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1.月明かりのなか
深い夜が更けた頃に
聴きなれた音楽のリズムと
煎れたてのコーヒーの香りに包まれながら
部屋の灯りを消して月明かりのなか過ごす
コーヒーを飲みながら
不意にもう会うことのない人のことを思い出して
ねこじゃらしの様なもので心がくすぐられていた
思い出してもあの日のままの彼の姿しか分からない
それなのに時々思い出してしまうし
未だに心がくすぐられるのは どうしてだろう
あの時期
月が満ち欠けるように
感情がみえなくなってゆき
距離を置くことを選んだけれど
さよならを言いそびれて
またねとも言えなかった
遠く、遠いあの日の彼に 言い忘れたことひとつ