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2 鼻歌の魔女は女子高生になりたい(前編)

※注意:この作品は「鼻歌の魔女は異世界でアニソン歌手になりたい」の16話のパラレルワールドです。

https://ncode.syosetu.com/n5502ic/16/

★ユリアナ六十四歳(薫三十六歳)




 薫とチート生活を楽しみ、年末を迎えようとしている。何が問題なのかというと、薫だって一年に一回は実家に帰っているのだ。


「さすがに彼女として紹介するわけにはいかないよな…」

「それなら、わらわを妻として紹介するがよい」

「幼妻ってとても魅力的なんだけど…」

「なんなら初潮を早めて、デキ婚というやつでよいぞ」

「ちょっ…」


 がつん。げんこつを喰らわせた。こっちに来てから本当によくルシエラを叩くなぁ…。


 マザーエルフというのは、十歳以降は人間の一〇〇〇分の一のペースで身長と顔つきが成長するようになる。また内臓年齢も十歳以降は一〇〇〇分の一ペースで加齢する。そのため、初潮が来る年齢の期待値は二〇一〇歳なのだ。


 ちなみに、あくまで身長と顔つきの成長が十歳で止まってしまうのであって、胸とかお尻とか体つきは成長十八歳まで人間の速度で成長し続けるので、今の私には十歳の少女に十八歳の成人の胸やお尻がくっついていると考えると分かりやすい。しかも、日本人の平均的なバストサイズと比べると、向こうの世界の女性は誰もが胸の谷間を持っているような世界…、というと言い過ぎだけど、地球でも欧米人とかは日本人と比べるとグラマーだし、その中でも貴族や王族というのはとくに美人でグラマーなのを好んで伴侶にすることが多いから、自然と弱肉強食の権力者の周りには胸やお尻の大きな子が多かったんだよ。


 んで結局何をいいたいのかというと、マザーエルフというのは大きな胸を携えておきながら、実際には初潮を迎えていないような詐欺師なので、魔法を使って子宮を成長させようかという話をルシエラはしようとしたのだけど…、


「バカ言ってんじゃないよ!」

「わらわは本気じゃ」

「仮に子供を作るにしても、結婚してからだよ!」

「面倒じゃのぉ。おぬしらは本当にヘタレじゃ」


「今回は諦めるよ…。オレは一人で実家に帰る。二人は好きなことしてて」


 結局、正月、私たちは薫の実家に帰らないことになった。薫の実家は私の実家…。私のいちばんのお母さんはナタシアお母さんだ。だけど、日本の母親も同じくらい大切だったことを思い出した…。まあ、いつか会う機会があるだろう。




 薫の寿命まで日本に滞在するのなら、ちょっと勉強していきたい…。


 向こうの世界で私がかつて領主を務めたマシャレッリ領の教会では、日本の中学までの数学や理科を教えている。高校数学はちょっと記憶がおぼろげで、一部しかカリキュラムに組み込んでいない。あと、物理・化学・生物もかなり適当…。歴史とか地理なんて何も覚えてない。


 実際のところ、学のある人の記憶を心魔法を使って自分にコピーするだけで用は足りるんだけど、急がなくても薫が寿命で死ぬまで何年もあるのだし、のんびりやればよい。


 そうだ!高校に行こう!女子高生やりたい!よーし、受付の時期になったら願書を出そう!



 そして、正月休みを終えて薫が帰ってきた。

 

「なあ、二人ともそれだけ可愛くて歌が好きならWeTuberになるとか、歌手か声優目指したらどうだ?」

「私たちね、メロディと歌詞の意味が偶然一致しちゃったときに、火が出たり水が出たりして危ないんだよね」

「カラオケで水浸しになったやつか…」

「私はもともと歌詞の意味を考えて歌わないんだけど、なんかの拍子で歌詞の意味を考えちゃうこともあるからね。幸いなことに、変ロ長調は聖魔法っていって、他人の幸福や安全を願う魔法だから危険なことは起こらないんだ。だから、全部変ロ長調にすれば歌えることは歌えるんだけど」

「なるほど…。好きな調で歌えないってきついな…」

「それにあんまり目立つとまたトラブルになるし…」

「地球人ではあり得ないほど可愛いってのはつらいな。芸能人が外を出歩けないのと同じか」


 結局のところ、歌と魔法は密接に関係しすぎていて切り離せない。魔法が発動しないようにすると、歌を思い通りに歌えないというのは難儀だ。地球ではあまり人前で歌わない方がいいな…。




 高校の募集時期になった。まずは、パスポートセンターに行ってスタッフを心魔法で洗脳したりして、パスポートや就学ビザを発行した。


 それから、偏差値はそこそこのセントルチア学園というところを選んだ。むしろ制服の可愛さで選んだ。制服偏差値で選んだ。



 そして入学試験の日が近づいてきた。私とルシエラは、この日のためにわざわざダミーの中学制服を仕立てた。試験の日だけ着られればよいので異世界から持ってきた魔物の素材で適当に作るんだ。いちおう、作れないことはなかったんだよ。蜘蛛の魔物が吐いた糸を火魔法と水魔法で融かしたり固めたりして整形するんだ。でも…、


「よいのか?この世界の服は胸をこんなに出してはならぬのじゃろう」

「うん…。失敗…」


 どうしてもお色気重視に…。嫁のスヴェトラーナがいけないんだ。なんでもお色気重視にするから。ドレスならわりと作り慣れてるんだけど…。Yシャツって作るの難しい…。


「Yシャツくらい買ってくれば…、ってムリか…」

「うん…」


 私は十歳の身長に、十歳よりも華奢な肩幅や腕に、十歳よりも短くてくびれた胴に、十八歳よりも大きな胸とお尻に、十八歳よりも長くて太い脚に…。


 結局、大きめのYシャツと肩幅の合わないブレザーを買ってきて、試験や面接当日には私とルシエラの服装について言及できないよう認識阻害の魔道具を作っていくことにした。それどころか、私たちが可愛いことについても気が付かないようにした。不格好だけどしかたがない…。



 そして、試験当日。私とルシエラはセントルチア学園の門をくぐった。この日ばかりは、私たちはごく普通の外国人だ…。可愛くもなんともない…。死にたい…。


 ただ、金髪の外国人くらいの印象は道行く他の学生に与えているので、二度見くらいはされるのである。と思ったら、二度見要素はそうじゃなくて髪型だった。私は腰までのばしたウェーブロングだし、ルシエラは同じ長さのハーフアップだった…。入試といったら髪の長い子でも三つ編みにしたり、後ろでまとめたりとかするものか…。


 というか、この学園は外国人が多く、金髪くらいでは誰も驚かないようだ。木を隠すには森。銀を隠すには金。


 でもまあ、髪型がちょっと派手すぎるかなと思ったので、認識阻害の魔道具を追加するためにトイレに慌てて駆け込もうとした。すると、


「おい。待て」

「えっ」

「あれを見るがよい」

「あっ…」

「この世界にもおるんじゃの」

「そうみたい…」


 マゼンダとか金髪とかではなくて黒髪だけど、腰まである二連装縦ロールドリルのお嬢様…。お嬢様のくせしてミニスカート…。しかもけっこう巨乳…。スヴェトラーナほどじゃないけど…。私とけっこう良い勝負…。いや、私みたいにロリじゃなくて、長身だけどさ。


「なんですの?」


 お嬢様は私たちの視線に気づいて警戒をあらわにした。


「な、なんでもないです…」

「遅刻しますわよ」

「そ、そうですね…」


 危害を加える気はなさそうだけど、悪意を感じる…。スヴェトラーナとは違う…、本物の悪役令嬢?まさか、異世界じゃなくて日本にいるとは…。


 入学前から大波乱だ…。あんなドリルがいるのなら、ウェーブロングとか目じゃないじゃないか…。



 試験会場の教室に入った。たしかに勉強するにはウェーブロングはちょっと邪魔かもしれないけど、ローゼンダール王国の学園ではずっとこれでやってたんだ。お嬢様はロングが基本だったんだ。いや、あの世界では誰もノートを取ったりしてなかったから、誰も邪魔に感じなかったと思うけど、私だけはノートをとってた。


 私たちは席に着いた。ルシエラは私の後ろの席だ。


「入試はすべて任せたぞ」

「えっ」

「ららら……♪」


 ルシエラは嬰ト短調の記憶を読むメロディを口ずさんだ。


「一時間ももつの?」

「途中で歌い直せばよかろう」

「試験中に歌ったら退場だよ」

「どうすればよいのじゃ」

「じゃあ…。消音の魔道具でも作っておくか…」


 風魔法で音量を調整することができる。それを二つ魔方陣にして中心に魔石を付けて、互いにポケットに忍ばせた。これで、ルシエラは音を鳴らさずに歌って魔法を発動できる。やりたい放題じゃないか…。


 ちなみに消音といっても自分の体内で響く音は聞こえるようにした。私は喉の絞め具合とかだけで出す声の高さを決められるわけじゃないのだ。自分で出した音を聞いてからフィードバックして調整するのだ。


 ひとまず、ルシエラは試験中に私の記憶を漁って丸写しするつもりのようだ…。それはマズいんじゃないかな…。こうやって考えていることもルシエラには伝わるから、よしなにやってひほしい…。




 試験が始まった。国語からだ…。何も勉強しないできちゃったけど、いくら私が薫の三十六歳までの記憶とユリアナの六十五年間の記憶を持っているからって、薫は文系科目が壊滅的だったし、異世界の六十五年間は日本の文系科目とはほとんど関係ないから、国語の試験を見て私は固まってしまった。


『おい、分からんのか!』


 ルシエラが心魔法で考えを送ってきた。


『ごめん、他の人を当たって、手分けして解こう…』

『うむ、それがよかろう』


 ルシエラは私の言葉ではなく記憶を直接漁ってるので、私の記憶に該当の知識がないことに気づき、早々諦めて、他の人に心魔法でコネクトしてるようだ。私も消音の魔道具を作っておいてよかった…。いきなりカンニングか…。

 ドリルお嬢様の心をのぞいちゃった…。名前は九条院(くじょういん)姫奈(ひめな)様だって…。中身は生粋の悪役令嬢じゃないか…。スヴェトラーナみたいに仲良くなれそうにはないな。


 って、そんなことを考えている場合じゃない。まあ高校には女子高生をしにきたのであって、高校の知識は卒業時までに教師の記憶を全コピするだけのつもりだったし…。



 そして、二時間目の地理、三時間目の歴史も心魔法でほぼカンニング。ルシエラに私は本当に日本人だったのかと呆れられた。何十万年も生きていながら、ローゼンダールの南側のことしか知らないルシエラに言われたくない。


 お昼は私の手作り弁当だ。小さな巾着に見せかけた時間停止のアイテムボックスの中から、時間を再開させて小さな弁当箱を取り出した。外観は小さいと見せかけて、中は空間魔法の異次元収納で拡張されており、二倍の空間がある。そして、この世界の食材に美味しくなる魔法と風味がよくなる魔法をかけており、それを調理した直後の暖かさのまま、時間停止の弁当箱に閉じ込めたものだから、ふたを開けた途端に香りが部屋中に充満してしまい…、


『おい、ユリアナ、こんなところに力を入れんでもよいじゃろう』


 ポケットに消音の魔方陣を入れたままだったので心魔法での会話…。


『うん…』


 私たちへの認識阻害とは無関係に注目を浴びたのであった…。



 そして、午後の数学。さすがにこれは余裕。だけど…、


『ねえルシエラ。私のをカンニングしてくれてもいいんだよ』

『ふむ。他の者と相違ないようじゃの』


 ルシエラの信用を失っていた。


 そして、物理、化学を適度にカンニングを交えつつこなして終了。


 結局、ルシエラとは写しあいはしなかった。私は他の人のをカンニングして多数決で一割くらい間違えた。ルシエラのもたまに見たけど、私とは違うところを一割くらい間違えていた。チート魔法万々歳だ。




「二人ともよくやったな!」

「ま、まあね」「当然じゃ」


 全部カンニングだったくせによく言う。


 合格通知が来た。さっそく制服をオーダーメイドしにいった。

 店舗にあったのを試着してみたけど、当然、十歳の身長に、十歳よりも華奢な肩幅や腕に、十歳よりも短くてくびれた胴に、十八歳よりも大きな胸とお尻に、十八歳よりも長くて太い脚の私に合うサイズのものはなかった。


 でも、店舗に置いてあるのって標準的なものだと思うんだけど、けっこうスカート短いな…。むふふ…。


 というわけで、その日は基本的に採寸だけで終えた。十六歳のルシエラと六十四歳の私では、本来なら微妙にサイズが違う。この差はほとんど十六歳から十八歳の二歳分だ。だけど、ルシエラはブラを持ってくるのを忘れてしまったので、最初にブラを貸したときに十八歳まで成長させたのだ。


 ちなみに十八歳以降の成長速度は一〇〇〇分の一になり、一万歳にはとんでもない爆乳に成長するのだ。


 

 というわけで、制服ができあがった。


「オレ…、死んでもいいよ…」

「存分に死ぬがよい」

「それじゃなんのためにこの世界に来たのか分かんないよ」


 セーラー服って着てみたかったんだ!なんで陸地で船乗りの服なんだろうね!


 普通の胸の人ならいざしれず、私の大きさだと谷間が見えるのが素晴らしい。リボンが可愛い!腕を上げるとヘソ出しルックになるのが良い!どこまでスカート短くしても怒られないかな!


 日本で谷間なんて見せられないと思ってたんだけど、あの巨乳ドリルお嬢様…、姫奈お嬢様となら谷間とスカートの短さについて対決できそう…。カンニングのついでにのぞいてしまったのだけど、相当な見せたがり…。


 それから、スカートはオーソドックスな紺色だけど、とても薄くて軽い素材でできてるうえに、プリーツがとてもたくさんあって三重になっている。そのおかげで、とてもひるがえりやすいようになっている。人の息を軽く吹きかけただけでめくれそう。


 あとは、このインナーっぽい部分を上下に調整することで谷間に露出を調整できるのと、スカートをどれだけ上げるか。私は身長一四〇センチしかないくせに、脚の長さと太さは成人日本人以上ある。


 そして、前側が三センチ、後ろ側が十センチの厚底ローファー。これで私もルシエラも一五〇センチになれば、まあちょっと背が低めの女子高校生に見えるだろう。ますます脚が長くなってパンチラし放題だけど。


 ちなみに、学費や制服代、教材代は私の株の儲けと、ルシエラの万馬券の当たりでまかなった。でも継続している私の株と違って、ルシエラの競馬は一発屋だったのですっからかんだ。あんまりやると目立ちそうだけど、目立つのなんて今さらだ。また邪魔法で黙らせればよい。


 しかし、私は自分のことを小学生っていったり高校生っていったり都合がいいなぁ。まあ、邪魔法というのはことわりをねじ曲げるものなので、自分の都合に合わせて世界を変えるものなのだ。




★★★★★★

★ユリアナ六十五歳、日本戸籍上十五歳(薫三十七歳)

◆四月




 桜舞い散る季節。私は六十五歳になった。向こうの世界は数え年システムだったので春とともに加齢だった。だから、私は正確な誕生日を知らない。ちなみに、実質、三月くらいが学園の始まりだったと思う。


 薫は今年三十七歳。薫が寿命で死んだ後、アニメ声の美少女に転生させてあげることを考えると、記憶は劣化しない方がいい。そこで薫の脳を三十六歳まで若返らせて、脳が老化しないようにするための命魔法と時魔法の合成魔法の魔道具を持たせた。薫はもともとあまり記憶力は良くないけど、これ以上ボケないのは安心だ。

 それに、薫の容姿はイケメンに変えてあって、歳を取ってもカッコいいのだ。まあ、私は興味ないけど。



 ちなみに、すでに老化が始まっている三十六歳の脳じゃなくて、もっと若返らせた方が良いと普通は考えるだろう。だけど、三十六歳が良いのだ。なぜなら、ルシエラの魂召喚魔法が自分と波長の最も合うと判断して呼び寄せたのが三十六歳の薫の魂だったからだ。


 人間というのは、年齢を重ねるごとに、聞こえる音の音程が上がっていくのだ。そして、上がっていく過程でルシエラが聞くべき音程とぴったり一致したのが三十六歳の薫なのだ。


 そして、音程というのは魔法を使う上で最重要なファクターだ。将来、薫を向こうの世界に連れていくなら、三十六歳で聞こえる音程のままにしておくのがベストなのだ。それより若くても老いてもダメだ。



 私とルシエラはセントルチア学園の門をふたたびくぐった。桜舞い散る通りを歩く私たち。このスカート、薄くて軽すぎて、歩いてるだけで自然にまくり上がってしまう。みんな、鞄をスカートの前に持って、スカートがひるがえらないようにするのが歩き方の基本なんだ…。


 じつは、肩掛け型の鞄も検討したんだ。鞄のベルトを胸と胸の間に通して、乳袋っぽくなるやつをやってみたかったんだ。だけど、この学校の鞄は必ずスカートの前に構えて、ひるがえるのを抑えるために使わなければならないことが分かったので、肩掛け型の鞄は諦めたんだ。


「八枚目~」

「むぅ。一万歳の胸があればのぉ…」


 私とルシエラは胸の谷間にどれだけ桜の花びらを貯められるかを競っていた。


「ほらっ、また入りましたわよ」


 なんと同じことを姫奈お嬢様もやっていた…。三人の男を侍らせている。そして、花びらが落ちていくところに見せつけるようにして、やや大きめの胸をぷるぷると震わせながら寄っていく。

 あんなの私の嫁のスヴェトラーナの足下にも及ばないな。あざとすぎる。ってあざといのは私たちも同じか。


 あまり関わりたくないので、そそくさと退散する…。


 しかしそうは問屋が卸さないのだ。なぜなら、入試に時と違って私たちは可愛いことを認識阻害する魔道具を外しており、この世の者とも思えないほど可愛いからである。姫奈お嬢様もお美しいけど、私たちの敵じゃない。


 私はローゼンダール王国の学園で悪役令嬢だろうとなんだろうと仲良くなって、クラスメイト全員を嫁にしかけたことがあった。結局最終的に六人を嫁にするに留まった。

 だけど、私が日本に来たのは嫁を探すためじゃない。嫁はもういらない。そりゃ悪役令嬢だって手懐ける自信はあるけど、私の嫁のスヴェトラーナとキャラ被ってるから、今さらいらないんだよ!いや、被ってなくても浮気なんてしないよ!


 というわけで、私たちさえいなければ、当然クラスの注目の的となるべきだった姫奈お嬢様を差しおいて、私たちは注目を集めているのである。しかしここで怖じ気づいてはいけない…。

 男はいらないけど、男の視線というのには興味がある複雑怪奇な生き物であるエルフ…。退散しようと思ったのにもかかわらず、張り合ってしまった…。


「十二枚目~」


 私も胸をぷるぷると揺らして花びらを集める。こういうのはホント、スヴェトラーナの役割だったのに、日本では私がいちばん巨乳だなんて…、困っちゃう…。いや、日本でってことはないと思うけど。


「ららら~」

「ちょ…、反則…」


 ルシエラは変ホ長調の乳房がすぐに少し大きく成長するメロディを口ずさんだ。セーラー服は爆発しそうだ。私たちは三年間で成長したりしないので、もともとぎりぎりに作ってあったのだ。

 それなのに胸が突っ張ったおかげでへそが丸出しだ。格ゲーのキャラのようだ。もちろん腹筋などなく、細くて折れそうなウェストがとても素敵だ。

 でも、それで定着したら困るのでやめてほしい…。それに、いちばんは私なのに…。


 ちなみに、ブラジャーは異世界の蜘蛛の魔物が吐いた糸で作ってあり、めったなことでは破れない。豊胸しすぎると、服が破れるのではなくて、自分が圧死しそうになるのは経験済みだ。



 きーんこーんかーんこーん。


 無情にも終了のゴングが鳴らされた。ルシエラの胸のサイズはいつのまにか戻っていた。


 ぎらっと私たちを睨みつける姫奈お嬢様。私は五十五年前にローゼンダール王国の学園に入学した右も左も分からなかったか弱いユリアーナ・マシャレッリ侯爵令嬢ではないのだ。いや、最初からか弱くはなかったけど。まあ、こんなことで動じたりはしない。

 私たちは十センチのローファーを華麗に履きこなし、足早に体育館の建物へと向かった。



 一学年は三クラス。私たちは二組だ。私たちはローゼンダールという国から来たことになっていて、マシャレッリという姓を持っている。マシャレッリというのは、向こうの世界でかつて領主をやっていたときの家名だ。本当は三十三年前に娘に爵位を引き継いでいるので、名乗ることはできないんだけどね。

 アイウエオ順でマ行はだいぶ後ろだ。マシャレッリ・ユリアナは後ろから三番目、マシャレッリ・ルシエラは後ろから二番目に並んだ。

 家名が先に来るって新鮮!


 周りを見回してみると、この学校は外国人を多く受け入れていることが分かる。茶髪や金髪が盛りだくさんだ。私たちは銀髪だけど、邪魔法を使って銀髪が地球に存在しないということを認識できないようにしてあるので、たんに金髪の外国人くらいの珍しさに思えるようになっている。

 ちなみに、私は相変わらずのウェーブロングで、ルシエラはハーフアップだ。私もルシエラも腰あたりの長さだ。さすがにこれほどの長さの子は…姫奈お嬢様だけである。


 そして、制服が可愛いという条件の中で偏差値がわりと普通だから選んだのだけど、実は一組と二組と三組で偏差値が分かれていて、二組は中レベルだ。私の右の列にいる一組の子たちはスカートが少し長く制服もキリッとしているし、左の列にいる三組の子たちは制服を逆に乱していてチャラい。

 一組のスカートが長いといっても、この学校のスカートの長さは標準で股下三センチ、最大でも五センチまでと校則で定められているため、綺麗なあんよを拝めることには変わらない。

 私がいえた義理ではないが、入学初日から素晴らしい。


 ところで、姫奈お嬢様のスカートは、標準の股下三センチだった。この学校では短くともなんともなかった。それに、姫奈お嬢様はけっこう可愛いと思っていたけど、この学校には可愛い外国人の子がたくさんいるので、有象無象だった。


 外国人を分け隔てなく受け入れるために、あまり偏差値にはこだわらずに受け入れるためにこうなっているようだ。もちろん、外の世界から来た私たちも対象だろう。たまに、金持ちのボンクラ息子や露出狂のお嬢様が紛れ込んだりするようだが。ちなみに、一組にはほぼ外国人しかおらず、二組と三組も半分くらい外国人だけど、日本人の金持ちボンクラ息子と痴女は二組と三組にしかいない。


 おっと、女の子は座るときに、スカートがひるがえらないように、手で覆ってから座るんだよね。スカートの丈は股下ゼロセンチだから、ちゃんとスカートを太ももで踏んでおかないと、パンツがすぐに見えちゃう。

 でもルシエラはスカートがひるがえっていることなんて気にしない。ちょっと白のパンツが見えてるよ…。でも、ここじゃ指摘しづらいよ…。


 そして、人生で七回目くらいになる学長の念仏を聞いて退場。ローゼンダールの学園の入学式では身分の順で前から並んでいて、前から退場していったけど、ここではそんな効率の悪いことをしない。普通に後ろから退場していくだけだ。いちおう国民皆平等なんだよねえ。と思ったら、優等生の一組の後ろから出ていったよ。しかたがなく飼ってやってる二組と三組は二の次ってか。まあいっか。


 一年二組の教室は二階だ。私は二組で比較的始めのほうに退席したから、列の前のほうだ。すなわち、私の後ろに多くのクラスメイトが並んでいるのだ。とくに、私の後ろから付いてくる男子。ちょっと離れて付いてくる。


 そして、やってきました、階段!しかもこの階段、少し急じゃない?


 どうしよう!私はスカートの後ろを手で押さえた。もちろん、スカートは股下ゼロセンチに設定してあるので、抑えたところでスカートより目線を下にやれば見えてしまうのだ。それを分かっていてやっているのだ。これが女子高生になってみたかった理由の一つといっても過言ではない!


 エルフという種族は両性具有であり、しかもマザーエルフという種族は雌雄同体であり、自分と交配する種族なのだ。そのため、自分を客観的に好きになる本能を持っており、自分を他人目線で見ることができる。すでに、私はルシエラを産んだときに、自分に胎ませるということをやっているのだけど、あそこまでの状態になるとそれ以外のことをできなくなってしまうので、今はいろいろと抑えてある…。今はたんに、人間の男くらいの性欲で自分を見られるようになっている。はず。


「何をやっておるのじゃ。全部見せてやればよいのじゃ」

「えっ…」


 私が自分のスカートをチラチラ気にしながら、スカートの綿密な抑え具合を調整しながら階段を上っていたのに…。私の前を進んでいたルシエラが、まったくスカートを抑えることもなく、ふわふわとスカートを舞い上がらせながら、白のパンツ丸出しでドスドスと階段を上がっていた…。


 私の「もうちょっとで見えちゃう」期待感とか「見えちゃったらどうしよう」とかの恥じらいなど台無し。かと思いきや、私とルシエラのパンツは同じなので、ビフォー・アフターのような感じで、男子には喜んでもらえたようだ。私とルシエラの後ろ姿を、男子の目線は行ったり来たりしていた。


 そして、階段のふもとで大渋滞が起こっており、他の女子から大ブーイングが起こっていたのは言うまでもない。その中には、ハンカチを噛みちぎっている九条院姫奈の姿があったことを、私は知るよしもなかった。




 一年二組の教室に到着すると、これまたアイウエオ順に整列。六列の座席が並んでいる。私はいちばん左の窓側の列の三番目の席に座った。五十五年前もこの席だったような。


 私はまた、スカートがひるがえらないように、手で覆ってから座った。

 ルシエラはきっとまた何も考えずに座るだろうと思っていたら、案の定ふわっとジャンプして座ったらしく、スカートが完全にひるがえってパンツが丸見え…。しかも大股を広げている…。

 周りの男子は、視界ギリギリにでも収めようと必死だ。


「なんじゃ、堂々と見るがよい」

「ちょっとルシエラ…。安売りしすぎ…」

「ふむ。それもそうじゃな」


 ルシエラはお股は閉じたが、相変わらずスカートがひるがえったままで、パンツは丸見えだ。


「もう…。まだ見えてるよ…」

「そうか?助かった」


 私が席を立ってルシエラのスカートを太ももと椅子の間に挟んであげると、「おお…」という歓声が…。妹のスカートを直してあげるのがよかったのか、はたまた、しゃがんだ私がパンチラしたのがよかったのか。みんな、いちいちこの程度で感動してて、三年間心臓がもつのかな。


 そして、このクラスの女子は、外国人も日本人も私たちに対抗心を燃やしているようだ。初日だからといって、制服の改造を甘くしていたのがあだになったと。


 さらに、教室の席の、廊下側から二番目の列の一番前の九条院お嬢様は、仮にもお嬢様であるため、あからさまにパンツを見せたりするのはさすがにできないご様子。本来こういうのは三組の仕事かな?でもね、外国人と日本人では露出の規制レベルが違うのだよ。


 この学園はなんなのかな。もしかしたらやってくる世界線を間違えたかな。まあいいや。楽しいし。


 担任の先生によるオリエンテーションの話を聞き流して初日を終えた。なぜなら、私が高校に来たのは女子高生になることと高校教科の知識を得ることであって、勉強することではないからだ。




★★★★★★

★薫三十七歳(ユリアナ 日本戸籍上十五歳)




「ただいま」

「ねえ!」

「お、おう…。初の女子高生ライフはどうだったか」


 薫が帰って来るなり、ユリアナはいきなり薫に食ってかかった。


「明日買い物行きたい!」

「い、いいけど…」


 文具でも足りなかったかな…。まあ明日は休みだからいいけどさ。



 そして翌日。ショッピングモールでもユリアナとルシエラはセントルチア学園の制服を着てきている。女子高生は休日でも制服を着るのが好きなんだな。

 そして辿り着いたのは…


「なんで、し、ししし、下着売り場…」

「行くよ!」

「まあ、付き合ってやれ」

「ええええ」

「ルシエラも選ぶんだよ!」

「わらわもか。しかたがないのぉ~」


 ユリアナの力、めちゃくちゃ強い!十歳よりも華奢な腕をしているというのに、どこにこんな力があるんだ…。

 そして、ルシエラはそう言いながらも嬉しそうに顔を緩めている。


 どうしよう…。下着売り場に三十七の冴えない…、じゃなかった。オレ、イケメンになったんだった。可愛い彼女を連れたイケメンなら堂々としていれば下着売り場でも絵になるはず!ごめん、やっぱムリ…。


 ユリアナが手に取ったのは、その大きなお尻には明らかに面積の足りないであろうパンツ。後ろ側が大きくえぐれていて後ろ前のよく分からないパンツ。横方向の長さはともかく、上下の長さが明らかに足りないパンツ。ユリアナはなんだかすごくたくさんの小さなパンツを取って、試着室に向かった。でもパンツって試着できるんだっけ…。


 ルシエラが手に取ったのは後ろ側には面積のないパンツ。そして、自分のはいているパンツをその場で下ろして、


「ちょ、ちょちょちょ、ルシエラ、ここじゃなくて、試着室でね!」

「ん?スカートをはいておるから見えぬであろう。ここだけ見せねばよいのであろう」

「そういう問題じゃ…」


 自分のパンツを右足の下の方にに引っかけて、左脚を上げながら、こことか大事なところを指さないでほしい。そんな短いスカートじゃ、人が側を通ってふわっと舞っただけで丸見えなんだぞ…。


「とにかく、あの試着室で頼む」

「面倒じゃのぉ」


 ルシエラは右足に自分のパンツを引っかけたまま、面積のないパンツを人差し指でぶんぶんと回しながら更衣室に入った。ユリアナのいる更衣室に…。


「ちょ、ルシエラ、なんでこっちに入るの」

「よいではないか、よいではないか」


 ルシエラがカーテンを開けると、ちょうどユリアナは脚を上げて次のパンツをはこうとしているところで大事なところが…。

 でも、オレがそれを見てしまったことには気が付いていない様子だし、他の誰も見ていない…ことはなくて、試着室が慌ただしいことに店員が気が付いたようで、店員が注意しにいったようだ。


「あのー…、お客様…。ショーツは試着できるようになっておりません…。お召しになったものは、すべて弁償いただきたいのですが…」

「えっ…」


 カーテン越しに聞こえるユリアナの声。

 そうだよね…。パンツは試着できないよね…。ユリアナは水着の試着と勘違いしたのかな…。


「ご、ごごご、ごめんなさい」

「そういうことは先に言うがよい」


 ユリアナは出てきて必死に謝っていた。

 ルシエラは処置なし。


「すみません、この二人は外国人なんで、かってが分からないんです」

「ごめんなさい。全部、買い取ります」


 ユリアナは、試着のために持ってきたパンツをぐちゃぐちゃに丸めて持っていった。女の子のパンツって丸めると体積小さいよな…。

 弁償としてけっこうたくさんのエグいパンツを買い取った。っていうか、そんなにたくさん試着したのかな。どうせ買い取りだから、試着してないものも全部買い取っちゃっていいか。



 気まずくなってそれ以上の買い物はできなくなった。

 逃げるようにして店を出たのはいいけど…。外が見えるエレベーターの中。ユリアナの様子がおかしい…。なんか、顔を赤らめて、エレベーターの外側を向いて、もじもじしながらスカートの前を両手で押さえてる。


「ねえ。どうしたの?」

「えっと…」

「それはな、こうじゃ」

「ダメえっ!」


 ルシエラがユリアナのスカートを後ろからめくった。そこには、一糸まとわぬ綺麗な球体が二つあった…。


 ぼこっ!


「ぐぇっ」


 ユリアナの拳がルシエラの頬に直撃…。

 ルシエラはエレベーターの中でトリプルアクセルを決めて地面に伏せた。すると、スカートがひるがえっており、ユリアナと同じ、一糸まとわぬ綺麗な球体が二つあったのだった。


 オレはエレベーターが一階に到着する前に、袋に無造作に入れられていたパンツを一つユリアナに渡して、もう一つをルシエラの足に通そうとしたけど、十センチのごっつい靴に小さなパンツがなかなか通らない…。


「ふんふん……♪」


 ユリアナが変ニ長調のメロディを口ずさむと、ユリアナは突然ビデオの早送りのように動き出して、あっという間にパンツをはいてしまった。そして、ルシエラのパンツをあっという間にはかせて、立ち上がらせて、ふんふん…♪と高速で変ホ長調のメロディを口ずさみ、ルシエラを目覚めさせた。ルシエラの頬はへこんだままだ。


 そして、丁度、エレベーターは一階に到着したのだった。



 帰りのバスで、


「さっきのは…」

「うん…。慌ててて、はいてきたパンツ、試着室に忘れちゃった…」

「アレって異世界のパンツ?」

「まあね」

「魔法のパンツとか?」

「うん。排卵を一時停止するパンツ」

「マジで?」

「閉経するわけじゃなくて、女性ホルモン分泌とか基本的な機能は継続」

「大丈夫なの?」

「私はそもそも初潮が来るのが二〇〇〇年後とかだし、試着室に忘れていったパンツなんて見向きもされずに捨てられちゃうんじゃない?」

「分子構造とかは?」

「さあ、刃物じゃ切れないし二〇〇度まで燃えないけど」

「マジか…」

「研究したいならあげるけど、専門外でしょう」

「うん…」


 魔方陣以外にも魔法のアイテムってあるんだな…。パンツだともらってもしかたがないけど…。




 帰宅して、二人はとりあえず持ち帰ることのできたパンツのファッションショーを始めた…。


「ルシエラ、なにこれ…、紐じゃん…」

「うむ。わらわのすべてを見せてやろう」


 二人が下着を持って押し問答を始めた。

 ユリアナは、ルシエラが選んだ、小さな三角形の生地の頂点から紐が伸びているだけのパンツを持って、ルシエラに文句を言っている。


「ルシエラはすぐスカートを全開にしちゃうからTバックはダメ!」

「おぬしは面倒なことばっか言うのぉ」

「だって、全裸よりも、もう少しで見えちゃうとか、はみ出ちゃいそうとかの方が燃えるでしょ!」

「ふむ…。一理あるのぉ」


 ユリアナは男が喜ぶポイントをよく知っているようだ…。


「っていうか、ルシエラ紐パン一枚しか持ってこなかったの」

「うむ」


 まるでパンツつかみ取り。


「っていうか、私もじつは、ここまで面積が小さいのは、一度はいてみたいと思っていただけで、普段使いにしようと思って試着したわけじゃないんだよね…。これとか、これとか…」


 スキャンティというやつだろうか。横幅はまあまあだけど、上下方向に明らかに長さが足りないヤツだ。でも異世界の女の子ならこれくらいははいていて当たり前だと思うんだ。


「なあ、それよりも、なんで急にパンツを買うことになったんだ?」


「それはね、私が恥じらう乙女を演出して、スカートを抑えてもじもじしてるのに、ルシエラがすぐオープンしちゃうからさ。ほら、私たちって双子だと思われてるじゃん。私をオープンしたらルシエラってのが分かっちゃうと、私をオープンする価値がなくなっちゃうじゃん。そしたら、私がもじもじしてる意味ないじゃん!」


「そ、そうだね…」


 ユリアナは本気で恥ずかしいわけじゃなくて演技なのか…。そして、ユリアナもやっぱり見られたいのか…。


「じゃあ、今日買ったエグいパンツは…?」


「これはちょっとさすがにエグすぎるというか、もうちょっと私としては面積が欲しいというか…」


 あ…、今度は本当に恥ずかしがってるみたい。今までは見せパンだから堂々とパンチラしてたけど、これはさすがにパンチラできないか。いや、今までも質素だったけど見せパンじゃなかったよね。


 とか言いながら、ユリアナはスカートに隠したまま、さっきの明らかに上下方向の長さが足りないパンツをはいた。そして、後ろを向き、顔を赤らめながら、スカートを少しだけめくり上げて、


「どうかな…」

「うん…、すごく良い…」


「どうかの…」


 そして、別の方向からは、同じ声だけどのじゃキャラの声が…。

 だけど、そこにはTバックをはいて、スカートをアンダーバストまで上げたルシエラの姿が…。


「だから全部見せたらありがたみがないでしょ!」


 ばこーん。


 ユリアナの脳天チョップ。


 二人とも体重はめちゃくちゃ軽そうだけど、衝撃はすごいんだよね。床に穴開かないかな。



 そして、翌日の日曜日に、別のショッピングモールにブラジャーを買いに行くのに付き合わされたのは言うまでもない。


 しかも、ユリアナはパンツと一緒でブラジャーも試着できるわけないと思っていたらしく、合わせずに帰ろうとしたら、店員から「試着されなくてもよいのですか」と逆に声をかけられる始末。ルシエラのブラジャーファッションショーなど一悶着あったが、結局、華奢な胴体と巨大なカップのサイズが合うものがなく、オーダーメイドして帰ることに。


 それにしても、ユリアナは日本に慣れているようで、所々抜けているなぁ。日本人としての記憶が欠落してるとか?まあ、六十五歳とかいってるし、日本人だったときのことを忘れていてもしかたがない。




★★★★★★

★ユリアナ六十五歳 日本戸籍上十五歳(薫三十七歳)




 翌週、授業が始まった。案の定、クラスの女子の制服の改造はいっそう進んだ。本当なら二組はスカートの長さはもうちょっとあったのだろうけど、最頻値が股下ゼロセンチ、平均値が股下二センチくらいになってしまった。その平均値を下げるのに貢献したのが私とルシエラ。なんと股下マイナス一センチである。水平よりも上一度くらいからでも球体が見えてしまう。


 ものは考えようで、今までだって水平からなら見えていたし、普通のミニスカートだって下一〇度くらいからなら見えるだろうし、ロングスカートだって下六〇度からなら見えるだろう。それなら、もう何度だっていいじゃないか。ああ、それならルシエラの上九〇度でもいいじゃないかって発想になるか。うーん。


 ちなみに、試着できないって知らなくて買い取りになっちゃったエグいパンツだけど、しゃがむとすぐに下がっちゃうし、歩くとすぐに食い込んじゃう。ルシエラにTバックはダメって言ったのに、自然にTバックのようになっちゃう…。やっぱり、ちゃんと試着して、歩いたりしてどうなるか確認したかったな…。


 そりゃ、前世でパンツなんか試着したことなかったけど…。女の子なら…。ああ、水着の試着と勘違いしたんだ…。


 だけど、教室でお尻に手をやって食い込んだパンツを直してると、クラスの男子の視線が熱いんだよね…。けっこう快感…。このパンツにしてよかったかも…。


 ちなみにルシエラはTバックしか買ってきてないので、私のつかみ取りしてきたやつを分けてあげた。私はローライズ派だけどルシエラはハイレグが好きなので棲み分けができている。ルシエラのハイレグは最初っからお尻の下側が五割くらい見えてるけど、ルシエラは食い込みを直さないので、結局、常に八割くらいお尻を見せており、ほぼTバックですごしてる…。まあ、スカートがめくれたとき、紐じゃなくてちゃんと丸まったパンツが見えるからいいかな…。



 それにしても、パンツを買いにいった帰りのエレベーター…。私は試着室で元のパンツをはきわすれてしまい、ノーパンだった。しかも、そのエレベーターは外を一望できるようになっており、壁が全面ガラスだった。


 私は絶対に大事なところを見せまいとスカートの前側を抑えていた。だけど、後ろ側はノーガードだ。もし壁を背にしてスカートがひるがえったら、私のお尻が大空に羽ばたいてしまう。だから、壁を向いていたんだ。


 だけど、ルシエラはそれを知ってて、私のスカートを後ろからめくった。まあ、薫しかいなかったからよかったけど、ルシエラを殴って黙らせた。そして、今度は地面に伏せたルシエラの綺麗なお尻が丸見えに。


 ルシエラのバカ…。もっとめくって欲しくなっちゃったじゃん…。





 授業の科目については、前世で受けていたときとだいぶ感覚が違う。

 国語の授業って、知識もあるけど感覚的なところが多いかなぁ。前世ではその感覚がよく分からなくて点数を落としていた気がするよ。真面目に勉強する気なかったんだけど、ユリアナの脳みそは薫と違って一般人レベルには記憶力があるから、国語の授業も普通に分かるよ。


 チート能力じゃないけど、生まれ持ったものの差ってどうしようもないね。心魔法には魂や記憶を移し替えるものがある。薫の魂も心魔法で他から持ってきた。それに、薫が寿命を全うしたら、記憶と魂を抜きだして、向こうの世界に連れていく予定だし…。そうしたら、記憶力の悪い脳みそとはおさらばだよ。


 このクラスの半分以上は外国人だ。みんな普通に勉強している。二組はボンクラではないのだ。だけど、金持ちとしてはボンクラ扱いの子が混ざっている。姫奈お嬢様とか。他にもちょっやさぐれていて勉強に身が入っていない子がいる。一組狙いだったのに落ちたのだろう。


 地理とか歴史とか詰め込み系は真面目にやるつもりはない。心魔法で教師の記憶をコピーして終わりだ。それも、廊下ですれ違った一組担当の優秀なヤツの脳みそをいただきだ。



 それから、セントと学校名に付いていることもあって、セントルチア学園はこれでもミッション系の学校なのだ。ところが、キリスト教かと思ったら、キリスト教だけでなく、主要な宗教数種類の礼拝堂が設置されており、多くの国の者を受け入れられるようになっている。


 もちろん、元日本人である私は自分や家族が亡くなるときだけ仏教徒というレベルだし、向こうの世界のルシエラも無宗教だ。強いていえば、マザーエルフは神の使いのような存在だけど、魔法を広める使命を本能に埋め込まれているだけで、実際にそのように作りたもうた神が存在するかどうかも分からない。


 そんなわけで、いくつか決まった時間に礼拝の時間がもうけられているのだけど、無宗教の私たちにはただの休み時間なのだ。




 そして、待望の科目がやってきた。体育だ!この学校。なんと、女子の体操着がブルマなのだ!


 私とルシエラはどこかで道を間違えて違う世界線に迷い込んでしまったに違いない。きっと、世界線の移動に使う邪魔法に邪な考えが入り込んでしまったんだ。


 この世界線の薫は、私のための魂を抜き取った薫じゃないのかもしれない。私のための魂を抜き取った薫のいる世界線には行くことができないのかもしれない。いや、完全に同じ世界線に行けないのは分かっていたのだけど、それにしてももうちょっと近い世界線に行けると思ってたのになぁ。まあいいや。ブルマが残っているような高校は薫の時代にはなかったと思うけど、この世界線の薫を救うことができたから、もういいよ…。きっと、別の世界線の私も、他の世界線の薫を救っていることだろうし…。



 ちょっと話が脱線してしまうのだけど、邪魔法というのは、本当はルシエラが世の中のことわりを管理するための管理魔法なのだ。だけど、一般人でもときどき使える者が現れる。膨大を魔力を必要とするため、できることはちょっとした認識阻害とかに限られるが、それでもやることの多くが邪なことであるため、何十万年もの間に邪魔法と呼ばれるようになったという。たしかにその通りだ…。


 私たちが薫に魂を戻すために、この世界にやってきた話をしよう。ローゼンダールのある世界から地球のある世界の移動は世界線の移動だ。世界線の移動は時魔法と空間魔法と邪魔法を組み合わせた合成魔法で行う。


 時間の移動は世界線の作成だ。一本の時間軸を前後に移動するのではない。過去にタイムスリップするか、過去にタイムリープするか、未来知覚した場合は、未来の情報を得た世界線を作成して、その世界線に移動したことになる。未来の情報を得なかった世界線には二度と戻れない。世界線はイミュータブルであり、改変された世界線を作成することはできても、既存の世界線を改変することはできない。イミュータブルオブジェクトを更新するときはコピー・オン・ライトが基本である。未来の情報が加わった新しい世界線を作るしかないのだ。



 何はともあれ、この世界線は私がユリアナであることを楽しむために邪な心で作成して迷い込んだ世界線なのである。ということで、ブルマを楽しもうじゃないか。


「うふふ、どう?」

「オレ、死んでも良い」

「制服のときにも聞いたぞ」


 まずは体育の授業の前日に家で試着。初めてのブルマ…。身長一四〇センチ用を注文したんだ。もちろん、私は身長一七〇センチの白人女性くらいのお尻を持っていることは分かっているので、わざと間違って身長一四〇用のブルマを買ったんだよ。


 ブルマって、たんにちょっとやぼったい紺色の水着みたい。さすがに紐で止めたりはしないけど。でも、水着を着てやるビーチバレーみたいな競技もあるし、ブルマ自体が悪いわけじゃないんだ!


 でも、このブルマはどう考えても面積が足りない…。今はいてるパンツより少し大きいくらい…。このパンツだって、はいていくの勇気いったんだよ…。ブルマはお尻の面積の六割をカバーできればいいところかな…。


 とりあえず、完全に上まで上げないで、お尻の露出面積の四割のうち、一割を上側、三割を下側に割り振ろう。動いてるうちに変わっちゃうかもしれないけどね。


「それにしても、この歳で本職のブルマを拝めるとは思わなかったな」

「本職…」

「ブルマが残ってるのってセントルチア学園だけだからな」

「そうなんだ…」


 やっぱり、この世界は私の邪な欲望が作り上げた世界で、この学校は私の煩悩でできているのか…。



 そして体育の授業の日がやってきた。まずは、女子更衣室…。私はすでに何万回もお嫁さんの裸を見ているし、転生してからすでに六十五年もたとうというのに、元男のTS転生者の身でありながら赤の他人の裸を見るのは、いまだに罪悪感を感じるね…。


 一方で、ルシエラはマザーエルフとして生まれたネイティブの両性具有であり、女の子のような姿をしておきながらやっていることはほとんどファザーなのである。はっきりいって、外見詐欺であり、女子更衣室に男を放ったに等しい。

 まあ、ルシエラは両性具有でもあるけど雌雄同体であり、いちばん可愛いのは自分なので、外国の子の発育が良くても発情しないはず…。



 それはさておき、私はスカートの下にブルマをはいてみる。いちばん上まで上げないで、お尻の上側を一割はみ出させて、下側を三割食い込ませる。

 ちなみに、パンツのほうは上側が二割、下側が三割だ。ある意味半ケツ…。

 ブルマの方が上側を一割だけ余分に隠せるから四割ケツかな。ブルマをはいたからといって、まったく安心できない。水着みたいなものだからって、水着を普段着にしたりはしないのだ。ちょっとスカートを脱ぐには勇気がいる。


 一方でルシエラは、スカートを脱いでパンツ一丁になったうえでブルマをはいている…。しかも、ルシエラはパンツがローライズタイプじゃなくてハイレグなので、ブルマも全部上に上げちゃって、露出面積が下側四割だよ!二人で個性が違って良いね!ってそうじゃない!


「ちょっ、ルシエラ!」


 女の子って、スカートはいたままパンツはきかえたするもんでしょ…。


「なんじゃ。はよ脱がんか」

「い、いやん…」


 そして、半ケツならぬ四割ケツをオープンするのをためらっている私のスカートを下ろそうとするルシエラ。それを阻止しようとする私。

 うう、お尻の露出面積は下四割なのと、下三割プラス上一割のどっちが恥ずかしいかな…。


「ええい」

「はうう」


 本気で掴んだら確実に破れる。私はスカートを手放すしかなかった。さよなら、私のスカート。こんにちは、私のプリッとしたお尻。


 いたたまれなくなって周りを見てみたけど、周りもけっこうお尻が出ているかも…。平均で下側に二割。多くて三割だろうか。なんだ三割出しいるじゃん。私みたいに上ケツ出してる子はいないし、ルシエラみたいに四割出してる子はいないけど。


 なんか、普通のサイズでもけっこう股上が浅いみたい。この学校はスカートの長さが最大で股下五センチと定められていることもあって、指定ブルマの股上の長さにも厳しい制限があるようだ。


 だけど、「またしてやられた」みたいな声が上がっている。この学校では、成績じゃなくて露出面積やスカートの短さを競う校風があるようだ。これなら、次回の体育には改造ブルマが増えることだろう。仲間が増えれば恥ずかしいことなんてない。でもそうなったら、私ももっと露出面積を増やしたくなってしまうんだろうか…。


 そのとき、更衣室の隅で、またハンカチを噛みちぎっている九条院姫奈に、私は気が付かなかったのであった。


「何をぼーっとしとるのじゃ」

「あ、ごめん」


 ルシエラはトップスも着替え終わっていた。ブラを脱ぐなんてマネはしていないようだ。


 私も慌てて制服の上を脱いで体操服に着替えた。ブルマが短いのと、胸がでかいせいで、ヘソ出しになってしまうのが素晴らしい。そして、私の細い腰と極端なカーブを描くくびれを活かすために、体操服の裾を横側で結んだ。


 ちなみに、運動靴も十センチの厚底だよ!運動できないよ!



 そしてようやく着替え終わって校庭に出た。今日は男子と合同で、校庭を好きなだけ走って終わりらしい。


 じつは、今日は秘密兵器を装備してきている。いつものブラジャーは、私が異世界に置いてきた嫁のスヴェトラーナの爆乳が揺れすぎないようにするために胸があまり揺れないように調整したものを使っている。だけど今日は紐なしブラなのだ。地球にもあるけど、それよりも吸着力の高い植物素材を使ってあって、人肌にペタッとくっつくのだ。だから今日の私は走ると胸が揺れ放題。


 一度やってみたかった、女の子走り。走って身体を左右に振ると、胸が左右に揺れてしまうので、腕を前後に振れない。だから、腕をV字にして横に振る必要があるってやつ。


 おっと、もっと力を抜いて、胸に振り回されてるように振る舞わないと。私って、命魔法の筋力強化を使って鍛えてるから、普段でも成人男性の十倍の力があるんだよね…。だから、胸が重くて走れなぁいなんてことにはどうやってもならないのだ。だからうまく演技しないと…。


 あっちの世界では、とんでもない爆乳のスヴェトラーナがこれをやってくれていたんだけどね…。走る機会はあまりなかったけど、うまく剣を振れない姿が可愛かった…。


 うふふ、私って可愛い?私、男子私の注目を浴びてるよね。

 おっと、余裕に見せちゃダメだ。スヴェトラーナを思い出すんだ。胸が邪魔で困っちゃうんだ。


 胸だけじゃなくて、お尻も太もももプリプリだよ。まあ、女の子は生まれつき誰でもお尻と太ももがプリプリだけど、私は力が人十倍あるくせに筋肉がまったくないので、ホントにぷりんぷりんなんだよね。そのことに気が付いたのは向こうの世界で何十年もたってからだったよ。



 そんな私の葛藤をよそに、いつもの揺れを抑えるブラなのに胸をバインバイン揺らしながら爆走していくルシエラ。厚底靴が走りにくいなんて関係ない。一応、世界新記録とかは出さないように打ち合わせ済みだよ…。


 ちなみに、体育だからといって、髪はまとめない。なぜなら、私たちの髪には耳を隠すという役割があるので。一応魔道具で認識阻害してあるんだけどね。

 それに、女の子というのは髪の毛がひらひらゆらゆらしているのが花のように美しいのだ。髪を結んだり短くしすぎたりしてはいけない。


 他の子だって外国人はけっこう胸が大きいから胸を大きく揺らしながら走ってるね。でもノーブラ相当の私にはかなうまい。


 走ってるとだんだんブルマがお尻に食い込んできた…。ちょっとたちどまって、ブルマの裾に指を入れて修正…。あ…、男子の注目を浴びてる。そうだ。これってけっこう高得点だ。


 と思ったら、周回先回りして追い抜いていったんだけど、よほど動きが激しいのか、ルシエラのブルマは食い込みまくっており、Tバックに近い状態だった…。だけど、あまり動きの激しい女子は減点だろう。と思ったら、多少はボーイッシュ女子得点を得ていたみたいだ。


 なんかもう、前屈みになってまともに走れてない男子いるけど大丈夫かな、この学校。


 そして、最後に集合して体育座りして話を聞いて立ち上がったら、なんだかいつもと違うところがスースーするなと思ったら、お尻の上側が三割に増えていた。これもまた男子の目線を集めており高得点だった。いやむしろ変化が重要なのかもしれない。

 そして、またブルマを上げて上側一割、下側三割の状態に戻すと、これも良かったらしく、歓声が沸いた。




◆◆◆

◆五月




 五月。今日の体育はなんだろうな。ブルマをはくのが楽しみ。ブルマで外を出歩ければいいのに。パンツ一丁で歩くのは勇気が足りないけど、パンツ二丁なら勇気が湧いてくる。ほら、小学生って体操着で登下校したりもするじゃん。でも高校生はしないか。


 私はいつものように更衣室で他の女子にドキドキしながら体操着とブルマに着替えた。そして、グランドに出た。もちろん、グランドに出るまでにブルマが食い込んでしまったので、それを直して小さな喝采を浴びた。細かく点数を稼ぐことも忘れない。


 今日の体育は…、鉄棒…?逆上がり…?小学生かな?私が小学四年生くらいの身長だから?


 最初の男子の番だ。男子はまあ、かってにやってほしい。


 最初の女子が鉄棒を握り、地面を蹴って、逆さになる。


 そのときだ!みんなブルマに体操着をインしていないから、体操着がまくり上がってしまったのだ!そして、顔を出したのはブラジャー!なんと!これはブラジャーを披露する練習だったのか!

 湧き上がる歓声!これが高得点だ!


 そして、うまくブラジャーを披露できた子は満足げに逆上がりを回りきった。



 次の女子…。少し発育の良い子。外国人は全体的に発育が良いからね。

 鉄棒を持って、地面を蹴って、逆さになると!

 見事!体操着がまくり上がり、ブラジャーを披露できた!


 しかし、それで終わりじゃなかったのだ…。その子のブラジャーは露出多めで、胸がカップに乗っかっているような状態だったのだ。だから、逆さになってしばらくして、胸がカップから解き放たれてしまったのだ…。そして大事なところがあらわに…。


 なんてこった…。大歓声だ…。こんな大技があるなんて…。二組がこんな痴女の集まりだったなんて…。


 いやいやいや、これって事故じゃないの?大技なの?


 あれ、でも、大事なところは事故で、ブラジャーは事故じゃないって、私も相当イッちゃってる…。ここは私が邪魔法で迷い込んだイッちゃってる世界線。でもまさか、私以上にイッちゃってる子がいるとは思わなかったよ…。

 んー。普通に考えたら、大事なところは放送事故かモザイク案件だけど、ブラジャーくらいなら事故にならないよね。


 まあいいや。私は痴女ではないので、大事なところをさらさない範囲で高得点を狙わねば。


 その後も何人かの痴女が平気でブラから球体をポロリしたりして高得点を獲得していた。



 そして私の番。っていうか、転生してから逆上がりなんてしたことないよ…。その気になれば鉄棒を掴む握力だけで鉄棒を一周できると思うけど、うまく逆上がりできるかな。


 まず、鉄棒がけっこう高くて、私の頭くらいだね。

 私は地面を蹴って逆さになり、その際に腰を折り曲げた。すると、私の紐なしブラの張り付いた胸は、体操服を巻き込んで私の顔の前に落っこちてきた。おかげでブラジャーは外から見えないみたいだ。

 外からはブラジャーが見えない代わりに下乳が見えた。私はルシエラの心を読んで視界を共有しているのだけど、胸が大きすぎてできない子としてはまずまずのデキじゃないかな…。

 腰を折り曲げたのでこのまま回っちゃえるんだけど、これではポロリには一歩及ばない。だから、回りきれないふうを装って、脚をバタバタさせ、断念して元の方向に戻った。


 私が鉄棒で使う武器は胸だけじゃない。じつは腰を折り曲げたときにブルマが下がっていたのだ。このブルマはもともと下側が三割食い込んでいて、上側は一割はみ出している。そして、ちょっとかがむだけで簡単にずり下がるようになっているのだ。だから、逆さになったときに腰を折り曲げたことで、上側のはみ出しが一割から二割に拡大したのだ。

 気が付いた人は一部いるようだ。私の地獄耳は歓声を捉えた。


 私はめげずにリトライするけなげな少女を振る舞い、地面を蹴った。

 そして逆さになったとき、腰を折り曲げた。同じことをやっただけだが、ブルマはまた一割下がったのだ。


 こうしてそれを何回か続けていると、だんだんとお尻の上側が見えていき、あるところでお尻ではないものが顔を出した。それはパンツだ!パンツも一緒に少しずつ下がっているのだけど、ブルマより下がり方が緩やかなのだ!


 これはどうだ!ブルマとパンツが二重になっていることに気が付いた者がいたようで、歓声が沸いたのが耳に入った。いい傾向だ!


 さらに、脚をバタバタさせていたことによって、少しずつ食い込みも進んでいる。上からも、下からも、どんどん面積が小さくなっていくブルマ。そして、異なるペースで面積が小さくなっていくパンツ。

 ブルマの上側は五割の位置までずり下がり、下側は四割の位置まで食い込んでいた。一方パンツの上側は七割の位置までずり下がり、下側はブルマに隠れていて見えない。


 というわけで、私は泣きそうな演技をしながらリトライを続け、やっとの思いで顔に覆い被さる大きく邪魔な二つの球体に打ち勝ち、見事逆上がりをしきって、着地!両手を斜め上に広げ、勝利のY字ポーズを決めた。


 この時、私のブルマは上側も下側も四割の位置に!パンツだって上側も下側も六割の位置に!最後にはどちらもぐるぐる巻きになり、Tバックになっていた!本物の紐ではないので若干面積はあるけど、これでお尻をほぼフルオープンだよ!しかも異なる位置の二つのTバック!レイヤードTバックだ!いや、外側は普通Tバックじゃないから、これはレイヤードデュアルTバックいえよう。いや干バックかもしれない。


 レイヤードTバックも高得点だし、下乳との合算点で、大事なところをさらしてまで高得点を獲得した痴女に勝ったよ!



 このあとルシエラは、蹴上がりからの大車輪を見せつけた。ちょっと高さが足りないので、膝は折り曲げていたけど。

 まあ、私ですら苦労したんだから、ルシエラが勝負を放棄してもしかたがない。これはルシエラをパワーアップさせてあげねば。




 というわけで、次の授業ではルシエラに秘密兵器を装備させた。


「これでよいのか」

「うん」


 更衣室で体操服に着替え終わったルシエラ。相変わらずブルマを上まで上げているので、数歩も歩くとすぐにブルマが食い込んでTバックになってしまう。


 だけど、今日のルシエラはそれだけじゃない。ブルマと体操服の間の隙間に見える白い肌に、紐のようなものが見える。そう、これは、ルシエラが選んできたGストリングだ!私が前回の体育で編み出したレイヤードTバックワザを、ルシエラには常時展開させることにしたのだ!


 ブルマの上に紐が通ってるだけなのに、それがブルマの中を通って、二つの球体の間を渡り、大事なところを隠してまた戻ってくるって想像するだけで、なんて魅力的なアイテムなんだろう。


 もちろん、体操服に着替えるまでスカートの下にGストリングだけというわけにはいかないので、Gストリングの上にいつものハイレグをはかせていた。つまり、スカートの中でもレイヤードTバックだったのだ。

 そして、そのハイレグを脱がせるわけにはいかないので、ハイレグの上にブルマをはいている。つまり、ルシエラはパンツのようなものを三重にはいているわけだ。これでパンツもブルマの上に見えていたら、トリプルレイヤーとかにできたのだけど、ルシエラはブルマもハイレグにしてしまっているので、残念ながら外から見えるのはブルマとGストリングだけだ。


 本当はレイヤードTバックというのは、Tバックなのは中だけで、外側は普通のローライズパンツにすべきなのだけど、ルシエラはTバックブルマになってしまっている。それは私も先日やったのと同じで、レイヤードデュアルTバックというか、やはりレイヤード干バックというべきだろう。トリプルレイヤーなら¥バックとか、クアドレイヤーなら羊バックでもいいな。いや、もう最初っから紐がいっぱいある水着をはいた方が早いな。


 というわけで、仕草にはあまり色気のないルシエラだけど、容姿だけは一段とパワーアップしたよ!


 私もGストリング、買おうかな…。




 教室から外を見ていると、他のクラスが体育の授業をしていた。私は窓側の席なので、外を見やすい。社会の授業の時は寝ているか他のクラスの子のブルマを見るのが日課となっている。


 一組の子は、体操着のトップスをブルマにインしている。それに、お尻が食い込んでいない。


 指定のブルマは標準でも股上が浅いので、二組と三組の子はお尻が上からはみ出ないように、少し高めに上げて、下側を食い込ませているのだけど、一組の子はローライズ気味にはいて、食い込ませないようにしているようだ。ローライズでもトップスをインしているので、上側からお尻がはみ出ているのが見えたりはしない。


 アピールチャンスをふいにしてしまっている。もちろん、鉄棒でトップスがまくり上がり、ブラから胸をポロリするなんて大技も披露しない。がっかりだ。



 今日は一年三組が鉄棒をやるっぽい。三組は二組よりも小さいブルマの子が多く、食い込みが激しい。


 胸の大きな子が逆上がりをトライしている。三組はもちろんトップスをインしたりしないので、大技が出るかなと期待していたら…、なんと、逆さになってトップスがまくり上がって顔を出したのは、ブラジャーではなくて、いきなり胸の大事なところ…。三組の子はノーブラか!


 三組の子は鉄棒で大事なところを見せる大技を、みんな当たり前のように連発してくる。三組…、レベル高すぎる…。


 だからといって、私は大事なところをさらすようなマネはできない。私はそれ以外の方法で点数を稼がなければ!


 あれ…、ノーブラなのって体操服のときだけなのかな…。セーラー服でもノーブラ…?今度よく見てみよう…。

 と思って休み時間に廊下にいる三組の子を目をこらして見てみたら、本当にしてなかった…。みんな先端を尖らせているし、うっすらピンク色が見える…。


 さらに、階段を上るときに見上げてみたら…、そこでも大事なところを見せるようになっていた…。ノーブラだけじゃなくてノーパンだったのか…。


 ダメだ…。私はあそこまで痴女にはなれない…。私は井の中のかわずだった…。




◆◆◆

◆六月




 さてさて、授業はなんだかんだいって、前世の脳みそでまともに受けることのできなかった国語だけはまともに受けてたり。それ以外は、空間魔法の透視と遠視を組み合わせて、いろんなところを見て回ったり、心魔法で知識人の知識をコピーして回ったりしている。


 ちなみに、板書って本当なら手を動かす必要はなく、目で見たものや記憶にあるものなら、水魔法とインクがあれば、コピペか印刷という魔法があるのだ。インクだから水魔法なのであって、鉛筆やチョークなら土魔法でやるべきかも。ああ、書いてるフリして、コピペするか。あと、雷魔法でプロジェクタとして映すこともできるし、心魔法で他の人にコピーしたりもできるよ。逆にルシエラは私や他の人からコピーしていってるよ。


 ところで、この学校に音楽の授業はない。じつは、この学校を選んだ理由の一つでもある。私たちが楽器を奏でるときに考えていることが、偶然魔法のメロディに一致してしまうと、魔法が発動してしまうからだ。だから、万が一何か発動してもいいように、私たちがカラオケで歌うときは変ロ長調にキーを上げている。変ロ長調は聖魔法なので、悪いことは起こらないからだ。



 季節は夏になり、制服をさらに開放的にする機会がやってきた。夏服の胸元はさらにオープン。スカートは股下マイナス二センチ。そしてさらに、生地がだいぶ薄い。


 スカートも紺色から明るい空色になって、さらに生地の厚さも半分くらいになっている。もう、ひだを広げて一枚にすると完全に透けている。いや、ひだが重なっていても少し透けてるかも…。このスカートは、ひるがえったときに広がりやすいように、ひだがたくさんあって三重になっている。それにもかかわらず、少し透けているような…。


 これはアレをやらねば。


 ある日、学校の帰りに雨に降られた。


「この世界はよく雨が降るんじゃのぉ」

「この世界っていうか日本ね」


 ローゼンダール王国は内陸だからか、雨はあまり降らなかった。雨に降られて困った経験は六十四年の間にはなかったなぁ。


「さて、走って帰ろっか」

「うむ」

「でも、爆走しちゃダメだよ。腕はこうやって振って、脚は軽く内股ね」

「ふむ…。面倒じゃが、なかなか良いな…。じゃが、早く帰らねばぬれてしまうであろう」

「ぬれるのが目的なんだよ」

「はぁ?」

「いいからっ。ねっ」

「おいこらっ」


 私はルシエラの手を取って女の子走りを始めた。


 体育の授業で練習した、走り方。身体を左右に振ることで胸を振って、腕をV字にして前後に振って。


 あの体育の日以来、常にペタッと貼るブラに変えたんだ。でもベルトやワイヤーのかわりに細いワイヤーだけは付けてる。それもゆるゆるで。だけど目立つように。ワイヤーはときどき胸元から見えるので、そっちの方が良いでしょう。そして、ワイヤーカップを固定してないもんだから揺れる揺れる。


 雨にぬれながら、そして胸を揺らしながら駆けていく、二人の外国人ロリ巨乳美少女の女子高生。みんなの目線をいただき。


 でも、こんなに揺らしたり、固定されてない状態にしたら、将来垂れ下がってしまうんじゃないかって?私は思い出したんだ。前世の二〇〇〇歳だったルシエラがエルフの村で暮らしていた時の姿を。ルシエラはずっと紐なし葉っぱブラの水着だった。かなりの巨乳だったけど、まったく型崩れしていなかった。


 エルフというのは人間女性がうらやむ体形を自然に獲得できる種族なのだ。私は人間女性が美貌を維持するための日々の努力を捨てることにしたんだよ。



 それはさておき、制服がだんだんぬれてきて透けてきた…。ぬれるとなんて透過率の高くなる制服なんだろう…。本当に、この学園は誰が考えたんだろう…。

 そして、浮かび上がるブラジャー。この日のために選んできた、コントラストの高いブラジャー。ペタッと貼るブラだけど、ワイヤーも付けたかいがあったでしょ。

 どうよ!公衆の面前でブラジャーを晒して歩ける!いや、とても恥ずかしいけど、ブラジャーを見せつける正当な理由を手に入れたんだよ!


 スカートもペタってくっついてきた。す、すごい…。このスカートも濡れたら透過率がめちゃくちゃ高くなる…。スカートは脚にペタッとくっついてひるがえりようがないのに、中のパンツが浮かび上がってしまっている…。


 さすがに三組の子のように、ノーブラ・ノーパンでこれをやることはできない。だけど、制服に浮かび上がるブラジャーとパンツだってレベル高いはず!



 走るのはここまで。駅に着いた。


「どう…かな…」

「なかなか良いな…」


 二人で見せ合う私たち。ルシエラも全裸とかじゃなくて、こういうのの良さが分かってきたでしょう。

 ルシエラは私。私はルシエラ。でも違う柄のブラを付けてきたんだよ。それに、ルシエラはスカートの内側のハイレグパンツまで透けて、その内側ののGストリングまで見えてる…。そんな大技があったとは…。


 混雑していない電車の中で、開かない側のドアの隅に二人で立った。


 透けたブラを見られまいと、少し顔を赤らめて、腕をバッテンにして胸を隠す私。だけど、壁側ではなく、内側を向いて、みんなに見てほしい私。

 何も気にせず堂々と見せつけるルシエラ。


 サラリーマンが帰る時間帯ではないのが残念だ。カラオケで時間を潰してから、通勤時間帯にした方がよかったかな。でもそれじゃあぎゅうぎゅうでよく見えないよね。


 出張で早帰りの男はちらほらいて、視線を悟られまいとしつつも、私とルシエラが気になってしかたがない。お好きな方をどうぞ。見るだけならタダだよ。お触りは魔法で規制されてるからできないよ。魔法じゃなくて法律か。


 まあ、濡れなくてもコントラストの高いブラやワイヤーはけっこう透けて見えてたんだけどね。



 そして帰宅。ぬれたままでは室内をぬらしてしまうので、しかたがないから


「ふんふん……♪」


 変イ長調の空間魔法の念動で水滴が下に落ちないように制御した。


「ふんふん……♪」


 ト長調の水魔法で、トップスの雨が蒸発しないようにキープした。さらに、水が垂れないように念動魔法で制御している。


「ただいま」


 そして、帰ってきた薫。


「おかえり~」

「よくぞ帰った」


「ちょっ、二人とも…」


「どうかな…」

「よく見るがよい」


 恥じらうように透けたブラとパンツを軽く手で隠す私。仁王立ちになるルシエラ。


「か、風邪引くよ…」


「ヘタレめ!そんなことしか言えぬのか!」


 指を差してすごい剣幕でまくし立てるルシエラ。そのときに胸がぷるんと揺れた。ブラで固定されてないので。そこで薫がぴくっと反応。

 ついでに、水滴が制服から舞ったけど、それは念動により制御されて、元の位置に戻っていった。


「私たちは風邪ひいても魔法で治せるから大丈夫だよ。それよりも、ねっ」


「二人とも、オレのために素敵な格好をしてくれてありがとう…」


 私は薫を喜ばせてあげられただろうか。


 前世の私である薫。私はユリアナになって六十五年もたってしまったけど、薫だったときのことはつい二十三日前のことのように覚えてる。私にはマザーエルフの本能が加わってだいぶおかしくなってしまったけど、薫の好みを覚えている。薫がつい最近まで見ていたアニメ。プレーしていたエロゲー。


 あっ…、セントルチア学園って、その辺のアニメやゲームの設定が混ざっているのでは…。日本に転移する魔法を演奏するときに、そんなことを思いだしていたのかなぁ…。まあ、変な世界に来てしまったけど、来てしまったものはしかたがない。アニメやゲームの設定が混ざっていても、目的は果たせるので良しとしよう。




◆◆◆

◆七月




 夏ということは体育の授業で水泳があるのだ!そして、この学校は指定の水着があるものの、ビキニタイプやハイレグタイプ、スクール水着タイプタイプなど、趣味に合わせて選べるようになっている。パレオも付けられる。誰の趣味だろう。私と薫の趣味か。

 だけどまあ、一応地味な紺色なので、学校の水泳用の水着という体は保ってるみたい?


 水着…。お嫁さんたちと海に行ってないな。私があっちの世界に残してきた六人のお嫁さんたち…。もしお嫁さんたちと海に行くなら…、


 心正しきツインドリル悪役令嬢、爆乳のスヴェトラーナ。どぎついマゼンダ髪のスヴェトラーナにはもちろん紐のビキニ。

 永遠の七歳にして意外と大人っぽい性格のアナスタシア。赤紫髪のアナスタシアには紺色のスク水かな。

 献身的でお母さんのようなマレリナ。白髪のマレリナにはアスリートタイプなやつ。

 オタク友達のセラフィーマ。白髪のセラフィーマは…、まあワンピースタイプならなんでもいいや。

 九歳の妹のようなマリアちゃん。ピンク髪のマリアちゃんにはピンクのフリルワンピース。

 チャラい爆乳エルフのお姉さんのブリギッテ。オレンジ髪のブリギッテには赤いハイレグ。


 そして、私は十歳の身長だからって、スク水なんて着ないのである。私が注文したのはビキニ。身長一四〇センチ用のビキニ。パレオ付き。パレオっていいよね。明らかに丈の足りないスカートみたいで。


 ルシエラも同じにした。ルシエラは昔、エルフの村で葉っぱ水着で暮らしていたのだ。それもパレオ付き。葉っぱだけど。


 そしてブラの部分は紐なしだったのだ。そこに肌にペタッとくっつく葉っぱが使われていたのだけど、私が前回体育で使った紐なしブラもその素材を使っている。今回注文した水着の裏にも縫い付けておいた。さすがに大事なところをさらしたくはない…。


 ルシエラなら堂々とさらしてしまいそうだけど、ルシエラは私のクローンだから、自分がさらされているようで…。それ以前に双子の妹という設定なのだから、あまり痴女のようなことをやってほしくない…。


 そして、パンツのほうも紐で結ぶタイプなので、念のため大事なところがペロッといかないように粘着素材を使った。


 それから、帽子は使いたい人だけ使えばいいとのことで、例年女子でもろくに使わないとのことだったので、買わなかった。ビーチで遊ぶんじゃなくて泳ぎを習う授業なのに、やる気あるのだろうか。


 まあ、私たちには長めの耳があるので、髪で隠れやすい状態にできる方がいい。帽子はいらないけど、水に濡れても髪がペタッとならないように、水に溶けない整髪料で固めておこうかな…。まあ、認識阻害の腕輪もあるから、そこまで気にする必要はないんだけど。


 それと、いつも使っている認識阻害の腕輪だけど、腕輪自体を認識阻害した。もちろん、装着者を除いて。存在が分からなくて装着できないアイテムにならないように…。


「できた!」


 というわけで、二人分の水着が完成した。


「どれ。ららら…♪」


 薫の前で変イ長調の短距離瞬間移動を口ずさみ、衣服だけがその場に残ってばさっと落ち、すぐ側にルシエラが現れた。薫も慣れたもので、変イ長調と分かった時点で後ろを向いた。


「ふんふん……♪」


 せっかくだから私も同じように短距離瞬間移動して裸になった。


 全裸のルシエラは水着を身につけていく。エルフの村でも水着を着ていたんだし、分からないことはない。ペタッとくっつく素材なので、位置を決めてから結べばよい。

 私も同じく水着を着た。


「もういいよ」


 薫は目を開けて、そっとこっちを向いた。


「おお…。オレ、死んでもいいよ…」

「それ、何回目?」

「おぬしは何回死ぬのじゃろうな」

「でもさ、なんか面積小さくない…?」

「身長一四〇センチサイズだしね」

「そういうときだけ身長一四〇センチを利用するんだ」

「うん」

「っていうか、水着のサイズって身長で決めるんだ…」


 日本の身長一四〇センチといったらまだ胸も膨らみ始めたばかりかな。だけど私には白人の成人サイズ以上の胸が付いているのだ。胸の表面積に対して三割も隠せているだろうか。


「パンツのほうはブルマよりも良い感じだね…」

「そうでしょう」


 水着のパンツは横を紐で止めるようになっていることもあって、全体的にブルマよりも面積小さめだ。ブルマがお尻の六割カバーだったのに対して、水着パンツだと五割…、つまり半ケツかな…。今度は上二割、下三割にしよう。


 それに、パレオもあるのだ。パンツの上にはみ出たお尻を隠すためのミニスカートっぽくて良い。


 ぴょんぴょんと跳ねてみる。


「うわっ、大丈夫なの?溢れそうだよ?」

「これね、ペタッとくっつくようになってるから、紐はおまけなんだ」

「それなまあいいけど…」


 紐はおまけで緩く結んである。だから胸はほぼフリーに動くのだ。肩紐は外れやすいし、ずれやすさと危うさがたまらない!でもずれはしないのだ。


 側で同じように跳ねているルシエラ。ルシエラと双子コーデして、胸が揺れたり、お尻がはみ出している姿を見ると、鏡を見るより分かりやすくて良いなぁ。


「でもさ、さすがにプールで厚底とかヒールは履けないよね」

「そうだね…。ビーチならヒール付きのサンダルとかありだけど…」

「まあ、今度こそロリ巨乳少女を売り出せばいいんじゃないかな」

「うん、そうする…」




 こうして、水泳の授業の日。


 例によって、女子更衣室で罪悪感にさいなまれるのはTS転生者に嗜みだ。とくに、普通の体育と違って、水泳の日は見ちゃいけないところもさらけ出すでしょう…。いや、普通はスカートにうまく隠して着替えるか。全裸になるのはルシエラくらいのもので…。


 六十五年の間には六人お嫁さんにそれぞれ四人の娘を授けた。実をいうと、エルフと女の子との交配は、口づけで行うのだ。だから、人間女性の大事なところはあまり見慣れてない…。


 二組の女の子は本来なら露出狂の集まりではないはずなのに、私とルシエラがけしかけてしまったため、どんどん露出度が上がっている。

 私と同じ身長一四〇センチ用のビキニを買った人はたくさんいるみたいだ。

 

 まあ、適切なサイズの人も普通にいるよ。

 一六〇センチの長身ハイレグはなかなか良いね。

 小さめの子はフリルワンピースとか、ネタでスクール水着に名前書いてる子がいるよ。


 だけど、厚底靴を脱いだら身長がいちばん低いのは私とルシエラかな…。さあ、ここではどう出るか…。


 プールサイドに出る私たち。男子の目を釘付けにするのは!


 もちろん私!

 半分はルシエラ。


 ふふふ。ロリ巨乳美少女の圧勝ではないか。外国人が多いとはいえ、まだ成人していない子供なんて、成人した胸の付いている私たちの相手ではないね。

 それなのに、身長や顔つきは、庇護欲をそそるような子供だなんて、私たちってエロ可愛さの塊だと思わない?


 それにしてもこの水着、ブルマより面積小さいからめっちゃ食い込む…。私が指をお尻にやって食い込みを直すたびに注目を浴びる。やっぱこれは高得点だね。

 ルシエラは完全に食い込んでてTバックになってしまっていて、直す気がないみたい。たしかに、一分も歩けばTバックになっちゃうし、そのたびに直すのはめんどくさがりのルシエラにはつらいかもね。でも、私はアピールチャンスを逃さないよ。



 入水した。そういえば、向こうの世界ではお風呂以外で水に入ったのは、六歳の時にマレリナと川で水浴びしたときくらいかな。ローゼンダール王国は内陸だから海はなかったしね。


「なあ…。ユリアナ…。足がつか…んぶぶぐぐ……だすげ……あばば」

「ちょ、ルシエラ!ダメだよ!」


 ルシエラは溺れていた。すごい勢いで水を掻き、辺りにとんでもない水しぶきを上げているので、


 ばこーん。


 他の人に分からないように殴って気絶させた。そのまま水に浮かせてプールサイドへ。溺れているのに気が付いていた教師が駆け寄ってきていたので引き渡した。そして、私は腕を交差させて、声の消音の魔道具を使って殴ったところを治療した。


 声の消音の魔道具は左右の腕輪に備えてあり、腕を交差させて腕輪を重ねて魔方陣を連結させたときにのみ動作するようになっている。消音すれば周りに気が付かれずに魔法を使い放題だ。

 試験の時はとっさに魔方陣で書いただけだったので、条件を限定するのは難しかったけど、こうすれば好きなときに使える。どうして向こうの世界にいるときにやらなかったんだろう。


 それはさておき、私も一緒に上がり、ルシエラを介抱するフリ。というか、食い込んじゃったパンツだけ直しておいてあげようかと…。その光景が痛く高い得点だったらしく、歓声が聞こえてくるようだった。でも、もしかしたら放置しておいたほうがずっとお尻を見られてよかったのかもしれない。まあ、うつ伏せじゃないからそんなに見えないだろうし、私が食い込みを直すところを見られる方がよかったでしょう。日焼けのためにTバックでうつ伏せになってるのとは違うんだよ。


 そういえば、ローゼンダールのある世界はかなり温暖で、年がら年中ノーパンでボロボロのワンピース一枚で過ごせていたわりには、日焼けはなかった。どうやらエルフは日焼けしない種族というのもあるし、生粋の人間であるマレリナもそれほど日焼けしていなかった。紫外線自体が少ないか、メラニン以外ができているか?


 それもさておき、私は自分と同じ姿をしたルシエラがお尻をさらしたまま放置されているのがいたたまれなかっただけで、べつにルシエラのことが可哀想だったからじゃないんだからね!妹のパンツの食い込みを直して特典を稼ぎたかっただけなんだからね!いやマジで。



 私はふたたびプールに戻った。今日は水に慣れるだけのフリータイムらしい。エルフはとくにマザーエルフは筋肉がないみたいなので、何もしなければ浮くのに、なんで溺れたんだろう。まあ、腕とか脂肪はないし、お尻と胸ばっか浮くから、ちょっとアンバランスかも?浮き袋を胸とお尻に付けてるみたい。いや、脂肪の比重は空気ほど軽くないよ。


 さっきもいったけど、向こうの世界では泳いだことなんてなかったから、転生して泳ぐのは初めて。でも転生前はクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、全部できたんだよ。


 まずはクロールから。走るのと一緒で、まっすぐ腕を下ろしても、胸が引っかかってしまってクロールの腕をまっすぐ回せない。そして胸が浮いてしまい、顔を沈められない。

 それに、脚をバタバタしてると、だんだんパンツが食い込んできて、一分もすればTバックになっちゃう…。


 ああ、胸が大きすぎてうまくできない自分って、なんて可愛いんだろう…。他の男子もうまくできなくて困っている私に萌えてくれている。


 ちなみに、私とルシエラには邪魔法の魔道具によって、周囲の者は基本的に干渉しようとは感じないようになっている。意思がかなり強い者でないと、私とルシエラには話しかけられないのだ。姫奈お嬢様は意思が強いらしいね…。あと、溺れているルシエラを助けようとした教師や、おまわりさんのような断固たる意思を持った人も話しかけてくるようだ。もちろん断固たる意思をもってしても悪意は受け付けない。そして、その他大勢のギャラリーような人は私には話しかけられない。だから、私が、胸が邪魔で泳げないから助けてあげよう、くらいの気持ちのやからは、このプールの男子ほぼ全員ようだけど、見ていることしかできないのだ。


 私は日本に薫を救いに来たのだ。滞在しているのは余興にすぎない。ここで余計な人と関わってはいけない。私は可愛いのですぐみんな惚れてしまうし、私も私で惚れられた女の子をすぐに嫁にしてしまいかねない。姫奈お嬢様だって性格が悪そうだけど、その気になれば記憶を改ざんして洗脳して可愛く仕立てることもできるのだ。でも、いちいちそんなことをやっていたら嫁だらけになってしまう。だから、日本では薫以外とは基本的に関わらないのだ。



 それはさておき、次に平泳ぎ。手を前から横に広げて後ろに水を掻くのは普通にできた。だけど、手を前に戻すときに、手の平を合わせて身体に近づけて前に持っていくはずなのだけど、その時ビキニの紐に引っかかってしまった…。ペタッとくっつく素材は自然に剥がれることはないけど、力を加えれば簡単に剥がれてしまうので、危うくぷかぷか浮かぶビキニと私の大事なところがこんにちはするところだった…。


 一方で、手を掻き始めるあたりで脚を屈めて、手を前にやると同時に、脚を横に広げて水を蹴る。すると、脚を広げたときに、なんと、パンツが一気に食い込んでTバックになっちゃったよ!周りの反応が見えなくて得点がわからないのが悔しい!


 これって、真面目に泳ぐなら、左右を結んでいる紐をほどけば、胸と胸の間に手の平を通せるな…。でもそのあと腕も通して、左右に展開しなきゃいけないんだよな…。良い絵づらになりそうだからルシエラにやってもらいたい…。ああ、覚醒させて、水の中から見てもらって、心魔法で視界を共有するか!



 私はプールサイドに上がり、腕を交差させて消音の魔道具を発動させて、覚醒の魔法を口ずさんみルシエラを起こした。


「ん、ああ~…」


 そして、心魔法で、私の持っている水泳の知識と経験をルシエラに送り込み、ついでにやりたいことを伝えた。


「んむ…。最初から泳ぎ方を教わっておけばよかったわい…」


 というわけで、どっちがカメラ役でよいのだけど、泳げないルシエラの平泳ぎを私が見てあげるってことで、ルシエラにうつ伏せで浮かんでもらった。そもそも、脂肪の塊である胸が浮き袋になっているし、顔は小さいし肩や腕も華奢なのでなかなか沈まないはずなんだけど。


 一方で私はずっと潜っていられるように風魔法の酸素生成を口ずさみ、肺内に酸素を生成し続けるようにした。そして潜ってから、沈み続けるために空間魔法の念動で、身体に下方向への力をかけ続ける。

 心魔法のコネクションはずっと張ったままであり、私の視界はルシエラに伝わるようになっている。ルシエラは元祖マザーエルフなのだから、自分の可愛いところやエロいところを見るのは大好きなのだ。


 そして、先ほど考えた私の平泳ぎを実践してもらう。

 まず、手を前で合わせた状態から左右に分けて後ろに掻く。

 そして、腹まで行ったら手を合わせて胸の間に手の平と腕を通す。

 合わせた手を左右に分ける!そのとき、胸がぷるんっと左右にはじける!


「あん…」

「(いいねえ!)」


 水の中からじゃルシエラの可愛い声がよく聞こえないけど。

 私が「いいねえ」とか水の中で叫んでも応える者はいなかった。私の肺からは止めどなく酸素が生成されているので、常に口からはボコボコと気泡が出ている。


 ルシエラは休憩していたところから入水までにすぐにTバックになってしまったので、脚を開いたときの変化はナシ。私は泳いでるルシエラのパンツに指を入れて、食い込みを直すという早業をやってのけた。すると、脚を広げたときにプリンっと球体が顔を出した。そこで大歓声!



 そんなバカなことを二人でやっていたのだけど、バカなのは私たちだけじゃなかった。今回は初めての水泳だというのに、私たちにたきつけられて限界を超えてしまった子たちがたくさんいたのだ。


「「きゃぁ…」」「私の…」「ビキニ~」「待て~」


 身長一四〇センチ用のビキニなど、ペタッとくっつく素材ナシではムリだったのだ。プールに浮かぶビキニの数々。大事なところを隠す乙女たち。これは高得点。


「してやられたではないか!」

「えー…」


 ギリギリセーフよりも、ギリギリアウトほうが高得点か…。恥じらう乙女たちにでれーっとしている男子たち。

 今日くらいは勝利を譲るよ…。体育では常に好成績を収めてるし、私たちの勝利は揺るぎないはず。




 水泳の授業でロリ巨乳少女が高得点と知ってから、私とルシエラは厚底ローファーをやめようかと思ったんだけど、これは普通にしているときや階段でのパンチラに貢献しているのでやめられないことが分かった。


 そして、期末テストだ。なんだかんだいって、教師の知識のコピーはほとんど終わってしまったし、国語も楽しく勉強してるから、カンニングなんかしなくても楽勝だった。


 成績はほとんどAだ。だけど、体育がCだって…。露出が足りなかったかな…。水泳でみんなにポロリを奪われて出し抜かれたのがマズかったか…。




◆◆◆

◆八月




 夏休みがやってきた。しかし、社会人にはせいぜい盆休みしかないのである。薫にはときどき盆休みすらなかったけど、今は私のかけた祝福や健康祈願のおかげで、盆休みも祝日もちゃんと休めるし、毎日定時に帰ってくる。とはいえ、盆休みまでは暇だなぁ。


 しかも、私たちは女子高生をしたいのだ。女子高生って休みでも無駄に制服を着て遊園地とかカラオケとか行くよね。よし、制服でカラオケに行こう。というわけで、盆休みまではルシエラとカラオケでつぶした。




★★★★★★

★薫三十七歳




 薫は盆休み前、最後の仕事を終え、帰宅した。


「ただいまー」

「旅行いこっか」

「うわっ、急だなぁ。どこにするんだ?」

「沖縄」

「今からじゃ飛行機ないだろう」

「ワープゲートで行くし」

「なるほど…。宿は?」

「日帰り?」

「それができるのか…」


 というわけで、明日から旅行に行くために、異次元収納付きの小さなリュックに荷物をまとめた。



 翌朝、目が覚めると…、


「なあ…、ここからそれを着ていくのか…」

「ほぼプライベートビーチだよ」

「それにしても、高校の水着より過激じゃないか…」

「えへへ、良いでしょう」

「うむ、良いじゃろ」


 ルシエラは完全なTバックに、三センチの三角ブラ。


 ユリアナはTバックじゃないけど、マイクロビキニといったところか…。ブラは同じくらい小さいし、お尻は上側の三割がはみ出ていて、下側の四割が食い込んでいる。それに学校の水着と違ってパレオはない。いや、学校の水着にパレオがあるのがおかしいだろう。


 そして、オレの顔を見て、顔を赤らめながらパンツの食い込みを直しているユリアナは可愛いな…。


 あと、今回は学校のプールじゃないから、十センチヒールのサンダルだ。


「はい、薫の」

「用意してたんだ…」


 ユリアナはワープゲートの方角と距離を定めていた。ワープゲートは本来、行ったことがあり目的地が明確にイメージできれば、方角や距離などは不要なのだけど、今回は行ったことがない場所だ。しかも何千キロも遠くに行く場合は、スタート地点とゴール地点の緯度と経度が必要で、できればゴール地点のイメージの代わりに、写真なんかがあると成功率が上がり、魔力消費が小さくて済むそうだ。


「ふんふん……♪」


 ユリアナは変イ長調のワープゲートを口ずさんだ。ゲートの先には、航空写真で見たとおりの場所が広がっている。


「成功だね」

「うむ」


 オレたちはリュックをしょってワープゲートをくぐった。



「うひゃー。なんじゃこの暑さは。わらわの村よりも暑いぞ。脱いでよいか」

「これ以上脱いじゃダメ。暑いと思ったから、それを許可したのに…」


 大事なところを隠しているだけのものを外しても、暑さは変わらないだろう。


「じゃあこのへん一帯、魔方陣を書いて魔石を置いて、冷やしてしまうぞ」

「沖縄に来た意味が…」


「薫、ルシエラに教えてあげて」

「えっ」


 ユリアナはビーチバレーのボールをオレに手渡した。


「ルシエラは私の記憶をのぞかないで、薫に教わってね」

「なぜじゃ」

「下手くそな子のほうが可愛いから」

「そういうことなら、やぶさかではない」


 バレーボールの知識は体育で習った程度の知識しかない。まあ、バレーボールじゃなくてビーチバレーだし、それでも三人じゃやりようがないので、適当でいいか。


 まずはアンダーサーブを教えた。とりあえず、ルシエラは力加減を覚えたようだ。


 そして、それからレシーブの手の形を教えた。手を組むと、胸が腕に乗っかっちゃうんだけど、大丈夫かな…。

 オレはルシエラから少し離れて軽いサーブを放った。


 ルシエラはレシーブのフォームを構えた。オレの放ったボールはルシエラの構えた手に当たる前に、ルシエラの腕の上に盛り上がった二つの球体を使ってバウンドした。ルシエラはボールを打ち放ったつもりが、自分の携える球体を打ち放ってしまった。


「あんっ…。うまくできたかのぉ…」

「ルシエラ!可愛いよ!よくできたね!」

「えっ…」


 オレはルシエラにバレーボールのレシーブの手を教えていたのに、ルシエラの胸に当たっちゃったんだけど、それが成功なの…?たしかに、ルシエラの可愛い声が聞けたけど…。


 ルシエラの胸はボールの勢いをほとんど殺してしまい、ボールはあまりバウンドしないし、あさっての方向に行ってしまった。胸の大きい子って大変なんだな…。守ってあげたくなる…。


「薫、私にもお願い」

「うん。いくよ」


 オレはユリアナに向かってサーブした。すると、ユリアナは手を構えているものの、やっぱり腕の上に大きな胸が二つ乗っかっている。


「ああん…」


 ユリアナはボールを二つの胸で受けた。ユリアナが腕を上げるとともに打ち放たれる二つの球体がぽよんっと舞って戻った。


「うまくいったのぉ」

「うん!」


 その後も、オレは二人に交互にサーブした。だけど、二人とも胸で受けるものだから、いっこうにボールは帰ってこなかった。だけど、ボールが当たるたびに二人の可愛いアニメ声を聞けて、とても良い時間を過ごした。



「次はかけっこしよっ」

「薫が鬼じゃ」

「えっ、うん」

「それっ!」「捕まえてみるがよい」


 二人とも女の子走りだ。走ると胸が左右に揺れてしまい、腕を前後に振るうことができないので、腕をV字にして左右に振るう。やっぱり胸の大きな女の子は走るのも大変なんだ。それに、十センチのヒールで走るのも大変そうだ。守ってあげないとな。


 二人のことを追いかけるオレ。オレは筋力強化の魔道具をもらってるので、常人に比べればかなり足が速いはずだし、二人はヒールを履いてるし女の子走りをするしかないのだけど、全然追いつけない。


 ユリアナの後ろ姿…。お尻と太ももがぷるんぷるんと揺れている…。

 ユリアナのマイクロビキニは、最初はお尻を少しは隠していたのだけど、十歩も走ったら完全にTバックになってしまった。二つの綺麗で大きな球体の間にまたがった三角形の布の橋が、いつまでも球体の谷に落っこちずにいられるわけないだろう。


 立ち止まって、背を向けたまま顔だけ振り向いたユリアナは顔を赤らめていた。そして、オレのほうに視線を向けながら、パンツに指をやって食い込みを直していた。


「うふふっ」


 ユリアナはまた走り出した。今まで立ち止まっていたというのに、全然追いつけない…。ああ、オレも立ち止まっていたか。


 ルシエラも同じように逃げていくんだけど、ルシエラは始めからTバックだし、これ以上変化しようがない。それに、直しようもない。

 ルシエラは全裸とかTバックが好きみたいだけど、オレはユリアナの仕草にたじたじだ…。それに紐を挟んだ二つの球体よりも、三角形の橋が架かった二つの球体の方が好きだ。



 昼食はバーベキューだ。ユリアナが家で野菜や肉を切ったりして下ごしらえしてくれたんだ…。なんて手際の良い幼妻…。


 長い髪を左手で押さえながら、右手で箸を使って網に食材を並べていく。女の子って髪を抑えないといけないから、片手でしか手作業できないんだ…。


 女の子って可愛さと美しさを求めるために、日々不自由を受け入れているんだ。髪を抑えなければならないから片手でしか手作業できなかったり。ヒールが高すぎるから歩きにくかったり足が痛くなったり。

 昔だったら極細のくびれを手に入れるために、気持ち悪くなるほどコルセットを締め付けたり。白い肌を手に入れるために血を抜いて貧血になったり。

 それに露出面積を増やすために小さいパンツが食い込んだり。


 でも、それに抗う姿こそが美しい。髪を手で押さえるしぐさが美しい。ヒールで歩きにくそうにしている姿が庇護よくをそそる。

 コルセットの締めすぎや血の流しすぎでひ弱な感じも庇護よくをそそる。

 パンツの食い込みを直しているところも可愛い…。


 さっきから左手で髪を抑えながら、右手だけで食材を並べたり、ひっくり返したりしてるけど、しばらくするとパンツが食い込んでしまい、箸を置いてから、食い込みを直して、また箸で料理して、と忙しい。だけど、やっぱりその姿が可愛い。



「ほら、できたよ」

「えっ、ありがと」


 ユリアナは肉を串に刺して、お皿に置いてくれた。


「何これ!うんまっ!」

「だよね。魔物肉じゃなくて、和牛なんだ。美味しくなる魔法をかけるなら、元の素材が美味しくないとダメだったかぁ」

「なるほど」


 そんなんじゃない。美味しいのは、パンツを食い込みを直す分の時間というスパイスがかかってるおかげだ!少し焦げているところが、食い込みを直す時間の分、余分に焼けてしまったところであり、ユリアナがパンツの食い込みを直す味がするんだ!




「はぁ~食べた」

「腹いっぱいじゃのぉ」

「うまかった…」


 ユリアナのパンツの食い込みを直す味のするお肉は最高だった。


 ユリアナは皿や残飯を異次元収納にぼんぼんぶっ込んでいく。時間停止できるから、片付けを後にしても臭わないしこびりついたりしないんだ。


「んじゃ、今度は泳ごっか」

「えっ、うん」


 食べたばっかで元気だなぁ思ったけど、魔道具のおかげでオレの胃は疲労していなかった。


 ユリアナは浅瀬を歩いて進んだ。水が澄んでる。ユリアナが十歩ごとにパンツの食い込みを直してるのがよく見える。


 ユリアナは背が低いのだけど、脚はかなり長いので、多少深くなっても足を取られたりしない。はずなのだけど、たいして深くもないところから泳ぎ始めた。クロールだ。


 ユリアナの泳ぐ姿…。けっこうさまになってる…。だけど、手をまっすぐ回そうとしても胴体から大きくはみ出た胸にぶつかってしまい、胸がぷるんと反対側に押しやられている。水が澄んでいるからよく分かる。胸の大きな子は、腕をまっすぐに下ろすこともできないんだ…。なんて可愛い…。


 それに、十秒も脚をバタバタしているうちに、すぐにパンツがお尻に食い込んでTバックになってしまった…。そして、泳ぐのをやめて直立になり、足が付かないところでゆらゆら浮いて、少し赤らめた顔だけオレのほうを振り向いて、パンツの食い込みを直している…。そしてまた泳ぎ始めた…。十秒ごとにパンツの食い込みを直さなきゃならないユリアナは可愛すぎる…。


 泳ごって言われたのに泳いでないな…。泳ぐか…。ユリアナのバタ足は水面をバタバタしても水しぶきが立たない。きっと魔法だ。オレについてこいと言っているのだ。


 ユリアナを追いかけるオレ。泳いでいても、お尻を追いかけるオレ。二つの球体に掛けられた三角形の橋が、あっというまに谷に吸い込まれていく…。それをじっくり見ていたオレは、ユリアナの泳ぐスピードが落ちたのにも気が付かず、ユリアナが泳ぐのをやめて水中で直立に戻ろうとしている途中の二つの球体の谷間に、顔をダイブしてしまった…。とても柔らかくて、どこまでも吸い込まれていくようだった…。


「あんっ…」

「がばっ、がばばば」


 オレは柔らかい球体の感触にいつまでも顔をうずめていたくて、水から上がるのが遅れてしまった。


「ご、ごごご、ごめん」

「うふふ、夏は特別だよ。そうだ、薫の腕輪に機能を追加してあげる」

「えっ、うん」


 ユリアナは大事なところ以外のガードが甘い。大事なところなければ、どんなに見たり触ったりしても怒らないのかもしれない。だけど…。


 オレは腕輪を一つ外して、ユリアナに魔方陣を追加してもらった。その腕輪をはめたけど、とくに変化はない。


「肺の中で酸素が生成されるから、ずっと水の中にいられるよ」

「マジか」

「二酸化炭素は消滅するから、息を吐く必要もないよ」


 さっそく潜ってみる。息を吸わなくても苦しくない。


『心魔法で話しかけるね』

『あ、うん』

『そしたら、ルシエラが平泳ぎをするから見ててあげてね』

『水の中から?』

『薫の比重を上げるので、水に沈んでいられるよ』

『わかった』


『見るがよい』


 二人の声は心の声まで同じアニメ声だけど、別の口調の心の声とともにルシエラは腕を左右に広げて水を掻き始めた。

 水を掻き終わり、おなかの辺りで両手を合わせて、両手を上に進める。

 両手は二つの球体の谷間をぬっていった。そもそも、二つの球体は紐で結ばれていたはずなのに、その紐がほどけている。水着は肌に張り付いているそうだけど、危なっかしくてヒヤヒヤする。

 それよりも、両手の平が球体の谷間を通った後は、そのまま両腕が通っていった。

 そして、両腕を左右に広げて、


『あふん…』


 ぷるんと二つの球体が左右に揺れて、何回か水平に対抗して振動し続けた…。水の中だからゆっくりだ…。


 ちなみに、ルシエラが腕を上に移動させるときに、足は水を蹴っている。


 ルシエラは手で水を掻き終わると、あとは繰り返しだ。また球体の間に腕を通して、左右に広げるたびに『あん』という心の声を漏らす。


 これが胸の大きな子の平泳ぎ…。とにかく腕を動かす経路に胸があって、無理矢理手の動きをしようとすると胸に当たってしまうんだ…。胸が大きくてうまく泳げない女の子は、なんて可愛いんだろう…。




『次は私がバタフライするから、水上に出て』

『うん』


 オレが水上に出ると、ユリアナは両手を大きく振りかぶり、水に潜った。

 それと同時に、腰を大きく前後に振って水を蹴った。ユリアナのお尻がぷるんぷるんと上下に震える。バタフライであるにもかかわらず、なぜか水しぶきが上がらないからよく見える。

 ユリアナが腰を振るたびに、小さなパンツがずり下がっていく…。十往復もさせると、パンツは完全お尻と太ももの谷まで落っこちてしまった。そこでユリアナは泳ぐのをやめて直立になり、背中を向けたまま顔だけオレのほうに振り向いた。その顔は赤らんでいて、オレのほうにチラチラと視線をやりながら手をパンツやり、ずり下がったパンツをキュッと上げた。


 なんてこった…。お尻の大きな女の子は、バタフライで十回蹴るたびにずり下がったパンツを上げなきゃいけないなんて…。可愛すぎる…。


 ってまたオレ泳いでないな。オレもバタフライはできるけど、顔を出しながら平泳ぎでゆっくりユリアナに付いていこう。

 ユリアナの上下に揺れるお尻…。脱げるパンツ…。


「あんっ…」

「うわっ」


 またもやオレはユリアナがパンツを直そうとして止まったのに気が付かずに、二つの球体に顔をうずめてしまった。


「うふふっ」

「ごめん…」



「次はわらわとの背泳ぎをみるのじゃ」

「うん」


 ルシエラが直立状態から後ろに倒れる。そして、右腕を上げて左腕を下ろす。右腕を後ろに回すと同時に、左腕を前に回す。すると、左腕が胸に当たってしまい、胸がぽよんと右側に跳ねていった。右胸とともに、ルシエラは身体のバランスを崩して右斜め向きに。そもそも、左胸と右胸を結ぶ紐を、さっきからずっとほどいたままで、左胸は右胸の左に重なったりせず、上側にずれてしまっている。


 それから今度は、左腕を上から後ろに回し、右腕を下から前に回す。だけど、ルシエラは右側に傾いており、右腕を回したときに大きく胸に当たってしまい、今度は右胸が左側にぽよんと跳ねていった。ところが、左胸は右胸のすぐ左にあったわけじゃないので、右胸の上側を通って右側に垂れたままだ。なんだかねじれた状態に…。


 それに、ルシエラは胴体がなんだか沈み気味だ。胸が重いから、胸が空気中にあると身体が沈んじゃうんだ…。


 なんてこった…。胸の大きな子が背泳ぎするのはこんなに大変だったなんて…。胸にひっかかって腕をうまく回せなかったり、胸が重くて沈んじゃうルシエラは、なんて可愛いんだ…。


「どうじゃ、うまくできたかの」

「うん…。最高だった」

「真面目に練習したかいがあったの」


 いいもの見せてもらったよ…。


 こうして沖縄プライベートビーチ風旅行は、予定通り日帰りで幕を閉じた。





「次は北海道秘境温泉」

「今から予約なんてムリだろ」

「実はね、邪魔法で事実改変して、半年前に予約してたことにした」

「なるほど…」


 タイムスリップでは過去を改変しても、事実改変された新しい世界線ができるだけで、自分がもといた世界線はかわらない。自分のいる過去の事実を改変するには、邪魔法を使うらしい。その場合も、実際には事実改変した新しい世界線を作成して、自分と付近にいた者の魂と記憶だけ新しい世界線に移動させるらしい。とにかく、どのようなやり方でも、事実改変すると新しい世界線が作成されてしまい、事実改変をしなかった世界線というのは残ってしまうらしい。


 というわけで、ワープゲートで北海道へ。


「今度は涼しいの」

「うん」

「でも制服なんだね」

「女子高生なので」


 女子高生は旅行に無駄に制服を着て行くものなのである。でも、胸の谷間を開けたりスカートを短くしたら、他の服も着るんじゃないかな。ユリアナは可愛いのが好きとか言って、結局ルシエラと一緒でエロいのが好きなんじゃないか。露出前線の位置が違うだけで。だけど、その露出前線がオレのストライクゾーンにどハマりだ。


「牧場?」

「種牛を売ってくれる農家と話を付けようと思って」

「もうお土産?」

「向こうの世界に持って帰ろうと思って」


 旅行に着てさっそくお土産か…。


「ああ…、時間停止のアイテムボックスがあるから、今から入手してもいいのか…」

「うん」


 なるほど。かさばらないし、腐らないし、さすがだな。っていうか、何て言った?種牛?


「っていうか旅行とか観光じゃないんだ…」

「ああ…ごめん…。なんか癖で…。もう三十三年前に領主を引退したのにね」

「なるほどね」


 領地経営は転性令嬢の嗜みだからしかたがない。


 酪農家から種牛と雌牛を買った。牛を歩いて連れて帰るとか謎だと思うけど、いろいろと魔法でそう思わないようにしてあるのだろう。

 ひとけのないところに行った。ユリアナは牛を異次元収納に入れていた。時間停止だから、オレの寿命まで何十年も入れていて大丈夫なんだな。




 それから、まだ日の傾かぬうちから、ワープゲートでさらにひとけの少ない奥地に行き、まさに秘境といえる温泉旅館に到着。


 客室でちょっとゆっくりすることに。

 クローゼットを開けると、浴衣があった。子供用のも…。


 案の定、その子供用の浴衣を見るやいなや、ユリアナは「ふんふん…♪」と鼻歌を、ルシエラは「ららら…♪」と口ずさみ始めた。これは変イ長調の短距離瞬間移動だ。もう何度も聴いたので覚えている。


 オレはすぐさま後ろを向いた。


 なぜなら、瞬間移動で自分をすぐ隣に移動させる。服を除いて。ほら、バサッと、服が地面に落ちる音がした。瞬間脱衣魔法だ。

 ちなみに、自分ではなく、ものを移動させることもできるらしいが、自分を移動させる方が魔力消費が小さいので、癖で服を残して自分を移動させてしまうらしい。


「ルシエラ、パンツとブラは付けておいてね」

「そうじゃったか」


 さっそく子供用の浴衣に着替えてるみたいだ。


「もういいよ」


「おお…、普通の旅館の浴衣をここまで着こなすなんて…」


 丈は丁度いい。だけど、明らかに胸が収まらず、大きく谷間を見せている。

 そして、お尻も太もももギリギリで、歩くとぷるぷるとあんよが姿を見せる。


「じゃあ行こっか」

「うん」「うむ」


 旅館の浴衣を着て行くところは決まってるよな。



 ユリアナとルシエラは左の「女」と書かれた赤いのれんを、オレは右の「男」と書かれた青いのれんくぐった。オレも早くアニメ声の美少女になって赤いのれんをくぐりたい。


 男子の脱衣所には誰もいなかった。


「ルシエラ、大事なところをタオルで隠して入るんだよ」

「面倒じゃ」


 オレが服を脱いでいると、壁の向こうで二人の声がこもって聞こえる。

 服を脱ぎ終わって、横開きの扉を開けて浴室に入った。


「ダメだってば!」


 脱衣所をでると、先ほどまでこもって聞こえていた声が明瞭になった。


「る、ルシエラ…?あれ…?」


 左を向くと、一糸まとわぬルシエラの姿が…。


「こ、こここ、混浴!?」

「どうせ一緒なのじゃから、脱ぐのも一緒によいじゃろうにな」

「そ、そそそ、そういう問題じゃ…」


 温泉っていうから湯気でよく見えないと思ってたのに、ルシエラの姿を遮るものが何もない。露天風呂だけど、まだ日も落ちていないから明るいし、夏で暖かいから温泉の湯気なんて水面にすら見えないんだけど…。

 いつもだったらユリアナがルシエラに全裸はダメって怒ってるところだ。だけど、そのユリアナは…、


「あっ、薫…」

「ユリアナ…」


 ユリアナが扉から出てきた。ユリアナは大事なところを二カ所隠している。下の大事なところを左手に持ったタオルで、上の大事なところのうち一カ所を右手の平で。つまり、上の大事なところにうち左側の大事なところは、あらわになってしまっているということだ。

 ユリアナの腕は短いので、右腕だけでは上側の大事なところを二つ覆うには届かないみたいだ…。


 ユリアナは、大事なところを隠そうとしているのに隠しきれていないのが恥ずかしいのか、顔を赤らめてもじもじとしており、ときどきオレにチラチラと視線を合わせる。

 ユリアナ…、可愛すぎる…。ユリアナの隠している大事なものは、隣のルシエラを見ればすぐに分かることなのに、ユリアナから目を離すことができない…。


「あっ、コラっ!身体を洗ってからって言ったでしょ!」

「面倒じゃのぉ」


 ルシエラが湯船に駆けていったので、ユリアナが怒った。でも今日は全裸には怒らないんだ…。そもそもユリアナだってルシエラを追いかけるときに、大事なところを隠していたタオルと手が外れて、全裸になってしまった…。



「もう、ちゃんと洗わないとダメだよ」

「面倒じゃ」

「ほら、ここの谷間とか、ここの溝とかね」

「ああん…」


 オレとユリアナたちは背中を向けあっている。だけど、話している内容だけで…。

 ユリアナはいつもルシエラを洗ってあげてるんだろうか…。やっぱり実の母親だから子供のことを洗ってあげるのか…。



 オレは身体を洗い終わって先に湯船へ。温泉っていうわりには透明度が高いな。それに湯気もないし…。まだ明るいし…。


 きゃぴきゃぴと甲高いアニメ声が二つ近づいてきた。


「あっ、コラっ!」

「へへぇん」


 ルシエラが飛び込んで、ばしゃーんと水しぶきを上げた。


 水しぶきが収まり、気がつくと、オレの左腕にはとても柔らかい感触があった…。


「ちょっ、ルシエラぁ!」


 オレの左腕はルシエラに実った二つの果実に挟まれていた。

 いつもだったらルシエラがこんなことしてたら、とっくにユリアナが怒ってるところだ。

 でも、そのユリアナは…。


 気がつくと、右腕にもとても柔らかい感触があった。

 オレが右を振り向くと、オレの右腕はユリアナに実った二つの果実に挟まれていた。


「ちょっ、ユリアナぁ!」


 オレは中央を向いて、ゴクリと喉を鳴らした。二人がオレを喜ばせたいのは分かってる。だけど、オレを好きなわけじゃない。オレが手を出したら鶴になって帰ってしまうかもしれない。

 オレを好きになってもらえるのは、オレが寿命を終えてアニメ声の美少女になってからなんだ。オレはそれまで待つんだ。


「ねえ薫、幸せ?」


 たしかに、寿命まで何十年も手を出さないのはつらいかもしれない。だけど…、


「……もちろん、こんなに可愛い二人から胸を押しつけられて幸せじゃないわけないだろ」

「そ、そうだよね」


 こうしてオレは、鼻血を吹くまで湯船に入り続けたのだった。何時間入ってたのかな。誰も来なかったからよかったものの。あっ、魔法で人払いしてたのか。




 旅館の海の幸をいただいた。


 そして、いつものように一つの布団で川の字になって寝た。いつも思うけど、なぜオレは起きると二人の胸元に手を突っ込んでいるんだろう…。


 一泊して旅館を後にして、ワープゲートで帰宅した。





「次はサイクリングに行こう」

「えっ、自転車なんて」

「買った」

「まあそうだよな」


 二人は二十四インチのママチャリを買っていた。二人は身長一四〇センチのお子様と見せかけて、脚は一七〇センチの日本人より長いのだ。だから、二十四インチではちょっと脚が余ってしまうくらいだ。


「というわけで、海岸に行って、岸辺をのんびり走ろー」

「うむ!」

「いやいやここから出発するの?海岸、五十キロあるんだけど…」


 オレの家の前から出発しようとしている二人。しかも制服姿。


「大丈夫だよ。魔道具あげたでしょ」

「そうなんだけど…」


 オレには常に疲労回復がかかっているし、純酸素一〇〇パーセントが肺に生成されているから、常に全力で漕いだって息が切れたりなんかしない。でもいくら速く走れるからって、町中で自転車が爆速で走ってたらおかしいだろう。それにユリアナたちは制服でママチャリなんて、最初っからやる気ないじゃん。


「じゃあ、近所の川沿いのコースでいいよ」

「それならまあ」


 まずは、近所の川沿いの堤防まで三人でサイクリング。町中で爆走したりしない。


 ユリアナが先頭でオレが二番目、ルシエラが最後尾。

 オレの先を走るユリアナ。風でスカートがひるがえり、パンツは丸見え。あ、前は片手で押さえてるんだ。女の子は片手でスカートを抑えなければならないから、自転車に乗るのは大変だな…。そうやってスカートを抑えて自転車に乗っているユリアナは可愛い…。


 ユリアナのお尻を追っかけるオレ。この夏はユリアナのお尻を追っかけてばかりだ。


 ずっと見ていると、ユリアナが漕ぐのをやめた。止まったわけではない。スカートを抑えていた手を後ろにやって、パンツの食い込みを直している。一〇〇回ほど回すとパンツがずり下がってしまうか食い込んでしまうようだ。

 しかし、スカートから手を離したので、スカートがまくり上がってしまい、慌ててスカートを抑えたり、食い込みを直したりと慌ただしい。たまにハンドルから右手を離してスカートを押さえながら、左手で食い込みを直していた。女の子はとても忙しいんだな。自転車運転なんかに手を取られたら、女の子であることを維持する手が足りなくなってしまう。


 かと思えば、後ろのルシエラはスカートが全部まくり上がってても平気だし、パンツも食い込んだままでずっとTバックだ。



 川沿いのコースまでやってきた。ユリアナとルシエラとサイクリング。景色を見るでもなく、終始ユリアナのパンツの食い込みとスカートめくりの格闘を眺めていた。


 お昼はユリアナの手作りサンドイッチ。魔物肉と日本の肉食べ比べ編。ユリアナにとっては日本の肉が美味しいらしいけど、オレにとってはユリアナがいつもお尻を触っている手で作ってくれた料理ならなんでも美味しいよ!


「電車通学もつまらないし、これから自転車通学にしよっと!」

「うむ、それがよい」

「えっ」


 だって、学校まで直線距離でも十キロあったような…。

 っていうか、今日みたいにずっとスカートを抑えていたり、食い込みを直したりしながら行くのかな…。でも女の子らしさを磨くためにはしかたがないことなんだな。




「ん…、ああぁ~…」


 あれ…、二人が来てから、朝起きて、オレが二人の胸元に手を突っ込んでいないのは初めてだ…。

 もしかして異世界に帰ってしまったんだろうか…。それとも今までのは夢…。


 なんて考えたのもつかの間。なぜなら、1DKの狭い部屋では、ベッドから二人がキッチンに立っている姿が見えたからだ。しかも二人とも裸エプロン…、いや、水着エプロンで…。いや、水着のパンツだけはいていて、ブラはナシ…。エプロンに二つの先端が…。

 それに、なんだか甘いバニラやチョコの匂いもプンプンする…。


「あれ、起きたぁ?」

「やっと起きたか」


「これはいったい…」


 こたつには白いホールケーキが…。イチゴが載っているショートケーキに、チョコソースがかかっている部分が一二〇度、ハチミツがかかっている部分が一二〇度、メープルシロップがかかっている部分が一二〇度、というふうに別れている。


「これを載っけてできあがり」

「えっ」


 ユリアナは楕円形のチョコをケーキに載せた。チョコには「誕生日おめでとう 薫」と書いてある。


「オレの…誕生日?」

「忘れちゃうよね。毎年盆休みにアニメ・ゲーム三昧じゃ」

「そうえばそうだった…」


 誕生日ケーキなんて小学校以来だろう…。


「まさか手作り…」

「そうだよ。えへへ」

「マ・ジ・で…。オレ死んでもいい」

「死ぬならあと六十五回食べてからだね」

「えっ」

「未来視で薫の寿命を調べたんだけど、一〇二歳だったよ」

「そっかぁ。長いな」

「それまで一緒に付き合ってあげるし、毎年ケーキも作ってあげるから」

「ははは、太りそうだな」

「それがね、栄養素を増やしたり減らしたりする魔法があるから、このケーキ、カロリーも脂質も八〇パーセントオフなんだよ」

「マジか…」

「向こうの世界の喫茶店で無尽蔵にスイーツが入る女の子のおなかのために、ノーカロリースイーツを作ったんだ。今回はその食材を八割使ってある」

「すげえ…」


「さあ、ケーキ入刀だよ」

「結婚式みたいだ…」

「そうだね…」


 オレとユリアナは、二人でナイフを持って、ケーキにナイフを入れた。綺麗な透明のガラスのようなナイフだ。豆腐よりも抵抗がなく、するっと入っていった。


「うふふ。気をつけないと皿もテーブルも切れるよ」

「マジか…」


 異世界の武器、怖い…。


 ユリアナがケーキを取り皿に取っていった。


「んまっ!」

「美味しくなる魔法がかかってるからねー。全部向こうの世界の素材なんだけど、こっちの世界の材料に美味しくなる魔法をかけた方が美味しいかもねー」

「そういうもんかぁ」


 いや、そうじゃない。これはユリアナが水着エプロンを着て作ったケーキ。ならばきっと、この美味しさはユリアナがパンツの食い込みを直す味が決め手に違いない。この味は、裸エプロンでは成しえない味だ。水着エプロンこそが料理の決め手なんだ。


「生クリームはミノタウロスの乳からで、卵はコカトリスなんだ。コカトリスの卵ってこーんなにあるんだよ。あとミツバチも三メートルあってね」

「へー…」


 異世界、怖い…。


 ショートケーキにチョコをかけるくらいならまだしも、メープルシロップとかハチミツまでかかってるなんて、すごくあまあまだ。だけど、オレの胃腸はまったく疲労しないのだ。ユリアナの作ってくれたケーキを全部受け止められる!


「こらっ。ルシエラ、食べ過ぎ」

「なんじゃ、まだ半分しか食っておらぬ」

「一人三分の一だよ」

「ケチめ!」


 ああ、本当に幸せだなぁ。水着エプロンの彼女が手作りケーキなんて…。




 今日は夏祭りだ!


「オレ、死んでもいい」

「もう、何回目か分からんぞ」

「えへへ」


 ユリアナとルシエラの浴衣姿だ。旅館の浴衣じゃない。祭りの浴衣だ。


 ルシエラの浴衣は水色。股下マイナス三センチ。もちろん胸は大きく露出。上下セパレート型のトップスだけ着ているんじゃないかって感じの装い。ボトムスはいてない感が素晴らしい。


 ユリアナの浴衣は桜色。和風の浴衣に西洋風のミニスカートを組み合わせた外国人が好きそうな和洋折衷コスプレ。もちろん股下マイナス二センチ。


 ルシエラはエロ専門っぽいけど、一割くらいは可愛いを混ぜてやると良いみたいだ。ユリアナは可愛いのが好きと言っておきながら、エロ六割、可愛い四割くらいじゃないだろうか。いや、七・三かな…。八・二かも…



 二人は終始、オレの両サイドを歩いて、オレの腕を果実で挟んでいた。温泉で味を占めたのだろうか…。両手に花。いや、両腕に果実。

 出店でかき氷を買って食べたり、花火を見たりして、三人で恋人のような夏祭りをすごした。


 オレはイケメンに変えてもらったから二十代後半くらいには見える。だけど、二人は十歳くらいの背だし、恋人には見えないかな…。


 この夏の二人はめちゃくちゃ積極的だったな…。夏は女の子を開放的にするということか…。本当に幸せだった。


 明日から仕事だ。きっと元通りだ。じゃないとオレの心臓がもたない。




★★★★★★

★ユリアナ六十五歳、日本戸籍上十五歳




 薫の盆休みも終わり、また暇な夏休みに逆戻りだ。だけど、夏休みもあと四分の一。そろそろ皆の宿題が終わっている頃だ。終わっていなければ未来視してもいいか。っていうか、最初っから未来視でよかったか。


 というわけで、空間魔法の遠視と透視を駆使して学校の名簿や住所録を探し、クラスメイトの住所を入手。クラスメイトの住所から緯度・経度を算出。緯度・経度から遠視と透視で、クラスメイトのお宅の机をのぞく。

 丁度机に向かっている時間でなければ意味がないので、やっぱり未来視か過去視が必須じゃないか…。


 間違ってもお風呂なんてのぞいたりしないのだ。


 そんなわけで、クラスメイトの宿題を、過去未来微妙に行き来しながら、写しまくって完成させたのであった。


「なんだかいろいろやっておったようじゃが、パソコンの時のように、未来の自分にお願いするんじゃイカンかったのか」


「えっ…。えーっと…。未来の自分は宿題を終わらしているだろうから、未来の自分に宿題のコピーを送ってってか…。

 あれ…?送ってこられたなら、自分はやらなくていいな。送ってこられたコピーをそのまま過去に送ればいいな…。おかしいな…。これを考えた時点で未来から送ってきそうなものだけど…。

 ああ、そっか…。私がルートなのかな。私が他の手段で宿題を完成させて、そのコピーを他の世界線に流す世界線のブランチルートなんだ…。

 ちょっと損した気分だけど、いずれかの世界線の私がやんなきゃいけないんだよね。じゃあ、ふんふん……♪コピーしたから、他の世界線の過去の私、役立ててね。ふんふん……♪」


 他の人の宿題を写して完成させたのを土魔法でコピーして、タイムスリップ魔法で今朝のこの部屋に送った。これを私が受け取ることはない。他の世界線のユリアナが受け取るのだ。こういうこともたまにはあるさ。


 っていうか、何も考えずに他の人に宿題を写したけど、私って体育以外成績Aだし、ちょっと考えれば分からない問題なんかなかった。むしろ、他の人が宿題のページを開いている時間を探す方が面倒だった。


「よく分からんが、がんばれ」

「ルシエラが魔法の真祖のくせに、なんで時間魔法の詳しい仕様知らないのさ!あと、自分の宿題は自分で写してね!」

「ぎゃふん」


 私は宿題の束をルシエラに投げつけた。

■ユリアナ(六十五歳、日本戸籍上十五歳)

 キラキラの銀髪。ウェーブ。腰の長さ。エルフの尖った耳を隠す髪型。身長一四〇センチ。


■ルシエラ(十七歳、日本戸籍上十五歳)

 前世はユリアナの産みの親。今世はユリアナの娘。

 キラキラの銀髪。ハーフアップ。腰の長さ。エルフの尖った耳を隠す髪型。身長一四〇センチ。


■真北薫(三十七歳)

 冴えない独身サラリーマンだったが、魔法で美男子に変えてもらった。


九条院(くじょういん)姫奈(ひめな)(十五歳)

 悪役令嬢。ツインドリル。



◆魔法の属性:シンボルカラー;音楽の調;効果


火属性:赤色;ハ長調、イ短調;火、加熱

雷属性:黄色;ニ長調、ロ短調;電気、光

木属性:緑色;ホ長調、嬰ハ長調;植物操作

土属性:橙色;ヘ長調、ニ短調;土、固体操作

水属性:青色;ト長調、ホ短調;水、解熱、液体操作

風属性:水色;イ長調、嬰ヘ短調;風、気体操作

心属性:桃色;ロ長調、嬰ト短調;心・記憶・感情操作

時属性:茶色;変ニ長調、嬰イ短調;時間操作

命属性:白色;変ホ長調、ハ短調;肉体・人体・動物操作、治療

邪属性:黒色;変ト長調、変ホ短調;世の中のことわりの管理

空間属性:紫色;変イ長調、ヘ短調;空間・移動操作、念動

聖属性:金色;変ロ長調、ト短調;祝福、幸せ、加護

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