こころの素材
心は何でできているのだろうか。
薄い膜のようでしなやかな、弾力のある、かと思えば容易に亀裂が走り砕け散る。
中身は窺えず外見さえ明瞭な形は見たことがない。
摩訶不思議なこれは、はたして何を素材とするのか。
風船のように中の空洞にガスの閉じ込められたゴムか、芯まで単一の鋼か。
砕けた欠片が鋭い硝子か、重厚な陶器や美しい磁器や、或いは焼成される前の粘土か。
あるいは一見してそうとわからない、もの凄い強度を誇る高透度のアクリル板やもしれない。
しかしてその素材が何であろうとも、この思考に意味はない。
それが何によって構成されていようとも、容易く壊れ容易く寄り添う事実には何ら影響しないのだから。
実在するいかなる素材で例えようとも、未だその実在さえ証明されていないのだから。
時には砕け擦れ燃えることもある、なんと不可思議なものであろう。
これ以上に惹かれる、重要な事実があろうか。