24話:佐藤家の祖父の死
そんな絶頂期の佐藤勤一に2014年1月8日、奥さんの祖父、佐藤統一さん
が心臓の具合が悪いと病院に運ばれて、数日後心不全・老衰で93歳で亡く
なった。その知らせを聞いて、佐藤妙子の成田の病院へ駆けつけると、白い布
が顔の上にかぶせられ、冷たくなった、祖父がベッドに横たわっていた。
佐藤家の魚屋から始まり「なめろう」を売りにした料理屋を始めた、苦労の
時代をまっしぐらに力強く突き進んで、今の佐藤家の隆盛を作ってくれた、
まさに主役だった。
そして、その横に立っていた父、佐藤賢一も既に72歳、いつも強気なのに、
「早く家に帰ってきて欲しいと、ぽつりと漏らした」。それを聞いた妙子は、
もう少し待ってしか言えずに涙を流した。いや、今の言葉は、年寄りの世迷い言
だとして、忘れてくれと言ったが、その話を聞くと、ついに父の胸で号泣して
しまった。そして4日後の1月12日の葬儀に出席して、荼毘に付された祖父の
骨上げ「火葬後に遺骨を骨壺に納める儀式」を済ませて、遺骨を菩提寺に丁重
に葬るところまで付き合った。
そして、その日のうちに佐藤妙子は、両親に別れを言って千葉に帰った。
一方、佐藤勤一の方は、昨年に続き2014年3月から3度目の試乗会希望者
が28人集まり計画することになった。3月、1ケ月中に、以前と同じで若手
のセールス伊東君に手伝い要請すると了解してくれた。実施方法は昨年同様、
コースは千葉から成田まで途中、行きと帰りで1回ずつ休憩を取り試乗車を
交換できることにした。
使用車種は1.8Lハイブリッドの車と2.5Lハイブリッド車と決めた。
日程を決めて、佐藤と伊東が2台の車にお客様と同乗する事にした。
そして試乗会をこなし3月を終え、直ぐに購入を決めたのが18人で、
今年中に購入約束が10人の完璧の結果に佐藤は感激し、改めてレクサス車
の優秀性を認識させられた。こうして佐藤にとって2014年も充実した
営業セールスの年になり、3年連続のトップセールスの座に立ち、今年は
社長からも特別賞が入りトップセールス賞とあわせて200万円の特別
ボーナスをいただいて終えた。
しかし、世の中、良い事ばかり続いた試しはないと言う、ことわざの
通り、2015年を迎えて、佐藤にとって大事件が持ち上がった。それを
最初に気づいたのは奥さんの佐藤妙子さんで、2月に本社の人10人が
営業所に来て、事務の女性に1人ずつに面接を行った。その面接で聞かれ
たことは、この営業所の佐藤勤一に顧客情報を渡さなかったかと言われた
様だ。最初に取り調べを受けたのが奥さんだったが、幸いなことに、
友達が多く、昼食、休み時間もアリバイがあった。
もちろん会社のデータの入った会社のUSBを持ち帰ると、出入り口
のセンサーに検知され、できない。コピー機のデータを調べると言うこと
になったが、一応、白との判定が出たようだ。次々に5人の女性が調べ
られた。そして誰が、やったのかは不明で、3日間で調査が終了した。
そして調査が入った日から佐藤勤一は自宅待機となった。帰って来た妙子は
佐藤勤一に事情を聞くと、あっさり白状して、ソニーフィナンシャルの
セールスと共同作戦で顧客囲い込みで2年前に手を結び、情報の交換をした
と白状した。
どうやったの聞かれ、データをUSBに複写して、そのデータの個人の
写真を抜いて、データーを渡したと言うと、あきれた、あんた剣道で身に
つけた武士道精神、スポーツマンシップを忘れたのと言いながら泣き
崩れた。それを見て、ごめん、僕が悪かったと佐藤勤一が床に頭を
こすりつけて謝った。




