プロローグ
よろしくお願いします。
父が再婚し、俺は妹と二人で暮らしている。両親は海外出張へ出かけているため、まだ母とはあまり話したことが無い。
妹と暮らし、約半年が過ぎた。一緒に暮らしているが、あまり話すことは無い。夕食の時もやたら静かで、かちゃかちゃと食器の音だけが響く。何か話そうとしても話題が見つからない。
正直に言って、いきなり家族だと言われても俺はどうしていいか分からない。時間さえあればいずれ家族という親しい仲になれると思っていた。だが、ずるずると半年が過ぎても関係は変わらないままだ。
何とかしようとして、遊びに行こう、ご飯食べに行こうなどと誘ってみた。
「あの・・・・・・私のことは放っておいて下さい。慶治さん」
しかし、光紗は冷徹な声できっぱりと断った。
俺と光紗にはかなりの壁がある。だが、これも家族であることには変わりないのだろう。俺は、家族がどういうものか知らない。同学年の友人に聞いて見れば姉妹、兄弟というのはそういうものだと言うのが分かった。
そんなある日のことだった。俺は珍しく早く家に帰った。いつもは友人と喫茶店でのんびりと過ごしたり、図書館でだらだらと過ごしている。リビングに行くと一台のノートパソコンが目に入った。
恐らく光紗の私物だろう。ノートパソコンは電源の入ったままだった。画面には小説家になりたいというウェブサイトだった。そして小説を書いていることが画面を見て分かった。
俺は、うれしかった。初めて小説という趣味が妹と重なったのだ。あくまで、俺は読者としてだがそれでも仲良くなれそうなきっかけを持つことが出来て良かった。
光紗の書いた小説が気になったので、どうしようかと悩む。読みたい気持ちはあるが、勝手に読むのは駄目だ。しかし、読ませてくれというのも駄目だろう。半年も書いていて、俺は知らなかったんだ。きっと内緒にしたいに決まっている。あくまで光紗のプライベートな部分は守りたい。
どうしようかと思っていると小説家になりたいのウェブページにログイン時の名前とidが記載されていた。もしかしたらこのウェブサイトに作者を検索することが出来れば見れるかもしれない。
そう思い、名前とidをスマホのメモ帳を使って名前とidを書く。名前がさーやんと書かれていて少し笑いそうになった。
自室に戻り。デスクトップパソコンを起動させる。そして小説家になりたいのウェブサイトを開き、作者名を検索する。名前を検索し、一致したidを探す。
「よし、あったあった」
さーやんを見つけ、俺は、クリックした。
今思えば、これが始まりだったのかもしれない。