【短歌】2020年、春から夏
2020年の春、未曾有の事態に言葉が出なくなり、五七のリズムでしか吐き出すことができなかった時期がありました。
今回は当時のことばに少し手を加え、連作もどきをしてみます。
※仕様の関係で、タイトルと本文が同一です。
今回は当時のことばに少し手を加え、連作もどきをしてみます。
※仕様の関係で、タイトルと本文が同一です。
鍛錬を誇る男の腹の柔さ知らず袋に詰められて骨
2023/11/23 12:36
(改)
患者より患者の電話が押し寄せる病院事務に慈悲をください
2023/11/23 12:38
外来にプールのにおい満ち満ちて「子供の声がしなくなったよ」
2023/11/23 12:41
病院でなければ悼まれないひとがいる目瞬きは刹那の祈り
2023/11/23 12:42
「消毒は注射用しかないってさ」ピンクのカラとはみ出る酒精
2023/11/23 13:36
ひとり、ふたり。トラック1台。またひとり。空疎な街の息のしやすさ
2023/11/23 13:39
「点滴は上手に自己抜去する模様」浮かんで消したいらすとやの絵
2023/11/23 16:24
人の目があるかないかに関わらず花は散り咲く新人医師も
2023/11/23 21:52
「面会は原則禁止としております」無線飛び交う台数増える
2023/11/23 21:53
連休の発熱外来シフト表 保護者数名天を仰いだ
2023/11/23 21:54
『視野確保困難なほどの皮下脂肪』押さえてないから下腹なんて
2023/11/23 21:58
「女房に会いたい」とこぼすご老体やめろうっかり萌えるじゃないか
2023/11/23 22:09
田舎ではなんでも三月遅れてる開いた病棟再び閉じる
2023/11/23 22:10
梅もまだ干せてないのに海だけが夏の音色を先取りしてた
2023/11/23 22:11
毎日毎日今日も曜日がやってきて今年の黒豆いつ食べたっけ
2023/11/23 22:11
ぽっかりと大口あけた空見上げそうだ人影今日ひとつだけ
2023/11/23 22:11
こまぎれの時間が灰に消えていくドラマの最終回だけが季節
2023/11/23 22:12
自転車と靴底アスファルトで削りrollのほうがrealよりまだ
2023/11/23 22:12
今日死んだ、昨日死んだとウイルスが誹謗中傷と致死率競う
2023/11/23 22:13
「アビガンは倫理委員会出てるって」晩夏の空が今日も五月蝿い
2023/11/23 22:13
畳紙を開かないまましまう夏 読経の声を指先で消す
2023/11/23 22:15
悲しみはカケラもなくてさみしさが白鳥のように空にあるだけ
2023/11/23 22:16
あの海にレモン絞ってもうひとつ搾ったような東雲 夏だ
2023/11/23 22:17
線を引くそこから始まる円を描くあなたへの嘆きで鳩が生まれた
2023/11/23 22:20
(改)