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チカのこと  作者: 秋月カナリア
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 卒業と同時にチカと結婚することになった。

 プロポーズをされたのだ。

 これは、そう、告白を受け入れられた以来の驚きだった。

 私は結婚するならチカ以外に考えられなかったし、チカも望んでくれるなら、いずれはしたいと思っていた。それにしても、プロポーズは当然私からだと思っていた。

 サッカーは大学まで、とチカは言って、その言葉通り就職してしまった。

 大学でのサッカーの活躍を見ていたので、もしかしたら実業団やプロへの道もあったのではないかと想像するが、チカも話さなかったし、私も聞くことはなかった。

 私は小さな会社に事務職で採用された。

 仕事に慣れた頃に、一緒に住み始めた。結婚式はせず、お互いの家族と食事をするだけで済ませた。

 それから十年ほど、穏やかな日々が続いた。

 子供はいなかったけれど、特別大きな悪いことも起きなかった。

 高校時代から五年間も交際していたにもかかわらず、結婚するまでチカと長い時間一緒にいることがなかった。そのため、家に帰ればチカがいる、という生活に初めは戸惑いがあった。

 チカの前では、だらけた自分を見せられない。ずっとそう思って気をつけていた。チカが自分を律するのに長けていたからだ。

 だらしのない自分を見て、チカが失望するのが怖かった。

 だが一緒に暮らすとなると、ずっと猫をかぶっていることが難しくなる。

 しばらくして出始めた私のボロは、幸いチカにとっては特別気になるようなことでもなかったようだ。

 そうして暮らしていくうちに、私にとっては実家よりも二人の住まいのほうが、安心する場に変わった。これが、結婚するということなのかもしれない。

 私は勉強が仕事に変わったくらいで、相変わらず趣味は読書だけだった。

 チカは生活の大部分を占めていたサッカーをやめ、手持ち無沙汰な時期があったが、しばらくして高校の後輩の誘いでフットサルチームに入った。

 チームメイトは社会人が多く、定期的にみんなが集まって練習はできないようだった。それがチカにはストレスになるのではと心配したが、フットサル場に行けば、即席でチームを組んでプレイすることもできるそうだった。

 私は結婚して少し太ったが、チカは学生時代のままの体型だった。

 二人、健康で長生きするためにもと、それとなく運動をすすめられたが、私はなかなか重い腰を上げられなかった。

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