表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チカのこと  作者: 秋月カナリア
1/16

1

 気づくと部屋が真っ暗で、つけっぱなしだったテレビのちらちらとした光が壁に映る影を揺らしていた。

 カーテンは閉まっている。外も暗い。時間を確かめたかったが、壁掛けの時計は暗くて見えないし、手元に携帯電話はなかった。

 なにもかもが億劫だ。

 ソファから体を起こしてテーブルの上に置いてあるカップを手に取る。底に少しだけ残ったコーヒーを飲んだ。

 今日は何曜日だったか。着ているものを見るとスーツであるから、きっと今日は仕事だったのだと思う。明日も仕事だろうか。

 このまま寝てしまおう。幸い寒くはない。服に皺がよるだろうが構うものか。それを注意してくれる人は、もういないんだから。

 首元を緩めて、もう一度横になろうとした瞬間、背後で物音がした。

 床が軋む音のように聞こえた。

 背後には磨りガラスがはめられた扉があり、その向こうは廊下が玄関まで続いている。

 扉を見たまま、ゆっくりと立ち上がった。

 鍵はかけただろうか。ぼんやりとそう思う。

 泥棒かもしれない。いや、こんな深夜に玄関から入ってくるようなら、強盗だ。

 心臓が強く鼓動した。

 扉に注目したまま、息を殺して待った。

 誰かが扉の向こうにいるなら、磨りガラス越しに見えるはずだ。暗いけれどそれくらいわかるはず。

 立ったまま磨りガラスを見続けていたが、なにも変化はなかった。

 ただの家鳴りだったのかもしれない。

 それとも、

「チカ?」

 声が掠れた。

 そのまま待った。が、それきり何の音もしない。

 先ほどよりもさらに大きな疲労感を覚えて、倒れこむようにソファに座る。

 チカに会いたかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ