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ウービルの鳥

作者: パス男

人生で初めて書いた小説になります。

書き切ることを目標にして書きました。

言葉遣いや構成など、表現したいのにできない部分が多々あり歯痒い気持ちになりましたが、ひとまず書き終えました。

ウービルの鳥という伝説の鳥のもと、人間の醜さや美しさを表現してみました。

 

ー第1章 少年ミロー


 少年は今日も丸太の上に座り、空を眺めている。

その少年は村外れにある小さな家に1人で住んでいる。

少年の名はミロという。

歳は今年で13になる。

その家には大きな牧場があり、そこには多くの羊たちが家畜として飼われている。

羊たちは今日も牧場に生えている草を食べてはゆっくり歩き出し、そして立ち止まりまた草を食べる。

晴天。

そんな空をミロはただ眺めている。

ミロは朝早くに起床して朝食を食べ終わると、夜の間に逃げ出した羊がいないかを見回り、その後一頭一頭の世話をする。

そして昼食を食べ終わると、午後の仕事を始める前に1時間ほど空を眺めるのが日課となっている。

ミロが何を想いながら空を眺めているのか、それは羊たちにもわからないことである。


 ある日、隣村からミロの家の近くにある村に向かっていた商人が、丸太の上に座り空を眺めているミロを見かけて近づいてきた。

そして、ミロにこう話しかけた。

「今日は良い天気ですなー。」

ミロはその商人を一瞥いちべつすると、にっこりと微笑んだ。

しかし返事をすることはない。

その様子を見て商人は微笑みを返しながらもう一度話しかけてみることにした。

「昨日までの嵐が嘘のようですなー。」

ミロはコクリと頷くと、微笑んだままただじっと商人を見つめ続けた。

商人は少しの間ミロからの返事を待っていたが、返事がないことを確信すると、別れの挨拶として帽子を少し持ち上げながら会釈をして立ち去った。

ミロはその後姿を最後まで見送ると、また空を眺め始るのだった。

隣村からやってきてミロの家の近くにある村へ向かう途中、ミロの姿を見かけて話しかける人は時折りいたが、その大半がその商人のようにミロの対応に見かねて立ち去っていった。

その人々は皆こう思ったことだろう。何故この少年は何も話さないのか、と。


 また別のある日には、幼い少女を連れた初老の男性がミロの元を訪ねてきた。

初老の男性は羊の毛皮を少し買い取りたいと言った。

ミロはそれを聞くと軽く頷き、部屋の奥から先週刈り取りを行い下処理を施したばかりの羊の毛皮をいくつか持って来た。

そして初老の男性にそれを差し出すと、代わりに1枚の金貨と数枚の銀貨を受け取った。

穏やかな表情で初老の男性はミロにお礼を告げた。

その一連のやり取りをそばで見ていた少女がミロの方を見上げながらこう聞いた。

「お兄ちゃんは話せないの?声がでない人なの?」

幼い少女は自分の疑問を素直に問いかける。

ミロは少し屈み少女と目線を合わせると、首を軽く横に振って見せた。

その動作を見て少女はますます不思議そうな表情を浮かべた。

「じゃあなんで話さないのっ。なんでっ。」

少女は少し駄々をこねるかのようにミロを問い詰めた。

それでもミロはにっこり微笑みながら少女の頭を軽く撫でるだけだった。

初老の男性はそんな少女の手を取り軽く挨拶をすると、扉を開けて出て行った。

手を無理矢理引かれるようにして扉から出て行った少女は、最後の最後まで納得のいかない表情を浮かべていた。


 このような事が数年ほど続いている。

近くの村ではミロについて、色々な噂が広がっていた。

ー 村の近くのあの家に住む少年はどうやら言葉を知らないらしい。

ー あの少年は人と話すのが嫌いらしい。

ー いや、あの少年はそもそも声が出ないらしい。

そんな噂が村中で囁かれていた最中、もう1つの噂が村に広がり始めていた。

ー 新しい国王様がこの村にいらっしゃるらしい。

この噂により、ミロに関する噂を囁く者はほとんど居なくなった。


ー第2章 新王ルブター


 王都マルスガニアでは新王の即位に伴い、派手なパレードが開催されていた。

王都の中央に位置する広場では大勢の民衆が1つの椅子を取り囲むように群がっていた。

その椅子に座る男こそが、新王ルブタである。

その体格は大きくがっしりとしており、民衆を見つめる目には鋭い野心が宿っていた。

新王ルブタは民衆の前に堂々と立ち上がりこう宣言した。

「私が新王ルブタである。私は伝説に名を残さなければならない。私には民衆の嘆きが聞こえるのだ。ここ数年続いてる旱魃かんばつの影響により、王都へと連なる村々で不作が相次いでいる。その影響は今やここ王都マルスガニアにまで届こうとしている。」

新王ルブタはそこで一度民衆を見渡し、そして右手で力強く大地を差しこう続けた。

「私は考えた。何が神々の怒りに触れ、何を神々に捧げれば良いのかと。そして王位に即位した今、その答えがようやくわかった。」

新王ルブタは右手をゆっくりと天に向けながら最後にこう告げたのだった。

「私は幸せの象徴とされるウービルの鳥を捕獲し、大地と天の神々に捧げることを約束する。」

その言葉を聞いた民衆は歓喜の声をあげ、そして喜びを大いに表現した。どこからともなく新王の名を呼ぶ声が聞こえ、その声は数秒の間に全民衆へと広がっていった。

「新王ルブタっ。新王ルブタっ。」

その喜びに満ちた声と踊りによって、王都マルスガニアの大地は大きく揺れ動くほどであった。

それほどまでに新王ルブタの宣言は民衆の心を掴んだのだった。

 幸せの象徴。そう伝えられているウービルの鳥とは、大地から生まれやがて天へと飛び立つとされており、その鳴き声を聞いた者は生涯の富と幸福を約束されるという伝説の鳥である。

しかし、その鳥を見た者はその事実を他の誰にも話すことはならず、話してしまえば約束された全ての富と幸福を失ってしまう。

そのため、ウービルの鳥を見つけることは誰にも叶わず、伝説上の鳥とされてきた。

新王ルブタはその伝説上の鳥を捕獲し、大地と天の神々に奇跡を捧げることで、ここ数年続いてきた旱魃による被害の原因となる神々の怒りを鎮めると宣言したのだった。


 パレードが開催された翌朝、玉座ぎょくざの間では早速ウービルの鳥を捕獲するべく作戦会議が開かれていた。

開始されてから数分の間、誰も発言することはなかった。

それほど手掛かりが無く、重い空気だけがその場を支配していた。

数分後、最初に発言をしたのは意外にも国の財務管理を担当する大臣のダムスだった。

ダムスは恐る恐る新王ルブタにこう告げた。

「新王ルブタ様にお伝えしたい話が御座います。」

その声に自信といえるものは全く含まれておらず、ただかすれた声だけが弱々しく響いた。

「よい。申してみろ。」

新王ルブタはそう言い放つと、玉座ぎょくざにある椅子の上から堂々とダムスを見つめた。

ダムスはその目を直視することはなく、玉座の間に敷かれている豪華な絨毯を見つめたまま話し始めるのだった。

「はい。これは私が先日商人達が集う会議に出席した時の話になります。その会議では、商人達が各村を訪れた際の情報を交換することが主な目的となっております。その情報を元に商人達は各村における現状の財力を把握して今後の商売における展望を決めるのです。」

そこまで話すとダムスは一度ゴクリと大きな音を立て、そして間を置かず話し続けた。

「商人達はある程度情報交換を終えると、何やら不思議な話をし始めたのです。数名の商人達はアルガスタルを中心に東方の村々で奇怪な鳥が目撃されていると話しておりました。その鳥は全身が青く光り輝き遥か上空を飛び回り、一切鳴かないと。そして、別の商人達はある村外れに一切何も話さない少年が住んでいると話しておりました。」

ダムスはそう言い終えると最後にこう付け加えた。

「ウービルの鳥を捕獲するにあたり、必要な情報かは保証しかねますが、少しでも情報を提供することが新王ルブタ様に仕える身である私の責務だと思い発言をさせて頂きました。」

新王ルブタはダムスの話を聞き終えると、目を閉じて暫くの間長考した。

その間他の者達は一切発言することはなく、その目が開かれるのをただじっと待っていた。

半刻程の静寂を経て、新王ルブタは目を開きながら話し始めた。

「ダムスよ。よくぞ話してくれた。私はその商人達の話にこそウービルの鳥を捕獲する為の手掛かりがあると確信した。」

「はっ。有り難き幸せ。」

「皆の者よく聞け。新王である我ルブタはこう考えた。まずアルガスタル及びその周辺の村々で目撃されているその鳥こそがウービルの鳥だ。伝説にはこう記されている。

雲ひとつない青い天の海を泳ぐその鳥は我が身を空よりも青く光り輝かせ、その鳴き声はまるで女神ヌトの奏でる音色のごとく全ての者を魅了すると。」

新王ルブタは少し目を細め、大臣達の顔を見ながら話を続けた。

「また、その村外れに住むという少年についてだが、我はその少年こそが、ウービルの鳥の鳴き声を聞いた者ではないかと考えている。その事実を誰にも話すことが出来ないために、その欲求を一切の声を捨てるという形で抑えているのではないか。」

新王ルブタはそう言い終えると表情を少し強め掌を体の横に掲げながら玉座にいる皆に命令した。

「我、新王ルブタの名の下に命令する。まずはアルガスタル周辺の村々に調査団を派遣し、ウービルの鳥の出没情報を集めよ。そして、ウービルの鳥を見つけ出すのだ。」

新王からの命令を聞き終えると皆が一様に声を揃えて返事をした。

「はっ。」

返事をし終えると大臣や兵士達は皆玉座の間より退室して行った。


 皆が退室すると、玉座の間には新王ルブタとその側近である騎士団長のアルネ、その2人だけとなった。

アルネはほんの少しだけ顔を新王ルブタの方へ向けて問いかけた。

「新王ルブタ様、もう1つの情報については如何様になさるおつもりでしょうか?村外れに住むという少年についてです。」

新王ルブタはアルネの方を振り向くことはなく、真っ直ぐ玉座の間の扉を見つめながらこう答えた。

「その少年には私自らが会いに行こうではないか。もし仮にその少年がウービルの鳥の鳴き声を聞いたのであれば、鳴かせる方法を知っておるはずだ。我はウービルの鳥を捕獲し生贄として捧げる前にどうしてもその鳴き声を聞いておきたいのだ。我は新王となった。しかし、いつ何時この我の命を狙おうとする者が現れんとも限らん。我は絶対王として歴史に名を残す王である。その一生は富と幸福で満ちていなければならないのだ。」

新王ルブタには王としての厳格や風格の奥に隠した焦りがあった。

その焦りに掻き立てられるかのようにウービルの鳥の鳴き声という伝説に魅了されていった。

自身を呼ぶ際に新王という肩書きを付けることを皆に強要し、自らも新王を名乗るのもそういった焦りからくるものだった。

昨日、パレードの中心で民衆へ向けて高々と宣言をした旱魃被害に対する対策など、実のところ新王ルブタにはどうでもよいことだった。

真の目的はウービルの鳥の鳴き声にあり、その欲望から自らの足を少年の住む家へと向かわせるのだった。

「アルネよ。馬車の準備を進めよ。我々は明日の朝、その少年の住んでいる場所へ旅立つぞ。」

「はっ。承知しました。」

アルネはそう返事をすると足早に玉座の間を後にした。


新王ルブタ。

幾多の争いでその名を残したかつての英雄は、王位を継承して新王に即位した。

しかし今、その男の心中は自らの地位を守らなければならないという焦りで埋め尽くされようとしていた。

ただそれだけに執着しゅうちゃくする。

誰もまだ気付いてはいないが、その男からかつての輝きは失われようとしていた。


王都から少年の住む家へは西へおよそ3日程の旅路となる。


ー第3章 東への派遣ー


 王都マルスガニアから派遣された調査団がアルガスタルの村に到着したのは、会議が開かれた日の夜だった。

調査団の長に任命されたのは、騎士団の副団長であるナスカルであった。

アルガスタルの村を訪れた調査団はナスカルを含め4人である。

この東地方ではアルガスタルの村が最も広く人口も多い。

その為、その周辺の村々には2人1組の調査団が派遣されている。

 ナスカルは馬から降りるとその手綱をゆっくりと持ち上げ、宿屋に隣接している馬小屋の綱木つなきにそれを結びつけた。

他の調査団員達もそれと同様にして馬を繋ぎ止め、一行は宿屋へと入っていった。

ー 村一番の宿と聞いていたが、やはり王都の宿屋と比べると随分見劣りするようだ。

そうナスカルが考えているとカウンターの中から1人の老人が出てきて、ナスカル一行を迎え入れた。

老人はナスカル達の身なりを一瞥すると、すぐに王都の人間であることを認識した。

先程よりも腰をさらに落とし、姿勢を低くしながら話し始めた。

「どの様な御用件で御座いましょう。」

老人は普段使い慣れていないであろう言葉遣いで辿々(たどたど)しく尋ねた。

「我々は王都から派遣された調査団である。ここに居る4人を今晩泊めてもらいたい。」

ナスカルは王都の威厳を保ちつつも表情を和らげ丁寧に答えた。

「かしこまりました。少々お待ち下さい。」

老人は失礼のないようにお辞儀をして、そしてカウンターの奥へと消えていった。

ナスカル達が暫くの間待っていると、老人は手に4つの鍵を握りしめて戻ってきた。

「こちらが部屋の鍵になります。」

そう説明しながら鍵をナスカルへ手渡すと、老人は再びカウンターの方へ向き直り、歩きはじめた。

「ちょっと待て、代金はいくらなのだ。」

ナスカルが急いでそう尋ねると、老人は先程までとは打って変わって緊迫した表情を浮かべながら振り返りこう言った。

「貴方様は、ウービルの鳥を捕獲するために来られたのではありませんか?」

「そ、そうだが。それがどうした。」

老人のあまりにも緊迫したその表情と既にウービルの鳥のことを知られていたことにナスカルは少したじろぎながら返事をした。

「やはりそうでしたか。では、お代は結構で御座います。」

老人はそう答えるとナスカルがこの宿を訪れてから初めて、ナスカルと目を合わせた。

「我々民衆は、数年前から続く旱魃の被害により酷い貧困に落ち入りました。中には飢餓で死んでいく者まで出始めています。我々はそれと戦う手段を持っておりません。どうすることも出来ないのです。しかし、昨日、王都で新王ルブタ様は宣言された。この旱魃被害に終止符を打つと。我々はそれにすがり、そして期待しております。その願いを叶える為でしたら、我々は協力を惜しみません。」

老人は話し終えるとそのままカウンターの中へと消えていった。

正直なところ、ナスカルはひるんでいた。

周辺の村々で起きている被害がここまで酷い状況に陥っているという事実を、今思い知らされたからである。

王都マルスガニアに住んでいる彼らには想像も出来ないことであった。

なぜなら、王都マルスガニアでは今なお食料はありふれており、日々の食事に困ることなどないからである。

王都マルスガニアに集まってくる食料の内、周辺の村々より収められているものはごく少量であり、大半が隣国との貿易によりまかなわれている。

そして、その貿易で得た食料などは王都から周辺の村々へ流れ出ることは滅多にない。

商人達でさえ、金貨や銀貨で周辺の村々から絨毯や革製品などの買い付けを行うものの、逆に王都で仕入れた食料を売りに行くことはない。

それはこのアルガスタルに限ったことではなく、南や北、そしてアルガスタルとは正反対に位置する西の村々も同じである。

そう、この旱魃による被害は主に周辺の村々で発生している被害であり、今でこそその被害は南や北に影響を及ぼし始めているが、実の所王都は全く被害をこうむっていないのだった。

また、西の村もまだ被害を被っていない。

ナスカルは少しの間思いを巡らせ、そして気を引き締めるようにして他の調査員達にこう言った。

「明日は本格的な聞き込み調査を行う。今日は皆ゆっくり休んでくれ。」

その言葉にはどことなく覇気がなく、調査員達は一瞬、躊躇ためらいの表情を浮かべたが皆ゆっくりと各々の部屋へと足を運んでいった。

ナスカルも同様に鍵に印された部屋へと足を運び、扉を閉めるとまとっていた鎧を脱ぎ、そのままベットへ倒れこむようにして寝ころんだ。

ナスカルはそのまま目を閉じて深い眠りに落ちようとしたが、閉じた目蓋まぶたの中には先ほど見た老人の表情が焼き付くようにして浮かんでくるのであった。

新王ルブタの宣言が現実のものにならなければ、どれほどの民衆が飢餓に苦しみながら死んでいくのか、それを想像せずにはいられないのであった。


 翌朝、村人達が朝食を食べ終わる頃にナスカル達は宿屋を後にした。

ナスカルはお世話になった老人に挨拶をしようとカウンターに寄ったが、そこには老人の姿はなく、鍵はカウンターに置いて下さいと書かれた1枚のカードが置かれているだけだった。

宿屋を後にしたナスカル達は、まず初めに村の村長が住む家へと向かった。

その道中、目にする村の様子は酷いものだった。

道端で売られている野菜は痩せ細り、指を咥えながら歩く子供達の目には輝きが全く無かった。

村長の家に到着したナスカルは玄関のドアを数回ノックし、その返事を待った。

すると数秒も待たないうちにドアが開かれ、中から1人の老婆が姿を現した。

老婆の腰は大きく曲がり、突いている杖を持つ手は深いしわおおわれていた。

「私は王都マルスガニアより派遣されてきた調査団の長ナスカルである。そなたは?」

老婆はナスカルの挨拶を聞くとほとんど地面を向いていた顔を上に向け、挨拶をした。

「私はこの村の長ミールと申します。話は宿屋の主人から伺っております。どうぞ中へお入り下さい。」

ナスカルは宿屋の主人という言葉に少し反応したが、すぐに冷静さを取り戻して他の調査員達と共にミールの家の中へ入っていった。

ミールはナスカル達を一番奥の部屋へと案内した。

ナスカルはその部屋へたどり着くまでの間家の中を色々と見渡していたが、その様子は裕福という言葉とは程遠いものであった。

ナスカル達が案内された部屋へ入ると、そこには既に男性が4人座っていた。

彼らはナスカル達が部屋へ入ってくるのを見ると、一斉に立ち上がり姿勢を正した。

「村長、こちらの方々は?」

ナスカルがミールに質問すると、ミールは彼らを指さしながらこう言った。

「彼らは村の商人です。ウービルの鳥と思われる青い鳥を目撃した者たちです。」

「おお。そうか彼らが。」

思わぬ状況にナスカルは歓喜の表情を浮かべ、嬉しそうにそう言った。

「昨晩宿屋の主人からウービルの鳥を捕獲するため調査団が村に来ているとの連絡が入り、彼らに連絡しておりました。」

「そうか。それはご苦労であった。さあ、皆腰を下ろしてくれ。」

ナスカルがそう言うと部屋にいる全員が部屋の中央を囲むようにして座った。

「それで、そなたたち。ウービルの鳥らしき鳥を目撃したというのは本当か?」

ナスカルが商人達の顔を代わるがわる見ながらそう問いかけた。

するとミールの横に座っていた小太りの男性が話し始めた。

「私の名前はモグリと申します。主に革製品の仕入れをしています。これはひと月ほど前のことでした。隣村で革製品の買い取りを行い、この村に戻ってくる途中で私は休憩をしていました。その日はとても暑い日でした。私は道の端にあった小さな岩に腰を下ろし、水を飲んでいました。ふと顔をあげて空を見上げると晴天の青空の中に青く光り輝く何かが見えたのです。私は不思議に思い目を凝らしてもう一度それをよく観察しました。するとそれは鳥だったのです。青く光り輝くその鳥は弧を描くように同じ場所を飛び回っていました。」

「おお。」ナスカルを含む調査員全員が思わず声をあげていた。

モグリは無言で頷き話を続けた。

「暫くの間、私の頭上を飛び回っていたその鳥は突然晴天の空の中に消えてしまいました。まるで周りの空に同化するようにです。」

ナスカルは自然と拳を力強く握っていた。

ジワリと手に汗がにじみ出てていることに本人はまだ気付いていなかった。

「モグリよ、鳴き声を聞いてはいないのだな?」

ナスカルがそう質問すると、モグリは心底残念そうな表情を浮かべて自らの首を横に振った。

すると、モグリの横に座っている商人が次に話し始めた。

「私の名前はヘルムと申します。私もモグリ同様に目撃はしましたが、鳴き声を聞くことは出来ませんでした。今ここに居る他の者たちもそれは同じです。」

その後もナスカル達調査員と商人達の話し合いは続いた。

ナスカルは自分の目的が鳥の鳴き声を聞くことではなく、鳥を見つけ出して捕獲することだと思い出し、話し合いの途中からはその目的を念頭に置きながら質問するようにした。

そして陽が最も高く昇る頃、話し合いは終わりを迎えていた。

「では、そなたたちからの情報をまとめると、ウービルの鳥らしき鳥を見かけたのは隣町とこの町をつなぐこの山道付近というとこでよいな?」

ナスカルが広げた地図の一点を指で指しながら確かめるように質問した。

すると商人達は皆頷いた。

それを見てナスカルは続けた。

「そして、そなたたちがその鳥を見かけたのはちょうどひと月ほど前のことで、それからは一度も見かけていないと?」

その質問についても商人達は皆一様に頷いた。

「そうか。それではもうこの周辺には居ないかもしれないな。」

ナスカルがそう呟くと部屋中が沈黙に包まれた。

それを察したナスカルは、あぐらをかいている自らの足を一度叩き、パチンという音を鳴らした。

「情報提供心より感謝する。私達は今夜他の村々に派遣された調査団と合流する予定だ。そこで皆が集めてきた情報を元に今一度色々考えてみるつもりだ。」

ナスカルは立ち上がり、そして最後にもう一度商人達へ感謝の言葉を告げた。

 ミールの後に続くような形で、家の玄関まで移動するとナスカルはドアを開けて外に出た。

他の調査員も外に出たところで、ナスカルはミールにお礼の言葉を告げて右手を差し出した。

「ご協力感謝する。」

ミールはナスカルから差し出されたその手に自らの手を重ねて握った。

ナスカルは自らの手に伝わる皺の深さから、ミールの苦労の深さを知るのだった。

ミールの家をあとにしたナスカル達は他の調査団との待ち合わせ場所へと向かった。


 その夜、王都から少し東に行ったところにある村で調査団たちの報告会が開かれた。

「皆、それぞれの村での調査ご苦労であった。それでは、私たちの訪れたアルガスタルの村で仕入れた情報から報告する。」

ナスカルは椅子から立ち上がりながら皆を一度見渡した。

「アルガスタルの村では、ウービルの鳥らしき鳥を目撃したことがある商人達から話を聞くことが出来た。彼らは村の近く、この辺りでその鳥を目撃したらしい。」

ナスカルは皆の前に広げられた大きな地図の一点に、インクでばつ印を付け加えてから話を続けた。

「彼らがその鳥を目撃したのは今からちょうどひと月程前のことで、それ以降に目撃した者はいなかった。目撃者の話によるとその鳥は伝説にあるように、その身を空よりも青く光り輝かせていたそうだ。私達が得た情報は以上だ。」

ナスカルは話し終えると椅子に座り、次に報告する者を指名した。

「私達が訪れた村では、村の子供達がウービルの鳥らしき鳥を目撃していました。子供達が村外れの山道で遊んでいると、1人の子供が空へ向けて指を差したそうです。その指の先を見ると青く光り輝く鳥がグルグルとその場を飛び回っていたそうです。」

「その山道はどの辺りだ。」

「この辺りになります。」

ナスカルの問いに応えるようにその者は地図の一点にインクでばつ印を付け加えた。

「子供達がその鳥を目撃したのは今からちょうど2週間ほど前とのことでした。私からは以上になります。」

その者が話し終わると隣に座っていた者が続いて報告を始めた。

そのようにして全調査団からの報告が行われた。

「さて、これで全ての情報が出揃ったわけだが、何か意見がある者はいるか。」

ナスカルがそう問いかけるとある者が話し始めた。

「ナスカル団長。これはもう明白なんじゃないでしょうか。皆が報告した目撃情報の場所と時を考えると・・・。」

その者はそう言いながらインクで付け加えられた地図上のばつ印を線で結んでいった。

その行為を部屋にいる全員が注目していた。

「このようになります。」

その者がそう言い終えるとナスカルは机上の地図に目をやった。

そしてその意味を理解した。

ナスカルに続くようにして他の者たちも机上の地図に目をやり、その意味を理解した。

そして全員が顔を見合わせた。

地図にインクで付け加えられたばつ印を目撃された時の順番に線で結ぶ。

するとその線は、王都から最も遠い東の村から始まり、そして王都に最も近い東の村で終わる。

つまり、ウービルの鳥らしき鳥は西に向かっていた。

「なるほど。西か。」

ナスカルは皆に聞こえるかわからないほどの声でそう呟いた。

少し考えを巡らせるとナスカルは立ち上がり言った。

「とにかく、私は新王ルブタ様にこの事実をお伝えしなければならい。皆ご苦労であった。王都に戻りゆっくり休んでくれ。」

ナスカルは皆にそう伝えると部屋を後にした。


 次の日の明け方頃、ナスカルは王都に帰還した。休む暇もなくナスカルは新王ルブタに面会するべく王室へと足を運んだ。

王室の前に到着すると、扉の前に兵士が2人立っていた。

「新王ルブタ様に面会したい。起きておられるか。」

ナスカルの言葉を聞いた兵士の1人がこう答えた。

「新王ルブタ様は昨日よりお出掛けになられています。」

「何?どこへ向かわれた。」

「西の村へ向かわれました。」

「西の村だと?」

ナスカルは予想外の状況に頭が混乱していた。

ナスカルは自身に与えられた命令に従いウービルの鳥に関する情報を収集し、それらの情報が導き出した1つの事実を今伝えに来た。

しかし、そを伝えるどころか、新王ルブタはその事実、つまり西へ既に旅立っていた。

ナスカルは考えた。

ー 私からの報告が遅いとお思いになられ、自ら捕獲部隊を率いて西に旅立たれたのではないだろうか。

いや、待て。

西という情報はどこから得たのか。

この情報は我々調査団が調査結果から導き出したもの、そうやすやすと得られる情報ではないはず。

考えがまとまらないナスカルはもう一度兵士に問いかけた。

「新王ルブタ様は何を目的に旅立たれたのか。」

すると兵士はこう答えた。

「なんでも一切何も話さない少年に会いに行かれたとか。」

ー 新王ルブタ様はウービルの鳥を捕獲されに行ったわけではないようだ。

しかし、何故鳥の鳴き声を聞いたとされる少年にわざわざお会いになるのか。

ナスカルは新王ルブタの考えを推測しようとしたが、やはり考えるのをやめた。

その答えにたどり着いてしまうことを恐れたからだ。

そう、ナスカルは薄々感づいていた。

新王ルブタの真の目的が旱魃被害の解決ではなく、自身の欲望にあることを。

ナスカルは新王ルブタの帰還を王都で待つことにした。


―第4章 新王と少年―


 新王ルブタが王都を出発してから今日で3日目を迎える。

王都から出発した馬車はその速度を緩めることなく、3日間の旅路を走り終えようとしていた。

新王ルブタの乗った馬車が西にある村に到着したのは、正午のことだった。

村に到着すると既に村長らが出迎えていた。

王都より先だった早馬の伝令により新王ルブタがこの村を訪れることを知っていたからだ。

馬車が村の中央広場でその旅路を終えると、中より数名の兵士達と騎士団長であるアルネが姿を現した。

アルネは姿を現すとすぐさまその身を馬車に向けてから腰を落とし、大地に低くかがみひれ伏した。

その数秒後に馬車から新王ルブタが姿を現した。

新王ルブタはゆっくりと村の様子を見渡すようにして歩き、村長の元へと歩み寄った。

アルネと数名の兵士達は新王ルブタを取り囲むようにして歩を合わせた。

 低い姿勢で大地にひれ伏している村長の元に到着すると新王ルブタは早速話しかけた。

「この村の近くに全く言葉を話さない少年が住んでいると聞いた。その少年はどこに住んでおる。」

村長は新王ルブタが話し始めると一度ビクリと体を震わせたが、その後失礼のないようにと冷静を装った。

「新王ルブタ様。王都より西へ遥か遠いこの村にわざわざお越しいただきありがとうございます。その少年はこの村より少し西へ、道沿いに行った所にある小さな家に住んでいます。大きな牧場があり羊たちが家畜として飼われているのでそれが目印となります。」

新王ルブタは村長の話を聞くと一度アルネに目配りをしてから、村長に続けて質問した。

「その少年の名はなんと申す。」

「ミロと申します。」

「その少年は全く言葉を話さないと聞いている。では何故その少年の名前を村の皆が知っている。」

村長はほんの数秒ではあるが、返事をするのを躊躇ちゅうちょした。

「はい。その少年ですが、数年前までは普通に言葉を話しておりました。皆が噂を楽しむかのうように噂は真実を誇張こちょうしながら広がっていきました。」

村長が躊躇した理由はそこにあった。

もし、新王ルブタが噂通りの少年に会いに来たのであれば、その噂に偽りなどあってはならないからだ。

しかし、村長は正直にその事実を報告した。

「そうか。では、つまりその少年は本来言葉を話すことができるということだな。」

「はい。そうであります。」

村長の感情は恐怖で埋め尽くされようとしていた。

しかし村長の考えとは裏腹に、新王ルブタは心の底から喜んでいた。

なぜなら、その少年が本当は言葉を話すことが出来るのに、言葉を全く話さないことがわかったからだ。

そう、新王ルブタは自身の推理が当たっていることを確信した。

その少年は数年前にウービルの鳥の鳴き声を聞き、そしてそれからその事実を誰にも話さないために、一切の言葉を話さなくなったのだと。

「そうか、わかった。」

新王ルブタは最後にそう言うと、その身を馬車の方へ向けて歩き始めた。

村長が困惑しながらも安堵の表情を浮かべていると、アルネがその前に立ちこう言った。

「出迎えご苦労であった。」

アルネが最後に馬車へ乗り込むと、馬車はつかの間の休憩を終えてまた走り出した。

新王ルブタがその村に滞在した時間はわずか数分程度であった。

しかし、村長たちにとっては数時間にも感じるほど重苦しい時間だった。


 馬車が村を出て数分も経たないうちに少年の家は新王ルブタの視界へと入ってきた。

広い丘の上にぽつんとたたずむその小さな家の隣には、村長の言っていた通り大きな牧場が広がっていた。

馬車が家の近くまで来ると、家の前にある丸太の上に一人の少年が座っているのが見えた。

その少年は空を眺めていた。

 馬車が家の前に到着するとその中から数名の兵士達とアルネが姿を現して、直ぐに馬車に向かってひれ伏した。

そしてその数秒後に新王ルブタが姿を現した。

 新王ルブタは少年の前に姿を現すと、まずこう告げた。

「私は王都マルスガニアの新王ルブタである。」

少年はその言葉を聞くと丸太から降りて新王ルブタに深くお辞儀をした。

その姿を見て新王ルブタは満足し、次にこう質問した。

「少年よ。名をなんと申す。」

新王ルブタは少年が言葉を話さないことを知っていてわざと質問をした。

質問を受けてその少年は少し顔を上げて微笑みを返した。

そして一枚の紙を新王に差し出した。

その紙にはインクでミロと書かれていた。

王の横からミロのその対応を見ていたアルネが怒声を上げた。

「なんという態度だ!!新王ルブタ様に対して失礼であろうが!!」

「よい。この少年は言葉を話せないのかも知れない。」

新王ルブタは少し不敵な笑みを浮かべながらアルネの怒声を抑制した。

「少年、いやミロよ。そなたは声を失ってしまったのか。」

その問いかけに対してミロは微笑みを浮かべたまま首をゆっくりと横に振った。

「では何故言葉を話さない。」

その問いかけに対しては何も返事をすることはなかった。

「まあ良い。では言葉を話さずとも答えられる質問をしてやろうではないか。」

新王ルブタの不敵な笑みがより一層深まった。

「そなたは伝説の鳥であるウービルの鳥の鳴き声を聞いたな。」

新王ルブタはそう問いかけると少年に注目した。

しかし、ミロは新王ルブタの期待に反して首を横に振った。

その行動を見た新王ルブタの顔から不敵な笑みが消えた。

「嘘を付かずとも良い。鳥の鳴き声を聞いてその事実を隠しているだけであろう。」

ミロはもう一度首を横に振った。

「ミロよ。ではこれはどうだ。そなたがウービルの鳥の鳴き声を聞いたときの話をしてくれれば、お前を王都の特級貴族として迎え入れようではないか。将来の財も保障してやろう。どうだ。」

新王ルブタの口調は徐々に怒りと焦りを露わにしていった。

それでもミロはただ微笑んだまま首を横に振るだけだった。

新王ルブタの怒りは少しずつ強さを増していった。

「私は先日の即位式で民衆の皆にウービルの鳥を生贄に捧げると宣言した。しかし、ただ生贄に捧げるだけでは勿体ないであろう。その前に少しばかり鳥の鳴き声を聞いておきたいのだ。どうだ、その方法を教えてくれないだろうか。」

今度は新王であるルブタ自身がへりくだるという形をとった。

ミロは生贄という言葉に一度だけ体を少し震わせたが、それでもただただ微笑んだまま首を横に振るだけだった。

ここで新王ルブタは一度呼吸を整えた。

そして大きく息を吸い込むと、表情を強張こわばらせてこう言った。

「ミロよ。新王である私の問いかけに答えぬという態度を続けるのであれば、私はお前を処刑しなければならない。それでも良いのか。」

今度は首を横にもましてや縦にも振ることは無く、ミロはただじっと新王ルブタを見つめるだけだった。

「よかろう。」

新王ルブタはアルネの方を向き目で合図をした。

するとアルネは持っていた革袋の中からロープを取り出してミロの身柄を拘束した。

「ミロよ。そなたを王族に対する反逆の罪で処刑する!」

新王ルブタがそう高々に宣言すると、アルネは結んだロープを引っ張り上げてミロを馬車の中へと連れ込んだ。

新王ルブタはミロが飼っている羊達を見ながら、思考を巡らせていた。

ー ミロから鳴き声に関する情報が得られない場合はどうする。

死をも受け入れてその秘密を守り通した場合、ミロは処刑する。

そうなったら、鳴き声に関する情報はどこから得ればよいか。

いや、そうだな。

その場合はウービルの鳥を捕獲した後に隣国から仕入れた別の鳥と入れ替えて、民衆の前ではその鳥を生贄にすれば良かろう。

そしてウービルの鳥は手元に置き、その鳴き声をいつでも聞き出せる状態にしておこう。

ナスカルら調査団が向かった東の村々ではウービルの鳥についての目撃情報が得られているはずだ。

焦るな新王よ。

焦らずとも私は伝説に名を残す絶対王となる。


ー第5章 ウービルの鳥ー


 新王ルブタ一行とミロを乗せた馬車が王都へ帰還したのは2日後のことだった。

その間、何度かミロに話をする機会を与えが、ミロの態度が変わることはなかった。

王都に到着するとミロは城の奥にある牢屋に幽閉された。

牢屋に鍵を掛けた兵士が最後にこう告げた。

「お前の処刑は明日の正午に決まった。死にたくなければ、新王ルブタ様にウービルの鳥を鳴かせる方法を話すことだな。」

ミロは兵士に向けてにこやかに微笑むだけだった。


 ナスカルは新王ルブタが王都へ帰還したという報告を受けて、早速調査結果を報告するために玉座の間へと足を運んだ。

玉座の間に入室すると、玉座に深く腰掛けた新王ルブタとその隣に立つアルネの姿が確認できた。

ナスカルは玉座の近くまで到着すると、膝を床につけて低くひれ伏した。

「おお。ナスカルよ。そなたからの報告を待っておったぞ。」

「はっ。新王ルブタ様。私ども調査団が東方の村々に出向き、ウービルの鳥についての調査を行った結果を報告致します。」

新王ルブタは真っ直ぐにナスカルを見つめていた。

「まず初めに、ダムス様のお話にあったように東方の村々ではウービルの鳥らしき鳥が目撃されておりました。」

「おお。そうか。」

新王ルブタは喜びを含む声色でそう言った。

「はっ。そして我々調査団は各村における目撃情報を集め、それを元にその鳥の出没位置を探りました。」

「で、それはどこだ。」

新王ルブタは待ちきれないといった様子で聞き返した。

「はっ。それは西で御座います。」

「西、だと?」

「はい。目撃情報の場所を目撃された時の順に線で結んでいくと、始まりはこの王都マルスガニアから最も東に離れた村になり、終わりは最も東に近い村になります。恐らく、その鳥は東より西へ移動しているものと考えられます。」

「西か。」

新王ルブタは落胆の声で呟いた。

今回東方へ派遣させた調査団の調査結果からウービルの鳥を捕獲するための場所が特定できると予想していたからだ。

しかし、調査団が持ち帰ってきた情報は、東方にウービルの鳥は既に存在せず、西の方角のどこかに存在するという情報にすぎなかった。

「やはりあの少年の口から情報を聞き出す必要があるか。」

新王ルブタはアルネにミロをここに連れてくるように命令した。

数分後、アルネから命令を受けた兵士がミロを連れて戻ってきた。

ミロはその両手をロープで縛られた状態のまま、玉座の前にひれ伏した。

隣で膝をついて姿勢を低くしていたナスカルは横目で初めてその少年の姿を見た。

新王ルブタが一人の少年を捕獲して帰還したこと、そしてその少年はどうやら明日処刑されるということをナスカルは既に知っていた。

「ミロよ。どうだ、牢の居心地は。」

新王ルブタは少し鼻で笑うかのようにしてそう問いかけた。

そしてミロはその問いに対して何も答えることは無かった。

新王ルブタはその苛立ちから、自身の片足を小刻みに振るわせたが本人はそのことに気付いていなかった。

「新王ルブタ様。この少年は一体どのような罪を犯したのでしょうか。」

突如ナスカルが新王ルブタへ問いかけた。

その態度を快く思わなかったアルネがナスカルをいさめようとしたが、新王ルブタがそれを止めた。

「ナスカルよ。この少年がダムスの言っておった何も言葉を話さない少年だ。名をミロという。そしてこやつは我新王ルブタの問いかけに対して一切の答えを拒んだ。よって、王族に対する反逆の罪で明日処刑することになっておる。」

新王ルブタは説明を終えると忌々(いまいま)しいやつめと言わんばかりの視線をミロに送った。

「新王ルブタ様。この少年に対してどのような質問をされたのでしょうか。」

ナスカルはアルネの怒りを尻目に質問を続けた。

「我はこう問いかけた。ウービルの鳥の鳴き声を聞く方法を教えよと。」

ナスカルはその言葉を聞いて、自分の中で避けていた考えが確信に辿り着いてしまったことを感じた。

ー やはり、新王ルブタ様は旱魃被害の解決などどうでもよいと思ってらっしゃる。

ナスカルは先日訪問したアルガスタルの村を思い出しながら一度大きく呼吸を整えた。

それはまるで何かを決意するかのようにゆっくりそして大きな呼吸だった。

「新王ルブタ様。私は先日東にあるアルガスタルの村を訪れました。その村では旱魃による被害が進み、村人達の暮らしぶりは酷いものでした。小さな子供たちの目には未来に対する希望すら無く、走り回り無邪気に遊ぶ子供など全くおりませんでした。新王ルブタ様は即位式でこう宣言されました。伝説の鳥であるウービルの鳥を捕獲し、それを生贄として捧げることで神々の怒りを鎮め、旱魃による被害を解決すると。どうかそのお言葉をお忘れなきようにお願い申し上げます。ウービルの鳥の鳴き声を聞くという自らの欲望に惑わされぬよう。」

「ナスカル!貴様。」

アルネが怒りを露わにしてそう叫んだ。

「私が自らの欲望に惑わされているだと。ナスカルよ、言うではないか。」

新王ルブタは玉座の上で少し前のめりになりナスカルの方を真っ直ぐに見つめた。

「よし。決めたぞ。」

新王ルブタは次にミロの方に顔を向けた。

「ミロよ。お前が今ここでウービルの鳥を鳴かせる方法を我に教えなければ、明日お前と共にこのナスカルも処刑する。どうだ、教える気になったか。」

「新王ルブタ様。それはあまりにも・・・。」

アルネは弱々しくそう呟いたが、新王ルブタにその声は届かなかった。

ナスカルは決意のこもった表情を浮かべ、ただ黙って新王ルブタとミロのやり取りを見つめていた。

「どうなのだっ。」

新王ルブタがとうとう痺れを切らし、玉座を強く叩きながらそう叫んだ。

その姿にはもう新王としての威厳や品格などは全く感じられなかった。

力を持つ者がただただ私利私欲を守ろうとして、欲望という壁に必死にしがみついてるようにしか見えなかった。

ミロは一度だけナスカルの方を見て、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

そしてもう一度新王ルブタの方へ顔を向けて首をゆっくりと横に振った。

その横顔を見ていたナスカルはどこか晴れやかな表情をしていた。


 翌日の正午。

数日前に新王の即位式が行われた広場で、今度は2人の男が処刑されようとしていた。

処刑台の上には両手両足をロープで縛られたミロとナスカルがいた。

ナスカルは口にもロープが通されていた。

その少し後ろには剣を構えた兵士が2人と、アルネが立っていた。

そして、新王ルブタはその少し後ろに設置された椅子に座っていた。

沢山の民衆が処刑台の周りに集まり、その様子を緊張の面持ちで見守っていた。

正午になると新王ルブタは立ち上がり、民衆に向けて話し始めた。

「皆のものよ。新王ルブタである。我は即位式の日にこう宣言した。伝説であるウービルの鳥を捕獲して、大地と天の神々に生贄として捧げることで旱魃被害を解決すると。そして我はあの日からその目的を果たすためにウービルの鳥の居場所を調べさせていた。その調査のなかでウービルの鳥の鳴き声を聞いたと思われる少年の情報を耳にした。そこで、新王である我自らがその少年に話を聞きに行った。その少年こそが今ここで処刑されようとしている少年、ミロだ。」

新王ルブタはそこまで話すとミロを力強く指差して一度間を置いた。

「我はこの少年にこう問いかけた。ウービルの鳥の鳴き声を聞いたことがあるなと。するとこの少年は首を横に振った。少年は嘘をついたのだ。この新王に対して嘘をついたのだ。この少年は全く言葉を話さない。話せないのではない。数年前までは普通に言葉を話していた。そして我が考えるに数年前にウービルの鳥の鳴き声を聞き、その事実を隠すために一切の言葉を話さなくなったのだ。」

新王ルブタはここで一呼吸置き、今度は訴えかけるように話しはじめた。

「我は旱魃被害を解決するためにウービルの鳥を必死に探している。それなのに、この少年はその鳥の捕獲に役に立つであろう情報を自らの富と幸福のために隠しているのだ。我はそれが許せない。この少年の私欲のために民衆が旱魃被害に苦しみ続けるのだと思うとどうしても許すことができない。」

死刑台の上でその話を聞いていたナスカルは怒りに震えていた。

新王ルブタは自らの欲望が叶わない腹いせに、1人の少年を民衆の敵に仕立て上げて処刑しようとしている。

ナスカルは怒りに身を任せて叫び続けたが、口に通されたロープによりその叫びが民衆の耳元まで届くことはなかった。

「そして、その少年の横にいるのが騎士団副団長のナスカルである。彼は我にこう言った。我が自らの欲望でウービルの鳥の鳴き声を聞くことに執着していると。また、我が旱魃被害の解決を優先していないと。

これほどまでに民衆のことを考え、そして必死になってウービルの鳥を捕獲しようとしている我にだ。私はその忠誠ちゅうせいに対する裏切りを許すことができない。」

新王ルブタはゆっくりと死刑台の上を歩きながら民衆を見渡した。

そして、立ち止まると最後に大きな声でこう言い放った。

「よって、この者たちを王族に対する反逆の罪で処刑する。そしてその身を大地と天の神々に生贄として捧げる。そうすることで神々の怒りも少しは収まるかもしれん。」

新王の言葉を聞き終わると、民衆達はその言葉に酔いしれるかのように叫んだ。

その叫びの中、新王ルブタは不敵な笑みを浮かべながらアルネに目で合図を送った。

アルネは一瞬躊躇いの表情を見せたが、王の命令に従うようにして兵士達に合図を送った。

すると2人の兵士がそれぞれミロとナスカルの横に移動した。

そして、ゆっくりと剣を振り上げた。


 新王ルブタを含む広場に居た全員が振り上げられた剣を見上げたその刹那。

その遥か上空。

晴天の空の中に青く光り輝く鳥が現れた。

その姿を目の当たりにして広場に居た全員が言葉を失った。

剣を振り上げていた兵士達はその手を下ろし、民衆はただそれを見上げていた。

静寂に包まれた広場の上空をその鳥は弧を描くようにして飛び回り、ゆっくりとその身を大地へと近づけていった。

そしてとうとう死刑台の上にその足を着けると、ゆっくりと翼を折り畳んだ。

新王ルブタでさえ、その姿を大人しく見つめていた。

死刑台に降り立ったその鳥はミロに近づいていった。

そしてミロの目の前でその動きを止めた。

ミロはその鳥の姿を見つめるとたった一言だけ呟いた。

「おかえり。」

ミロがそう呟くと、鳥はその身をより一層青く光り輝かせた。

その光は徐々に強くなり、広場を包み込んだ。

広場に居た全員がその光に目を眩ませて、目を閉じた。

しばらくして、広場を包み込んでいた光が消え去ったことを知った者たちが目を開き始めた。

その者達が死刑台に目をやると、そこにはなんとも可愛らしい少女が立っていた。

皆が驚きを隠せないでいると、その少女はミロにより一層近づき、その体を強く抱きしめた。

「会いたかった。」

「僕もだよ。」

2人はお互いの耳元でそうささやき合った。

我を取り戻した新王ルブタがその少女に近づき、こう問いかけた。

「お前は誰だ?」

するとその言葉を聞いた少女は、抱き付いていた体をゆっくりと離すと立ち上がり答えた。

「私の名はウービル。天空の女神ウービルです。」

「お前があの伝説の鳥ウービルなのか。」

「私が伝説かどうかは知りませんが、そのようですね。」

新王ルブタは混乱していた。

「伝説の鳥であるウービルの鳥は鳥ではなく女神だったということか。」

新王ルブタはかろうじてその事実だけは受け入れることができた。

「では、今我らはそなたの鳴き声を聞いているということになるのか。これで我の富と幸福は約束されたということか。」

新王ルブタは錯乱しながら引きった表情でそう叫んでいた。

「残念ですが、これは鳴き声ではありません。話し声です。私は今鳥の姿をしていません。」

ウービルは淡々とそう説明した。

「それと、これはとても残念なお知らせになってしまいますが、私は鳥の姿をしているとき鳴きません。」

ウービルは淡々とそう説明した。

「では、伝説はただの作り話だったということか。」

そう言うと、新王ルブタは腰をぬかしてその場に倒れ込んでしまった。

数秒の間広場は静まりかえっていたが、その静寂を打ち壊すかのようにアルネが少女に問いかけた。

「そなたはそこの少年、ミロと知り合いなのか?」

その問いかけを聞くと、ウービルは少し嬉しそうに微笑んだ。

「そう私は彼を知っている。彼もまた私を知っている。」

ウービルはミロを見つめながらそう答えた。

「いいでしょう。私と彼の物語。私と彼の過去を少しお話ししましょう。」

「これは3年前の出来事です。私はあることがきっかけで翼を雷に打たれて負傷していました。私はその傷を癒すため、大地の木の影でその身を休めていました。そこに通りかかったのが彼です。彼はその時すでに両親とは生き別れて1人であの家に住んでいました。羊たちとともに。私は彼からの看病を受ける為にその身を鳥からこの人の形へと変えました。ひと月ほどの看病を受け、私の傷は癒えていきました。その間、私たちは沢山のお話をしました。私の見てきた風景や世界の話、彼の飼っている羊の話。私たちはそうやってお互いの話を聞いている間に惹かれあっていきました。そして女神である私はあろうことか、彼を愛してしまいました。しかし、別れのときがやってきたのです。私は天空の女神、その身を天に宿す者。天空へ帰る日がやってきたのです。」

ここでウービルはとても悲しそうな表情をしてミロを見た。

「私が彼の元を離れようとしたとき、彼からこう問いかけられました。また会える?と。私はその彼の問いに対して、こう答えました。数年の間、あなたが私以外の誰とも言葉を交わすことなく、毎日私を望んでいてくれるのなら、私はもう一度あなたの元に会いに来ますと。私は少なくとも数年の間、その身を天空に置かなければならなかったのです。私は私が天空に帰った後、彼と接し、彼と話す全ての者に嫉妬していたんでしょうね。そんな嫉妬から彼にとても辛い約束をさせてしまいました。」

ウービルの悲しみの表情は、ミロに対して辛い約束をさせてしまったことへの後悔からくるものだった。

「けど、彼はその約束を守ってくれた。そして私は今彼にまた会いにきました。」

ナスカルはその身を縛られた状態で、心を震わせていた。

彼女との約束のため死をも受け入れたあの少年の愛の深さに心を震わせずにはいられなかった。

「そこの者よ。2人の拘束を解きなさい。」

ウービルはアルネに対してそう命令した。

そしてアルネは素直にそれに従った。

拘束を解かれたミロは、今度は自らウービルに近寄りそしてその体を強く抱きしめた。

暫くの間抱き合っていた2人がゆっくりと離れると、ウービルがミロにこう言った。

「ねえ、ミロ。数年もの間私の約束を守ってくれたお礼に、何か3つだけ願いを叶えてあげる。何がいい?」

ミロは少しだけ考えて、こう言った。

「旱魃。よくわからないけど多くの人がそれに困っているみたいなんだ。それをどうにかしてあげられる?」

ウービルはミロからのひとつ目の願いを聞いて、なんとも言い表しようのない気持ちになった。

それはすぐ横で話を聞いていたナスカルも同じだった。

「うん。わかった。枯れた大地に雨を降らせ、そして土をよみがえらせましょう。」

「ありがとう。」

ウービルからの返事を聞いてミロは軽く微笑みながらそう言った。

「じゃあ、ふたつ目は?」

ミロはまた少しだけ考えて、こう言った。

「あの王様を良い王様にしてあげて。」

この願いには新王ルブタさえもが心を震わせた。

ミロはつい先ほどまで自分を処刑しようとしていた男のために貴重な願いをひとつ使ったのだ。

「うん。わかった。」

ミロにそう言って微笑むと、ウービルは新王ルブタの方を向きこう言った。

「あなたが心入れ替えて、民衆のために良い王様であろうとするなら、その将来を約束してあげる。あなたは本来もっと良い王様だわ。」

その言葉を聞いた新王ルブタは、深くその身をひれ伏せてこう言った。

「有り難き幸せ。必ずや良い王になってみせます。」

その姿を見ていたナスカルは今一度この身を新王ルブタへ捧げることを心の中で誓った。

「じゃあ、最後は?」

ウービルがそう言うと、今度は少しも考えることなくミロはこう答えた。

「ウービル、僕は君と一緒に居たいよ。もうひとりぼっちは寂しいよ。」

ミロのその言葉を聞いたウービルは瞳孔をめいいっぱい広げて目から大粒の涙を流した。

そしてミロに勢いよく抱きつき、こう言った。

「うん。私も一緒に居たい。ひとりで飛ぶのは寂しいよ。」


ーエピローグー


 王都マルスガニアの中央に位置する広場では今日、現王の退位式と新王の即位式が同時に行われている。

大勢の民衆がその広場に集まり、そしてり行われている式典の進行を見守っていた。

「現王ルブタ様より王位は返還された。そして今その王位には新たなる王としてナスカル様が即位される。」

進行役である聖堂の神官が民衆の前で高々とそう宣言した。

その宣言を受けて、新王ナスカルが誕生した。

ナスカルは一歩前に進むと堂々とした出立ちで民衆に向かって宣言した。

「我が新王ナスカルである。前王であるルブタがこの王都にもたらした繁栄は大きくそして民衆への愛に満ち溢れていた。我はその意向を受け継ぎ、より大きな繁栄をここ王都にもたらすことを約束する。また、我はその恩恵おんけいを周辺の村々にも与えることを約束する。旱魃被害が収束してもなお、周辺の村々とここ王都での暮らしぶりには大きな格差がある。我はその格差を減らし、周辺の村々でもより一層良い暮らしができるようにしていく。」

ナスカルはそう宣言し終えると、退位したばかりのルブタの方へ一度視線を送り深々と頭を下げた。

自らに敬意示すそのナスカルの行動を見ていたルブタは、どこか歯痒はがゆい気持ちになり、その羞恥心を隠すかのように豊かな表情で笑って見せた。


 ここアルガスタルの村では若者達による会議が開かれていた。

「だーかーらー、そんなやり方じゃあダメなんだって。それじゃあまた旱魃被害に襲われた時に生きていけないのっ。ほんとにもう。男どもは何も分かってないな。」

ある少女がそう発言すると、負けてたまるかと力自慢の少年が言い返した。

「だからっ。俺たち力自慢の男たちが村を出て王都の兵士に志願して、それで農作物以外の収入源をだなー。」

村一番の力自慢は頭の方は弱く、上手く説明できないようだった。

それを見かねた少女が割って入るかのようにしてこう言った。

「ねぇ、ミールばば様はどう思う?私の言っている意味理解してくれるよね?」

その問いかけを聞いたミールはにっこり笑いながらこう答えた。

「さーねー。ひとつだけ言えることは、もう次はお前たちの時代だってことだよ。ゆっくり考えて自分たちの未来を切り拓いていきなー。」

ミールは現在、村長の仕事を他の者に譲渡ゆずりわたして村の相談役をしていた。

ミールは今、毎日が楽しくてたまらないのだった。

ほとんどが若者達の言い争いを横で聞いている日々だったが、その若者達の目は未来への希望に満ち溢れており、ミールはかつての自分を思い出していた。

ー さーて、この子達はどういった時代を生きていくんだろーねー。楽しみなこった。


 商人は隣村までの旅路を急いでいた。今日は隣村で商人会議が開かれるからだ。

商人は山間やまあいの坂道を急いで駆け上がった。

するとそこには広い丘が広がっていた。

そして、そのちょうど中央付近に小さな家が立っていることに気付いた。

よく見ると、その家の横には広い牧場があり、羊達が家畜として飼われていた。

家のそばまで来ると、ひとりの男性が丸太の上に腰掛けているのが見えた。

歳の頃は30前後と言ったところだろうか。

商人はそんなことを思いながらその男性に近寄り、挨拶をした。

「今日は良い天気ですなー。」

するとその男性はにっこりと微笑みながらこう返事をした。

「そうですね。昨日の嵐が嘘のようですね。」

「そうですなー。あ、これは失礼しました。私は商人をやっとりますモグリといいます。」

モグリがそう言い終えると、今度はその男性が少し会釈をしながらこう言った。

「どうも。私はミロと申します。この家で羊を飼いながら暮らしています。」


 ミロは今日も丸太の上に座り空を眺めていた。

晴天の青空のはるか彼方を見つめるようにして、ただじっと空を眺めていた。

そのミロの隣にはウービルがその身を預けるようにしてミロにもたれかかっていた。

そして2人は手を深く握り合っていた。

ミロと再会したウービルはその後天空の神々にその自らの罪を明かし、天空の女神でいることをやめた。

そして、罰として天空から大地にその身を落とされ、永遠に等しい寿命を奪われた。

ウービルはそれから人間と同じように寿命を減らしていくことになった。

ミロとウービルはいつまでも一緒に暮らし、そしていつまでも愛し合った。

2人で空を眺めて微笑み合い、手を取り合った。


 羊達は今日も牧場に生えた草を食べてる。


ーおしまい















































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