テラバウム史概略
この世界の概要です。本編は次章から。
パラノシア星系第2惑星のテラバウムは人類揺籃の地だ。
人類はここで何万年も過ごした後、夢や金や名誉を求めて、宇宙へと旅立って行った。
多数の恒星系をそれぞれの入植者達が支配した結果、やがて、テラバウムで起こった国家同士の争いが宇宙規模に拡大されることになった。
結局人類は、星間国家にまで進歩した後も、民族や宗教のくびきから逃れることができなかったのだ。
そうして現在。
人類は、数多くの恒星系を支配下においたノーライア帝国とカーマイン共和国の二大勢力と、いずれにも属さない1恒星系を支配するだけの小国家群に分かれていた。
人類の版図の広がりに伴って、テラバウムは資源の乏しい辺境の一惑星へと転落した。
480年前に首都星は移転し、今ではカーマイン共和国のローズ星系にある主星クリムゾンが、人類の首都星としての役割を果たしている。
テラバウムは、僅かに標準単位にその影響を残していたが――例えば一光年は、テラバウム年だ――結局、人類揺籃の地という名目しか売るものが残らなかった。
そうして、星間国家に広がった宗教の聖地としての地位の高まりが、田舎特有のゆがみ――出て行ったものが敗者で、残ったものが勝者的な意識――によって、奇妙なメンタリティを醸成することになる。
テラバウムの支配者達は、発展する星間国家群をねたみながら、彼らを下に見ていたのだ。
テラバウム内で、最も重要な地位を占める場所は、星間三大宗教――クレリア教、イシュール教、ユール教――が共に聖地だと崇める場所だった。
その場所――ナエリアル平原――は、八千年前に、テラバウムを支配していたロマリア王国の首都があったとされる場所だ。
そうして今、そこは三つの星間宗教の聖地として、それぞれの総本山である、イシュール聖国、クレリア皇国、それにユール共和国が奪い合う、テラバウムきっての紛争地帯となっていた。
歴史は再び繰り返されようとしていた。