わざとじゃないらしい
「そんな壊れた鉛筆いつまで使ってるのよ!壊した私へのあてつけのつもり?!早く買い替えなさいよ!」
「はい?」
教室の一番後ろの席で次の授業の予習をしていた私は、いきなり怒鳴りつけられて顔を上げた。思わず気の抜けた声を出してしまったが、それはしょうがないことだろう。だって、怒鳴りつけてきたのは、私の鉛筆を折った張本人であるクラスメイトの女の子だったのだから。周りにいたクラスメイトもどうしたのだろうと驚いている。
私こと柊あかりは、あまり愛想のいい方ではなく、しかも休み時間もいつも勉強ばかりしているので、あまりクラスには馴染めていない地味目な女子だ。しかし、170cmと少し高めの身体とハッキリとした顔立ちのせいで少し怖がられているかもしれない。
対して怒鳴りつけてきた女子は、大谷由佳という155cm程の低めの身体とまん丸のくりくりとした目の可愛らしい顔立ちの女子だ。その顔立ちプラス愛想もとてもいいので、クラスの男子にはなかなか人気があるらしい。
しかし、怒鳴りつけてきた顔はなかなかに醜悪で、その剣幕にクラスの男子達が驚いている。
「何とか言いなさいよ!私が折った鉛筆を使って、みんなの同情でも引こうっていうの?鉛筆一本買い替えられないわけないでしょう?!」
この言葉には、今まで我慢してきた私も流石にカチンときた。何に我慢してきたかって?
「鉛筆一本ぐらいなら、流石に買い替えられるわよ。だけど、これで何本目だと思ってるの?あなたに折られたシャーペンやボールペンがもう使えないから、仕方なく折れても使える鉛筆にしたのよ。案の定、全て折られてしまったけど、鉛筆なら使い続けられるからね。何故、買い替えても直ぐに折られてしまうだろうに買い替えなきゃいけないの?お金の無駄じゃない。」
私はこの高校に入学してから今まで、何本もの筆記用具を彼女に壊されてきたのだ。最初は偶然かと思っていたが、何度目からかあまりに不自然な動きだったので、これはわざとだな。と鈍い私でも気づいた。しかし、その度に彼女は目を潤ませながら、「わざとじゃないの、ごめんなさい。」と今にも泣きそうな顔をしながら大きな声で言うので我慢してきたのだ。それなのに、一学期の終わりの今、私が彼女を虐める悪役のように言ってきたのだ。あまり怒ることのない私も流石にキレた。しかし、それを表情に出すことのないようになるべく落ち着いた声で反論を口にした。
それを聞いたクラスメイトは、え?そんなに壊していたの?というような驚いた表情をしていた。
しかし、そんなクラスメイトに気付かない彼女は、
「そんな事言ったって、たかが文房具でしょう?!全部買い替えたって、金額なんてたかが知れてるわ!そんなお金をケチって私に罪悪感を持たせるなんて、酷すぎるわ!みんなもそう思わない?!」
と、周りのクラスメイトに同意を求めだした。クラスの雰囲気は微妙だったが、彼女の事が好きな男子は、
「そうだぞ!文房具ぐらい買い替えろよ!壊れた鉛筆を使って大谷さんに罪悪感を持たせるなんて、性格が悪いぞ!」
と同意していた。
そんなクラスの男子に私は溜息をついた。
「確かに文房具だけだったら、そうかもしれませんね。けれど、ノートも教科書もですよ?ノートも教科書も全教科、濡らされたり汚れたりでボロボロです。これ、全部買い替えたら総額いくらになると思います??」
実は、ノートも教科書も全教科ボロボロだったのだ。やったのは、もちろん彼女。毎回毎回、わざとじゃないと言いながら、水をかけ、ジュースをかけ、インクをこぼし、挙句にはゴミ箱に捨てていたのだ。わざとじゃないのに、よくもまぁそこまでできたものだと感心してしまったくらいだ。
しかし、そこまでされても、汚れたりしてはいるものの一応まだ使えたのでそのまま使用していたのだ。だって、教科書って高いんだもの。全部買い替えるなんて、金額を考えると本当にぞっとする。
私のその言葉を聞いたクラスメイトはまた、え?教科書とノートも全部?!と驚いた表情をしていた。私はクラスメイトは知っていると思っていたのだが、実は新事実だったのだろうか?
私がそんなことを考えていると、また彼女が怒鳴りだした。
「文房具はもういいわ!金額がいくらかなんて知らないけど、貧乏人はボロボロの物でも使っていなさい!そんな事より、あんたは何で体操服にパーカーを羽織って授業受けてるのよ!授業中に体操服だけでもおかしいのに、その上にパーカーを羽織るなんて校則違反なんじゃないの?!みんなと同じように制服を着なさいよ!」
その言葉を聞いて、私はまた溜息をついた。私だって、みんなと同じように制服で授業を受けたい。クラスメイトが制服の中で、私だけ体操服にパーカーという服装のせいで、クラスで浮いてしまっていることが分かっているからだ。だが、そもそもこんな事になってしまっているのは誰のせいだと思っているのだろうか??そんな気持ちを込めながら、私は彼女に答えた。
「私だって、みんなと一緒に制服を着て授業を受けたいですよ。けど、また大谷さんが、わざとじゃないと言いながら制服を汚してきたら、私はどうすればいいんですか?流石に汚れた制服で登下校するのは、私も嫌です。だから、学校側に許可を貰って、登下校以外は体操服で過ごしているんですよ?」
「?!何ですって?!私があんたの制服を汚すかもしれないですって?!私をそんな風に見ていたなんて、あなた最低ね!」
どの口がそんな事を言うのだろう?と思いながら、私は続きの言葉を口にした。
「だって、この体操服だって美術の授業中に、キャンパスと間違えちゃったー!とか言いながら背中に油絵で絵を描かれたんですよ?そんな間違いをするんだから、制服も汚されるかもしれないと心配してもしょうがなくないですか??」
私はそう言いながら、クラスメイトにも見えるようにパーカーを脱いで体操服の後ろを見せた。そこには、油絵の具で描いたクマの絵。はっきり言って、その絵からは悪意しか感じられない。しかし彼女は、わざとじゃないと言ったのだ。私は絵を描かれたその時、わざとじゃなく体操服にクマの絵を描くとはどうしたらできるのだろうかと本気で疑問に思ったのを覚えている。
クラスメイトもこれを見て、これがわざとじゃないっていうのは無理じゃない?とコソコソと話しだした。彼女の事が好きであろう男子達も、え?それはさすがに無理が…というような表情になっていた。
それに気づいた彼女は自分の立場が不利になったと焦り、また怒鳴りだした。
「だから、それはわざとじゃない、間違えたって言ったじゃない!それに、それとパーカーを羽織るのは別問題でしょう?!校則違反だって言ってるじゃない!」
私は、それに溜息をつきながら答えた。
「私はさっき、学校側に許可を貰ってるって言いましたよね?この落書きが恥ずかしいから、隠すためにパーカーを羽織らせて欲しいと申請して許可を貰っているんです。だから、校則違反ではありません。」
「恥ずかしいって何よ!買い換えればいい話じゃない!新しい体操服にすれば、隠すためのパーカーなんて必要ないでしょう?!」
さっきから、買い替えろ買い替えろとそればかり喚く彼女にいい加減イライラがピークに達しそうになってきました。彼女のせいでこんな事になっているというのに、何故私がお金を出して買い替えなければいけないのでしょう?もし買い替えたとしても、どうせまたすぐに汚されるのは目に見えているというのに。
私がイライラしながらそんな事を考えていると、いきなり教室のドアがガラッと音を立てて開いた。
クラスメイトが振り返ると、そこにはそっくりな長身の二人の男子が立っていた。二人はこの学年では有名なイケメン双子兄弟で、沖田那月と沖田皐月。二人共イケメンなだけでなく、長身でスポーツも万能で成績も上位ということで、女子からの人気は高い。それだけでなく性格も明るく社交的なため、男子の友達も多い。沖田皐月の方が弟で、私と同じクラスで隣の席だ。席が隣ということで、まぁまぁ話す。沖田那月の方が兄で、クラスは違うのだが、実は私こと柊あかりと付き合っていたりする。内緒で付き合っているので、知っている人は少ないが。
まぁ、それはさておき、そんな二人がいつものにこにことした社交的な顔ではなく真剣な表情で立っていたので、クラスメイト達は驚いた表情でどうしたのだろうと二人を見つめていた。
そんな中、空気を読まない猫なで声が教室に響いた。
「那月君に皐月君!聞いてよ!柊さんが私に意地悪するんだよ!わざとじゃないって言ってるのに、過去の私の失敗を責めるような言い方をしてきて、これじゃあ私が悪役みたい!二人からも柊さんに私に意地悪するのはやめてって言ってよ!」
それを聞いて、那月の表情がなくなった。それを見て私は、あちゃーと心の中で頭を抱えた。那月の表情がなくなったのは、激怒した証拠だ。那月は滅多に怒らないが、その分怒ったらめちゃめちゃ怖い。最近は怒る頻度が多くなっていて、今まで私はそれを必死に宥めていた。だって、怒る原因は私が彼女こと大谷さんにされた事に対してだったからだ。私が原因で、普段は優しい那月が怒る所なんて見たくなかったのだ。だけどもう無理だ。こうなってしまったら、私にはもう止められない。隣にいる皐月も、止められないのか、はたまた止めるつもりもないのか無言で立ったままだ。
那月の表情がないまま、数秒経った。クラスメイトも那月の怒りを感じ取ったのか、嫌な緊張感の中、那月が淡々と話しだした。
「なんで俺があかりにそんな事言わないといけないんだ?皐月から、あかりが教室であんたに怒鳴られてるって言うから急いで来てみたら、こんな事になってるなんてね。あかりに意地悪どころかいじめ行為をしていたのはあんたの方だろ?皐月と俺がそんな事も分からないとでも思ったのか?」
「そんなっ!私はそんなことしてないよ!どうしてそんな勘違いしてるの?!まさか、柊さんに何か言われたの?!私のことをわざと悪く言うなんて、やっぱり柊さんは意地悪な人ね!これで那月君も皐月君も分かったでしょう?柊さんは嘘をついて私を陥れようとしている酷い人なんだよ!」
それを聞いて、皐月がはぁ?と心底呆れたように声を出した。
「あんたバカか?俺はあんたとも柊ともクラス一緒だけど、柊があんたに何かしたり言った所なんて一度も見たことないよ?逆にあんたが柊に何かしてる所なら何回も見たけどな。それに、柊はそんなにされてるのに、クラスメイトにも俺にも告げ口どころか助けを求めた事すらないよ。」
「じゃあなんで那月君が私が柊さんにいじめ行為をしていたなんて言うのよ!どう考えても、柊さんが那月君に何か言ったんでしょう?!」
皐月の言葉に納得いかないらしい彼女は、猫なで声を捨ててキーキーとヒステリックな声で喚き始めた。
「どうしてもあかりを悪者にしたいみたいだね。俺があかりがいじめ行為を受けていると思ったのは、あかりの服装や持ち物を見たからなんだけどね?だって、明らかにおかしくない?あんなに自分で自分の物を壊す?汚す?どう考えても誰かにやられたとしか考えられないじゃん。そうしたら、少し調べただけで誰が犯人かも簡単に分かるじゃん。」
「なんでよ!たとえ柊さんが誰かに持ち物を壊されたりしていたとしても、それをやったのが私だとは限らないじゃない!」
「いやいや、あんたの頭は飾り?さっきまで自分がしたって言ってたそうじゃん。一応、わざとじゃないっては言ってたみたいだけど。俺は皐月にそう聞いてここに来たんだけど?」
那月は無表情で怒りを抑えたまま淡々と、しかし呆れも混ざった声色で答えた。
「そ、そうよ!確かに私がしちゃった物もあるけど、わざとじゃないのよ!それを全部わざとしたみたいに言うなんて、やっぱり柊さんは意地悪なのよ!」
大谷さんは那月に淡々と答えられ、徐々に自分が不利な事に気付いてきたようだ。しかし、まだ何とかなると思っているのか、全て私の悪いようにするために足掻き喚いていた。
「さっきから柊は俺たちには何も言ってこなかったって言ってるのに、こいつ話聞いてないの?」
皐月が面倒そうに那月に問いかけると、那月も
「聞いてないんだろう?こいつは自分に都合のいい話しか頭に入ってこないバカなんじゃない?」
と答えていた。
それを聞いて彼女は、
「ひどい!私のことをバカなんて!私悲しいよ!」
と目をうるうるさせていた。身体も低く、まん丸のくりくりした目をした可愛い彼女が瞳を潤ませていれば、今まではクラスの男子達が放っておかなかった。だが、今までの彼女の支離滅裂でヒステリックな発言を聞いてしまっていては、彼女に対して引く男子はいても彼女を庇う男子はいなかった。そんな対応を取られた彼女は、
「何よ!クラスのみんなまで私をバカだと思ってるの?こんな事になるなんて、全部全部あんたのせいよ!柊あかり!あんたなんていなくなっちゃえばいいのよ!早く退学しなさいよ!」
とうとう本性を出したのか、彼女は凄い形相で私を睨んできた。さすがに私はびくっと肩を揺らした。そんな私を庇うように、那月が私の前まで歩いてきた。そして、私と彼女の間に立つと、
「だから、あかりにいじめ行為をしていたのか?教科書もノートも筆記用具も体操服も全部なくなれば、あかりが自主退学すると思って?それでも退学しないから、先月あかりを階段からつき落とそうとしたのか?あんたが突進してきてそれを避けきれなかったあかりが階段から落ちそうになった時、俺が偶然近くにいなかったら、今頃あかりは病院のベッドの上だったぞ。まぁ、そのおかげで、その時俺はあかりと出会って一目惚れしたんだけどな。」
と、最初は淡々と怒ってはいたものの、最後の方に爆弾を投下したような台詞を放った。私は、今それ言う?!っと驚き目が点になってしまった。それはクラスメイト達も同じだったようで、え?!と那月を凝視していた。
那月はそれに気付いているだろうに、急に雰囲気を柔らかくして私の肩を引き寄せながら、更に続けた。
「で、俺だけが一目惚れしたと思ってたんだけど、実はあかりも俺に一目惚れしていてくれたらしくて、そこからすぐに付き合うことになったんだよ。あかりは慣れた相手じゃないと笑顔も見せてくれないから近寄りがたいクールな美人に見られがちだけど、慣れてしまえば女の子らしくて可愛いし、照れた姿なんて誰にも見せたくないぐらいめちゃめちゃ可愛くて本当にもう最高の彼女だよ!恥ずかしいから付き合ってることは内緒にしようって言われた時は正直納得いかなかったけど、可愛いあかりの表情を独り占めできると考えれば別にいいかなーって思えたよ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。もうそのくらいでやめてよ。」
私は真っ赤になって俯きながらも那月の腕を引いて話をとめた。本当に本当に恥ずかしい。那月が私のことが大好きで大切にしてくれていることは自覚しているが、何もそれをクラスメイトの前で堂々と言うなんて、顔から火が出そうだ。それが恥ずかしいから、内緒にして欲しいと頼んでいたのに、那月はそれを分かっていないのか堂々と言ってのけた。そんなクラスの中に唖然とした空気が漂っている中、またしても空気を読まない声が響いた。
「何でそんなことになってるのよ!那月君は私のものなのに!皐月君だって私のものよ!教室で皐月君と仲良く話してるから、身の程知らずなあんたを自主退学まで追い詰めてやろうといじめてたのに、那月君と付き合ってるなんて!そんなの嘘よ!皐月君も那月君も目を覚ましてよ!そんな性悪女に騙されないで目を覚ましてよ!」
そんな無茶苦茶な彼女の主張に今度こそクラスメイト全員が、何言ってるんだこいつ?という顔で彼女を見ていた。
彼女の主張では、学年で人気のイケメン双子は二人とも自分のものらしい。それが上手くいかないから、その片割れと仲良く話していた私を排除しようといじめていたらしい。何故私は今までこんないじめを受けているのだろうと疑問に思っていたが、理由がやっと分かった。分かったが、納得はいかない。
「私はただ皐月君と話していたからっていう理由であんなことされていたの?理由が分からないから、どんなことをされても私もあなたに何かしてしまったかもと思って我慢していたけど、そんな理由だったなんて…。」
「そんな理由って何よ!私のものに勝手に手を出しておいて、本当に嫌な女ね!」
彼女は私の言葉を聞いて、更に怒りをヒートアップさせて怒鳴ってきた。
それに対して、しばらく黙って話を聞いていた皐月君が話しだした。
「聞きたいんだが、俺と那月はいつあんたのものになったんだ?あんたのものになった覚えなんて、一欠片もないんだが。それに、あんたの話だと俺と那月は誰とも話せないんだな。話してしまったら、あんたが俺たちが話した相手に嫌がらせをして自主退学まで追い込むそうだから?つまり、嫌な女ってあんたのことだな。それに、心底気持ち悪い。こんなのと一緒のクラスにいたなんて、本当に悍ましいよ。」
「な、なんでそんな酷いこというの?!皐月君と那月君は私のことが好きでしょう?こんなに可愛い私のことを好きじゃないはずないじゃない!」
皐月君にはっきりと言われたのに、彼女はまだ食い下がっていた。いい加減にやめればいいのに、と私は内心溜息をついていた。その気持ちは皐月君も同じだったのか、
「自分は可愛いから俺たちがあんたのこと好きなはずなんて、本当に救いようがないな。あんたの頭の中どうなってるんだ?」
と溜息混じりに呟いていた。
それが聞こえたのか聞こえていないのか、彼女はまだキーキーと喚いていた。
そこで、やっと話を聞きつけた教師が教室に入ってきた。遅すぎる登場ではあるが、これでやっとこの状態が終わるとクラス中に安堵の雰囲気が漂ったのは、私の気のせいではないだろう。
その後、彼女は教師に引きずられながら教室を出て行った。
教師は私やクラスメイト、沖田双子兄弟にも後で詳しい話を聞きたいと言われ、内心面倒だと思いながらも了承した。
後日、彼女はこの学校を退学となった。
学校側が私達に話を聞き、またあの時の教室内を録画していた生徒もいたらしくその映像も検証し、彼女はこの学校には相応しくないということになったのだ。
それは、まぁそうだろう。教室内で騒いでいただけならまだしも、私に対するいじめを認めてしまったのだから。最初彼女はわざとではないと言い張っていたから、学校側もその主張を聞き大事にはせずにいたというのに、自分でいじめて自主退学に追い込もうとしていたと証言してしまったのだ。これではもう言い逃れはできない。
まぁ、私は彼女に同情なんてしないが。全て彼女が自分で蒔いた種だからだ。
私はあれからクラスに少しずつ馴染んでいっている。
付き合っている事をバラした那月が堂々と教室にやってきては私を赤面させるため、私についていた近寄りがたいクールなイメージが変わってきたらしい。
那月は、
「元々、あかりは美人すぎて近寄りがたかっただけだから、すぐにクラスに馴染めるよ!」
と言っているが、彼氏の欲目で私は那月から相当な美人に見えているようなので話半分に聞いている。しかし、クラスに馴染めるのは少なからず嬉しいと思っているので、少し頑張って笑顔を作ってみようかとも思っている。
そんな笑顔の増えた私に男女問わず友達ができるようになり、那月がやきもちを妬くのはまた別の話である。
Fin