かさぶたを忘れてしまおうか
戯言まみれの杯で
男と女と