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3 鼻歌の魔女は女子高生になりたい(後編)

※注意:この作品は「鼻歌の魔女は異世界でアニソン歌手になりたい」の16話のパラレルワールドです。

https://ncode.syosetu.com/n5502ic/16/

★ユリアナ六十五歳、日本戸籍上十五歳(薫三十七歳)

◆九月




 二学期が始まった。


 私たちは自転車で通学するようにした。盆休みに試験的に自転車で遠出してみて、これは電車通学より使えると思ったんだ。


 私は身長一四〇センチ十歳児相当と見せかけて、脚の長さは一七〇センチの成人女性並みにある。だから、自転車を小さくする必要はないのだけど、あえて二十四インチを選択。そしてサドルを低めに調整。

 すると、ペダルを漕ぐのに脚の長さがあまり気味で、ペダルが高くなったところで膝もかなり高く上げられる。そのときにパンツを見せることができるのだ。


 もちろん、この夏服のスカートは、ただ立っているだけで、人肌には感じないような風でも簡単にひるがえるので、常に手で抑えてていることが前提だ。それでも、脚を上げることで、抑えていながらパンツを公開することができるのだ。


 さらに、夏服のスカートはちょっと短いので、サドルに座るときにスカートをお尻の下に挟むことができない。だから前側だけ抑えても、横や後ろからは見せ放題だ。


 そんな私の高度な作戦とは裏腹、ルシエラは何も考えずに前も後ろも手で抑えることなく、フルオープンで爆走していく。ルシエラがパンチラの極意を理解できる日は来るのだろうか。




 水着の季節も終わってしまった。残念。

 と思ったら、水着を持ってバスに乗ることに。旅行?


「どこに行くのかな」

「さあ分からぬ」


 オリエンテーションを聞き流してしまったので、一年のイベントとかまったく分からない。私たちは期待と不安を胸に、バスで一時間揺られた。



 そして、到着したのは…、


「海!」

「薫と行ったところに比べると汚いのぉ」


 関東の海だからしかたがないね。でも海だよ!

 私たちは更衣室で水着に着替えた。


 砂浜には一年生から三年生まで、全クラスいるようだ。


「さあ、今日はがんばるぞ(わよ)!」

「「「「「おおおおっ!」」」」」


 なんかクラスのみんな一致団結してる…。

 なんか列に並び始めたので、私たちも並んだ。



 突然ピストルの音が鳴って、全校生徒が一斉に裸足で海に向かって走り始めた。何これ?競争?


 私の地獄耳がみんなの話を聞くには…、


「ルシエラ…、これ、体育祭みたい…」

「トライアスロンとか言っておるぞ」


 これは「水着バトル、ポロリもあるよ」ってヤツか!


 私は胸が大きくて困っちゃう女の子走りをして、みんなの後を追った。


 この格好で走るのは初めてだ。いつものブルマより格段に食い込みやすい。だけど、夏休みに沖縄で着たマイクロビキニよりは格段に食い込まない。だからといって、歩いていれば一〇〇歩くらいは食い込まないでいられるけど、走ってしまうと三十歩ごとくらいで食い込んでしまう。


「ねえルシエラ…。走っているうちに気がついたんだけど、あの座ってる人たち何かな…」

「参観の保護者だと言っておったぞ」

「マ・ジ・で」


 小学校でもあるまいし、運動会を親が見に来るなんて…。


 と思ったら、観客席にいたんだ…。薫が…。

 私が薫に気がついたことに、薫も気がついたみたいで、手を振ってくれた。


 そして、薫はカメラを構えた。そんなの買ったんだ…。大手AVメーカーSunnyのデルタシリーズじゃないか。一〇〇万くらいするいちばんいいやつ…。めっちゃごっつい、望遠鏡のようなレンズがついたカメラ。レンズも五〇万くらいしそう。


 認識阻害の魔道具から、薫だけは除外してある。薫だけは私たちにカメラを向けることができるのだ。

 ちなみに、私たちが入っているのに気が付かずに、他の人を撮ろうとして、一緒に写ってしまうのはしかたがない。だけど、私たちのことを認識すると、なぜかシャッターを切れなくなるので、私たちが映らないように構図を決めなければいけない。


 まあ、いくらそんなことをいっても、今空中に漂ってるドローンの広角カメラでは私たちに気づかずに写してしまうだろう。そしてその映像は観客席巨大なスクリーンに映されている。でも広角カメラでは、私は小さくしか写ってないだろう。金髪がたくさん映っている中で銀髪が映っていても、たいして目立たないはず…。




 何人かの人が海に足を入れた。浅いからといって油断してると、ほらっ、ばしゃーんと壮大に倒れる。


 私は背が低いけど、脚も長さは白人成人並みなので、足が取られにくいし、そもそも力が成人男性の十倍あるから、コケたりしない。だけど、ここはコケているドジっ娘の方が可愛いだろう。ついでにコケたときに腰を折り曲げておけば、パンツがずり下がってしまうので、起き上がって「てへっ」とか自分をコツッと叩きながら、パンツを上げている姿で得点アップだ!


 おっといけない。私はただでさえ、三十歩おきにパンツの食い込みを直さなきゃいけないんだ。少し速めに走ろっと…。

 ちなみにルシエラはパンツが食い込んでも直さないしコケたりもしないから、さっさと先に行ってしまった。


 走って進んでいると、だんだん深くなって、腰まで水が上がってきた。もう泳ごう。だいたい、お尻が水に隠れてしまうと点数を稼げないし。


 泳ぎは何でもいいみたいだけど、無難にクロール。水中から見てもらえないと、胸が邪魔で腕をうまく回せない様子は分かりづらいだろうけど、パンツの食い込みはよく評価してもらえるはず。でも、水の透過度が低いので、直立してしまうと食い込みを直すところは見てもらえないだろう。ここは、食い込みを直さずにTバックになったまま、水面にお尻がぷりぷりと浮いている方が得点になるはずだ。


 他の子は…、早くもブラから胸がポロリしている子や、ブラの紐がほどけてブラが浮いている子など、強敵揃い。私はポロリ禁止というハンディキャップを負いながらも、みんなを出し抜いて勝たなければならない。


 っていうか、みんなポロリを直したり、浮いているブラを取りにいったりと、高得点すぎる…。私は出せるワザがなくて、みんなを追い抜いていくしかなかった。




 しばらく泳いでいると、浮き袋の陸地に到達。波に揺られてとても不安定で、立っているのもやっとの子が多い。私はこの程度でバランスをくずさないのだけど、ここは転んじゃうドジっ娘の方が高得点なのかな…。


 浮き袋の道を進んでいくと、前方に見えたのは…、パン食い競争?パンツじゃないよ。パンだよ。

 

 パンは一五五センチくらい子が頑張ってジャンプすれば届くくらいの高さに設置されているようだ。いじめなんだろうか。とはいえ、足場が不安定なので、みんな力を入れてもうまく飛べないようだ。


 でも、この学校の生徒の半分は外国人であり、日本人よりも五センチくらいは高い。みんな不安定な足場ながらなんとかパンに噛みついていく。


 私もパンの真下に到達。私は十歳相応のジャンプ力を意識してジャンプするが、パンまでは十センチほど足りない。ジャンプのたびに私の胸はぷるんぷるんと揺れる。水着もだんだんと食い込んでいく。


 必死…に振る舞う私。泣きそう…に振る舞いながら、水着の食い込みを直している私。


 会場は騒然とする。そして、頑張れーと私を励ます声がどんどん湧き上がった。


 私は客席を見回し、「ありがとう!負けないよ!」と言わんばかりの笑顔を振りまき、闘志を込めた顔をして、ふたたびジャンプ。ぷるんと揺れる胸にも闘志がこもっている。

 少しずつ力を込めていき、十回目でやっとパンにかすった。


 すると、会場に歓声が沸き上がった。


 そして、もう一回、大きくジャンプすると、私はやっとの思いでパンに噛みつくことができたのだった。ようにみせた。

 そして、着地しても余韻のように揺れ続ける私の胸。


 先ほどよりも大きな歓声が沸き上がった。よし!少しは挽回できたかな。


 私はパンをかじりながら歩みを進めた。




 次は、浮き袋で作ったアスレチックのようなゾーン。少し離れた浮き袋の間をジャンプで飛び越えようとしても、地面を蹴ったときに浮き袋は沈んだり後ろにずれたりして、思うように飛べず、ばしゃーんと海に落下している子が多数。


 面白いけど、得点を稼げる要素はないね。私は軽いので地面を強く蹴っても同じようにはならない。地面を蹴ったときに胸をぷるんと揺らし、華麗に高く舞い、そして静かに着地して、また胸を揺らす。落ちた子よりは得点入ったよね。



 アスレチックコースは続いた。うんていだ。一度に十人トライできるようになっている横幅のすごいうんてい。


 高校生にもなると、女子には普通にきつい種目だと思うんだけど…。でも外国人の子はけっこう頑張るね。日本人は落ちまくり。


 そして、私は…、まず、さっきのパン食い競争と同じで、普通なら高くて手が届かない。私はさっきと同じように、胸を揺らしながら、そしてパンツを食い込ませながらジャンプを繰り返し、やっとの思いでうんていの棒に辿り着いた、けなげにがんばる少女を演じた。


 棒まで手が届いたら、まず空中でパンツの食い込みを直した。せっかく高いところにいるのだからアピールせねば。


 それから、次の棒なんだけど、これまたけっこう幅があって、腕の短い私にはきついように見える。私は身体を揺らして助走を付ける。しかし、私の胸は位相が遅れて揺れており、エンジンのノッキングのような状態。力任せで行こうと思えばいけるのだけどねえ。


 しばらくすると、胸の揺れる周期がずれてきた。身体の揺れとは違う周期で揺れる胸。それなりに絵になってるかな。そして、身体の揺れと周期が合ったときに、私は次の棒に移った。右手も左手も付いていない時間があって、軽くジャンプしたような状態。


 そして、私は身体を揺らすためにたびに腰をスナップさせているので、もちろん水着のパンツがずり落ちてきている。これはなかなか高得点だろう。


 その後も同じように胸と身体の振動の周期が合うまで身体を揺らして、ジャンプ渡りを続けた。三回もやる頃にはパンツが完全にずり落ちてしまった。それを片手でぐいぐいと直すことで、遠くから歓声が聞こえた。やったね!




 なんとかうんていを高得点でクリアした私を待っていたのは…、遠くに円い…土俵のようなものが見えた…。もちろん、浮き袋で作ってあるので、とても不安定そうだ。


 いちばんに到着した子と次の子は互いに向き合った。さすがに男女は別らしい。

 かがんで地面に両手をついて、近くにいたドローンから「はっけよーい、のこった!」と声が発せられて、相撲試合開始。


 取っ組み合う二人。手は、廻しではなくて…、ビキニパンツの紐とハイレグの裾を掴んでいる…。それをぐいぐいと引っ張っていると、二人ともあっという間にTバックに…。

 相手に点を与えてどうするんだよ…。


 紐はどうやらきつく結ばれているらしい。紐がほどければ大事なところを晒して、また高得点だろうに…。そうなると、ワンピースタイプは不利だね。


 私の水着には、ペタッと張り付く素材が使ってあるので、紐がほどけても大事なところが晒されることはない。でもそれは、自然にそうならないだけであって、意図的に力を加えるとこの素材は簡単に剥がれてしまうのだ。

 私は前方の二人の試合を見ながら、ゴクリと喉を鳴らし、パンツとブラの紐、それからパレオを固結びで結び直した。いくら高得点だからって、ポロリは私としては負けだ。



 そして、私が土俵に到達したときには、一人の子が私を待っていた。それは…、九条院(くじょういん)姫奈(ひめな)様ではないか…。以前心を読んだときは、悪役令嬢の名にふさわしいゲスだったけど、認識阻害の魔道具のおかげで、私に対しては危害を加えられないようになっている。だからあくまでルールの範囲内で勝負を付けようとしてくるはずだ。


 というわけで、私と姫奈様は少しかがんで地面に手を付いた。だけど、かがんだときに私の水着のパンツはずり下がってしまい、上側がほぼ全開に…。これはなかなか高得点なのでは…。

 そんな私の葛藤をよそに、ドローンのかけ声とともに、試合開始!私たちは組み合った。


「ようやく勝負にありつけましたわ」

「そ、そうですね…」


 この女…。認識阻害の魔道具を乗り越えて、どうでもいいことを話しかけて来やがりましたわ…。


 互いにパレオ付きのビキニ水着。紐に手をかけてぐいぐいと上や横に引っ張る。私のずり下がったパンツも直してもらえた。私の高得点ワザを阻止するとは、卑怯なマネをする。

 そして、あっという間にTバックになる私のパンツ。それでもなお、ぐいぐい食い込まされるのって、ちょっと快感…。


「んふ…」


 地面が不安定なのも良い。引っ張られても倒れまいと踏ん張ろうと思っても、地面がのれんに腕押し状態。バランスを崩して、自ら食い込みにいってしまうときもある。


 あなたにもその快感を与えてあげるよ!私も姫奈様の紐に手をかけて、ぐいぐい引っ張る。私のじゃなくても簡単にTバックになっちゃうね。


「あふん…」


 気持ちよかったのか、顔を赤らめながら、私の紐を引っ張る力を強める姫奈様。ちょっと…、そんな方向に引っ張ったら、私の大事なところが…。力を加えたら簡単に剥がれてしまう。


 私は慌てて反撃にでた。でもそれがあだとなった。紐を引っ張りすぎてしまったのだ。


「あああん…」


 その気になれば、女の子なんて片手で持ち上げられる力があるのだ。だけど、その前にパンツはぐいぐいと食い込んで…、そして…。


 ぶちっ。


「いやああ…」


 やってしまった…。姫奈様のパンツの右紐は付け根のところから切れてしまった。


 姫奈様のパンツは左片側だけになってしまい、大事なところが見える寸前。お尻も右半分が見えているような状態。


 姫奈様は切れた紐を手で押さえるようにして、地面にへたり込んでしまった。


 「うぉおおお」と歓声が沸いた。すでに陸地の観客席からはかなり遠ざかっているけど、ドローンの中継を見ていた保護者たちの声は、ここまで響いたのだ。なんてこった…。高得点を与えてしまった…。


 負けた者は退場らしい。私も退場しなければ…。と思ったら、姫奈様がパンツの紐を押さえながら、とぼとぼと元の道を戻っていった。いやいや、その道はパンツの紐を持ちながらじゃ戻れないでしょう。


 私、相撲に勝ったから進んでいいの?変なの…。



 ルシエラはどうしてるかな…。私の地獄耳は、ルシエラの高周波なアニメ声をキャッチしているのだけど、「どりゃぁ」とか「うごー」とか言ってるだけで、どこで何をやっているのかは分からない。




 次に私を待ち構えていたのはビーチバレー!夏休みに練習したかいがあったよ!でも地面は浮き袋でできていて、大変足場が悪い。


 私が到着したときは二人が待機していた。私は三人目なので、もう一人の到着を待って二対二で試合開始した。

 パートナーもビキニ水着。相手はハイレグとビキニ水着のペアだ。


 相手のサーブしたボールが私に飛んできた。私はすかさず、レシーブのフォームを作る。腕の上に胸を乗せて手を組む。

 飛んできたボールは手に当たる前に、腕に乗っかっている胸にぽよんとバウンドして、あさっての方向へ。それと同時に、観客席から大歓声が沸いたのが聞こえた。


 パートナーは「もう、何やってるのよ」と言いたそうな顔をしているが、認識阻害の魔法のため、私には話しかけられない。話しかけられるのは…、姫奈お嬢様などよほど図太い者だけだ…。


 地面が不安定なので、それに抗って足踏みしているだけでパンツが食い込んでくる。もちろん、パンツの食い込みを直すのはアピールポイントなので欠かさない。


 その後も、相手のサーバーは私を狙ってサーブを打ち続けてきたので、私は胸レシーブをアピール。私はどんどん得点を稼いだ。


 らちがあかないと判断したパートナーは、私を押しのけてサーブを受けようとした。しかし、私は頑丈なので女子高生のタックルくらいではよろけず、逆にパートナーが転んでしまった。

 パートナーの妨害にもかかわらず、私は胸レシーブをぽよんと決め、ボールをあさっての方向へ飛ばした。


「もう、何するのよ!」


 さすがに認識阻害でもこれは発言できたか。なんだか、五十五年前にもあったようなシチュエーションだな。っていうか、自爆しておいて怒りを高めて、認識阻害を乗り越えてくるなんて荒技だなぁ。


 そして、立ち上がったパートナーは…、水着のひもは固く結ばれているのでほどけてはいないものの、タックルの衝撃でずれてしまい、大事なところがポロリ…。


「きゃあっ…」


 味方を妨害して繰り出すワザがあったなんて…。いや、ビーチバレーだから団体戦に見えるけど、これは個人のワザをアピールする場なんだ。私も胸レシーブだけじゃ能がないと思われるかな…。


 でも、相手は私に向けてサーブを打ち続けた。そして、パートナーは懲りてしまって妨害してこない。

 結局、最後まで私の胸レシーブの独壇場で試合は終わった。


 勝ったな…。と思って進もうと思ったら、審判がやってきて私は退場させられてしまった。あれ?




 結局最後に表彰台に上がったのは、三年一組だったんだけど、なんで?どう考えても私が出場したときの歓声が常にいちばんだったよ?


「そりゃまあ、いちばん競技はよくできてたのは三年一組だからな」


 帰って薫と反省会。


「えっ、だって、私、いちばん可愛かったし、いちばんエロかったでしょ?」

「それは間違いないけど、得点は競技のできだし」

「競技って可愛さとエロさじゃないの?」

「えっ…」

「だって、私のとき大歓声だったよ…」

「そりゃユリアナがエロ可愛いのは間違いないから、みんな熱狂するのは間違いないけどさ…」

「もしかして、真面目にパン食い競争の時間を競ってたの?」

「そうだよ」

「そんな小学校でもやらないような種目で?」

「時間を計るのが普通だろ」

「だ、だって、この世界って私と薫の煩悩でできてるはずじゃ…」

「オレを巻き込むなよ…」

「私、間違えて薫の好きなアニメやゲームの設定を一部取り入れた世界に来ちゃったっぽいんだけど」

「何言ってんだよ。セントルチア学園っていったら、多くのアニメやゲームの元ネタにされたり、実写ドラマの舞台にされたところなんだぞ」

「マ・ジ・で…」


 薫が私の知らない記憶を持ってる…。この薫は私の元となった薫じゃない…。

 でもまあいいや。世界線を意識して最初からやりなおす気はないし、けっこう楽しいし。そりゃ、私に都合のいい世界設定を盛り込んじゃった世界だから私に楽しいのは当たり前か…。



「そういえば、カメラ買ったんだね」

「いや、未来からかってに送られてきた」

「マジか」

「すごいよ。被写体自動追跡機能で、カメラがかってに回転しようとするんだ」

「そんなアクロバティックな機能が…」

「もちろん、フォーカスとか連写性能とか、基本性能も異次元だけどね」

「それ、魔方陣を使って改造してあるよ…」

「ホントだ。魔方陣がある」

「私、魔法と電子機器の組合せなんてできないよ?」

「魔方陣を描くだけならオレでもできるだろ。オレがやったとか」

「うーん…」


 薫の年齢で今からカメラメーカーに転職して、電子機器から魔方陣を起動させたり、魔方陣から電子機器の状態を把握したりするようなものを作れるようになるとは思えない。いったいどういうことだ…。


「で、どんな写真撮れたの?」

「見てみるか」

「なかなかいいね…」


 私が顔を赤らめながらパンツの食い込みを直してるのとか、ずり落ちたパンツを上げてるのとか…。私って可愛い…。


「オレ、こんなの撮った覚えないんだけどなぁ」

「自然に指が動いたんだよ」

「たしかに、ベストショットばかりだから、知らずに動いたとしてもおかしくないな…」

「ルシエラは?」

「あっという間にゴールしちゃったみたいで、どこにいるのか分からなかったんだ」


「わらわの勇姿を見るがよい」

「「えっ」」


 ルシエラは明かりを消して、雷魔法で壁にプロジェクタ投影を始めた。そこにはルシエラが周囲の子をちぎっては投げ、爆走していく様が映っていた。


「どうやって撮ったの…」

「観客や他の選手の視界をもらったのじゃ」

「なるほど…」


「紙にも出力できるんだっけか」

「うん。水魔法でインクを使って印刷するか、土魔法で鉛筆かトナーで」

「さすがに電子メディアにはコピーできなそうだな」

「記憶の電子化かぁ…。できると楽なんだけどね」




◆◆◆

◆十~十一月




 次の行事は十一月の文化祭だ。体育祭が終わって二ヶ月で準備を進めることになる。


 黒板に書かれた出し物の候補は…、メイド喫茶、バニーガール喫茶、水着喫茶、獣人喫茶…。女子に着せたいコスプレを挙げているだけに見えるけど、マザーエルフは男子と同じ意見を持っているのでとくに反論はない。女子もまんざらでもない様子。


 メイドは向こうの世界にいくらでもいるけど、獣人はいないんだよね。バニーは獣人に含めていいのでは。それかバニーのハイレグレオタードも水着のうちでは。そして水着はもう着たし。というわけで、すべての要素を含んだ獣人喫茶が選ばれるように、嬰ト短調の洗脳を消音で口ずさみ、数人を洗脳した。


 出し物は学年別にクラス対抗らしい。というか、一年生は喫茶店って決まってるんだって。一組は無難にメイド喫茶、三組は水着喫茶だそうだ。被らなくてよかったじゃん。


 衣装は自分たち個人で作成して用意するらしい。既製品じゃダメなんだって!生地は提供してくれるらしい。メイド喫茶も水着喫茶も衣装自作らしい。


 私たちはとりあえず担当の動物だけ決めて各自衣装を作ることになった。家庭科の授業の成果が生きてくるね。


 ルシエラはこの辺のスキルを何ももっていないようだったけど、心魔法は知識だけでなく経験やスキルもコピーできるので、家庭科の教師や生徒からスキルをコピーしまくったようだ。


 私は向こうの世界で、アニメの記憶を元にしたデザインのドレスを作ったりしたけど、三メートルの巨大な蜘蛛の魔物から捕れる糸はゴムみたいなもので、縫うのではなくて火魔法で加熱して溶接するものだ。だから、細かい縫製スキルなんて持ってない。

 私はまだ裁縫スキルをコピーしたりはしていないけど、たしかに家庭科の教師のスキルはもらっておいたほうがいいかもしれない…。センスももらえるかな…。


 それから、準備するものは衣装だけではない。喫茶店というからにはお茶やコーヒー、軽食を出さなければならない。そして、ここでもインスタントやレトルトが許されない。ここでもまた、家庭科の調理実習が生きてくる。


 私は一応独身男の料理と、それを元に肉料理やスイーツを領地に広めた経験があるんだけどね…。あと、魔物討伐訓練の野外実習のため、魔物をまるまる解体したり、サバイバル料理を作ったりもできるよ。

 というわけで、そんな料理スキルでは自信がなくなってきたので、家庭科の教師からスキルをコピーしておいたほうがよさそうだなぁ。まあ、美味しくなる魔法をかければ、何でもいいんだけど…。料理スキルは向こうの世界でも役に立つだろうし。




 家に帰って衣装作り。一応準備期間は二ヶ月もあるのだけど、クオリティを上げるなら、家でより時間をかけた方がいい。いや、より時間をかけたいなら、時魔法で加速すればいいか。間に合わなそうなら考えておこう。あれ、時魔法と作る系ってなんかデジャブ…。


「ただいま。うわっ、散らかってる…」

「おかえり」「よくぞ戻った」


 ワンルームだったけど、異次元収納で拡張したはずの部屋は、衣装の素材でごった返している。


「何これ…、獣人コスプレ…?」

「そう。獣人喫茶」

「本格的だね…」

「うん」

「これ…、怖いんだけど…何…?」


 銀色のシェパード犬くらいの首が三つ生えた魔物の死骸を見て薫が尋ねた。


「ケルベロスの子供」

「マ・ジ・で…」

「スタンピードに紛れてた」

「大人はどんくらい?」

「三メートル」

「お、オレは寿命を全うしたらアニメ声の美少女になって異世界に行くんだ…。た、楽しみだな~…」


 薫の声は震えていた。




 文化祭の準備をするホームルームは毎日一時間の枠があり、皆で協力して進めるようにと教師に言われている。つまり、みんなとコミュニケーションする必要が出てくるわけだ。


 しかたがないので、認識阻害の魔道具にレベルを設けて、文化祭の準備の時間だけはクラスのみんなや教師が私たちと話ができるようにした。すると、みんな喉に詰まった餅を吐き出すように、私とルシエラに話しかけてくるようになったのだ。


「ユリアナちゃん、衣装、けっこう進んでるね」

「ルシエラちゃん、ここの縫い方教えて」

「「ユリアナちゃん、……」」

「「ルシエラちゃん、……」」


「えっと…」

「わらわは教えられんのじゃ……」


 今までまったく話したことがなかったのに、なぜ急に話しかけられるようになったのかとか、なぜ急に私たちに人が群がるようになったかだとか、そういう疑問については引き続き認識阻害の対象だ。ルシエラののじゃキャラであることにも疑問は湧かず、当たり前のように接する。私たちに関する疑問はとにかく湧かないのだ。私たちはありふれた存在のように扱われるのだ。エロ可愛いことを除いて。


 しかし、みんなは私たちの名前を覚えている。そりゃそうだ。あれだけ可愛さアピールして得点を稼いできたんだから。マシャレッリは姉妹で二人いるから、姓ではなく名で呼んでくるし、外国人が多いからかファーストネームで呼ぶのにも抵抗がない。


 だけど、私は関わろうと思ってこなかった人の名前をさすがに覚えてない。急にみんなに話しかけられるようになってたじろいでいるのは私たちである。


 私たちに教えてと言ってくるけど、私たちの裁縫スキルはクラスの上手な子や家庭科の教師からコピーしたものだ。そっちに聞いても同じ答えが返ってくるはずだよ。


 だいたい、二ヶ月で衣装と飲食物の料理なんて厳しいと思ってたけど、衣装の要件は大事なところを獣毛の生地で覆うことと、耳、尻尾、手足を動物化することだけだ。縫わなきゃいけないものは多くない。


 それは男子もおよそ同じ。男子は女子と違って上に大事な部分がないけど、下の部分はボクサーパンツかビキニパンツの部分全体を獣人化しなければならない。私みたいに横から見たら何もはいてないようにはできない。


 男子の裸体コスプレで萌える人もいるんだね…。このクラスの半分は外国人であり、日本人と違ってしっかりとした体つきの男子も多い。私の前世は男だし、今でも女しか愛せないエルフって種族だから、本物の人間の女子の気持ちは分からないよ。


 私は人間の女子ではないので想像だけど、メスというのは強いオスに惹かれるようにできているから、筋肉は魅力の一つなんだろうな。人間において強い要素はもちろん、頭の良さとかカネや権力も含まれる。そして、向こうの世界では魔力というのが大きなウェイトを占めていたな。


 ちなみに、エルフはみんな男のような目線で女の子のことを見るのだけど、エルフと恋に落ちた人間の女の子は、なぜかエルフに対して、男のような視線を向けることがあるのだ。つまり、人間の女の子も、エルフの胸やお尻に魅力を感じたりするのだ。エルフの胸やお尻は、人間の女の子にとって強さを示すものだと思われるようだ。私もお嫁さんたちから胸を揉まれたりすることがけっこうあるのだ。何かそう感じるようになるフェロモンのようなものを出してるのかな。


 だからまあ、学校の女の子とはあまりお近づきにならない方がいいのだ。私が胸を揺らしたりルシエラがお尻を出したりしていると、仲良くなった子はたちまちそれにやられてしまうはずだ。


 そんなわけで、みんなにもみくちゃにされながらも、どこか距離を置きながら衣装作りは進んでいった。というか進まなかったから、家で時間を加速してやった。




 一方で、飲食物の方も同時に進めていかなければならないのだ。まずはメニュー決めから。

 メニューを決めて必要な食材を抽出したら、翌日には練習のために学校から食材が提供された。


 コーヒーは豆から。コーヒーメーカーは使用禁止。ドリッパーを使って入れなきゃいけない。実は、この辺りのことは向こうの世界で経験済みだ。向こうの世界でコーヒー豆を発見してから、実用化するまでやったのだ。コーヒーを発見して広めるのは転生者の嗜みなので、知識くらいは付けていたのだ。


 紅茶も、お湯の温度とか時間とかを試行錯誤したことがある。紅茶を広めるのも、やっぱり転生者の嗜みなのだ。


 とはいえ、この世界ではしろうと同然なので、家庭科の先生の脳みそからスキルをぱくっちゃった…。先生のスキルで紅茶を入れていたら、みんなから教えてくれと囲まれてしまった。盗んだスキルでちやほやされるなんていたたまれない。

 ちなみに、先生から盗んだ紅茶入れスキルは、ポットをカップの付近で傾けて、お湯が出始めたらポットを高く上げてお湯の温度を冷ますという、紅茶紳士的なやり方だ。私は小柄なので、高さと温度が合っているのかは知らないけど。


 デザートはケーキ。これも向こうの世界で広めたけど、ネットのレシピを覚えていただけだったから、やっぱりしろうと同然。でもまあ、学生なんかよりはできるし、ここは先生のスキルをパクるのはナシにして、自分のスキルで頑張ろう。

 と思ったら、ルシエラがスキルをパクって、注目を浴びていた。むぅ…。


 軽食は無難にミートソースとカレーライス。切って挟むだけのサンドイッチとかだと、他のクラスと差を出しにくい。なので、比較的簡単で味付けで差を出しやすいメニューにした。


 しかし、簡単と思ったのが運の尽き。カレーのルーも使用禁止にされてしまったのだ。そんなのどこから仕入れたんだっていいたくなるようなハーブが、生か乾燥の状態で納品されて、いちからカレールーを作るハメになったのだ。


 でもおかげでミートソースの方にもハーブを加えたりできて、高級料理店並みの味になったんじゃない?


 しかも、面倒なのはカレーのルーだけじゃなかったのだ。パスタも小麦粉をこねるところから始めなければならなかった。さすがに米を玄米から手作業で精米する必要はないので、両方とも米料理にすればよかった…。




 そして、十一月になった。透過度の高い夏服に別れを告げなければならない。さようなら…。透けブラ・透けパンの私…。


 文化祭の日が迫ってきた。体育祭が終わってからの二ヶ月は、衣装作りはもちろん、茶葉やコーヒー豆、食材の選定から、レシピや調理練習など、かなり本格的にやらされた…。


 そして、文化祭前日。薫にファッションショー。


「オレ、死んでもいい」

「存分に死ぬがよい」

「えへへ、良いでしょ~」


 私はギンキツネ、ルシエラはハイイロ?ギンイロオオカミ。まあ、動物に詳しくない人にとっては、耳や尻尾だけじゃキツネやオオカミなんて、犬や猫と区別つかないだろうし、まして猫種とか犬種とかいいだしたらきりがないし。


 私たちの髪色は周りに銀色だと認識されているけど、銀髪が地球に存在しないものだとか異世界人だとかいう発想には至らないようになっている。だけど、髪が銀だから銀の耳と尻尾が似合うという発想はできるようになっている。もちろん、私たちにその程度の意見で話しかけてくる者はいない。いいのだ。私たちは日本で嫁など作ってはいけないのだ。


 それで、私たちにはその髪色と同じ毛をした獣人ということなのだけど、なぜか大事なところにだけ獣人の毛が生えているという設定の獣人なのだ。つまり、早いところが、獣毛の生えたビキニ水着である。


 あと、もちろん耳と尻尾は付けるし、手足も同じ色の生地でそろえることになっている。

 というわけで、要件は、胸の大事なところの直径十センチと、下の大事なところからお尻にかけた部分、耳、尻尾、手足だけである。他の部分はあってもなくてもいいけど、私たちは本当に必要最低限しか覆ってない。


 とはいえ、爪とか肉球とかもちゃんと作り込んであるのだ。爪はそれっぽい魔物の素材だから結構リアル。じつは毛皮も全部魔物の毛皮だ。

 ちなみに足にも爪と肉球の要件があるから、ヒールは履けない。ロリ巨乳少女獣人で行くしかない。



 それと、衣装を着て料理や配膳をするというリハーサルをしたのだけど、手に装備した爪と肉球は失敗した…。箸や皿を持てないのだ。


 急遽、全員が手の装備の作り直し。あまりゴテゴテしていない薄手の手袋ベースに、薄めの肉球や短めの毛や爪を生やす程度の装飾に抑えたものに入れ替えた。



「その…、パンツみたいに腰に紐で結んだりしてないの?」

「うん。すべてペタッと貼る素材。横から見ると何もはいてないみたいで良いでしょう」

「良すぎる…」

「ほら、ブラにも紐がないから横乳も拝み放題だよ」

「感謝します…」


「わらわがエルフの森にいたときより、肌をさらしておるではないか」

「堅いこと言わない」


 ルシエラがエルフの森で暮らしていたとき、胸の大事なところの方は葉っぱを貼り付けただけだったけど、葉っぱパンツの方は紐で固定していたし、葉っぱパレオもあった。今は真横から見ると、本当に何も着てないように見える。


「一組のメイド喫茶は硬派で来るだろうから相手にならないとして、これなら三組の水着喫茶にも勝てるはず…」

「なあ、その文化祭、一般人も入れるから行ったことあるんだけど、どの学年もいちばん真面目な一組が勝ってたぞ」

「えっ…、私こんなにエロ可愛いのに…」

「だから、体育祭のときも言ったけど、採点基準そこじゃないってば」

「マ・ジ・で…」

「ゲームじゃあるまいし」

「そりゃそうだよね…」


 私の煩悩でできた世界線だけど、変なところで律儀だね…。銀髪が存在しないとか、異世界人っぽいみたいなのはちゃんとあるしね…。それは、私が日本に来る前からとうぜんそうなるだろうと思って来たからか。

 一方で、日本に行ってもし女子高生になったら、あんなことをしたりこんなことをしたりって、妄想を膨らましちゃったんだな…。どうせなら全部都合の良い妄想の世界にしたかったなぁ…。


「ねえ…、尻尾は垂らしてるだけ?」

「まあそんな感じ」


 前側の大事なところから下を回って尻尾の付け根までは生地で覆ってある。それを一応、尻尾でちょっと隠すくらいにしてあるのだ。もちろん身体を傾けると尻尾の毛が傾いて、お尻の見えている部分も代わる。


「ほらっ、尻尾がないと完全にTバックというかIバックになっちゃうしね…」

「う、うん…」


 私が尻尾を掴んでまくり上げ、獣人の毛を谷底に挟んであるだけのお尻をあらわにしたら、薫が顔を赤らめた。やはり、もう少しで見えるという状態から、完全に見える状態に移行する瞬間は、視聴率爆上がりだ。ずっと見えてるなんてダメだ。



 時魔法で加速して作るまでもなかったなぁ。布面積小さいし。


 時魔法で思い出したんだけど、こういうものは未来に頼めばよかったんだよね。だけど、今こう考えている時点で、文化祭が終わった後に衣装を過去に送りつければいいのに、私はそうする気が起きない。衣装作りがけっこう楽しかったからだ。自分でやった方がいいよって思し召しだったんだ。




 こうして迎えた文化祭当日。朝早くから集合して、ケーキや料理の仕込みをやっている。


 練習のときには使わなかったけど、今日は調理器具に「美味しく、香り高くなる」魔道具を組み込んである。今まで使わなかったのは、魔法を使うと何でもかんでも理由なしに美味しくなってしまうので、調理技術が上達しないと思ったからだ。実際、向こうのミノタウロス肉に魔法をかけるより、和牛のほうが美味しいのだ。調理法や味付けが適当なものより、ちゃんとした調理法と味付けで作ったものに魔法をかけた方が美味しくなる。魔法と物理現象は両立する。


 ホイップクリームを味見したクラスメイトが…、


「なんだこれ!めちゃくちゃうまい!」

「昨日と同じだろ?」

「食ってみろって」

「そうまで言うなら…。うわっ、なんだこれ!」

「オレにも食わせろ」

「もーう、男子ったら…。っていうか良い匂い!私にもちょうだい!」

「「「(わいわいがやがや)」」」


 むふふ。今日は団体戦だ。チート能力のお裾分けだよ。味見で全部食べないようにね…。


 ちなみに、ハーブや植物油を弄るのは木魔法で、肉や卵、牛乳を弄るのは命魔法だ。だから、両方の魔方陣が調理器具にこっそりと描かれており、魔石が中に埋め込まれている。もちろん、夜中にワープゲートで忍び込んで、時魔法で加速して、監視カメラにも写らぬうちに仕上げた。


 それから、ミートソースとカレーは前日までに作って寝かせておいた。脱酸素と細菌排除をかけておいたので、腐ったりしない。今日の準備はソースとルーを温めて、ご飯を炊いておく。パスタはさすがに注文をもらってから茹でるけど、麺自体は作り置きしてある。



 料理をある程度作り終えたら、更衣室で着替える。十一月だけど、この学校は過剰なくらいに暖房が効いているので、ほとんど裸でも寒くない。まるで裸になることを促しているようだ。普段もまだ夏服でよかったんじゃないだろうか。


 私はギンギツネでルシエラはハイイロ?ギンイロオオカミだ。正直いって、耳と尻尾だけ見ても、犬や猫と区別付かない。


 ペタッと貼り付ける素材をみんなに提供したんだよ。衣装を学校で作り進めていたら、みんなが同じようにしたいと言ったので。

 それに、クラス対抗なのだから、水着喫茶と差を出すためにも、全員で紐なしの衣装を着るのはいいと思ったんだ。


 だから、今日は私とルシエラだけでなく、みんな可能な限り、大事なところだけを隠すようにした衣装をまとっている。みんな、横から見ると、尻尾が付いてるだけで何も着ていないように見える。固定されていないぷるぷるの横乳と綺麗なカーブを描くお尻を、何にも遮られることなく拝める。これで水着喫茶に勝つ!


 私とルシエラは長い尻尾付けているので、後ろから見るとお尻の谷は尻尾で隠せるけど、ウサギみたいな尻尾の短い動物だと、お尻が丸見えなんだけど…、九条院姫奈様…、大丈夫?もちろん、谷底は見えないように生地があるのだけど…。

 でもこういうのはチラリズムがいいんだよ。歩いて尻尾が揺れるたびに、お尻の谷が垣間見えるのがそそるんだよ。いつもルシエラに言ってるけど、最初からフルオープンしては後が続かないよ。


 ちなみに男子はボクサーパンツかビキニパンツのような形状に動物の毛を付けるのが必要最低限の面積だ。だけど、本当に必要最低限の者もいれば、全身毛むくじゃらみたいなのもいる。

 まあ、男の衣装なんてどうでもいいけど。



 異世界の素材を異次元収納にそんなに持ち歩いているのかって?

 発魔器を作って魔力を無尽蔵に使えるようになってからは、私の異次元収納には牧場や果樹園、海がそのまま入っていたりするのだ。もちろん、生きたままの魔物や果物、魚も一緒に。魔物は果物と一緒に置いておけばかってにサークルオブライフしてくれるし、魚も海藻があれば同じだ。だから、必要があればいくらでも素材や食料を調達できるのだ。




 こうして迎えたオープンの時刻。私とルシエラは交代で店番になっていて、まずはルシエラが店番だ。大丈夫かな…。


 なので、私はまず、宣伝用のたすきを掛けて、三組の水着喫茶を視察。水着喫茶の教室からは、水着の女子と男子が出てきて、他のところをまわろうと出ていったところだ。それに水着の女子が呼び込みをやっている。


 あれが自作の水着なんだ…。私はどうせ作るなら水着じゃなくて獣衣装にしてよかったよ。もちろん、水着にはひもがついている。でも面積はかなり小さい。背中のひもと首のひもで止めるタイプ、肩掛けひもと背中のひもタイプ、背中のみのタイプ。背中ひもオンリーは危ういな…。危うさが売りか…。ペタって張る素材は自然には剥がれないので、そういう心配がない。というのは知っている人の見解であって、普通は剥がれたらどうしようと思ってくれるはず。これなら勝てる!


 店員が裸なら客も裸…。たすきがなかったら店員と間違われそう。

 三組の男子はまあ、トランクスが多いけど、ときどきビキニパンツのマッチョみたいなのもいる。まあ、興味ないけど。


 いちおう水着喫茶ってことで、南国リゾート風の飾り付けがしてある。


 私は席について、サンドイッチと紅茶を注文した。というか、食べ物と飲み物はそれしかないようだ。


 料理が届くのを待っていると、裸ではない客も入ってきた。一組のメイドさんだ。なんだかんだいって、スカートは普段の制服くらい短く、生地も制服のスカートの色違いなだけのようだ。このスカートで歩くときは必ず抑えてないと、自分が歩く風圧だけですぐにひるがえってしまう。一組はスカートがひるがえらないように徹底していて、常に少なくとも片手で前を押さえており、ときどきもう片方の手で後ろも抑えている。


 それから、生徒でない客もやってきた。この文化祭には、保護者が招待されている。薫もそのうち来るはずだ。

 それと、公募したまったく関係のない客も数百人来るらしい。薫は昔、この公募に当たったのか。


 周りをウォッチングしていたら、サンドイッチと紅茶が運ばれてきた。男子が運んできた…。なんで女子じゃないんだ…。ああ、女性には男子が運ぶとかあるのかな…。私には女子が運んできてくれればいいのに…。


 まずは、紅茶を味見。まあ、うちの相手にはならないね。

 それからサンドイッチ。パンがパサパサだな…。パンも自分で焼かなきゃいけなかったのか…。切って挟むだけかと思っていたけど、これじゃケーキとかわんないな。私たちもパスタをこねさせられたし、お米以外は全部面倒だな…。

 具もレタス、味付けは辛子マヨネーズで、普通って感じだ…。ハムは自分らで燻製にさせられたのかな…。


 料金を払って退室した。ちなみに、儲けは学校に還元される。なぜなら材料費はすべて学校持ちだから。だけど、利益は上げなきゃいけないらしい。


 ポロリとか大技を仕掛けてくるかと思ったらそんなことはなく、料理も予想どおりたいしたことなかった。しかたがない。三組はボンクラの集まりなのだから。がんばった方だと思うよ。




 続いて、一組のメイド喫茶へ。あらま、もう列ができてる。まだ五人待ちだったので並んだ。すると、並んでいた人のうち三人が私の姿を見て、二組に直行した。よく見たら二組も十人待ちじゃないか。客寄せ効果抜群だね。私以外の獣人も客寄せしてるしね。


 列に残っている二人が入店した後、私の番が回ってきた。私が入店すると、バシッと決めた執事と、ミニスカのメイドさんが「お帰りなさいませ、お嬢様」と頭を下げ迎えてくれた。

 女子は頭を下げるときは、あまり腰を曲げない。すぐにパンチラしてしまうからだ。一組は本当に徹底されている。しかし、見えそうで見えない絶妙なラインが客の心をくすぐっているようだ。


 私は席についたら執事がやってきた。相変わらず、女性には男性の給師を付けるのが当然という偏見をもっているんだね。


 「こちらのお勧めは何かしら」とお嬢様風に清まして言った。私はこれでも五十八年くらい前に貴族令嬢としての教育を受け、七年間、お嬢様をやっていたのだ。もちろん、言語は違うけど、それくらいの差はアニメを見ていれば埋められる。ただし、服装が全然お嬢様じゃないのは置いといて。


「お勧めはボロネーゼと紅茶でございます」

「ではそれをいただくわ。デザートはチーズケーキで」

「かしこまりました」


 待つこと数分。メイドと執事がいっぱい。向こうの世界のことを思い出しちゃったよ。日本に来て一年くらいになる。向こうの世界のことがつい八時間くらい前に感じられるよ。貴族というのは常にメイドや執事を一人か二人侍らせているものだ。私はハウスメイドしか使ってなかったけど。


 そして執事がボロネーゼと紅茶を配膳してきた。私は「どうもありがとう」と清まして言った。服装がアレだけど。


 まずは紅茶を一口…。うちのクラスで練習中に入れてたのより美味しい…。先生のスキル盗んだのに!先生の嘘つき!じゃなくて、一組と二組の先生の差か!

 なんてこった。やっぱり二組の先生からじゃなくて一組先生から知識やスキルをもらっていかないとダメだな。社会科は通りがかりの一組の先生から盗んでいたけど、家庭科は盲点だった。っていうか、クラスごとに別の教師を用意してるとか…。偏差値別だからしかたないか。


 ボロネーゼもなかなか美味しい…。こりゃ、紅茶も軽食もうちの負けなんじゃない?いや、うちはチートを使ってるから、まず負けることはないか…。でも負けた気がする…。


 それからチーズケーキ。チーズケーキってどこから作ったんだろう…。チーズは二ヶ月じゃできないよね…。これもなかなか美味しい…。


 服装もなんだか…。普段とスカート長さは変わらないようだけど、一組はガードが堅くて、必ずパンチラを寸止めしてくる。挨拶をしても、後ろから見えない角度までしか胴体を倒さないし、歩くときも片手でトレーを持ち、もう片手はスカートを抑えている。スカートを抑えられるように、トレーを片手で持てる筋肉を鍛えただと…。いや、お皿には軽いものを使っているし、軽食だから量も少なめだ。とにかく、スカートを抑えられるようにするための努力がすごい。


 私が大事なところを死守しているように、一組はパンチラを死守している。ボーダーラインは違えど、見えてしまう寸前というのはとても高得点だ。こりゃ、例年一組が勝つわけだ…。


 じゃなかった。色気は点数じゃないんだってば…。いやいや、今回は客寄せも点数に繋がっているのだから、やっぱり一組は手ごわいな…。




 敗北感を胸に、私は非番の時間を終えて二組に戻った。


「ルシエラちゃん!注文よろっ!」

「しばし待つのじゃ。おぬしは六番目じゃ」


 ルシエラが指名されていた。並んでいる客の数はすでに二十人。あちこちで聞こえる「美味しい!」やら「うまい!」などの声。我が軍は圧倒的ではないか?


「丁度よいところに帰ってきよった。おぬしも早うせい」

「交代しないの?」

「わらわは忙しいのじゃ」

「楽しんでるのならいいけど…」


 私も注文取りと配膳に加わった。


「ユリアナちゃん、こっちこっち!」

「あっ、はい。えっ…」


 私が振り向いたら、そこにいたのは薫だった。「ユリアナちゃん」だなんて白々しい…。他人のフリをするってことか…。


 私は去年、会社に押しかけて、どうどうと薫の彼女ヅラしてして帰った。それは、薫に可愛い彼女がいるって自慢できるようにすることで、薫のステータスになると思ったからだ。


 でも私は薫っていう彼氏がいて嬉しい?薫としては、「オレみたいな彼氏がいても嬉しくないだろう」って思っていることだろう。前世の私ならそう考える。だけど、今の薫はイケメンなのだ。二十代には見える。私のステータスになるだろう。でも、薫はそこのところ分かってないんだろうな。そんな気遣いがなんだか嬉しい。そして、なんだか急に恥ずかしくなってきた。


 私は、授業参観に来られた小学生のように、いや、彼氏に来られた女子高生のように、途端に恥ずかしくなってしまい、顔を赤らめて、斜め下を向き、もじもじとしながら横目で薫を見て、注文を取った。


「ご、ご注文は何になさいますか…?」

「え、えっと…、カレーとコーヒーとショートケーキで…」

「か、かしこまりました…」


 まるで、初対面のお見合い…。あまりに急だったから心の準備ができてなかっただけで、別に薫のことが好きってわけじゃない。前世の自分なんだから…。

 薫もなんだか照れてる…。ああ、私が照れてる姿が可愛かったかな…。


「ユリアナちゃん、次はこっちー」

「「ユリアナちゃん」」「「(ざわざわ)」」


 私の本気のもじもじモードはえらく高得点だったらしくて、ルシエラ待ちだった人たちを奪ってしまったようだ。私は薫の注文を厨房に届けてから、次のテーブルに向かった。


「さっきのでお願い」

「えっ、はい…」


 さっきのはわざとやったんじゃないし…。だけど、私はいまだに男のツボを理解できるエルフなのだ。


「ご、ご注文は何になさいますか…?」

「えっと、ミートソースと紅茶で!」


 さっきと同じふうにできたかな。客はぱぁっと明るくなって注文してきた。ご満足いったようだ。



 私が歩くと尻尾が揺れることで、お尻の谷間が見えたり見えなかったりする。男どもは時計の振り子を見るように、目線を右往左往させている。尻尾が振れた方を見るのではなくて、尻尾で隠されていないお尻の側を見ているのだ。


 他にも、姫奈お嬢様のように尻尾が短くてお尻の谷間を隠せていない子が何人かいるのに、私の方に目移りしている。やはり、フルオープンは安売りしすぎだ。それに、日本の女子高生のお尻とエルフの私のお尻では格が違うのだよ。



 しばらくして、薫のカレーとコーヒー、ケーキが準備できたので、私が配膳する。

 さっきのことを思い出して恥ずかしくなってしまった。


「お待たせしました…」


 また薫のことを直視できずに、もじもじしながらお皿を並べる私。


「あ、ありがとう…」


 薫が私に見とれてる…。前世の自分にうっとりされるって不思議な気持ち…。


 それからというものの、もじもじモードで注文を取ったり配膳したりを続けさせられた…。まあ、可愛い自分は好きだし、それを見てもらえるのも好きだからいいけど。


 というわけで、キャラによる宣伝効果も、魔法による食事も大好評で、明らかに集客は二組がいちばん多かったと思う。




 一日目が終わり家に帰ると、


「カレーもケーキもうまかったなぁ」

「えへへ、そうでしょう」

「魔法のうまさだけじゃなくて、いろいろ頑張ったってのが分かったよ」

「やっぱそうだよね。魔法はとにかく美味しくなるけど、美味しい以外の表現ができないんだよね」

「そうそう。美味しくなる魔法だから、コクとか深みとか、具体性がないんだよね」

「コクとか深みっていうメロディはないのか?」

「あっ…、ちゃんと具体的にどういう風に美味しいのか、メロディで説明すればいいのか」

「じゃあ、明日も行ってみようかな」

「うん、楽しみにしてて」

「可愛いユリアナも見られるしな」

「えっ…」


 思い出したらまた恥ずかしくなってしまった…。





 二日目もルシエラが先に店番で私が非番だ。今度は二年生と三年生の視察に出かけた。


 二年生は演劇をやっていた…。来年は私もやらされるのかな…。ブッチ決定だな。あんまり興味ないけど、他にやることもないし見ていこう…。

 やっぱりクラスによってレベル差がある。ここでも対決しているなら、お色気一番の三組…ではなく、演劇のできが一番の一組が優勝だろうな。こんなの出来レースじゃないか。まあ、一年は二組が勝つけど。


 二年生も演劇の衣装は自作みたいだ。三組は露出が多かった。でも、一年二組ほど露出の多い子はいなくて、宣伝効果抜群だと思う。


 それから、三年生は無難に展示だった。どうやってお色気アピールするんだろう…。ってお色気採点からいい加減離れなければ…。




 交代の時間になったので一年二組に戻った。昨日より長蛇の列。


 そして私がウェイトレスに入ったところで、


「ユリアナちゃん、注文お願い」


 もう声で分かる。


「はい、何にいたしましょう」


 振り向くと薫がいた。私は嬉しくなってしまった。なんで嬉しかったのだろう?


「カレーとコーヒーとケーキで」

「かしこまりました」


 これだけ長蛇の列なのに、薫が私の当番の時を狙ったようにいるのは、祝福のおかげだろうな…。


 昨日と違って「美味しい」以外に、「コクがある」とか「深みがある」とかいう声聞こえる。うーん。魔法のメロディの通りの感想だ。なるほど、魔方陣に刻んだメロディには術者のイメージを込められないから、メロディの文章どおりのことしか起こらないのだ。直接口ずさむなら、「こういう美味しさ」と想像してそれを込めることができるけど、魔方陣でやるならそれを言葉に表さないとダメだ。美食レポーターのように文字でつづらないと安っぽい感想しかでない味になってしまう。


 ユリアナの脳みそは前世に比べると国語能力は人並みにある。だけど、魔道具を作りたいならイメージを言葉で表す能力が足りなかったか…。魔道具作りって科学者とかプログラマー向きだと思ってたのに、まさか文系の能力が必要だったなんて…。この学校で国語の勉強を真面目にしておいてよかったよ…。これからもがんばろっと…。いや、もうめんどくさいし、国語の先生の脳みそから表現力をパクろうかな…。私の脳みそで処理できるかな。


 向こうの世界では、木魔法使いと命魔法使いを雇って、作物やミノタウロスに直接美味しくなる魔法をかけてもらっていたけど、それらには術者のイメージが反映されていたのかなぁ。美味しいものを知らない向こうの人にイメージさせても、魔道具とあんまりかわらないんじゃないかな。


 薫の料理ができあがったので、私が配膳した。薫も結局、「コクが増した」とかしか言ってない。うちの冷蔵庫に刻んだ美味しくなる魔方陣も見直そうかな。




 二日間の文化祭が終わり、順位発表のときが来た。三年生の展示と二年生の演劇では一組が優勝。これはまあ出来レースだからしかたがない。だけど、一年生の喫茶店では出来レースを打ち破って見事二組が優勝。


 集客力、料理の美味しさの店で一組を大きく上回った。やはりお色気の点数は必要だった。料理についても一組をはるかに上回る美味しさが評価された。まあ、これはチートだからね。でも、美味しくなる魔道具については課題があることが分かってよかった。


 家で反省会。


「ねえ、ルシエラは他のクラスを見て回らなくてよかったの?」

「おぬしの心をすべてのぞいておったから、それでよい。おぬしの感じたとおり、たいしたことのない味や演出じゃったの」

「えっ…、私の心をずっとのぞいてたの?」

「うむ。おかしいのぉ。エルフは男になびかぬはず………」

「わああああ、なんてことをするんだ!」


「ん?ユリアナは他のクラスでなんか面白いものでも見つけたのか?」

「それはじゃな、こやつ………ぐぇっ」


 ぼこっ。

 私はルシエラを殴って気絶させた。


「ああ…、聞かないでおくよ」

「うん。そうして」


 私、こんな暴力的な女じゃなかったはずなのに、ルシエラが殴りやすすぎて…。




◆◆◆

◆十二月




 文化祭が終わり十二月になると、だいぶ寒くなってきた。だけど、女子高生というのはいかに寒かろうとスカートを長くしてはいけないのである。


 そこで秘密兵器を導入した。ガーターベルトストッキングである。


 股下三センチのところまでの長いストッキング。スカートからストッキングの間の三センチの領域は絶対領域なので、絶対に防寒してはいけない。


 ストッキングの縁は細くて強めのゴムになっており、私のやわらかい太ももにむにっと食い込むようになっている。この食い込みでできた谷がまるでお尻と太ももの間の谷のようであり、太ももにお尻のように見える領域を新たに作ったといっても過言ではない。しかし、これはお尻ではないので、スカートで隠す必要がなく。堂々とオープンできるのだ。


 それから、ストッキングをつるす紐を前と後ろに付けて、パンツの下に通して腰のベルトに接続。実際のところ、ストッキングは縁のゴムが強いのでつるす必要はない。ストッキングから紐が伸びているのが良いのだ。

 だから、この紐はそれほど強いゴムにする必要はないにもかかわらず、けっこう強いゴムになっていて、そのおかげでお尻を縦断するときにお尻をむにっと潰して新たな谷を作ることができる。

 しかも、座ったりかがんだりしたときに、吊るしている紐がずれたりすると、紐がお尻に食い込んでしまったりする。パンツとは別に食い込みを直さなければならないため、より頻繁に食い込みを直すところを披露することができるのだ。

 だけど、いくら強いゴムになっているといっても、ストッキングの絶対領域を変化させるようなことはないようなっている。ストッキングの縁のゴムの方が強いのだ。


 そして、ベルトは服の内側だけど、制服はちょっと腕を上げただけでへそが見えるようになっているので、そこでレースを多用したベルトが現れると、とてもテンションが上がる。


 女の子というのはなんだかよく分からないベルトや紐で服や身体を縛り付けておかなければならないというのがとてもそそるのだ。パンチラしたときに、パンツ以外にガーターベルトの紐がお尻を縦断していたら、それだけでなんだかとてもエロい。


「こんな面倒なものはいらぬ!」

「ルシエラにはこれの良さが分からないかぁ」

「たいして寒さが和らげられぬではないか」

「ガーターベルトを付けるという大義名分が得られたからはいたのであって、女の子は寒さを我慢してでも露出しているけなげな姿がいいんだよ」

「おぬしの言うことはもう分からぬ!見せたければすべて脱げばよいじゃろう!」

「はぁ…、分かってないなぁ」


「そうだな。ユリアナの言うことは正しい。ルシエラの生脚もいいけど、ストッキングと紐が伸びているユリアナの方がそそるな」

「おぬしらの意見が同じなのは当然じゃ!ユリアナは元は……」


 ばこっ!

 私はルシエラを殴って気絶させた。


「ふー」

「ユリアナ…。最近よく殴るね…」

「ルシエラ、少し調子に乗ってるから」

「そ、そうか…」




 文化祭の後、美食レポーターのコメントを参考に、美味しくなる魔法のメロディをパワーアップしてみた。だけど、比喩表現はそのまま解釈されてしまうので要注意だ。「海のように広くて深い味がする」なんてメロディにしてみようものなら、深海の海水のような味になってしまいかねない。


 今回その魔法を試す対象は…、


「ただいま~」

「お帰り…」

「なんだこの匂い。すごく良い匂い」

「えへへ、どう?」

「ケーキかぁ。どうしたんだ?」

「まあ、そう来るよね。今日は何の日?」

「あっ…、クリスマスか…」

「私も去年は気が付かなかったけどね」


 今の薫はもちろん、前世の私にとっても、ただそこらに転がっている石ころのようなどうでもよい日だった。まるで認識阻害されているようだった。だけど、恋人ごっこをしている今なら意味のある日だ。


「これは…!クリームのコクがすごい!」

「でしょう」

「生地がふわっふわだな!」

「うふふ」


 文化祭二日目では、美味しいの他に誰もが知っているような表現しか込めなかったので、みんなその言葉で賞賛していた。今日のケーキは美食レポーターの言葉をメロディにして魔法をかけたのだけど、その言葉が薫からは出てこなかった。薫にはそんな表現能力はないからだ。

 別に表現できなくても、美味しく感じてもらえればいいんだけど。っていうか、美食レポーターのような言葉は私でも思いつかない。



 そして、去年と同じように、薫は一人で実家に帰ることになった。だけど、行きも帰りもワープゲートで送り迎えだ。




◆◆◆

◆一月




 私たちは二人で正月を迎えた。


「おい、見よ!外に白い粉のようなものが舞っておるぞ」

「ああ。外に出てみなよ」

「うむ」


 そういえば去年の冬は雪が降らなかったな。ルシエラは南国住まいだったから雪を見たことないのか。何十万年も生きてるのに…。けっこう引きこもり体質だからなぁ。まあ、そういうところも私が魂の波長が合うとされるところなのかもしれない。


 私たちは常に制服だ。女子高生の普段着なのだから。だけど、私はガーターベルトストッキングをはいているけど、ルシエラは生脚だ。寒くても生脚で頑張る女の子は尊い。


「うー!寒いのぉ。この世界はこんなにも気温が変わるんじゃのぉ」

「うん」


 ローゼンダール王国の付近の地域は夏も冬もそれほど気温が変わらなかった。体感的には十八度から二十八度くらいだろうか。私は小さい頃ローゼンダールの最南端の村で、年がら年中ノーパンとボロいワンピースですごしていたし、もっと南に済んでいたルシエラは常に葉っぱ水着だった。


 ローゼンダールの最北端から一〇〇〇キロ北上したところにあるリオノウンズという国は、寒くて食糧難になってローゼンダールに戦争を仕掛けてきたことがあったから、そこなら雪が降るのかなぁ。行ったことがないから知らないけど。


 マンションの廊下で内股になり、手をこすり合わせてブルブルと震えているルシエラは可愛い。女の子は寒かろうとミニスカートをやめてはいけない。可愛さのために困難に抗う姿も美しい。

 あのルシエラが、風でスカートがひるがえるのを手で抑えてる!なんて可愛いんだ!足下を寒くしてあげれば。いつでもスカートを手で抑えててくれるだろうか。


 風向きの都合で、廊下から手を伸ばしても雪に手は届かなそうだ。私たちは二階から一階に降りてマンションの建物の玄関まで来た。そこでルシエラが立ち止まった。


「どうしたの?」

「あれは毒とかでないのか」

「ははは。触ってみなよ。私が助けてあげるから」

「ふむ。何かあったときは頼むぞ」

「あはは」


 こんなに慎重なルシエラは初めてだ。ルシエラは恐る恐るマンションの玄関から外に出た。


「ひえっ…。いたっ…いや…、なんじゃこれは…、つめ…たい…?」


 やばい…、雪と戯れるルシエラが可愛い…。


「ひいぃぃ、当たってしまう。こらっ。眺めてないで助けるがよい!」


 どうしよう…。出会ったばかりのときのツンデレルシエラ並みに可愛い…。


「これはね、雪だよ。小さな氷の集まりだよ」

「これが氷?氷がなぜ空から降ってくるのじゃ」


 ああ、可愛いなぁ。


「ふんふん……♪ふんふん……♪ふんふん♪」


 私は考えを伝える魔法と心を読む魔法と、風魔法の飛行を口ずさんだ。


『ついてきて』

「ふむ。ららら……♪ららら……♪ららら……♪」


 ルシエラも同じ魔法のセットを口ずさんだ。


 ちなみに、飛行は空間魔法の念動でもできる。


 私は誰も見ていないか確認してから、離陸した。ルシエラも付いてきている。

 ミニスカートで飛ぶのって…、むしろ見てほしい…。誰も見ていないのが残念…。


 上空何メートルだろう…。


『ううう、さむぅ…』「ふんふん……♪」


 身体の周囲の空気を加熱し続けるようにした。


『上空はこんなふうに寒いのは分かる?』

『うむ。おい、もうすぐ雲に辿り着くぞ』

『雲に行くんだよ』

『なんじゃと!』


『到着!』


 周りの空気を暖めているので、雲が溶けて雨になって落ちていく。


『手の付近だけ加熱魔法を解いてみて』

『うむ』


 私は手を雲に突っ込んでみた。冷凍庫に手を突っ込んだみたい…。いや、雪に手を突っ込んだみたいかな…。


『ひゃっ!何じゃこれは!これは小さな氷なのか!』

『そうだよ。その小さな氷のことを雪っていうんだよ』

『冬の雲は雪でできておるのか!』

『いつの季節でも雲は雪でできてるよ。夏は落ちてくる間に暖まって雨になるだけだよ』

『なんじゃと!』


 いちいち驚いてるルシエラが可愛い。


 ルシエラの周囲だけ溶けて水になっていたのが止まった。加熱魔法を解いた?そして、全身で濃い雲の方へダイブ。


『ひいいいい』

『ばかっ!』


「ふんふん……♪」


 私はルシエラに治療魔法を口ずさみながら、ルシエラに近寄って後ろから抱きしめた。ルシエラのむにっとした柔らかい…胸…。


「ああん…」


 冷え切っているルシエラの身体。私の体温も使って温める。しもやけもあったけど、治療魔法で治っていっている。


『助かった…』

『ムチャしたらルシエラだって死ぬんだよ…』

『うむ…。はしゃぎすぎた…』


「ふんふん……♪」


 私は家の中へのワープゲートを開いて、ルシエラを後ろから抱いたままゲートをくぐった。どさくさに紛れてルシエラの胸を揉みながら。


「ふう。暖かいのぉ」

「うん」


 雪が少し部屋に入り込んでしまった。水を霧にしてから乾いた風で消滅させた。


 今日のルシエラは可愛かった。薫もいないことだし、久しぶりにルシエラを愛でようかな…。今のルシエラの魔力は私より高いから、ヘタすると私が愛でられてしまうんだけど…。




★★★★★★

★薫三十七歳

◆二月




 二月半ばだけど、まだまだ冬のまっただ中で寒い。

 薫は朝起きると、左手にはいつもの柔らかくて暖かい感触があるのに、右手にはそれがないことに気がついた。


 ガサゴソとキッチンから音がする。


「おはよう。あれ、ユリアナ…、って水着エプロン?」

「はい…、これ…」


 ユリアナは全裸にエプロンではなくて、水着のパンツにエプロンだけ着けている。水着のブラはしてないので、エプロンにとんがった部分が…。


 ユリアナは最近お得意のもじもじモードで、顔を赤らめて斜め下を向きながら、目線だけチラチラオレを見ながら、あるものを手渡してきた。ハート型の包みだ…。


「なんだろ…これ…」


 オレがそれを受けとると、ユリアナはぼんっと爆発したように頭から湯気が出てくるんじゃないかってくらい顔が真っ赤になった。


「言わせないでよ…。バカ…」


 オレは包みを開けた。中から茶色いいい匂いのものが…。


「えっ、これってもしかして…チョコ…?朝っぱらからなんで…」

「ハートのチョコなんて渡す日は決まってるでしょ!」

「えっ、もしかしてバレンタイン?」

「そうだよ…」

「あれ…、十四日か…。もしかして、オレのために?」

「そうだよ…」

「ハート…」

「うわあああ、もうつべこべ言わずに食べてよ!遅刻するよ!」


 ユリアナは、オレが持っていたチョコを取り上げて、オレの口に突っ込んだ。


「うぐっ………、美味しい……、ユリアナの味がする…」

「なにさそれ!」


 それはユリアナがパンツの食い込みを直す味だ。ユリアナは数十秒ごとにパンツの食い込みを直さなければならない可愛い女の子なので、その分の時間、余分に加熱してしまったり、焦がしてしまったりするんだ。だがそれが美味しいんだ。

 いや、別に焦げたりしてないけど…。



 オレはユリアナの味のするチョコを食べて、ホクホクな気持ちで出勤した。そして、昼…、鞄をあさっても弁当がないことに気が付いた…。朝、ドタバタしてたからな…。やっちまったと思うのも束の間、この場所では聞き慣れぬ、甲高いアニメ声が聞こえてきたのだ。


「こんにちは~」

「おっ、ユリアナちゃん、久しぶり。ってそれはまさかセントルチア学園の制服…」

「そうですよ」

「か、可愛い…。でも、こんな時間におさぼりか?」

「薫が弁当を忘れたから」

「それで学校をサボって届けにきたと」

「そ、そうなんですけど」

「マジで…。薫、死ぬべきだろう…」

「今日は皆さんにも、はい、これ」

「マジで…、ハートなんだけど…」


 声の主の方を見ると、西田が応対してた。そして、どんどん群がる男ども。

 銀髪の少女はバスケットに盛られたチョコを配っていた。


「これ…、もらっていいのか?」

「例え義理でも、ハートのチョコなんて初めてなんだけど」

「うんまっ!これどこで買った?」

「甘すぎず苦すぎず、まろやか~」

「「「(ざわざわ…)」」」


「うふふ、作ったんですよ~」


「「「マジか…」」」「「「マジで…」」」


「女性の皆さんの分もあるんですよ」


「キャーっ、嬉しいっ!」

「ホント、美味しいわっ!」

「本当に手作り?」

「作り方教えてほしいっ!」

「「「ざわざわ…」」」


 ユリアナは、なにたらしこんでるんだ…。


「あれっ、一つ余った。おかしいな」

「真北の分じゃないのか」

「薫のは別です」

「いいなぁ。薫のヤツをオレにくれ」

「ダメです。薫だけです」

「くー、殺してやる!」

「ダメですうっ!」


 なんかすごく出ていきにくい…。群がりが解散しても、西田がずっと付きまとっている。


「って、そういえば、(あずま)…さんは?」

「ああ、あいつは辞めたんだ」

「そ…うだったんですね…」

「なんでだ?人数を数えて作ってきてたのか?」

「あ、はい。そうです」

「去年一回来ただけなのに…」

「わ、わわわ、私、物覚えはいいんです」

「ユリアナちゃんはすげーな。ホント、真北にはもったいないな。真北は殺すしかないな」

「ダメです!」

「いたたたっ。意外に力強いな…。冗談だから離してくれ…」

「ふんっ」


 ユリアナは両手で持ったバスケットでスカートの前を押さえながら、オレのほうへ来た。制服のスカートは必ず抑えないと、歩く風圧だけでひるがえってしまう。ひるがえったときの中を見せてもらえるのはオレだけだ。ガーターベルトの縦断したパンツを堪能できるのはオレだけだ。他のヤツはストッキングのゴムでできた第二のお尻を拝むといい。


「はい、今日のお弁当」

「あ、ありがとう…」


 なんだか少し大きい…。


「それじゃ、頑張ってねっ♡」

「う、うん」


 ユリアナ…、普段見せないぶりっ子モード…。まるで語尾にハートマークが付いているようだった…。ここではオレが可愛い彼女持ちであるというステータスを徹底的に高めようとしている…。でも、オレにはもったいないレベルの彼女なんじゃ…。オレ、置いてきぼりにならないかな…。


 弁当の包みを開けると、いつもの肉三昧弁当とは別に、背の高い箱が。箱は、やや浅い底皿と、深めのふたで構成されている。恐る恐る開けると…、


「おい、何だそれは…」

「け、ケーキかな…」


 チョコのホールケーキの一切れのようだ。円周の面はチョコでコーティングされている。上には薄いチョコチップや細い円柱状のチョコの飾りが載っている。切り口を見るとチョコのホイップやガトーショコラなどが層になっている。そして、箱を開けると同時に、ケーキの下の方から冷気が漂い始めた。


「おまえ、殺してやる!」

「ちょっ、うわっ」


 西田はオレの首を絞めている。だけどオレには防護強化の魔道具があるので、この程度では苦しくない。


「おい、なんか冷たいぞ」

「下の方はチョコとバニラのアイスの層になっているみたいだ…」

「溶けちまうから食わせろ」

「ダメだ。あっち行け!」


「何それ、すごく凝ってるぅ」

「ここまでドライアイスで持ってきてくれたの?」

「私たちにくれた義理チョコもレベル高かったけど、これはとんでもない手間がかかってるわね」

「下半分がアイスなんて…」

「女子力高すぎるね」


 女性陣が群がり始めた。この、いろんな種類のチョコが層になっているケーキを評している。


「と、溶けるから早く食べさせてくれ」


「しかたがないわね」

「こんな女子力の高い子、私の彼女にしたいくらいだわ」

「「「(ざわざわ)」」」


 ユリアナ…、アニメ声だし可愛いし、それに女子力まで高いなんて、そして、それをみんなの前で見せつけて、オレのステータスを高めようとしてるんだ…。ちょっと盛りすぎじゃないかな…。


 下の方のアイスは溶けたりしないようだ。底皿がとても冷たいのは、アイスの冷たさが伝わってきてるんじゃなくて、皿自体が冷たい。これはきっと魔道具だな…。


 オレは恐る恐るケーキにフォークを入れた。フォークを縦に進めながらよく見ると、チョコのホイップ、ムース、生チョコ、薄い板チョコとホイップのミルフィーユのような層、ガトーショコラ、チョコアイス、バニラアイス…。何一つ同じ層がない。どれだけ手間がかかってるんだ…。


 ガトーショコラはふっくら。ホイップはふわふわ。ムースは濃厚。生チョコはとろける食感。板チョコミルフィーユはパリパリっと。そして、アイスはひんやりとしているのに、やさしい口触り…。ダメだ…、オレの表現力ではこれ以上語れない…。


 はあ…。この世のものとも思えないほど美味しかった…。それに、ユリアナがパンツの食い込みを直す味がする。

 これはホールケーキの八分の一だから、家に残りがあるのだろうか。ルシエラが全部食ってしまっただろうか。また食べたい…。


 底皿の裏を見ると、魔方陣が二つ描いてあった。それに、ふたの裏側にも魔方陣があった。魔方陣の読み方を少し覚えたのだけど、同心円の外に調を示す記号がある。調は魔法の属性を表している。底皿の方は水属性と土属性。蓋の方は時属性、空間属性、命属性、木属性、風属性、水属性だ。


 蓋の方のは、うちの冷蔵庫にも刻まれているヤツだ。殺菌効果のある木魔法と命魔法。動物性の食材が命魔法で、植物性の食材が木魔法と分かれている。それから脱酸素・窒素充填の風魔法。冷却の水魔法。そして、時間停止の時魔法と、時間停止した空間は異次元収納内に展開しないと移動できないのでそのための空間魔法だ。時魔法があれば、他はいらない気がするけど、冷蔵庫から出した後も菌がゼロなので長持ちするようになっている。


 それから、底皿の方は冷却の魔法と形状を維持する土魔法だな。持ってくる間は時魔法で止まっていたから形が崩れないんだろうけど、開けた後も形状を維持するために土魔法があるんだろう。


 本当に凝ってる…。お菓子の作りにも凝ってるし、魔法もふんだんに駆使している。他の人にくれって言われてもあげられるわけない。いや、これはオレのためのバレンタインチョコなんだから、他の人にあげる必要はないよな。オレだけのチョコ…。オレだけの彼女…。


 オレは、甘いものを食べた後、いつもの肉々しい弁当を平らげた。ケーキに魔道具が使われているなら、溶けたりしなかったのだろうけど、アイスが入っていることは周りにばれていたし、当然先に食べるべきだと思われるだろう。

 とはいえ、オレの胃袋は常に疲労回復されているので、食べる順番が多少おかしくても、胃がもたれたりすることはない。オレは元気いっぱいで午後の仕事に取りかかった。




「ただいまー」

「おかえり」「よくぞ戻った」


「なあ…、いろいろツッコみたいけど…。まずは学校をサボったのか?」

「いや?休み時間にワープゲートで行っただけだよ」

「なるほど…。それから、みんなにチョコを配るなんて…」

「私の女子力アピールは、薫の価値につながるでしょ」

「まあ、そうかもしれないけど…。あと、このすごいケーキ…。ここまで盛らなくても…」

「もう、文句ばっか!嬉しくないの?」

「えっ、そりゃ…、もちろん嬉しいよ…」

「私は薫に喜んでもらいたいだけなんだよ」

「そっか…。ごめんな…。そしてありがとう…」

「分かればよろしい」

「あの…、それで…、まだケーキは残ってるか?」

「そう言うだろうと思って、たくさん作っておいたよ」

「マジか…」


 テーブルにはホールケーキ二つと、かじりかけのようなホールケーキがひとつ。いや、本当にかじったんじゃなくて、フォークで崩していったんだろうけど。


「『また食べたくなるような味』って魔法に込めたんだよね。なんか中毒性ヤバいね」

「マジか…」

「ここにあるのには『また食べたくなるような味』を入れてないから、次も食べたいとはそこまで思わないはず…」

「そっか。とりあえず、今は食べたくてしかたがないんだ」

「今日の晩ご飯はケーキね」

「それでいい」


 その日は、一人ひとつのホールケーキが晩ご飯になった。「また食べたくなるような味」という魔法はかかっていない状態では、ホールケーキまるまるなんてうんざりするような量かと思ったけど、オレにとってはユリアナがパンツの食い込みを直す味のするものは何度でもいくらでも食べたい。そんな魔法がかかっていなくても、オレはユリアナの料理に中毒状態だ。


 オレは知らなかった。そのケーキには「作った人のことを好きになるような味にする」魔法のかかっていることを。




★★★★★★

★ユリアナ六十五歳、日本戸籍上十五歳

◆三月




 成績が出た。体育だけBだ。可愛さが足りなかったか…。じゃなかった、食い込みを直す時間を削らなきゃいけないのかな…。それじゃ何のためのブルマかわからないな…。


 後の成績は全部Aなんだけどなぁ。




★★★★★★

★ユリアナ六十六歳、日本戸籍上十六歳(薫三十八歳)

◆二年生



 二年生になったけど、私、クラスのみんなのことを甘く見てた。人間って成長するんだよね。


 制服というのは成長を見越して大きめのものを買うのが普通だ。だけど、私たちは成長しないし、成人サイズの胸やお尻に十歳サイズの服を着るということをやっていたのだ。

 そんな私たちに入学当初から触発されて、自らの限界まで制服を改造しまくっていたみんな。しかし、今、限界を超えつつある。成長して、いろんなところがはみ出したり、ぱつぱつになってきているのだ。


「このままではマズいじゃろう」

「うん…」

「わらわは一〇〇〇歳加齢しようかのぉ」


 マザーエルフは一〇〇〇歳で人間の一歳分の身長と顔つきが成長する。だけど、胸や体つきはたぶんその十倍くらいのペースで成長する。


「待って。ロリは点数高いから、胸とお尻と…、あと太ももをちょっとだけいいんじゃないかな」

「うむ。ららら…んぐ」

「待って待って!制服破れちゃうよ!」


 ルシエラが変ホ長調の「胸とお尻が」まで口ずさんだところで私は口を手で覆った。


「それもそうじゃな」

「制服に丈夫になる魔方陣を書いて魔石を付けよう」

「うむ」


 水魔法で油性インク使って制服のタグに魔方陣を印刷した。タグに埋め込むような小さな魔石では数秒しかもたないので、異次元収納と組み合わせて、中に組み込んだ発魔器に接続した。


「これで大丈夫」

「ららら……♪」


 ルシエラはふたたび変ホ長調の「胸とお尻がすぐに大きく成長する」を口ずさんだ。ルシエラの胸とお尻が風船のように膨らんでいく。


 薫はゴクリと喉を鳴らし、顔を赤らめながら黙って見ている。


「うう…ぐるじい…」

「ちょっ、バカ…」


 制服は破れないけど、制服の袖口や首穴から胸肉がはみ出して、もはや人間ではない。お尻はまあ、スカートからはみ出しまくってるだけだからいいけど…。


「ねえルシエラ。三年生の最後まで成長するんだよ?そんなに爆乳にしちゃってどうするの?」

「ららら……♪」


 ルシエラは「胸とお尻がすぐに小さく成長する」を口ずさんだ。空気が抜けるように、ルシエラの制服の中の胸肉がしぼんでいき、とても良い感じになった。だけど…。


「これくらいかのぉ」

「うーん…」


 私たちって、今でももともと白人の成人女性より少し大きなEカップくらいの胸がついているのだ。


 ちなみに、具体的に測ったわけじゃないからかなり適当だけど、成人したエルフはHカップくらいで、ハイエルフはNカップくらいだ。


 それはさておき、ルシエラの胸は、今でも制服が爆発しそうなほどぱつぱつでよく分からないけど、Nくらいだろうか。


「あのさ、ルシエラ。ふんふん……♪」


 私は「胸とお尻がすぐに小さく成長する」を口ずさんだ。ルシエラの胸をHカップくらいまでにしぼませた。成人エルフのサイズだ。お尻もそれに合わせて。


「何をするのじゃ!」

「この世界の人間であんなのいないよ…。ハイエルフじゃないんだよ…」

「スヴェトラーナがいるではないか」

「スヴェトラーナは例外だし、地球にはやっぱりいないよ…」


 私の嫁のスヴェトラーナは普通の人間なんだけど、十歳でH、十八歳でNに到達したなぁ…。まあ成長はそこで止まったけど。


「とにかく、地球ではそこまでにしておいて!」

「ふんっ!」


「それでね、そのサイズは卒業時のサイズだから、卒業に向けて徐々に成長していく魔道具を作ろう。だけど、今の時点で差が縮まってるのはいただけないから、今から少しだけ大きくしよっか」

「うむ。よかろう。どうせおぬしが文句を言うじゃろうから、かってに変えるがよい」

「それじゃあ、ふんふん……♪」


 ルシエラに「胸とお尻がすぐに小さく成長する」をかけて、胸をFカップくらいまでしぼませた。お尻も合わせてしぼませた。さっきから胸とお尻しか弄ってなかったので、「太ももがすぐに少し太く成長する」をかけて、お尻に合わせて太ももを少し太くした。


「ふんふん……♪ふんふん……♪」


 私には「胸とお尻がすぐに大きく成長する」と「太ももがすぐに少し太く成長する」をかけて、ルシエラと同じサイズまで胸とお尻、太ももを成長させた。


 胸が膨らんでいくのって何度やっても素晴らしい…。ずっしり感。パツパツ感。はみ出る感。良い感じ。


 それに、お尻を大きくしたから、パンツが下がって食い込んじゃった…。これもまたいいね…。いや、最初っからもっと小さいパンツを買えば簡単に食い込むのだけど、そうじゃなくて、自分が成長したから食い込みやすくなっちゃったっていう感覚がたまらない…。


 お尻が大きくなった分、スカートの丈が足りなくなったかも。っていうか、もともと冬服は股下マイナス一センチだったのが、マイナス二センチに。夏服ならマイナス三センチだ!いや、まあスカートの長さくらい好きに調整すればいいんだけど。


 ルシエラも自分の胸やお尻を眺めて、顔を赤らめて喜んでいる。私たち、自分に恋しちゃう生き物なので。


 薫はさっきからだんまりだ。私たちが胸やお尻が膨らんだりはみ出たりするのが嬉しいように、薫もたまらないのだろう。


「あっ、でも、急に胸が大きくなったら、みんなが不思議がるかも…」

「それは薫に使っておる認識阻害の魔道具を使うとよい」

「ああそっか」


 薫をイケメンに変えたとき、見た人は変化を認識できないようにしたんだ。薫が過去に冴えないおっんさだったことも今イケメンであることも分かるのに、変化に関することだけ考えられないのだ。


 あとは、魔道具を作って、二年間の成長関数を定義するだけだ。入学時にEカップだったのが、二年生でF、三年生でG、卒業時にHカップだ!

 こうして私たちは、本来ほとんど成長を感じられないマザーエルフでありながら、魔道具を使って成長する身体になった!



 始業式の日。少し成長した私たち…。


 胸の谷間が深くなったり…。制服の胸がパツパツになったり…。スカートからお尻が見えやすくなったり…。そのお尻にパンツがいつもより食い込んでいたり…。


 みんなの視線が熱い。男子はデレーっと。女子はムキーっと。


 みんな私の胸が大きいのは認識できる。でも大きくなったことは分からない。ぱつぱつになったのは制服を改造したからとか、はみ出したのはパンツを小さくしたからくらいのありふれたことのようにしか思ってない。

 ちなみに、認識阻害をしてなくても、お尻と太ももは、ぱっと見で大きくなったと分かるほどには変化させてないよ。そこはやり過ぎは禁物。やりすぎていいのは胸だけ。




 体形を弄ってから初めての体育の授業だ。

 うう…、前よりもブルマを上まであげてないのに食い込む…。でも沖縄に行ったときの水着よりは食い込まない。あの水着を学校で着るのにはまだ勇気がいる…。

 体操着が胸に引っ張られて、おなかの露出も増えた。胸の窮屈感も増えた。胸はちょっと大きくしすぎたかも…。これでも十歳のときのスヴェトラーナより小さいのに…。


 走ったらすぐ食い込むし、座ったらすぐにずり下がるし、いちいちそれを直してる私って可愛い…。一年生の最後のころには、男子ももう見慣れてきた感があったけど、急激な変化があったからまた注目を浴びるようになったよ。


 私が成長を堪能しているというのに、ルシエラはすぐブルマをTバックにしてしまう。それじゃあ何を着たって同じでしょうに。




 次に成長を実感したのは七月の水泳だ。


 私はスカートの下のパンツを脱いで、紺色の水着のパンツに脚を通した。太ももを通しにくくなってる。太もも少し成長させているからね。そして、ぐいぐいとパンツを伸ばして…、おおお…、お尻の段差を乗り越えるのも抵抗があったよ…。


 それから、ブラのほうは左右が窮屈になってしまったので、中央を結んでいる紐を少し緩くした。


 バタ足しても、何をしても、食い込みやすいしずり下がりやすいけど、まあ沖縄に着ていった水着ほどじゃない。私が以前よりも多くパンツを直してると、でれーっと注目してくれる男子は増えた。



 体育でも水泳でもそうだけど、私は今まで胸を揺らしたりお尻を食い込ませたりして魅力を稼ぐことがこの学校での成績に結びついていると勘違いしていた。でも薫にそうじゃないと言われたので、しかたがなくわりと真面目に体育をこなしてる。ブルマや水着が食い込んでも、とりあえず立ち止まらずに走りきるし泳ぎきる。胸が大きな女の子走りでも、いちばんにゴールする。


 そうしたかいもあってか、私は体育の成績でAをもらった。なるほど…。運動能力が体育の成績に結びついていたのか…。




 夏休みはまた、薫と旅行に出かけた。遊園地に行ったり、海外の海に行ったり。


 動物園に行ったときは、向こうの世界に持って帰りたい動物をまた漁ってしまった。



 そして二学期が始まって、さっそく体育祭という名の水着ポロリ大会だ。久しぶりに学校の水着を着ると、私の胸とお尻が大きくなっているのを実感する。去年の夏に始めて水着を着たときは、パンツの面積はお尻の半分くらいだったけど、今では四割五分くらいまで減っている。ブラの方は顕著で、だんだんマイクロビキニに近くなってきた。


 やっぱり成長したから服がきつくなってくるとか入らなくなっちゃったってのは、嬉し恥ずかしい。私の嫁のスヴェトラーナは、三ヶ月でブラジャーを交換しなきゃいけないほど胸の成長が早かった。向こうの世界には、当初ブラジャーがなかったので、私が作ったのだ。下着に革命を起こすのは転生令嬢の嗜みなので。今思えば、スヴェトラーナは一年ごとにカップサイズが一つ上がっていたと思う。だって十歳から十八歳でHカップからNカップまで上がっていったんだよ。夏休みとか挟んでしばらく会わないと、すぐに大きくなったのが分かる。あのときのスヴェトラーナは今の私みたいに嬉し恥ずかしい気持ちだったのかな。


 そんなことを考えながら競技を進めていたけど、競技の点数は可愛さじゃないので、真面目に競技に参加した。相撲ではハイレグ水着の相手を食い込ませすぎて失神させたり、ビーチバレーでは胸でレシーブしつつも念動でボールの行き先をコントロールしたり。


 そのおかげで、二年二組は優勝できたのだった。




 それから文化祭では演劇をやることに。二年生は演劇がテーマらしい。


 私はアニソン歌手になりたいからといって、声優にはなりたくないし、まして身体を使った演技なんてもってのほかだ。去年の文化祭では認識阻害のレベルを下げて、他の人が私たちに話しかけられるようにしたけど、今年はそのままにして、何人か洗脳して裏方を割り振ってもらうことにして、文化祭は事なきを得た。


 もちろん、演劇自体は一組のがうまかったと思うけど、観客を洗脳して二組に票を入れさせたから二組が優勝した。これも家庭科の成績に関係あるっぽいしね。



 こうして、今年はあまり目立たずに、体育もわりといちばんにゴールしたりを繰り返していたら、二年生の体育の成績は二学期も三学期もAをもらった。っていうか、ほかの教科も全部Aだった。


「マシャレッリ・ユリアナさん、マシャレッリ・ルシエラさん、おめでとうございます。あなた方は来年、一組への編入が決まりました」

「へっ?」

「何じゃそれは」


 終業式のあと、私たち二人は教師に呼び出された。そしていきなりこれだ。


「毎年、成績の良かった者と、悪かった者は、上下のクラスへ移動があるのです」

「マ・ジ・で…すか…」


 まあいいや。二組に何も未練はないし。




★★★★★★

★ユリアナ六十七歳、日本戸籍上十七歳(薫三十九歳)

◆高校三年生




 と思っていたのだけど…。

 一組の教室に入った私たち。私たちに集まる視線。一組のほとんどは外国人だ。一部、帰国子女の日本人がいる。


「ここは別世界じゃの」

「うん…」


 私たちは成長の魔道具で胸とお尻がだいぶ大きくなってきた。

 胸はGカップ。制服は丈夫になる魔法をかけてなかったら、力んだ瞬間にビリッといってしまいそうなほど胸がパツパツだ。胸に引っ張られてへそは出まくりだし。


 それに、スカートは股下マイナス三センチだから、けっこう近くで見ていても、球体とその下の溝が見えてしまう。パンツは上側が三割はみ出していて下側が四割食い込んでいる。十歩も歩けばTバック。ルシエラは常に下側が八割Tバック。


 それに比べてここはどうだ。へそを出している子はいない。胸の谷間はあるかも…。スカートはまあ、数ある学校の中ではかなり短い部類に入る。校則があるからね。そう、最初、これを見て、この学校を選んだはずだ。


 私、体育の鉄棒でポロリしたり、水泳でビキニのブラを脱いでポロリしたりして、大事なところを平気で晒す子たちのことを痴女だと思っていた…。三組の子はノーブラだったりノーパンだったりして、鉄棒や階段であっという間に大事なところを晒してしまう痴女ばかりだし。


 でも今、痴女なのは私たちだ…。このクラスの子たちは、普通に可愛い制服の女子高生ばかりだ(男は目に入ってない)。


「このクラスは調教しがいがありそうじゃの」

「えっ、そっち?」


 なんか現実を見せつけられて、途端に恥ずかしくなってきた。一組はもちろん、外に出たら私たちほど露出している子などいない。

 たかが外れてたんだ…。向こうの世界では、十歳くらいを境に、どんどん胸の露出を広げていくのが貴族女性の嗜みだ。その代わりスカートは長くなっていって、あんよは見られなくなっていくけど。




 私たちは家に帰った。


「ルシエラ…。制服、新しいの注文しよっか…」

「なぜじゃ。わらわはだんだんきつくなる制服が快感じゃ」

「今日、こんなの着てる子、一人もいなかったでしょ」

「だから全員変えてしまえばよかろう」

「教室一つならできるかもしれないけどさ、卒業したらそういうわけにもいかないよ」

「どうしろというのじゃ」

「せめて、もうちょっと露出を抑えようかと…」

「逃げるのか」

「だって…。私たち、痴女だよ…」

「この世界の人間がおかしいのじゃ。自分の魅力を知らしめ、群がった多くのメスに子を産ませるのが生き物のさがじゃ」

「人間はね、高度な文化を持つ生き物だから、本能だけに囚われて生きていくわけにはいかないんだよ」

「面倒な生き物じゃの」

「だからね、入学当時くらいの露出に戻そ」

「転生みたいなもんじゃの」

「そうそう、そんな感じ」


 ルシエラは、二〇〇〇歳の身体から転生して、今二十歳相当なのだ。二〇〇〇歳というのは、身長と顔つきが人間の十二歳くらいで、胸はHカップのエルフくらいだ。だけど、転生したから一度赤ん坊に戻って、そして今の身体があるのだ。


 私の場合はこの身体になってから転生したことはないけど、魔法で一度一万歳にして、動くこともできないほどの爆乳になったあと、また魔法で元の年齢に戻したときは喪失感がひどかった。私としては、一度大人の魅力を手に入れたのに、手放さなければならないなんて、とても悲しいのだ。だけど、ルシエラは何十回も繰り返していることなので、それほど苦ではないのだろう。


「しかし、だんだん成長して服がきつくなるという快感をどうしてくれるのじゃ」

「いちおう、今の体形にぴったりになるように作っていいからさ」

「それだけじゃなかろう。露出も抑えるのじゃろう」

「うーん…。じゃあさ、こうしようか………」

「しかたがない。それで手を打とう」



「ただいまー」

「お帰り」「よくぞもどった」

「ちょっ…、二人ともなんで水着…」


 私はマイクロビキニ、ルシエラはGストリングの水着を着ている。


「かくかくしかじかでね、外での露出面積を抑える代わりに、ここでは解放することにしたんだ」

「マ・ジ・で…」

「イヤ?」

「そんなことないです…」

「ネグリジェも新しくしたんだー、ほらっ」

「どこ?」

「ふふふ、愚か者には見えないのだよ」

「えっ…、いや…、なんか霧のような…、羽衣というか…」

「大事なところ以外、透過度九五%を実現!」

「裸じゃんか…」

「水着みたいなものだよ」

「同じか…」


 というわけで、家の中で薫にだけ見せつけることで、ルシエラには納得してもらった。

 ルシエラは大事なところだけ隠した、ほぼ裸だ。向こうの世界で、葉っぱ水着で暮らしていたときよりもひどい。


 私も人のことをいえない。ブラの面積はルシエラと同じだし、パンツもちょっと動くだけで食い込んでTバックになってしまうし。





 数日間、私は教室の皆に白い目で見られながらすごした。ルシエラは気にしていなかった。


 そして、制服ができあがった。一年生からやり直しだ。胸は最初からぱつぱつ。だけど、おへそが見えるのは、腕を上げたときだけだ。あと、胸の谷間は一年生の時より増えている、三年生にもなると、発育の良い外国人にはけっこう谷間があるのだ。そこは皆に合わせた。外国人特権だ。治外法権だ。


 スカートは股下ゼロセンチ。何もしなくても球体が見えたりはしない。クラスでいちばん短いことには変わりないけど、これ以上は譲れなかった…。


 でもまあ、普段見えないところはそのまま。パンツの面積は三割だ。

 私もルシエラにならってGストリングを導入したんだよ。ルシエラはGストリングもパンツもハイレグだけど、私のパンツはローライズのスキャンティなので、それより少しハイなところを通すくらいのローライズなGストリングにした。スカートがめくれたときにパンツの上にT字の紐があったら爆上げじゃない!でも、一組になったからスカートもあまりひるがえらないように気をつけないとね…。



 ちなみに、体操着と水着も新調したんだよ…。一年生の時相当になるように…。

 外国人の子はお尻が大きくなるのが早いので、ブルマの食い込みは二割くらいだったら一組にもいる。だから、私が三割、ルシエラが四割食い込んでてもなんとかなるよね。ちなみに、上側をはみ出させてるのは私だけだけど。


 おかげで、白い目で見られることはなくなった。だけど、私たちは喪失感でいっぱいだった。




 私は毎日、薫と自分たちの弁当を作っているのだけど、そろそろ胸が邪魔で手元が見えなくなってきた…。胸が大きくなっていくことでいろいろできない子になってしまうのは嬉し恥ずかしい…。


 最初は朝早く起きて、裸エプロン、もとい水着エプロンになって作っていたけど、作り置きして異次元収納に入れて時間停止しておく方法に変えてからは、早起きしてない。


 だけど、キッチンに立つときは必ず水着エプロンを心がけている。といっても、水着のパンツをはいているだけで、ブラはナシ。エプロンのなかでフリーだった。


 でも最近、それがじゃまで手元が見えない…。しかたがないので、ちゃんと固定して締め付けるタイプのブラでも作るか…。蜘蛛の糸の生地で。裸エプロンじゃなくなってしまった…。


 いや、エプロンを改造しよう。ブラトップみたいに、ちゃんとブラの役割をするエプロン。裸エプロンに横乳は欠かせないので、横のベルトはできない。せっかくだからパンツも結合して、首紐とパンツの紐だけで固定することにした。本来横側の紐で胸の前後方向を押さえつけるべきのところ、上と下の二カ所の紐だけで押さえつけるからきつくなっちゃったけど、なんとか視界を確保できた。むしろ、前から見たら身体のラインがはっきりして、良い感じになったと思う。


 というわけで、作り置きしておけばよいものを、わざわざ薫のいる時間帯にキッチンに立って、裸エプロンを薫に見せつけるのだった。





 一組の授業はハイレベルだな…。だけど、私たちはすでに学内の教師の知識をすべて吸いとってあるし、せっかくだからこのままトップで卒業しちゃおうかな。お色気は成績に関係ないって分かったし…。


 数学も数Cになってくると、私もけっこう忘れてる。というか、行列とか変数が多いものはだんだん前世の脳みそでは処理できなくなってきたのだ。だけど、ユリアナの脳みそは、特段優秀ではないと思うけど、情報量が多めでも普通に処理できる。転生ってチート能力を手に入れるだけじゃなくて、マイナスをゼロにするだけでも嬉しいね。


 もちろん、真面目にやるのに飽きたら、数学の教師の知識もいただきだ。計算というのは知識も必要だけど経験がものをいう。心魔法では経験や慣れみたいなものもコピーできるから、卒業時には全部もらっていこう。


 期末テストの結果が張り出されると、私たちの能力を皆分かってくれたようだ。私たちがただの痴女じゃないこともね。


 あのまま二組を続けていても、女子高生としてこの学校で学ぶことはなかったかもしれない。私はさまざまなお色気ワザを練習できた。ここらで真面目に、普通の可愛い女子高生くらいの練習をしてもいいかもしれない。


 普通っていったって、この学校の制服は、標準でもかなりスカートが短いし、とても薄くて軽い生地なので、手で抑えてないとすぐにひるがえってしまう。みんなちゃんとそれを実践してるのだ。スカートがひるがえらないように手で抑えている女の子は普通に可愛いじゃないか。一年生の最初はそれくらいから始めたのに、私はどこで道を間違えたのだろう?



 それから、毎年恒例の水着ポロリバトルでエロ可愛さと競技のできで一位を取りつつ、文化祭では展示物を適当に作って審査員を洗脳しつつ、私たちの高校生活はすぎていった。




 三年生といえば進路決定だ。


 大学か…。女子大生というのは制服を着てないしなぁ。というか、私は高校の三年間、女子高生というコスプレをしたかったんだ。私にとっての三年なんて人間の一日くらいにしか感じられないし、イベントで一日コスプレしたくらいに思っておけばいい。


 それはさておき、女子大生というのはコスプレでなるものではないし、セントルチア学園の外は、べつにブルマやパンチラがはびこっている世界ではないのだ。卒業しても服装はこのまま三年生くらいの露出度を維持するとして、問題は何をしに大学に行くか。


 本当は音楽大学に行きたいのだ。でも、私たちの魔法は音楽で発動してしまう。音楽を演奏しているときに、うっかりメロディに対応する単語のイメージを思い浮かべてしまうと、魔法になってしまうことがある。


「あのさ、音が鳴っているかどうかの判定じゃなくて、楽器や声帯が指定の周波数で振動しているかが発動条件なんだろ。だから、消音魔法で音を消しても魔法が発動するんだろ。

 それなら、魔法の発動しない周波数で演奏して、それをちゃんとした周波数に聞こえるように魔法で修正すればいいんじゃないか?」


 家で薫と進路について話し合っていたら、薫から提案された。


「つまり、楽器の物理的なチューニングを半半音下げておいて、楽器を時魔法で一・〇三倍加速させれば、正しい音が鳴っているように聞こえるのに、魔法が発動しないってことだね!」


 なんで気が付かなかったんだろう。っていうか忘れてた。向こうの世界で私がハープを元に作ったキーボードは、弦の長さが全部ドと同じなのに、一つ一つの弦を一・〇六のN乗倍に加速しているおかげで、ドレミとなる仕組みになっていた。このキーボードは、どの鍵盤を押してもドが鳴っている扱いなので、なんの魔法も発動しないのだ。


 それから、同じ原理で私の声帯を一・〇三倍に加速しておけば、私は自分の高くなった声を聞いて、その分、半半音低く出そうととフィードバックするから、魔法は発動しなくなるだろう。


「よーし、音大目指すね!」

「わらわも付き合ってやろう」

「よかったな!」


 こうして私たちの進路は決まった。




 そして、私たちは令和音楽大学の試験に赴いた。これは妄想でできた大学じゃなくて、私の世界線にもあったはずだ…。


 私たちの服装はセントルチア学園の制服。胸はややパツパツ。へそは出さない。スカートは股下ゼロセンチ。ここではプリーツは乱さずに。


 周りもみんな制服だ。だけど私たちほど短いスカートも巨乳もいない。


 音大の入試は、まずは楽器演奏か歌唱、もちろん私は歌唱を選択。


 これでも向こうの世界で何十年も歌ってきたのだけど、私の知識といったら前世の大学の男性合唱部で指揮者の先生やボイストレーナーに教わったようなレベルだけで、はっきりいって趣味のようなレベルだった。向こうの世界では美しい声ともてはやされてきたけど、正直なところ地球で通用するかはちょっと自信がなかった。


 だけど、こればかりは私が自分の努力で勉強したいんだ。試験のために他の人からスキルをいただくわけにはいかなかった。私は持てる知識と声量、四オクターブの声域を武器に、歌唱のテストに臨んだ。


 試験は防音室で行われたけど、私の地獄耳には防音室の中の声が聞こえた。他の人のレベル…。これなら行けるんじゃないかな…。



 それから、次の試験は音楽系座学。私は音の物理的なことに詳しいだけで、音楽の知識は、前世に中学でやめてしまったピアノと、男性合唱部で得たものだけだ。これはさすがに、音大を出入りする人の脳みそをほじくった。 


 次に、一般座学。国語、英語、小論文。これは高校教員の知識をコピーしてあるので余裕。


 最後は面接。「私はアニソン歌手になりたいんです!」


 私の面接の後、私の次のルシエラの声が、私の地獄耳には漏れ聞こえた。「私はアニソン歌手になりたいんです!」なんだ、普通にしゃべれるじゃん。ってか、ぱくったのか。髪型とパンツを変えただけと思われても困るんだけど?いや、私は前髪短いし、ルシエラは長い前髪を後ろに回してハーフアップにしてるから、私がルシエラにかわるのはムリだと分かるはず…。




「よかったなぁ」

「私たち、これで晴れて音大生だぁ」


 私たちは合格した。私の歌唱能力、地球でも通用するよ。


「今度は何を着ていくのじゃ」

「大学には制服はないんだけど、ルシエラはすぐにパンチラしちゃうから、ズボンにしよう。ホットパンツ」

「ふむ」

「それからね、卒業したら体形をリセットしようか」

「なぜじゃ」

「だからHカップなんて巨乳の十歳はいないんだってば」

「ふむ。もうおぬしのこだわりに任せるわい」


 まあ、体形を戻す前に、まずは高校の授業を終えて卒業せねば。


 高校卒業時にHカップになるようにしてあったんだ…。これがスヴェトラーナの十歳の時のサイズ…。十歳の身体にこんなに重たいものを携えていたなんて…。スヴェトラーナの家系はどうなってるんだ…。


 エルフというのは、成長する期間が人間の何倍もあるので標準体型で巨乳なのだ。それなのに、スヴェトラーナったらエルフでもないのに五倍速で胸が成長するものだから、こんなすごいことに…。


 試験が受かって浮かれた最後の高校生活。


 私たちは小さくなった制服にわざわざ着替えて、この学校でしかできない痴女を最後に満喫した。


 パツパツすぎて、スポブラみたいなっちゃったトップス…。

 短すぎてシャンプーハットみたいになっちゃったスカート…。

 スカートの上下にのぞくレイヤード干バックパンツ…。


 体操着もスポブラ。ブルマはスキャンティのよう。


 クラスのみんなも、私たちが成績優秀であることはわかっているので、私たちが痴女をやっていても文句を言えない。



 春。私たちはセントルチア学園を卒業した。主席で。教師の知識や経験、スキルは全部もらってきたからね。高校教師なんてたいしたことないと思うけど。




 私たちはまず、実年齢相当の体形に戻した。スヴェトラーナになれたばっかで名残惜しいけど戻した。まあ、いつでも大きくできるし。


 ルシエラの実年齢は十九歳で、私は六十八歳だ。戸籍上は二人とも十八歳だけど。


 ルシエラはこっちの世界に来たときに十六歳だったのだ。十八歳までは人間と等速で胸やお尻が成長するので、私と胸のサイズに差があった。ブラを持ってくるのを忘れてしまったルシエラを十八歳に成長させることで、私と同じブラを使えるようにしてあったのだ。ちなみに十八歳と六十五歳では、胸のサイズはほとんど変わらない。本来なら二〇一〇歳でEカップになるのだ。

 まあ、そんなルシエラも三年たったので、一応元の年齢の十九歳に戻しておいた。二十一歳と十九歳では何もかわらないけど。


 これで、十歳の身長に、白人の成人女性の胸とお尻が付いているくらいに戻った。さようなら、私の巨乳…。


 それからルシエラにホットパンツを買ってあげた。もちろんお尻が出ていたりしないホットパンツだ。そのかわり、中はもう見えないからGストリングだけでいいよ。ホットパンツの上から出してもいいし。


 私は股下ゼロセンチなのは維持して、可愛いスカートをいろいろ買った。でも、もうパンチラは卒業するんだ。


 そのかわり、常にガーターベルトストッキングをはいて、お尻に見えるお尻じゃない領域を作っておくんだ。ルシエラはそんなものいらぬと言ったけど、ホットパンツにガーターベルトストッキングもなかなかイケるのになぁ。


 トップスは二人とも胸の谷間をある程度見せるものにした。外国人だもの。女子大生だもの。


 靴は厚底を卒業して、ハイヒール。もちろん十センチのピンヒール。女子大生だもの。ハイヒール大好き!


 それから、銀髪の認識阻害を変更した。じつはすごく色素の薄い金髪だと言い張るのだ。そのかわり、じっくり見て無彩色かどうかを認識することはできない。


 五十八年前にもあったな…。向こうの世界では魔力を持たない人の髪は灰色だ。魔法の属性を一つだけ持ってる人の髪は魔法の属性のイメージカラーになる。私の銀は、ちょっとだけ明るい灰色だと言い張って、命魔法使いだということにしたのだ。全属性持ちということをごまかすために。


 ルシエラは、ホットパンツにハーフアップじゃ変なので、髪を下ろした。私との違いは、前髪まで伸ばしていることだけだ。まあ、ボトムズが違うので区別は付くと思うけど。


 セントルチア学園は治外法権だったんだ。ポロリが許されるのは学内だけ。制服であれば学外でもパンチラと透けブラまでOK。


 だけど、制服を脱げばここは現実世界。あまりにパンチラがひどければ、公然わいせつで逮捕されるかもしれない。


 家で水着ですごすのもやめた。だって、薫がいない間に荷物が来ても、全部居留守になってしまうので…。

■ユリアナ(六十八歳、日本戸籍上十八歳)

 キラキラの銀髪。ウェーブ。腰の長さ。エルフの尖った耳を隠す髪型。身長一四〇センチ。


■ルシエラ(二十歳、日本戸籍上十八歳)

 前世はユリアナの産みの親。今世はユリアナの娘。

 キラキラの銀髪。ハーフアップ。腰の長さ。エルフの尖った耳を隠す髪型。身長一四〇センチ。


■真北薫(四十歳)

 冴えない独身サラリーマンだったが、魔法で美男子に変えてもらった。


九条院(くじょういん)姫奈(ひめな)(十八歳)

 悪役令嬢。ツインドリル。



◆魔法の属性:シンボルカラー;音楽の調;効果


火属性:赤色;ハ長調、イ短調;火、加熱

雷属性:黄色;ニ長調、ロ短調;電気、光

木属性:緑色;ホ長調、嬰ハ長調;植物操作

土属性:橙色;ヘ長調、ニ短調;土、固体操作

水属性:青色;ト長調、ホ短調;水、解熱、液体操作

風属性:水色;イ長調、嬰ヘ短調;風、気体操作

心属性:桃色;ロ長調、嬰ト短調;心・記憶・感情操作

時属性:茶色;変ニ長調、嬰イ短調;時間操作

命属性:白色;変ホ長調、ハ短調;肉体・人体・動物操作、治療

邪属性:黒色;変ト長調、変ホ短調;世の中のことわりの管理

空間属性:紫色;変イ長調、ヘ短調;空間・移動操作、念動

聖属性:金色;変ロ長調、ト短調;祝福、幸せ、加護

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